フラグメント・リベンジャーズ   作:有本

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第17話 搦手不用、敵へ振るうは拳のみ

「インストール、グレイモン!」

 

 レンは両腕にオレンジ色のガントレットを装備し、構えた。

 それに対するセイジは。

 

「インストール、アンドロモン」

 

 セイジの体の周囲に、メタリックシルバーの鎧が形成される。

 その鎧には所々、機械の配線のようなモノが張り巡らされていた。

 メイビスによればアンドロモンと言えば、確か完全体のはず。

 レベルが一段階違う装備で戦うのは不利ではある、がレンも生半可な覚悟でこの場に立っているわけではない。

 

「いくぞ、便利屋ァ!!」

 

 体中から歪な機械音を鳴らしつつ、セイジはレンへ向けて突進してくる。

 ギリギリ見切れるスピードだったので何とか躱すレンだが、それに反応してセイジは即座に避けたレンの方を向き、飛び蹴りを繰り出してきた。

 

「ぐっ」

 

 ガントレットで防ぐものの圧倒的なパワーにより、レンは数歩ほどよろめいた。

 やはり、インストールにおいても成熟期と完全体のレベル差はかなりのものらしい。

 

「まだまだァ!」

 

 セイジはそこから、拳のラッシュを仕掛けていく。

 一つ一つの攻撃が、じわじわとレンの体にダメージを与えていき、防戦一方に刺せる。

 どうにかしてこの不利な状況を変えねば、とレンはガントレットから炎を噴かすものの、件の男はそれに対し一向にひるまない。

 

「スパイラルソード!!」

 

 セイジは腕部を変形させると刃物に変え、それを回転させながらレンに突き刺そうとする。

 しかしそれも、レンは紙一重で躱していく。

 そして隙を狙って、ガントレットの形を銃口へと変化させた。

 

「メガフレイムッ!」

 

 火炎砲がセイジの体を焼く。

 セイジは少しうめくものの、鎧は炎を通さない。

 すぐにかき消えてしまった。

 効かないと見るやいなや、レンは大きく距離を取る。

 

「どうした、便利屋? もっとガツガツかかって来いよ!」

「お前みたいな奴に、長いこと近寄りたくないんでな」

 

 セイジの挑発をいなしつつ、レンは考えていた。

 ここまでの応酬からするに、セイジはインストールありきの戦い方をしている面が強く、元々の身体能力はあまり高くないらしい。

 だからこそ、レンも辛うじて食らいつけていた。

 しかしそれはそれとして、あの防御力の高い鎧を突破できるイメージが湧かない。

 

 レンが長考しているのを見ると、セイジはニヤニヤと笑う。

 

「このアンドロモンの鎧は、付け焼刃の作戦じゃ突破できねぇさ」

「……いや、なんとかやってみるさ」

「へぇ。それじゃ、こんなのはどうだ? ガトリングミサイル!!」

 

 鎧の胸部から、細かな複数のミサイルがレンに向かって発射された。

 ミサイルは真っ直ぐ飛んでくるだけで、スピードもそこまで早いわけでもない。

 軽く避けたレンだったが。

 

「……なに?」

 

 ミサイルは執拗にレンをつけ回す。

 どうやら追尾機能が付いているらしい。

 やがて捌ききれなくなった瞬間、数発まとめて喰らってしまった。

 

「がはっ!」

 

 円形の足場を転がるものの、ギリギリのところで辛うじてレンは止まった。

 が、全身に食らったミサイルの衝撃でレンの体は痛んでいた。

 そこにすかさず、セイジは距離を詰めていく。

 

「スパイラルソード!!」

「ぐあっ!?」

 

 避ける暇がなかったレンは、再びガントレットでガードするものの、その圧倒的威力により疲労が溜まっていた左手の装備は完全に砕けてしまった。

 スパイラルソードの衝撃で足場から落ちかけたレンは、足場の一端を掴み何とか這いあがるが、体の痛みは尋常ではないほどに増している。

 

「どうした、もう終わりか?」

「ぐっ……」

 

 頭をフル回転させながら、レンは鎧の対策方法を練る。

 やはり、鎧を突破するにはレンが持ちうる最大火力の攻撃を、ゼロ距離で当てるしかないだろう。

 しかし、左腕のガントレットは既に壊れていて使い物にならない。

 右腕を守りつつ、遠距離攻撃の手段があるセイジに近づかなければならなかった。

 

「……やるよ」

「あ?」

「やってやるよ、黒巌セイジ!! ここで俺たちが、お前をブッ倒す!!」

「口で大きく出ても、無駄なものは無駄なんだよ!! ガトリングミサイル!!」

 

 再び、セイジは複数のミサイルを胸部から発射する。

 それは真っ直ぐにレンに向かってくるが、レンはあえて避けなかった。

 レンは残った右腕のガントレットを銃口へと変化させる。

 

「……何をするつもりだ?」

 

 セイジが勘づいた瞬間、レンは精一杯拳を振り切った。

 

「メガッフレイムッ!!」

 

 迫ってくるミサイルに、一斉に火炎砲を当てるレン。

 そのあまりの熱の強さによって、ミサイルは溶けて爆発してしまった。

 

 インストールはデジモンの進化と同様、感情の昂ぶりによって威力を増すことがある。

 先ほどより強力なメガフレイムは、レンの覚悟の強さを表していた。

 

「へぇ、口だけじゃないってか。お前の本気……俺がへし折ってやるよ」

 

 セイジはスパイラルソードを構えて駆け出す。

 それに対し、レンは右腕を構えたままその場を動かない。

 避けずにその場へ留まるレンに対し、セイジはそのまま攻撃を当てようと至近距離まで詰める。

 

「馬鹿がッ!! スパイラルソード!!」

 

 しかし攻撃が当たろうとした瞬間、レンは体を捩ってセイジの刃を紙一重で躱す。

 驚愕するセイジの顔目掛けて、レンは銃口を押しあてた。

 鎧の防御力の高さを突破できないのなら、それ以外の部分を最大出力で突破するしかない。

 レンはガントレットに火を噴かせる。

 

「メガフレイム!!」

 

 セイジの顔を殴った瞬間、メガフレイムは爆発した。

 一度の炎の放出では終わらず、数回にわたって炎を噴射していく。

 そしてそのまま、レンはセイジの顔を掴み、足場へとブチ当てた。

 

「がああああっ!?」

 

 防御が薄い部分に大出力の攻撃を喰らったことで、セイジは痛手を負う。

 そのまま足場に倒れたセイジは昏倒する。

 炎が消えても動かないことから、どうやら気絶しているらしい。

 

 やがて少し経つと、アンドロモンの鎧はドロドロと溶けて無くなっていった。

 どうやら、意識の喪失からインストールが解除されたらしい。

 

「……悪いがこれ以上、妹みたいな被害者を出すわけにはいかないんでな。しばらく眠ってろ」

 

 レンは口から垂れていた血を軽く拭うと、オファニモンとオルディネモンが戦っている方向へと視線を向けた。

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