フラグメント・リベンジャーズ   作:有本

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最終話 堕天を制する堕天

「やっぱ強いね……!」

 

 オルディネモンの攻撃を何とか受け流しつつ、オファニモンは冷や汗をかいていた。

 オルディネモンと戦い始めてから数分、オファニモンは冷静にオルディネモンの攻撃パターンを分析し続けていた。

 その結果、オルディネモンには三つの攻撃方法があることが判明する。

 

 一つ目は『エンド・オブ・ザ・ワールド』。

 口から吐き出す漆黒の波動攻撃である。

 真っ向から受けてはいないので威力自体は未知数なものの、当たったら確実にただでは済まないであろう怖気を感じさせられる。

 

 二つ目は『マグナヴィジビリティ』といい、オルディネモンの両翼に付随している宝玉から、全方位の波動を出すというものだった。

 こちらはエンド・オブ・ザ・ワールドよりも威力が低く致命傷になり得ないとはいえ、効果範囲が広いので攻撃を発動されると回避することはほぼ困難。

 そういう意味では厄介な技である。

 

 そして最後の一つが『サモン・アポカリプス』である。

 三つの攻撃方法の中で一番威力が低いようだったが、これが一番注視すべき攻撃だとオファニモンは睨んでいた。

 サモン・アポカリプスはその名の通り召喚技。

 この技を使うと、多数のオルディネモン分身体を生み出せる……というものだった。

 一体一体は成熟期、精々完全体クラスの強さなものの、生み出される数は一度に数百体を超え、それを捌くのに時間がかかっていた。

 

 しかも、召喚された分身体の一部は常にメイビスの方へ流れ出しているようで、オルディネモンとオファニモンの戦闘が長引けば長引くほど、機関員たちが不利になるという仕組みである。

 

「このっ!」

 

 オファニモンは手に持っていた槍をオルディネモンへ突き刺そうとするが、寸前でサモン・アポカリプスにより召喚された分身体に邪魔され、肝心の本体にまでダメージが届かず不発に終わる。

 オルディネモンはオファニモンの攻撃が通らないと見るや否や、波動攻撃の充填を始めた。

 

「っマズい!!」

「エンド・オブ・ザ・ワールド」

 

 しかし回避するには遅く、オルディネモンの波動攻撃を正面から受け止めることになってしまう。

 

「セフィロートクリスタルッ!」

 

 攻撃が当たる直前、オファニモンは前面に障壁を展開して何とか防御する。

 が、あまりの威力の大きさに耐えられず、障壁に大きく亀裂が走った。

 そこから波動が漏れ出し、オファニモンの腕を執拗に焼く。

 

「ああああっ!?」

 

 空中でよろめくオファニモン。

 究極体になればオルディネモンとの力の差は縮まるとオファニモンは勝手に思っていたが、それは大きな誤解だった。

 インペリアルドラモンとケルビモンが混ざったオルディネモンは、究極体を超えた力を手にしていた。

 これでは分身体とも相まって、戦闘時間が長引くだけオファニモンにとって悪手になる。

 

「……だったら、この一撃で!!」

 

 オファニモンは槍を構えてエネルギーを充填する。

 聖なる力が充填された槍は、淡く発光していった。

 オルディネモンが次の攻撃行動に出る前に仕留める、単純だが確実な方法を取るため、オファニモンは槍による刺突を繰り出した。

 

「エデンズジャベリン!!」

「マグナヴィジビリティ」

 

 オファニモンの攻撃を防ぐように、オルディネモンは両翼の宝玉を輝かせて範囲攻撃を行う。

 

「うおおおおおおッ!!」

 

 しばらく拮抗するように押し合っていた二つの力だったが、オルディネモンの方が僅かに押し負け、その結果エデンズジャベリンはオルディネモンの喉元まで届きかけた。

 しかし。

 

「キュルルルル……」

 

 オルディネモンは寸前で腕を伸ばして槍の先を掴む。

 オファニモンの全力の攻撃も、オルディネモンにとっては児戯に等しいらしい。

 オファニモンの顔が絶望の一色に染まる。

 槍を掴んだまま、オルディネモンはオファニモンを振り回すと、遠くに投げ飛ばす。

 

「エンド・オブ・ザ・ワールド」

 

 オファニモンが空中で体勢を立て直している間に、オルディネモンは再び波動攻撃を放った。

 今度はガードする暇もなく、オファニモンはその絶大な威力の波動を一身にに浴びてしまう。

 

「ぐああああああッ!?」

 

 波動攻撃が終わると、ボロ雑巾のように体中のあちこちに亀裂が走ったオファニモンの姿があらわになる。

 それを見ると、オルディネモンの口角がゆっくりと上がった。

 戦いの決着は、オルディネモンの圧倒的な勝利に終わった……かに見えた。

 

「……けるな」

 

 だが、それでもオファニモンはゆっくりと体勢を立て直すと、オルディネモンを睨み据える。

 

「ふざ、けるな!! こんなことで、私たちの住んでいる街を、人々を、殺させたりはしない!!」

 

 オファニモンはゆっくりと、オルディネモンと同じようなどす黒いオーラをその身にまとっていく。

 そのオーラは、オファニモンの怒りそのものだった。

 怒りを纏うオファニモンは、さらに漆黒の鎌を手に取った。

 

 やがてオーラは静かに解ける。

 そこには、修羅の形相となったオファニモンが佇んでいた。

 無慈悲な力に対する怒りを、オファニモンはその姿に込めている。

 オファニモン……いや、その姿は『フォールダウンモード』と言った方が正しい。

 

「自分勝手に、人の命を弄ぶんじゃない!!」

 

 フォールダウンモードとなったオファニモンは、鎌を構えるとオルディネモンへと突撃する。

 オルディネモンが急接近を知覚出来ないほどのスピードで近づいたオファニモンは、必殺の鎌を仕掛ける。

 

「フレイムヘルサイズッ!!」

 

 瞬間、鎌は文字通り炎の鎌となり、オルディネモンを切り裂いた。

 実際に体が千切れるまでいかなかったものの、オルディネモンの体は斜めに炎の跡が着く。

 

「ギ、ギャアアアアアアッ!!」

 

 地獄の炎にもだえ苦しむオルディネモン。

 畳みかけていくように、オファニモンは何度も鎌を振るっていく。

 それによって少しずつだが、反撃が困難なほどにオルディネモンを追い詰めていった。

 

「レンッ!!」

 

 オルディネモンが弱っていると見るや否や、オファニモンはレンの方を振り向く。

 セイジを倒し終わったレンは、懐から小瓶のような機械……対オルディネモン専用兵器を取り出すと、オファニモンへ投げて渡した。

 

「お前みたいな力の権化には……『デジタルワールド』で眠ってもらう!!」

 

 オファニモンは機械を起動させると、オルディネモンへと投げた。

 

「ガアッ!?」

 

 すると、オルディネモンの体は重力にでも潰されたように、みるみる機械の近くへと小さく圧縮されていく。

 あれほどの巨大な力を持つオルディネモンを、突貫で作られたデジタルワールドは完全に抑え込んでいた。

 流石は対オルディネモン専用兵器、尤も、それもオファニモンによってオルディネモンの体力が限界まで削られていたから可能なのではあるが。

 

 やがて、完全に圧縮完了されると、オルディネモンは機械の中へと封印された。

 どうやら、小瓶のような機械の中が異空間となっているらしい。

 オファニモンは、ゆっくりとレンの下へ降下すると小瓶を投げて寄越す。

 

 ついに、レンたちは本丸である黒巌セイジとオルディネモンを叩くことに成功した。

 ……これにて、アンノウンに対する全ての作戦は終了した。

 

 ― ― ― ― ―

 

「こいつが黒巌セイジです。後は……メイビスにお任せします」

「ありがとう。今回の作戦は、君たち便利屋の活躍あってこそだった。また何か折に触れてお礼をしようじゃないか」

 

 オルディネモンをデジタルワールドへ閉じ込めてから数十分後。

 分身体がカオスドラモンたちによって全て倒された後、レンはセイジをリョウゴたちに引き渡す。

 しばらく会話を交わした後、ミユの下へとレンとダルクモンは走って行った。

 ミユは、オルディネモンたちの攻撃により荒れてしまった街中を静かに見つめていた。

 

「ミユちゃん!」

「レンさん、ダルクモンさん。……これで、一件落着って感じですかね」

「あぁ。君の依頼も、一応完遂したことになるのかな?」

「報酬は、また改めてお支払いします」

 

 礼儀正しく頭を下げるミユを見て、レンは首を振る。

 

「いや、今回はいい。メイビスから謝礼も出そうだし。間接的にだけど、ルリの仇も取れた。俺たちはそれで満足だ」

「そうだよ! それに、ミユちゃんやソウスケさんが無事なだけでもよかった!」

 

 ボロボロながらも笑顔で話すダルクモンに、レンは苦笑する。

 

「お前は人が良すぎるところがあるけど、今回ばかしは賛成かな……」

「でしょでしょ?」

 

 レンとダルクモンのやり取りを見たミユが、耐えられずクスクスと笑うのを見ながら、レンは懐から名刺を取り出した。

 

「ミユちゃんには渡してなかったな、名刺」

「あっ! ありがとうございます」

「また何かあったら、便利屋・風咲にご用命を」

 

 オルディネモンや分身体たちとの戦いを終えて肩の荷が降りたのか、レンは微かに笑う。

 

 便利屋として依頼を全うできたこと、そして妹であるルリの仇を間接的にでも取れたこと。

 その二つが、レンの心を少しだけ軽くしてくれていた。

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