テツオ以外の三人の男たちは、それぞれトンファーのような武器を装備していた。
四人が襲い掛かってくるのに対し、レンとチアキはその場に留まりつつ敵の攻撃を捌いていく。
「おい、便利屋! 機関長からは最悪、殺傷してもいいって言われてるからな。こっちは好きにやらせてもらうぜ!」
「どっちみち、これは殺す気でやらないと無理だろ!」
レンはテツオと、チアキはそれ以外の三人の男と対峙する。
チアキを囲み、三方向から同時に攻撃してくる男たちに対し、チアキは腰を落としてその場で一回転。円のような全方位へ向けた斬撃を放った。
刀にはデジモンの能力が宿っており、斬撃はそのまま衝撃波となって三人の男へ命中する。
それにより、男たちは一斉に吹き飛ばされた。
その内の一人は運悪く、デジモンが戦っている付近まで転がったことで、慌てて必殺技の応酬を回避する羽目になった。
その間に、レンとテツオの一騎打ちは激化する。
大砲のような腕を体格に見合わぬ素早い動きで振り回すテツオに対し、レンは間一髪でそれを避けていく。
そのうち、テツオが繰り出す攻撃と移動の間にある僅かな隙を狙い、ガントレットの威力を活かした突きを繰り出した。
「ぐっ……!」
わずかにうめくテツオだったが、倒れるには程遠い。
しかしレンは、腹部に当てたままガントレットを変形させ、巨大な火球を放った。
「メガフレイムッ!!」
「ぐあッ!?」
ゼロ距離で放たれた火球により、炎に包まれながらテツオは吹き飛ばされる。
だがしばらく悶えた後、テツオに灯っていた炎は段々と消え失せていった。
レンは驚愕する。
「どういう原理だ……?」
「インストールの練度が高いと、身体能力の強化度も上がる。並大抵の攻撃じゃ俺は倒せない、ということだ」
テツオは大砲の腕を構えると、エネルギーを充填し始める。
インストールしたのがゴリモンなことから、恐らくレーザーカノンだろう。
レンは回避するために射線上から逃げようとするものの、チアキやデジモンたちの戦闘に乱入するわけにもいかず、逃げ場所を失ってしまう。
「喰らえッ!!」
だが、テツオがレーザーカノンを発射しようとした時、それに気づいたチアキが近くにいた男を衝撃波で吹き飛ばす。
男はテツオの射線上まで飛ばされ、レーザーカノンの餌食となった。
「ああああああッ!?」
焼け焦げた男は、その場でよろめくと糸が切れたように倒れた。
残りの男たちを蹴散らしながら駆け寄ってきたチアキに、レンは軽く片手を上げる。
「すまん、助かった」
「貸し一つな! さて、これで一人片付いたけど……まだまだだな」
残り二人の男たちとテツオは、忌々し気にチアキを睨んでいる。
それに対抗する様に、チアキは中指を立てた。
再度テツオたちがレンとチアキに攻撃を仕掛けようとするが、その時。
人間たちの間にダルクモンが転がってくる。
見ると、ダルクモンは体中に傷を負っていた。
それを追うように、ドラコモンもチアキの近くへと吹き飛んできた。
「大丈夫か、ダルクモン!」
「レン、さ、流石にちょっと厳しいかも」
「くっ……!」
チアキがドラコモンを助け起こすのを見ながら、テツオたちは嘲笑する。
「やはり四対二では分が悪いみたいだな。そろそろ終わらせるか」
敵デジモンたちが一斉に必殺技を撃つ構えを取るのに対し、ダルクモンとドラコモンの顔は微かに青くなる。
しかし、レンとチアキの目は死んでいなかった。
― ― ― ― ―
時間は少し巻き戻り、テツオの一声によって戦闘が始まった時。
「ダルクモン! ぼ、僕らで協力して、チアキたちの方にデジモンが向かわないようにするんだ!」
ドラコモンは緊張からか、微かに震えながら提案する。
それに対してダルクモンは賛同した。
「そうだねー。とは言っても、これはちょっとマズいか……?」
剣を構えつつ、ダルクモンは前方を見る。
ウッドモン・イビルモン・ゲソモン・スナイモン。
それぞれ種別の異なる四体のデジモンに対して、ダルクモンは少し焦っていた。
向こうは成熟期が四体なのに対して、こちらは成長期と成熟期の二体。
力の差は歴然だった。
「せめてレンがアレを使ってくれたら……いや、でもリスクがあるか」
「どうしたの、ダルクモン」
「ううん、何でもない」
二体がそんな会話を交わした直後、四体の成熟期デジモンたちはダルクモンたちに対し、一斉に突撃してきた。
ダルクモンは飛んで攻撃をかわし、ドラコモンは器用に四体の巨体の合間を縫って攻撃を避けていく。
しかし、空中へ飛んだダルクモンを追うように、羽を持つ小悪魔型のイビルモンと昆虫型のスナイモンが飛び立った。
そしてそれを機に、一対二の激しい空中戦が繰り広げられた。
スナイモンやイビルモンは、威嚇するような大声を発しながらダルクモンに追撃していく。
両腕に巨大な鎌を持つスナイモンの連撃を剣で受けつつ、イビルモンの超音波を素早く避けていくダルクモン。
なんとかダメージは受けていないものの、避けるのが精一杯で相手に碌なダメージを与えることが出来ずにいた。
「ぐあっ!?」
突如上がった叫び声に、ダルクモンは振り向く。
そこにはウッドモンとゲソモンに挟み撃ちにされたドラコモンが、ダメージを負って倒れ伏す姿が見えた。
助けに向かおうとするがその瞬間、ダルクモンは背後からスナイモンの鎌攻撃を喰らい、地面に落ちてしまう。
「やっぱり、圧倒的にパワーの差があるなぁ……」
背中の痛みに顔をしかめつつ、ダルクモンは何とか立ち上がるとドラコモンを救出する。
そしてそのまま四体から距離を取った。
「あ、ありがとうダルクモン」
「気にしないで。それより今はこの窮地をどう脱するか、だね」
しかし、再びダルクモンたちが攻撃を仕掛ける直前。
ゲソモンが二体へ素早く近寄り、いきなりイカ墨を吐き出した。
「デッドリーシェード!!」
「なっ!?」
「うわぁ!」
ゲソモンのイカ墨により、ダルクモンたちは視界を塞がれてしまう。
そこへウッドモンが接近し、幹のような太く逞しい腕で、ダルクモンたちに打撃を与えていった。
その威力に耐えられず、二体はレンたちの方へ吹き飛んだ。
そして、時間は現在へと戻る。