フラグメント・リベンジャーズ   作:有本

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第6話 進化の激光

「やはり四対二では分が悪いみたいだな。そろそろ終わらせるか」

 

 テツオたちはそれぞれのパートナーに、必殺技を撃つよう指示。

 そしてそれに呼応した敵デジモンたちは、一斉に必殺技の『溜め』の姿勢へと入る。

 しかしそれを見てもなお、レンとチアキの心は折れてはいなかった。

 

「……チアキ、ドラコモンは進化できるか?」

「まだちょっと不安定だが、いけるぜ」

「わかった。おい、ダルクモン。進化だ、今は賭けるしかない」

 

 レンに『進化』と言われたダルクモンは懸念していたことが起こった、と言わんばかりに冷や汗をかく。

 

「でもレン、もし失敗すれば」

「大丈夫だ。俺だって『アイツ』に負けないぐらい、お前との仲は良好だと思ってるぜ?」

 

 デジヴァイスの機能である『エボリューション』……つまり進化は、成功すればパートナーの身体が強化されて絶大な力を得ることが出来るものの、失敗すればデジモンの中に宿る全てのエネルギーを失い、一定時間動けなくなるというリスクのあるものだった。

 

 普通は進化に失敗することなどない。

 それこそ、チアキとドラコモンのコンビのように練度が不足している場合を除き、普通に進化できる。

 しかしレンとダルクモンは違った。

 

 元々ダルクモンは『アイツ』のパートナー。

 レンとパートナー関係を結んでからも、その本質は変わっていない。

 『アイツ』との結びつきが未だに強すぎて、それが逆にレンとの進化へ影響を及ぼしていた。

 そのため、ダルクモンの進化成功率は高いとは言えない。

 

 しかしレンの言う通り、やはりここは進化にかけるしかない。

 ダルクモンは立ち上がると、レンの横へと並び立った。

 

「やってみよう、レン」

「よし……ダルクモン、進化だ!!」

「撃てぇッ!!」

 

 レンのデジヴァイスとダルクモンが光り輝くと共に、四体の成熟期は一斉に必殺技を放つ。

 しかし、デジヴァイスとダルクモンから放たれた光は、それらの必殺技に対抗するように一層輝きを強め、次の瞬間……必殺技を全て打ち消した。

 

「な、何だと……!?」

 

 成熟期四体の必殺技、一斉発射という高火力攻撃を封殺されたことによって、テツオの顔色が変わる。

 それとは反対に、レンは不敵な笑みを浮かべていた。

 

 光が収まると、そこには女性型の天使デジモンが静かに佇んでいた。

 八枚の純白の羽を背から生やし、その顔の半分は金属質な仮面に覆われている。

 露出の多い姿をだったがそこに低俗な雰囲気はなく、神話の女神のような美しさを有している。

 その名は。

 

「エンジェウーモン……!」

 

 レンの呼びかけにエンジェウーモンは静かに頷く。

 それを見たチアキは、軽く口笛を吹いた。

 

「やるじゃねぇか、俺らもいくぜ。ドラコモン進化!」

 

 ドラコモンは体中から炎のようなオーラを噴出させ、その形を大きく変えていく。

 テツオたちは進化中のドラコモンに攻撃するため、ウッドモンたちに指示を飛ばすものの、あまりの熱に敵デジモンたちは一歩も近づくことが出来ずにいた。

 

 やがて熱気が収まると、そこには炎に包まれた二足歩行の竜型デジモンが立っていた。

 チアキは進化の成功にガッツポーズをすると、竜型デジモンに駆け寄る。

 

「よし、こっから形勢逆転だ! フレアリザモン!」

 

 竜型デジモン……フレアリザモンは、オドオドした姿勢から幾分自信がついたように、堂々と攻撃の態勢を取る。

 それと共に、エンジェウーモンも手に持っていた弓をつがえた。

 

「エンジェウーモン、いけるか?」

「モチのロン。この姿に進化した私は……負けないよ!」

 

 瞬く間に、エンジェウーモンの弓から光の矢が放たれる。

 何度も弓を引き絞りつつ、光の天女は連射の態勢を取った。

 

「クソッ、お前ら守れ!」 

 

 テツオがそう命令すると、ウッドモンたちは嫌な顔一つせずテツオたちの盾となる。

 そこへ次々と光の矢が突き刺さっていく。

 やがて、体中に矢を刺されたゲソモンは悲痛なうめき声を上げると、その場へ倒れ伏した。

 

「おい!! ゲソモン、立て!!」

 

 男の一人がゲソモンに対して何度も命令するが、ゲソモンは力なくうめくばかりだった。

 やがてその体から光の粒が放出され始めると、ゲソモンの体はデジタマへと再構築されてしまう。

 

「クソッ、テメェら!」

 

 怒り狂った男はデジタマをデジヴァイスに収納すると、レンたちへ攻撃するため駆け出す。

 だが、その手前でフレアリザモンが男の行く手を阻んだ。

 

「オラァッ!!」

 

 男はトンファーの周りに水流を発生させ、渦潮となったその腕でフレアリザモンを殴る……ものの、フレアリザモンの炎には敵わず一瞬で蒸発してしまう。

 

「アイツを助けろ!」

 

 危機を感じたテツオがウッドモンを向かわせるが、既に遅かった。

 

「フレイムタワーッ!!」

「ぎ、ぎゃああああああ!?」

 

 柱状の炎が放出され、それによって男は全身に致命的なダメージを負った。

 男は黒焦げになり、その場に倒れる。

 デジヴァイスの身体強化術により辛うじて死んではいないようだったが、最早立ち上がることすらままならないだろう。

 

「これで、四対五になったな」

 

 レンたちは全員無事なのに対し、テツオたちの中でまだ戦えるのはテツオ・男・ウッドモン・イビルモン・スナイモンのみとなる。

 先ほどのレーザーカノンで気絶した男のパートナーがイビルモンらしく、倒れている男を不安気にチラチラと見ていた。

 

 そしてその隙を、チアキは見逃さない。

 フレアリザモンと共に駆け出すと、テツオたちの攻撃に構わずイビルモンのみを目指し、刀を振り下ろした。

 

「一刀両断ッ!」

 

 強烈な一太刀を浴びせられたイビルモンは、悲鳴を上げる間もなく光の粒となって消滅し、デジタマへと戻った。

 

「おいレン! これで四対四だ、修正しときな!」

 

 チアキがケラケラと笑うのに若干引きながら、レンは改めて盤面を整理する。

 残りの敵はテツオとウッドモン、男とスナイモンの二組である。

 レンたちと数が同じなうえ、こちらのエンジェウーモンは完全体なので、レンたちが有利と言えた。

 

「エンジェウーモン、このまま押し切るぞ!」

「了解っ!」

 

 エンジェウーモンは飛び上がると、力の限り弓を引き絞り始める。

 先ほどのような連射用の矢よりも巨大で力強い、光り輝く矢をつがえていた。

 エンジェウーモンの必殺技、ホーリーアローだ。

 それを見たテツオは、『無防備な状態で受けたら即死を免れない』と判断したのか、エンジェウーモンに向けてレーザーカノンの充填を始める。

 

「させるかよッ!」

 

 テツオに向けてチアキが距離を詰めるが、それを最後の一人となった配下の男が必死で防御する。

 チアキが刀を振るう間に、フレアリザモンとレンも駆けるが、それぞれウッドモンとスナイモンに行く手を阻まれた。

 

 そしてついに、四対四のせめぎ合いが臨界点へ達した時、聖なる光の矢は放たれた。

 

「ホーリーアロー!!」

 同時に、テツオもゴリモンのレーザーカノンを放つ。

 それらは真正面から激突し、力の押し合いを始めた。

 しばらくは拮抗していたものの、やがてホーリーアローはレーザーカノンを切り裂くように進んでいき、テツオの眼前へ着弾した。

 

「ぐあっ!?」

 

 衝撃により、エンジェウーモン以外の全員が吹き飛ばされる。

 着弾により生じた煙の中、一番初めに立ち上がったのはレンだった。

 横に降り立ったエンジェウーモンは心配そうにレンに近寄る。

 

「ごめん! ちょっと勢いよく撃ちすぎた、大丈夫?」

「あ、あぁ。何とかな」

 

 やがて煙が完全に晴れると、そこには完全に力尽き倒れるテツオと男、ウッドモンとスナイモンがいた。

 反対に、どうやらチアキとフレアリザモンは無事らしい。

 限りなくピンチな状況で始まった戦闘は、紙一重でレンたちの勝利に終わった。

 

「うぅ、クソ……」

 

 しかし、テツオは死力を振り絞って立ち上がると、ウッドモンをデジヴァイスに収め、ゴリモンの大砲を腕から消した。

 

「ここは、勝ちを譲ってやる。だが、次はないぞ」

 

 テツオは小声で、素早く何かをインストールする。

 すると周囲にコウモリの大群が現れ、セイジが消えた時と同じようにテツオもコウモリの中へと姿を消した。

 

「……チッ、逃げられたか。だがまぁ、三組を完全に倒せただけでも儲けもんかな」

 

 チアキは少し悔しそうに呟いた後、倉庫の扉を開けて外へと出る。

 どうやら倉庫付近にメイビスの機関員たちが駆け付けて来たらしく、騒がしい音が聞こえてきた。

 

「なぁ、便利屋。アンタもここまで首を突っ込んだんだ。一回来てもらうぜ、メイビス本部に」

「それもやむなし、か。わかった、連れて行ってくれ」

 

 短い会話を交わした後、レンも外へと出る。

 勝利の余韻に浸る間もなく、レンたちはメイビスの車両へ乗り込み、本部へと向かった。

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