モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第101話 PHASE8-9『不器用な気遣い』

頭を冷やす為に独房に入り、戦場の怖さから泣いてしまっていた赤城みりあを眠らせたイザーク・ジュール。

乙倉悠貴は、彼がみりあとどういう形で出会ったのかを聞く事に。

 

イザーク曰く、復興活動を行う中で、彼女に食事を盗まれたのが切っ掛けであったらしい。

妹を身ごもっていた母の為に食料を求める彼女の憎悪の瞳を見て、過去に犯した民間人虐殺の罪の意識から、思わず共に暮らそうと、無責任な事を言ってしまったのだ。

しかし、悠貴はここまで絆を紡ぐ為に必死に努力をしてきたから、「大好きなお兄ちゃん」を助ける為に、彼女は怖い戦場に出て行ったのだとイザークに告げる。

 

イザークは悠貴の言葉を完全に認めはしなかったが、否定もしなかった。

そして、彼女にみりあを任せると、牢の外で盗み聞きをしていた日下部若葉達と共に、大槻唯のいる独房へと向かう。

 

唯は尋問などを恐れていたが、イザークが彼女に告げたのは一言。

相川千夏に会う前に、誤射をしてしまった大原みちるに謝って来いという言葉であった。

 

どんな顔をすればいいのか、分からないという唯。

破壊者の勢力であっても、少女は年相応の少女であったのだ。

 

 

 

唯からしてみたら、イザークの言葉は勿論理解出来た。

滅んだ世界で自分の身代わりとなって消滅した相川千夏と同じ姿の「ジュール隊の千夏」。

彼女に会う前に、みちるにしっかりと謝って、ケジメを付けなければならないと。

 

しかし………どんな顔をされるのか分からない。

幾ら別の肉体で蘇生出来るからって、誤って殺してしまったのは事実なのだ。

死んだことで、苦しんでいるかもしれない。

報告で聞いただけだが、実際、唯の仲間であるパイロット2人は、激しく錯乱して嘔吐したのだ。

会うのが怖いのは、仕方が無かった。

 

「ゆい………何て謝れば………。」

 

「まだ踏ん切りがつかないか。貴様は運がいいというのにな。」

 

「その言い方………まるで、隊長さんは運が悪かったみたいだね………。」

 

「当然だ。人は普通、ビームで撃たれれば確実に死ぬ。誤射した罪は、永遠に消えん。」

 

相変わらず唯の頬を押さえて厳しい目を向けるイザークの言葉に、彼女の目が見開かれた。

ここで唯は、イザークも同じく誤射をしてしまったと悟る。

だが、みちると違って、撃たれた者達は生き返るはずも無く………。

 

「貴様のような年頃の娘も、みりあ………貴様の機体の脳天を叩き割った馬鹿者のような幼い娘も、みんな俺が殺した。その罪が消える事など………永遠に無い。」

 

「辛く………無いの?」

 

「辛いと言えば、許されるのか?さっさと地獄に堕ちれば、納得して貰えるのか?………そんな甘い事で済まされるのならば、俺はもうこの世にはおらん。」

 

色々と悩み、色々と皆で話し合った結果、イザークが出した結論が「生き地獄」だ。

生きて苦しみ、辛い現実と向き合っていく。

勿論、パイロットとして生きている限り、これからも自分は罪を重ねていくだろう。

最期がまともな物になるとも、正直思えなかった。

 

「それに比べれば、お前は自分の仲間に頭を下げるだけで済む。土下座くらいはしないといけないかもしれないが………「まだ間に合う」んだぞ?」

 

唯の頬を掴む、彼の手が強まる。

逃げるな………と彼は言っていた。

逃げて後悔するな………とも。

散々殺意を向けた、この救いようもない破滅思考の持ち主に。

 

「………ちゃんとやる事をやったら、ゆいは「この世界のちなったん」と会ってもいいのかな?」

 

「会って話すくらいは、許可してやる。」

 

「ゆいが謝っている間に、この体がヒドイ事になっている可能性は………。」

 

「統括するデュランダル議長に、そんな趣味は無い。下らぬ事を考える輩がいたら、俺がぶん殴っておいてやる。」

 

イザークはそれだけ言うと、唯の頬からようやく手を放す。

しかし、解放された後も彼女は涙を流していたが、イザークからはもう、目を離さなかった。

 

「隊長さん………。うわああああああああんッ!!」

 

「なぬッ!?」

 

イザークは驚愕する。

彼女は感極まった様子で飛びつくと………思いっきり抱きしめた。

思わず牢の外でディアッカ・エルスマンが引き、シホ・ハーネンフースが懐の銃を掴むが、すぐに杞憂だと悟る。

唯は、イザークに密着した状態で、わんわんと泣いていたからだ。

 

「何のつもりだ、貴様!?」

 

「ありがとね………ゆい………世界が滅んだ後で、仲間以外にこんなに優しくされたの………初めてだから………!」

 

「別に優しくしてないわ!馬鹿者!!」

 

狼狽えるイザークであったが、唯は人の温もりを確かめるように背中に手を回していた。

若葉はその唯の様子を見て、気付く。

アメリアス勢力という世界の破壊者を名乗る者達も、人なのだと。

 

「………どうするんだ、これ?」

「害が無いのならば、泣かせてあげたらいいのでは?」

「ですねぇ………。あ、イザークさん。背中をポンポン叩いてあげるといいですよ~。」

「助ける気は無いのか、貴様ら!?」

 

別にイザークに下心は無いし、唯にも戦闘中のような殺意は完全に無かった為、そのまま満足が行くまで泣かせる事に。

イザーク自身は不満顔だったが、仕方なく小さな子供をあやすように慰めていた。

 

数分後、唯はひとしきり落ち着くと、目をはらしながらも、満面の笑みを向ける。

 

「ゆい………隊長さんの事、好きかも!」

 

「生憎、俺は貴様のような軽い女に興味は無い。」

 

「も~、ラブじゃなくてライクだって。………行ってくるね、イザークちゃん。」

 

「ちゃん!?オイ待て、流石にその呼び名は………!?」

 

イザークが思わず止めようとしたが、唯は満足そうに床に横たわると、静かに寝息を立てる。

彼は慌てて揺すり起こそうとしたが、彼女の精神はもう自身の母艦の方へと飛んでいったらしく、反応が無かった。

 

「……………嵐のような女だ。」

 

思わずゲンナリとしながらも、仕方なく唯をベッドまで運んで寝かせる。

幸せそうに夢見る彼女の様子を見る限り、恐らく謝罪の件も大丈夫だろうと思えた。

元々コミュ力が高い少女なのだから。

 

「イザークさん、お兄ちゃんの才能があるんじゃないのですか?」

「本気でやめろ………俺は妹を集める趣味は無い………。」

 

若葉のニコニコの笑みを受けて、イザークは思わず恨みがましい目を向けた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

イザークと唯の会話は、少し離れた所で話を聞いていた千夏達にも、しっかりと聞こえていた。

しかし、これ以上疲弊している彼に野暮な事を言うのは可哀想であったので、3人は黙っていてくれる。

それが逆にイザークにとっては、余計に落ち込む原因になったが………。

 

とにかく、相変わらず別の独房の中でみりあを見てくれている悠貴に、ひとまず唯の事を伝えると、7人は整備班の面々が作業に勤しむ格納庫へと向かった。

そこで、今後の予定について話し合う。

 

「………で、若葉。お前はどうするんだ?」

「う~ん………今の所、戻る手段も見つかりませんし………しばらくイザークさんの所でお世話になりたいですねぇ………。」

 

ディアッカの質問に、若葉は悩んだ末にここに留まりたいと告げる。

現時点では、エンドラのいる場所も、影武者ではあるがミネバ・ラオ・ザビのいる場所も分からない。

下手にガ・ゾウム(ガンナータイプ)でさまよい途方に暮れるよりは、このままボルテールにいる方が賢いように思えた。

 

「唯ちゃんが無事なら、私も変な事をされる可能性は低いでしょうからねぇ………。」

「でも、恐らく、議長には会わないといけませんよ?」

「先程のイザークさんの言葉が確かなら、いきなり彼に取って食われる心配は無いと思います。」

 

シホの忠告にも、前向きな回答をする若葉。

ミリアリア・ハウの収めた写真を渡す関係もあり、最高評議会議長であるギルバート・デュランダルには確かに会わないといけないだろう。

どのような人物であるのかは分からないが、いきなり射殺されるような真似は無いと感じた。

 

「ボルテールにいるのがダメだったら、どうするんだ?」

「ミリアリアちゃんの足になって貰うのは………?」

「あ、それいいかも!」

「お前なぁ………。」

 

三船美優の提案に、ミリアリアも手を叩いて賛同。

ディアッカは呆れるが、彼女は気にした様子も無かった。

何となく2人の関係性が分かって来たが、敢えて若葉はツッコまず。

和やかなムードに包まれるのは、先程の戦いで共闘した関係もあるだろう。

 

そんな中、イザークは考え込んでいた。

気になったので、千夏がおもむろに聞いてみる。

 

「隊長、何を考えているのかしら?」

「報告書の内容だ。唯や若葉の件もあるが、悠貴の件も纏めねばならん。」

 

そもそも、あの宙域を調べていたのは、議長に報告する為だ。

実は別次元の「ア・バオア・クー跡地」であり、乙倉悠貴は別世界からやって来た異邦人だと言われたら、流石のデュランダルも顔をしかめるかもしれない。

しかも、その別世界では、地球連邦軍ではなくジオン公国が勝っているというのだから。

 

「大体、「次元の歪み」という現象自体が異質だ。ただでさえ緊張状態が走っている国家間の思惑が、更に厄介な事になる。」

 

実際、イザーク達の世界のザフトと地球連合軍、オーブといった勢力も、色々と考えているだろう。

何処も一筋縄ではいかない勢力であるだけに、今後どう転ぶかも予想が付かない。

 

「そこに加えて、バルバトスやアメリアスという存在。ユウ・カジマの話が確かなら、滅んだ別世界の「忘れ形見」が、何かを起こす可能性だってあり得る。」

「忘れ形見って………何ですか?」

「モビルスーツだ。」

 

わざわざブリッジでなく格納庫で話している理由を証明するかのように、イザークは一番隅へと移動する。

若葉が最初に来た時は気付いていなかったが、そこにはシートで何かをかぶせてあった。

 

「この調査任務を行う前に、別の区域に漂っていた所を偶然発見した。ミリアリアに頼んで写真を撮って貰い、ユウ・カジマに返礼代わりの資料として送ってみたが………まだ回答が来ていないな。」

 

イザークは近くの整備兵達に頼み、シートを取って貰う。

すると、その中から青と黄色と白の3色を中心に構成されたモビルスーツが出て来た。

だが、そのツインアイとアンテナはそれこそ………。

 

「ガンダム………?」

「トルネードガンダム。………形式番号や資料が無いから、それぐらいしか分からん。宇宙での適性がありながら大気圏内での飛行能力を持つみたいだが、拠点制圧用の戦略兵器並の武装は持ってはいない。」

「何処か不思議な機体ですねぇ………。」

 

今の説明だけだと、宇宙世紀の機体だとは思えなかった。

一応、グフ・フライトタイプや「バイアラン」など、飛べる機体はあるが、宇宙適性まで両立させると、それこそ若葉のガ・ゾウムのような可変機でなければ難しい。

だとしたら、若葉からしてみて未来に所属する機体になるか、全く別世界の機体になるか………。

 

「イザークさんは、このトルネードガンダムが、その滅んだ世界の機体だと考えているわけですか?」

「何となくだがな………。そして、勘が正しければ、こんな「面倒な機体」は、他にも点在しているだろう。」

「その点在する兵器の存在が、今後の戦いを左右するかもしれないんですね………。」

 

若葉も納得した。

トルネードガンダムのようなモビルスーツが他にもあり、何処かの戦いでオーパーツのような役目を果たす可能性は十分にあり得ると。

 

 

 

2人の予想は、的を射ている部分があった。

実際、「ネオ・ジャパン」の「新宿シティ」に向かう傭兵部隊に加入している五十嵐響子は、その滅んだ世界出身でありトルネードガンダムを操っている。

そして、そのようなオーパーツの機体は他にも有り、運命を狂わす役目を担っているという事も………。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

同時刻、地球上のとある場所。

木々が立ち並び、緑が豊かであるはずの一角が、異様な光景に包まれていた。

至る所でブラウンを基調としたモビルスーツが「火炎放射機」を木々に向けて使用していたのだ。

その影響で、辺り中で紅蓮の炎が燃え盛り、灼熱の地獄と化している。

 

その炎の壁に囲まれた空き地のような場所で、戦車のようなモビルスーツが立ち往生していた。

「ガンタンクR-44」と呼ばれるそのタンク形態になれる機体は、絶体絶命の危機を前に身動きが取れなくなっていたのだ。

このままでは乗り手達は、炎の熱にやられるか、酸素不足になって死ぬだろう。

一応、機体に酸素マスクは付いているが、だからといって、実弾を放つ事しか出来ないこのタンクでは、この炎の壁を突破するのは難しい。

じわじわと嬲り殺されるのが関の山だろう。

 

なのに………。

 

そんな安全地帯のタンクから離れた場所で、倒れた木の幹に腰掛け、手に持った楽器………アコースティックギターを奏でる娘がいた。

若干癖のあるウェーブ状の髪が特徴で、歳は20歳近くであろうか。

このような死と隣り合わせの状態であるのに、彼女はギターを奏でながら大声で歌っていた。

それこそ、満面の笑顔を見せながら、燃え盛る木々の音に負けないくらい大きな声で。

 

「………アナタは何をやっているんだい?」

「何って………そりゃ、勿論「あいのうた」を奏でているんですよ!」

 

熱風が吹き荒れる中でひたすら歌う娘の姿に、流石に狂ったのかと感じた少女が1人、ガンタンクから抜け出して歩いてくる。

あからさまに呆れているその娘は、色とりどりのエクステを付けており、若干細身。

目つきは元々なのか、少し鋭いようにも思えた。

 

「一応言っておくよ。ボク達は今、ザコット・ダットネル率いる「炎の時計部隊」によって襲撃を受けている。他のバルチャー仲間は既に全滅し、ボクらも死に瀕している状態だ。その中で、自らその死を早めるような行為は、流石にどうかと感じるんだけれど。」

 

かなり現実的な説明をする少女の名は、二宮飛鳥(にのみやあすか)。

皮肉めいた言葉を発する事の多い、14歳の少女だ。

自他ともに認める中二病の心を抱えており、もはや個性と開き直っている。

 

一方で、楽観的にギターを奏でる娘は、有浦柑奈(ありうらかんな)。

この時代に、ラブ&ピースを信条とする19歳の異質な娘である。

だが、逆に言えば………それだけの信念を貫けるだけの強さを持っていると言えた。

 

故に、柑奈は飛鳥に対し、こう告げる。

 

「死が避けられないのならば、最期は楽しむものですよ。」

「炎をまとって踊り狂い、敵の笑いを誘うのかい?」

「絶望しながら死んでいくよりは、飛鳥ちゃんが日頃から言っている「ささやかな抵抗」になると思いますよ?」

「成程ね………。」

 

飛鳥は納得する。

この目の前の芯の強い娘は、自分が何を言っても自分を曲げないだろう。

それはいつもの事ではあるが、この死と隣あわせの状況でも変わらない。

だからこそ、飛鳥も皮肉を言いながらも、認めている部分はあるのだが………。

 

「折角だから、飛鳥ちゃんもこの炎に負けないくらい、熱い曲を歌いませんか?作曲しているんでしょう?最期に披露しましょうよ!」

「柑奈さん、アナタのお気楽さは徹頭徹尾なんだね。………でもまあ、どうせ死ぬならば確かに、ボク達の思うように死んでやるのも「ささやかな抵抗」か。」

 

飛鳥は軽く溜息を付くと、一度ガンタンクの中へと戻っていく。

そして、密かに作っていた自作の楽譜を手に持つと、柑奈の所に戻って渡す。

 

「アナタにその覚悟があるなら、奏でてくれ。ボクなりに魂を震わせる曲を作ったんだ。」

「「未完成の存在論」じゃないんですね。えっと………「反逆的同一性 -Rebellion Identity-」ですか。これまた変わった造語ですね。」

「痛いのは承知の上さ。でも、絶望の死にすら逆らおうとするボク達には、相応しいと思わないかい?」

 

柑奈は少し確認すると、すぐにアコースティックギターを奏で始める。

飛鳥はその旋律を感じながら、先程の柑奈に負けないくらいの大声で歌い出した。

 

死への反逆の意志を抱く、波長がずれた凸凹な2人の演奏。

幾ら魂を震わせる曲といっても、燃える森の中では、ちっぽけな抵抗にしかならなかったが………。

 

 

この「ささやかな抵抗」が、1つの運命を狂わせる。




何かここのイザーク・ジュールはお兄ちゃん適性が高い?(何)
そう思いましたが、こういうのも創作するうえでの筆のノリなんだなって、感じます。
まあ…イザークの性格を考えると、アスラン・ザラとかには絶対に言えないでしょうけれど。

とにかく大槻唯さんの心を救ったイザークは、晴れて「イザークちゃん」の愛称を得る事に。
羨ましいと思った方がいたら、素直に挙手願います。

そんなイザークですが、日下部若葉さんに鹵獲したトルネードガンダムを見せる事に。
五十嵐響子さんの乗機であった事といい、この話では出番が増えそうです。

最後に世界観はガンダムXへと移行。
燃え盛る森の中で死を受け入れるだけだった有浦柑奈さんと二宮飛鳥さんですが…?
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