「thinE/Dasein(ダインザーダイン)」として活動する有浦柑奈と二宮飛鳥は、炎に包まれた森の中で、楽器を奏でて歌っていた。
どうせ死ぬのならば、楽しく死んでやろうという抵抗であり、それは仲間の瀬名詩織、的場梨沙、結城晴だけでなく、森の動物達も巻き込んでいく。
その生き残ろうとする願いが叶ったのかは分からないが、突如振って来る機体………ガンダム達。
エクストリームガンダムとビギニングガンダムに乗った柑奈と飛鳥はビームの爆発による真空効果で炎の森を抜け、エニル・エル達の部隊と対峙する。
そこで、思わぬ2機の性能を目にした事で、生き残る事に成功するのだが、飛鳥は渋い顔。
柑奈のエクストリームガンダムの画面に示された「極限の絶望」が示す通り、この2機のガンダムは、不意打ちで相手を畏怖させ確殺するための力が秘められていた。
その謎の力に「黒い思惑」を感じ取った事で、飛鳥はとんでもない機体が傍に来てくれたと感じ取っていたのだ。
しかし、柑奈は楽観的であり、あくまでモビルスーツは乗り手次第と言う。
否定する要素も無かった為、飛鳥も最終的に肯定。
その後、海が好きな詩織の願いを叶える為、5人は港町へと進路を取る事になった。
しかし、彼女達は知らない。
この2機のガンダムの………正体を。
地上の「ネオ・イタリア」の「コロシアム」へと向かっている最中のキャリー・ベースでは、ブリッジにクルーではない本田未央が呼ばれていた。
実は、未央がアメリアス勢力の柳瀬美由紀と和解した後、彼女は一度母艦に戻って、アメリアスやボスと会えないか掛け合ってみると言ってくれたのだ。
結果がどう転ぶか分からないが、もしも再び未央の精神を連れていくのならば、それ相応の準備をしなければならない。
その為、未央は一度しっかりと睡眠を取り、消耗していた体力と元気を取り戻したのだが………。
「トルネードガンダム?」
「はい。バルバトスに滅ぼされた世界で、暴徒鎮圧用に多数製造されていた機体です。その機体が確認されたという報告を受けました。」
自分の顔の位置に浮かぶアプロディアの言葉に未央は首を傾げたので、説明が行われる。
実は、地球連邦軍の協力者であるユーグ・クーロと定期連絡を取った時に、ユウ・カジマの情報網で、そのような機体が確認されたと知らされた。
彼女達は知らなかったが、それはイザーク・ジュール率いるジュール隊が鹵獲した物である。
この機体の詳細について教えて欲しいと言われ、アプロディアが知識を提供していたのだ。
「正直、私にしてみたら驚きでした。ハルファスガンダム以外、全て滅んだはずのモビルスーツが、1機とはいえ残っていたのですから。」
「その「のワの」顔じゃ、驚いているようには見えないけれどね………。でも………そうだとしたら、他にも何かのモビルスーツが残っているんじゃないの?」
「鋭い所を突きますね、未央。ですので、私は楓やちひろと話し合って、とあるモビルスーツについての情報提供を密かに呼びかけようと考えました。」
アプロディアが片腕を掲げると、そこにホログラムで1機のモビルスーツの姿が映る。
ハルファスガンダムが蒼黒い尖った形状の機体であるのならば、その機体は赤い流線形の機体であった。
何処となく、未央はハルファスガンダムと兄弟のようにも感じてしまう。
そして、その直感は当たる事になる。
「「フェニックスガンダム」。滅びる前の世界で私………アプロディアのファイアウォールを担っていたモビルスーツです。」
「え?それって………凄くない!?」
「ハルファスガンダムがバルバトスのファイアウォールを担っているのですから、それと同等だと考えれば重要な立ち位置ですね。正直、世界と共に一緒にデリートされたと思っていましたが………。」
しかし、ここに来て役割や量産数は違う物の、トルネードガンダムが発見されたのだ。
だったら、一縷の望みに掛けて、フェニックスガンダムについても調べて貰ってもいいだろう。
「只………その特性上、あまり公に出来ないのが厳しい所です。フェニックスガンダムを利用しようとする輩が現れたら、意味がありませんからね。」
「あー………確かにハルファスガンダムと同等の実力があるって話だからね。アプロディアは、存在を感知できないの?」
「残念ながら………。私の現在の能力では、機体が近くに存在しても見つける事が出来ないでしょう。」
力を奪われたシステムであるが故に、物事が上手く進まないのは、もどかしさがあった。
………とはいえ、今の最優先事項は、ハルファスガンダムを倒す事である。
優先順位を間違えてはいけない。
「とりあえず、頭の片隅に覚えておくべきだね、そのフェニックスガンダムは。………ちなみに、私を呼んだのはその為?」
「いいえ。アメリアスと会えるかもしれないという事で、彼女に聞いて欲しい事があるのです。」
「それは一体………?」
未央がアプロディアを見ると、彼女は少しだけ言いにくそうに告げる。
「私の知らない事実です。」
「アプロディアの知らない事実………?」
アプロディアは頷くと、未央に自分の知っている事を話し出す。
前に語った通り、元々アメリアスは生まれたばかりのシステムであり、人々の幸福を司る予定であった。
しかし、バルバトスによって世界が滅ぼされた事でデリートされたというのが、アプロディアの認識だったのだが………。
「実際には、住人の魂を乱雑にかき集めて生き永らえています。しかも、かき集めた魂は、世界への強い破壊衝動と激しい憎悪を抱いています。」
例えば「ノックス」の街で対峙した柳瀬美由紀は、両親を目の前で失った事で心が壊れていた。
悪だと分かっていても、人々の幸せを呪ってしまい、自分の負の感情を抑えられず街を滅茶苦茶にしたのだ。
「システムである以上、推測………という言葉を使いたくは無いのですが、何かしらの原因が無ければ、あそこまでの破滅思考は持たないのでは無いでしょうか。」
「破滅思考か………でも、みゆみゆは後悔してたよ。」
「その感情も含めてです。許されないと分かっていても止まれないという事は、余程大きな「何か」が関係している。………そして、その理由を恐らく私は知らない。」
「マゼラン宙域」で初めて出会った時、美由紀は持田亜里沙や桐野アヤと共に、ジェネレーション・システムその物を憎んでいた。
かといって、アプロディアも全知全能では無い。
負担を軽減する為にシステムの役割を分担した所で、このような事が起こったのだから、そこに何か秘密があってもおかしくは無かった。
「正直、まだアメリアス勢力は敵です。それでも、貴女には心を開き始めている者達もいる。………ですので、可能ならば、その根幹となっている理由をアメリアスか「ボス」と呼ばれる者に、聞いて欲しいのです。」
他にも聞いて欲しい事は色々あるが、最優先事項を今回選ぶとしたら、アメリアス勢力の憎悪の理由であった。
だから、珍しく提案をしたアプロディアが、高垣楓や千川ちひろに頼らず、自分の口で未央に頼み込んだのだ。
「分かったよ。確約は出来ないけれど………私も気になるし、教えて貰えないか試してみる。」
未央はアプロディアに対し、力強く頷く。
ここでブリッジに通信が繋がったので、楓が通信を取り未央を見る。
「独房を見張っている千秋から連絡です。………美由紀さんが、やってきたそうですよ。」
「じゃ………行ってきますか!」
未央は、大げさに腕を交差させたり股の間に肩を入れたりして準備運動をすると、楓達と共に独房へと向かって行った。
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独房では鉄格子越しに、美由紀が今度は黒川千秋にトランプのババ抜きを挑んでいた。
しかし、付け焼き刃のポーカーフェイスでは千秋には通じないらしく、完敗の模様。
「また負けたー!千秋ちゃんもつよすぎー!?」
「貴女が弱いだけでしょう?」
溜息をつく千秋であったが、未央達がやって来た事で、トランプを回収。
美由紀と未央を話せる状態にする。
「来たって事は………許可が出たって事だよね?」
「うん………準備はいい?」
「いいよ、みゆみゆ。………行こう。」
美由紀は鉄格子越しに右手を伸ばす。
未央はゆっくりと手を伸ばすと、そっと握った。
途端に意識が飛んでいく。
彼女はまた、アメリアス勢力の母艦へと精神が飛ばされていった。
――――――――――――――――――――
気付けば、未央はとある部屋のベッドの上に横たわっていた。
そっと右手を掲げると、その手は透けている。
「私、また来たんだ………。」
精神体である事を確認しながら周りを見てみると、カワイイぬいぐるみが置いてあるところから、何となく美由紀の部屋だと感じる。
その証拠に、横を見ると隣で14歳の姿の柳瀬美由紀が、未央の左手を握りながらも、大きく伸びをしていた。
「ふわぁ~!………じゃ、行こっか。ボスとアメリアスと………一応、みんなにも会う?」
「会えれば会いたいかな?自己紹介も可能ならしたいし。」
未央はそう言うと、美由紀と共に部屋を出る。
通路の反対側には、相変わらず宇宙空間が広がっていた。
そこに少し違和感を覚えたが、その前に声が掛かる。
「よう、懲りずに来たか。」
「あ、きりのんに、ありさ先生!」
横を向くと、出迎えとして桐野アヤと持田亜里沙が立っていた。
しかし、もう1人、アヤの後ろから顔を覗かせる少女が。
「その子は………?」
「遊佐こずえ。アメリアスに中途半端にしか魂を保護して貰えて無くてな………アタイの傍から離れられないんだ。」
何でもわけあって、アヤの魂に支えられる形で彼女の魂は存在しているらしい。
その為、傍から離れると存在を保てなくなるというのだ。
未央は上手く理解出来なかったが、とりあえず色々と不便だと感じた。
「みおー………よろしくねぇー………。」
「うん、宜しく。じゃあ、こずこずで。」
「相変わらずだな、アンタ………。」
アヤは呆れるが、少し離れていた所で見ていた亜里沙は笑みを浮かべる。
その表情を見て、未央は問う。
「ありさ先生………落ち着きました?」
「ええ、落ち着けたわ。………心配してくれるのね、未央ちゃんは。」
「何かおかしいですか………?」
「私達………敵でしょう?」
困った表情で、少々言いにくそうに告げる亜里沙に対し、笑みを返していた未央は、一転真剣な表情を見せる。
少なくとも、美由紀とアヤ、亜里沙の3人に対しては、もうブレていなかった。
「私は3人と………それにこずこずも、友達だと思っています。例え敵であっても………。」
「貴女に銃口を突きつけても?大人しく殺されるの?」
「それは嫌です。でも………矛盾していても、みんなとはずっと友達でありたいですから。」
本当に矛盾した言葉だと未央は思った。
しかし、美由紀の友達願望と破壊衝動と、2つの相反する想いを知ったうえで出した答えがこれなのだ。
勿論、未央だって………仲間や自分が殺されるとなれば、迷わず討ってしまうだろう。
あまりこのような考えはしたく無いが、彼女達は別の身体で復活できるのだから。
でも、だからといって、分かり合う事を諦めたくはない。
敵は敵という事で割り切るには、対峙した美由紀の言動………そして涙を思い出すともう無理であった。
そんな未央の複雑な感情から導き出された結論を聞いた亜里沙は、静かに目を伏せる。
「貴女は………強いのね。」
「弱いですよ。私がありさ先生のような立場だったら、生きていられないです。………でも、ジェネレーション・システムを呪うだけの「何かしらの根拠」があるんですよね?」
未央の言葉に、亜里沙は一瞬アヤ達を見て………静かに頷く。
そして、深呼吸をしたうえで恐る恐る聞いて来た。
「………アプロディアは私達の事をなんて言っていたの?」
「敵だけれど、自分の知らない真実があるのだろうって。だから、それを確かめて来て欲しいって。」
「じゃあ、最終的にアメリアスやボスに会うべきだわ。彼女達なら、全てを話せるもの。」
「………というわけで、ここからは私が艦内を案内するであります!」
「うわッ!?」
突如隣に出現したホログラムを見て、未央は思わず飛びのき美由紀の手を放しそうになってしまった。
そこには、セミロングの黒髪を縛った割と背丈の高い人物が敬礼をしていたのだ。
「おっと、自己紹介からでしたな!私は大和亜季(やまとあき)です!わけあって、この船のコントロールを担当しています!」
「な、なら………軍曹で。」
「おお!素晴らしい渾名!未央殿のセンスは素晴らしいですな!」
「えっと………言える範囲で教えて欲しいんですけれど、クルーも無しに1人でこの母艦をコントロールしているのですか?」
今の亜季の言い方だと、従来の母艦のように艦長や操縦士、砲撃士等で分担している感じでは無いらしい。
そんな未央の質問に、亜季は少し顔をしかめる。
不味い問いかけだったのか?………と一瞬未央は身構えたが、彼女は腕を組むと少々困った様子で告げた。
「それが「私が与えられた能力」なのですよ。………ここは、未央殿が知りたい「真実」と少し関係してきますね。」
「じゃあ、これ以上はアメリアスかボスに聞かないといけないんですね………。」
何かキナ臭いものを感じた為、未央はそれ以上追及するのは一旦止めておく。
只、亜季は何か考えたうえで、先に歩み出した。
「先に医務室に行きましょう。この船の詳細は言えませんが………少しばかり知っておいて欲しい事はありますので。」
何で医務室なのだろうか?………と思いながらも、未央は付いていく事になる。
そこで何が待っているのかは、まだ分からない。
投稿間隔が開いていたのも有り、久々のシンデレラガールズサイドです。
メインとなるのは、本田未央さんになりそうですね。
アプロディアの口から、ここで初めてフェニックスガンダムの名前が出ます。
動画版を視聴した方にとっては、感慨深い機体名かもしれませんね。
どういう意味を成すのかは、今後のお楽しみで。
それとは別で、未央さんがまたアメリアス勢力の母艦へと再び赴く事になりましたが、早速迎えの人物が。
大和亜季さんは、何かしらの影響で1人で母艦を管理しているらしいのですが…。
果たして彼女達には、どんな秘密があるんでしょうね?