モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第104話 PHASE8-12『分かり合いたいもどかしさ』

キャリー・ベースのブリッジでは、本田未央がアプロディアからトルネードガンダムの話を聞いていた。

彼女達の世界で暴徒鎮圧に携わっていた機体であり、バルバトスによって消去されたと思っていた存在。

しかし、そのモビルスーツが生き残っていた事で、アプロディアは自らのファイアウォールを担当するフェニックスガンダムの捜索を依頼したと語る。

 

その上で、アメリアス達に自分の知らない真実を、最優先で聞いて来て欲しいと頼むアプロディア。

了承した未央は、面会の許可を取って来た柳瀬美由紀に連れられ、再び精神体をアメリアス勢力の母艦へと飛ばすのだった。

 

母艦では持田亜里沙と桐野アヤと再会し、アヤから離れられない遊佐こずえと出会う。

彼女達とは銃口を向け合っても友達であり続けると言い続ける未央の言葉に、亜里沙達は何かを感じるが、そこにホログラムで大和亜季が登場する。

彼女は自身がコントロールする母艦について知って欲しい事があると言い、まずは医務室へと向かうのであった。

 

 

 

医務室は白を基調とした場所であり、特段他の母艦と作りが違っているような感じでは無かった。

変わっている所があるとしたら、人が寝そべって入れるようなポッドがある所だろうか?

 

「このポッドは?」

「再生治療用のカプセルよ。失った体の部位を、取り戻す事が出来るわ。」

「へえ~凄い装置なんだ………ってわぁ!?」

 

未央はまた、美由紀の手を危うく放しそうになる。

いつの間にか後ろに人が立っていたからだ。

 

「び、ビックリした!?」

「ゴメンなさい、驚かせちゃったわね。」

 

苦笑するのは、栗色の髪を後ろでまとめた女性。

如何にも看護師という出で立ちをしている。

彼女は柔和に微笑むと、未央に自己紹介をしてくれた。

 

「私は柳清良(やなぎきよら)。この船の医療設備を任されているわ。………貴女が未央ちゃんね?」

「は、はい………じゃあ、お清さんで。」

「ふふっ、本当に渾名を付けるのが好きなのね。」

 

相変わらず笑みを見せてくる清良であったが、未央は何か底知れぬものを感じた。

優しそうなのは確かだが、過酷さも経験しているような猛者の匂いというか………。

というか、気配を消して未央の後ろに立てた所に、只者でないポテンシャルを持っているように思えたのだ。

 

それを察知したのだろうか?

アヤが未央に静かに告げる。

 

「清良さんは、こう見えて白兵戦の達人だ。心音で相手の数を察知できるし、体力面も優れている。肉弾戦だって………。」

「な、何で看護師がそんなスキルを!?」

「ふふふ、医療現場はそれだけハードだったって事よ。」

 

物騒な話題を否定もせず、相変わらず笑みを浮かべる清良。

唖然とする未央であったが、唾をのみ込むと意を決して問う。

 

「その優しいお清さんが………何で世界を滅ぼしたいなんて………。」

「おい、未央!?」

「聞いたらダメなんですか?それくらい、答えてくれても………。」

 

未央の質問に対し、焦り出したのはアヤだった。

失礼だとは思ったが、未央自身も知りたい事がある。

答えられる範囲でいいから、破壊衝動の理由を聞いておきたかったのだ。

 

只、意外にも回答してくれたのは、アヤの後ろにいたこずえであった。

 

「あやもーきよらもー………やさしいのー。こずえがくるしんでいたときに………たすけてくれたからー………。」

「それって………こずこずが、きりのんから離れられない事と関係しているの?」

「こずえー………はんぶん、きえかかってたからー………。」

 

こずえの表情は変わらなかったが、一時期の彼女はかなり深刻な状態であった事が分かった。

未央がアヤを見ると、彼女は俯き唇を噛み締めている。

一方で、清良は真剣な顔をしていた。

 

「世界が滅んだ時………アヤちゃんは泣いていたわ。こずえちゃんの魂も半分消えかかっていて………アメリアスに必死に頼んでいたの。「こずえを助けてくれ!」って。」

 

清良も取り乱してはいたが、このアヤ達の姿を見た事で冷静さを取り戻し、アメリアスに直訴。

世界崩壊に戸惑う彼女を上手く誘導して、こずえの魂をアヤの魂と何とか結合させたのだ。

 

「………きりのんがバルバトスを憎む理由って。」

「ええ。この船には、そんな想いを抱く人達が沢山乗っている。私はそんなみんなを支えたいだけ。エゴだけれど………放っておけないだけなのよ。」

 

未央は、清良がアメリアス勢力の中で、比較的倫理観を保っている存在だと気付く。

勿論、負の感情も持っているだろうが、少なくとも自身を冷静に見る事が出来ているだろう。

だから………未央は更に聞いた。

 

「お清さん。アメリアスは、世界を滅ぼしたいんですか?」

「滅ぼしたい………というより、自分に危害を加えるもの全てに恐怖を抱いている感じね。」

「そのアメリアスに従わないと………みんな消されるんですか?」

「少なくとも………スペアの肉体は貰えないわ。」

 

正直に答えてくれる清良の言葉を受け………未央は美由紀達が動いているのは、半分は自らの意志だが、半分はアメリアスに従わざるを得ないからだと悟る。

勿論、美由紀達の破滅願望を許してはいけないが、そもそもアメリアスに従わなければ消滅するのだから、まずは彼女をどうにかしないといけないのは確かだった。

只、ここで清良は一言。

 

「未央ちゃん………恐らく今、貴女が抱いている想いは素晴らしいし、私達にとっても有難い事よ。でも………失礼だけれど、貴女にそこまでの力は無い。」

「………アメリアスを説得は出来ないんですか?」

「出来るのならば………例え消される事になっても、私が説得しているわね。今の彼女は、何を言っても無駄なのよ。」

 

誰の言葉にも耳を貸さないという事だろうか?

確かにそうなると、どうやっても考えを変える事は出来ない。

 

「先にバルバトスを何とかするしか無いのかな………?」

「世界全てに恐怖しているから確定では無いけれど………少なくとも、最低条件かもしれないわね。」

 

バルバトスに世界を消された事がアメリアスの拒絶の発端であるのならば、まずはハルファスガンダムをどうにかすればいい。

未央がシンデレラガールズで出来る事と言えば、それくらいしか思いつかなかった。

 

「とりあえず、後でアメリアスに会ってみてもいいですか?」

「失望するだけでも………?」

「………はい。」

 

看護師の清良がこう言うのだから、余程ダメな状態なのだろう。

それでも、ぶつかってみなければ始まらないと感じた未央は、しっかり話してみようと決意した。

話がひと段落した所で、亜里沙が清良に問う。

 

「清良さん。みちるちゃんと唯ちゃんは、どうなりました?」

「2人共元気よ。………元気過ぎて、怖い所もあるけれど。」

 

清良は柔和な笑みを取り戻すと、奥にあるカーテンウォールを開ける。

そこにはベッドがあり………奇妙な光景が広がっていた。

 

「何………これ?」

 

ベッドの上では、クロワッサンのような髪と丸い瞳、そして八重歯が特徴の少女が上半身を起こし、大量のパンをフゴフゴと食べていた。

その手前では、金髪の少女が何故か床の上で土下座をしてクロワッサンの少女に頭を下げている。

 

「みちるちゃん!本当にゴメン!!」

「嫌ですね~。あたしは別に気にしてないですから、頭を上げても大丈夫ですよ~!」

「でも………1回殺しちゃったし!」

「あはは~!大丈夫ですって!パンさえあれば、問題ありません~!」

 

何か妙に物騒なやり取りをしている2人についていけず、未央は首を傾げる。

今度は亜里沙が耳打ちをして、出撃中に土下座の少女………大槻唯が、パンを食べている少女………大原みちるを誤射して撃ち落としてしまった事を告げる。

色々あって唯は精神を戻したが、みちるに合わせる顔が無く、こうして頭を下げているらしいのだ。

とはいえ………。

 

「みちるちゃんのメンタルはすごいんだよー?しんでも、嘔吐も錯乱もしないで、ひたすらにパンを食べているから………。」

「えぇ………?」

 

美由紀の言葉には、未央も流石に引いてしまう。

パンに狂ってしまっているが、逆に言えばパンが精神安定剤になっているのだ。

唯を責める素振りも無いし、本当に強いと思えた。

 

「えっと………唯ちゃんがゆいゆい。みちるちゃんが………みちぱんで。」

「あは~!お客さんですよ!未央さんですね!」

「あ!どもども~、ゆいだよ~!」

 

未央に気付いた途端に、唯も土下座を止めて起き上がり、未央に笑顔。

みちるも凄いが、唯の切り替えの早さも異常かもしれないと、未央は密かに感じた。

尤も、唯がここまで立ち直れたのは、捕虜にされた時のイザーク・ジュールの対応が良かったとも言えるが。

 

「あ、あのさ………ゆいゆいとみちぱんは、どうしてそこまでバルバトスを憎むの?」

「うわ!?いきなりストレートに来た!?」

「言えなければ、言えないでいいけれど………。」

「うーん、ゆいはね………。」

 

ここで唯は、前の出撃の際にイザークに告げた事をそのまま説明する。

世界が消去される時、本来ならば彼女のマブダチである相川千夏が、アメリアスによって生き永らえるはずであった。

しかし、千夏はとっさに唯を生かすようにアメリアスに告げ、自身が消えてしまったという。

 

「そしたら………さっきの出撃で、別の世界の「ちなったん」に会っちゃってさ。錯乱してみちるちゃんを撃っちゃったの。それで、イザークちゃんに先に謝って来いって言われたんだ。」

 

そのイザークという人物も、やたらお人よしだと未央は思った。

まあ、周りから見たら、彼女も同じくらい親切な存在ではあるが。

一方で、未央はみちるにも聞く。

 

「みちぱんは?」

「フゴフゴ………未央ちゃんは、好きな食べ物はありますか?」

「食べ物………?」

「あたしは、パンが好きです。………そのパンを世界中から消されたんですよ~?」

 

やたら単純明快な回答であったが、みちるの目には、ハッキリとした狂気が宿っていた。

自分の愛してやまない物が、世界中から消されたら、こうなってしまうのだろうか?………と、未央は思ってしまう。

そんな中、ホログラムの亜季は清良と話をしていた。

 

「清良殿。今日は花束を置きに行かないのでありますか?」

「ええ、そろそろ行こうと思ったのだけれど………あら、急患だわ。」

 

清良の言葉の意味を考える前に扉が開く。

そこには、長身の茶髪のはねっ毛の娘に背負われ、やや薄めの栗色の髪を後ろで縛っている娘に後ろから支えられる形で、巫女服の少女が運ばれてきた。

よく見ると巫女服の少女は、鼻血を流しており、ぐったりとしている。

 

「清良さん!また歌鈴ちゃんが!?」

「早く何とかして!」

「ベッドに寝かせて。………また、無理しちゃったのね。」

 

清良が素早く点滴などを準備する間、冷静に亜季が3人を紹介してくれる。

長身の茶髪のはねっ毛の娘は西島櫂。

やや薄めの栗色の娘は真鍋いつき。

そして、巫女服の少女は道明寺歌鈴なのだと。

 

「櫂殿は元スイマー。いつき殿は体を動かす事自体が大好きなのであります。」

「あ、もしかしてあんたが未央ちゃん?宜しく。」

「右に同じく。美由紀ちゃんの言う通り、何か櫂ちゃん2号って感じだね。」

 

ここで、未央に気付いた櫂といつきが挨拶。

いつきの言葉に、美由紀は自分の事を何て紹介しているんだ?………と思わず未央は感じたが、確かに櫂のはねっ毛を見ると、自分とよく似ているとは感じた。

 

「じゃあ、櫂っちにいつきんで………。2人は何でバルバトスや世界を憎むんですか?」

「逆に言うけれど、自分の世界ごと友達や家族を消されて、憎まない人がいるの?」

「……………。」

 

櫂の冷静な言葉に、未央は思わず黙り込んでしまう。

喜多見柚達が前を向いているのは、彼女達のプロデューサーのお陰であるだけで、普通は櫂達のような思考が当然なのだ。

勿論、だからと言って、他の世界の人達を殺していいわけがないが、憎悪を抱くだけの理由は理にかなっていた。

しかし………。

 

「仮にバルバトスや世界を全て消して………満たされるんですか?」

「それは……………。」

 

今度は櫂が言い淀んだ。

実際、このまま突き進んでも、ダメだという事は分かっているのだろう。

だが、彼女は首をブンブン振ると、未央に聞く。

 

「じゃあアプロディアは、消えた世界を取り戻してくれるの!?あたし達の絶望を取り戻してくれるの!?」

「何でアプロディアなのさ!?大体、そんな力なんて残って無いよ!?というか、何でいきなりアプロディアに責任転嫁して………!?」

「ストップストップ!歌鈴ちゃんがうなされているから!」

 

未央と櫂が大声で口論になりそうになった為、いつきが慌てて止めに入る。

しかし、点滴を受け鼻血を拭き取られた歌鈴は声が聞こえたのか、ゆっくりと目を覚まして未央を見つめていた。

 

「あの………未央ちゃん………ですね………。」

「ご、ゴメン………かりりん………いえ、歌鈴さん。」

「かりりんでいいです………。ゴメンなさい、いきなり迷惑を掛けて………よいしょ。」

 

歌鈴は自分の身体が動く事を確かめると、ベッドから降りる。

しかし、流石にふらついたので、清良に止められた。

 

「ダメよ、歌鈴ちゃん。もう今日は瞑想したら、ダメ。」

「でも………子供達が泣いているんです………。早く………早く………。」

 

歌鈴達の言葉の意味が分からなかった未央は、子供という言葉で、反射的に亜里沙を見る。

彼女は俯きながらも、説明してくれた。

 

「歌鈴ちゃんは巫女の家系なの。だから………私達の世界で消された魂に語りかけて、苦しみを解いてあげる事が出来るのよ。」

 

歌鈴は毎日出撃以外の時は、ずっと瞑想をしているらしい。

しかし、瞑想は神経を擦り減らす作業である為、場合によっては自分のキャパシティを超えてしまうというのだ。

暴れる魂を救おうとすればするほど、頭の中をのたうち回るので、ガンガン殴られるような痛みを感じる………というのが、亜里沙の言葉である。

 

「その魂って………どれくらいいるんですか?」

「途方もない数よ。世界1個分だもの。」

 

無茶苦茶な行為だと思えた。

それでも苦しんでいる魂を放っておけない所に、歌鈴の優しさが感じられる。

一方で清良は、そんな彼女にこう言った。

 

「今日はもう休憩、ドクターストップよ。………そうだわ。私の代わりといってはなんだけれど、貴女にお墓参りをお願いするわね。」

「……………。」

「櫂ちゃんやいつきちゃんも付いていってあげて。みんな………仲良くね。」

 

 

笑みを浮かべる清良の言葉に、誰も何も言えなかった。




ここで新登場になるのは、PHASE6でも少し名前が出ていた柳清良さん。
看護師ですが、只者で無いのは元設定からでしょうか?
ナース拳の他、心音で相手の居場所を察知できますからね…何より棟方愛海さんキラー。

そんな彼女のいる医務室に、様々なアメリアス勢力のアイドル達が登場。
大槻唯さんも、無事に大原みちるさんに謝れたみたいですが、イザークちゃん呼びは継続の模様。

さて…ここで本田未央さんは、西島櫂さんともめてしまいますが…?
本来ならば、フリルドスクエアの方が異質と言えるのが悲しいですね。
果たして和解は出来るのか?
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