アメリアス勢力のボスである依田芳乃と遂に面会した本田未央。
彼女は芳乃に対し、破壊行動を止めるように頼み込む。
しかし、芳乃はそれが怨念返しだと理解したうえで、やんわりと否定。
更に、柳瀬美由紀の無力さを上げる事で、未央の逆鱗に触れてしまう。
狂っていると評した未央に対し、芳乃はそれすらも肯定。
その上で、元の世界で愛し合っていた者が結婚式場の眼前で消えたと、泣き笑いをしながら説明した。
バルバトスを引き裂いてやりたいという憎悪を隠さないその姿に、心が壊されてしまったのだと未央は失望してしまう。
部屋の外で相原雪乃から、芳乃が元々はそういう人物じゃ無かったと教えて貰う未央。
雪乃は、ハルファスガンダムを止めて、壊れた芳乃やアメリアスを助けて欲しいとお願いしてくる。
だが未央は、破壊行動を繰り返す事と天海春香ごとバルバトスを消去しようとしている事を止めようとしないのに、一方的に頼み込むのは理不尽だと憤慨。
苛立ちの連続に未央が苦しむ中、遊佐こずえを連れた桐野アヤが、彼女になら自分達は消されていいという爆弾発言を言い出す。
思わず雪乃は反発するが、真摯に向き合う未央に失礼な態度で接している方が許されないと、彼女は意見を曲げない。
そのアヤの姿に少しだけ救われた未央は、説得を繰り返して何とかすると言って、美由紀の精神を連れて、一旦キャリー・ベースへと戻るのだった。
未央が目覚めた時、そこは自分の母艦の中の美由紀が入っている牢獄の部屋の前であった。
鉄格子に横たわるように座っていた未央は、相変わらず疲労感に支配されている状態である。
「大丈夫………未央ちゃん?」
近くには高森藍子がいて話しかけてくれるが、身を起こそうとして………踏ん張りきれずに倒れそうになり、牢の中にいた24歳の姿の美由紀に鉄格子越しに支えられる。
どうやらまた、身を起こす力も残っていない事を実感した未央は、周囲を確認した。
そこには、ほとんどのシンデレラガールズのパイロットが集まっていたのだ。
勿論、綾瀬穂乃香もアプロディアも………。
「柳瀬美由紀を連れて来たという事は………何かあったみたいですね。」
「うん………順番に説明したいんだけど、その前に………アプロディアって、ほのっちの頭に住み着いているようなものなの?」
「突拍子もない質問ですが………そうですね、認識としては当たっています。」
「じゃあさ………ほのっちの記憶は………アプロディアが容量を取るだけ、抜け落ちているの?」
未央の周りが静寂に包まれた。
自身の事を言われた穂乃香は、思わず皆の視線を受けて引いてしまっている。
同様に視線を受けたアプロディアは………しばし無言であったが、穂乃香を見た。
「………本当なのですか、穂乃香?」
「ほ、本当って………?」
アプロディアが思わず穂乃香に聞いてしまったという事は、未央がアメリアス勢力の母艦で予測した通り、穂乃香のデメリットに彼女は気付いていなかったという事だ。
穂乃香に至っては、忘れた事を思い出す事などができない為、狼狽するばかりである。
「未央………それに美由紀。あちらで、穂乃香に関する何があったのですか?」
「えっとね………説明するとながくなるんだけど………。」
疲れている未央の代わりに、美由紀が苦手分野とはいえ説明を始めてくれる。
あちらの母艦に、水野翠という人物がいるという事。
彼女と穂乃香、そして消滅した世界の藤原肇の3人は、学校での友達であったという事。
その話を聞くたびに、肇は勿論、工藤忍や喜多見柚、桃井あずきも青ざめてくる。
「そんな………事実が!?」
「こっちにいる穂乃香ちゃんが肇ちゃんを見て何も感じていなかったから、未央ちゃんはアプロディアのせいで記憶が半端に抜け落ちたって考えたんだって。………当たってる?」
美由紀の問いに、アプロディアの「のワの」となっている表情は変わらない。
しかし………その声は、明らかに困惑していた。
「あってはならない事ですが………失念していました。その可能性を、私は考慮しないといけませんでしたね………。」
「え?え?え………?」
記憶が無い事で、話の中心にいるのに1人ついていけない穂乃香。
そんな彼女に、あずきが問いかける。
「穂乃香ちゃん………学校での記憶はあるの?」
「それは………アレ?」
ここで、ようやく思い出そうとして………思い出せない自身に穂乃香は気付いた。
頭を押さえ、思わず膝をついてしまう。
「何で………何で!?」
「このような恐ろしいデメリットが………。」
「それなんだけれど、アプロディア………。私、もっとショッキングな事を言わないといけない。」
忍と柚が心配して穂乃香を支えている中、未央は集まってくれた面々に、いよいよ真実を伝えていく。
次元戦争に関する事。
アメリアスやボスに関する事。
包み隠さず、彼女は全てを伝えた。
――――――――――――――――――――
シンデレラガールズは、地上の「ネオ・イタリア」にある「コロシアム」に向けて進路を取っていた。
全てを伝え終わった後、美由紀は一度翠達に報告しに自身の母艦へと精神を戻している。
ジェネレーション・システムに関する衝撃的な事実を知った面々は、皆黙ってしまっていた。
特に穂乃香は、自身の記憶に関するショックも合わせて寝込んでしまい、高槻やよいや栗原ネネに現在看病されている。
また、本田未央も様々な疲労から睡眠を取っており、こちらは島村卯月や渋谷凛に見て貰っている状態だ。
「みんな………落ち込んでいますね。」
「あのような事実を知ったら、仕方ないでしょう。」
モビルアーマー形態で空を飛ぶ藍子のAEUイナクト指揮官型には、アプロディアが一時的に搭乗している。
索敵が出来る穂乃香が寝込んでしまっているので、アプロディア自身が索敵を行うと自ら願い出た。
ほとんど力を失っている彼女であったが、どうやら短時間はある程度の索敵をこなす事が出来るらしい。
感情の起伏に乏しそうなシステムであるアプロディアだが、それだけ今回の事態には責任を感じているのかもしれなかった。
藍子は、その疑問を素直にアプロディアに聞いてみる。
「アプロディアは落ち込んでいないんですか?」
「私はシステムです。………仮に人であったとしても、落ち込んでいたら索敵をする面々がいません。全滅は避けませんと。」
「……………。」
機械も、自身を誤魔化す言葉は使うのかもしれない。
複雑な感情を覚える藍子であったが、アプロディアの言う通り、索敵を欠かさないように地上の面々に情報共有を図る。
現在キャリー・ベースの前を走っているのは、案内役の木村夏樹のデナン・ゾン。
更に、緒方智絵里のトーラスに輿水幸子のゲルググキャノン。
加えて、あずきがヒルドルブを試運転していた。
本来ならば、あずきも滅んだ世界の出身故に、忍や柚のように休むべき人物だ。
だが………モビルタンクであるヒルドルブは操作性が独特で、シミュレーターだけでは感覚を掴めない機体であった。
だから、あずき自身が願い出て、こうして操作をしている。
「こちら智絵里………一応、大丈夫です。」
「幸子ですよ、ボクのカワイさ以外に輝く存在は無いですね。」
「あずきです………ヒルドルブは難しいけれど………何とか………。」
あずきのモチベが下がっている影響もあるが、ヒルドルブは危なっかしい運転になっている。
砲撃型の機体である事もあり、正直これはまだ戦力としては換算しにくいと、藍子は心の中で思った。
「前方………モビルアーマーが接近中です。こちらもタンクですね。」
「お!迎えが来たな!」
アプロディアの言葉に何かを感じたのか、夏樹が意気揚々と笑みを浮かべる。
そして、デナン・ゾンのショット・ランサーの付いていない左手を振り、合図を送った。
やがて、アプロディアが「タンク」と呼んだ砂色の四角い小型のモビルアーマーが近づいて来て………。
「ヒィッ!?」
「ちょ!?智絵里さん!?」
だが、ここで智絵里が奇声を上げる。
何を思ったのか、彼女は思わず迎えのタンクに向けて、ビームカノンを構えた。
慌てて幸子が横合いから体当たりでトーラスを転倒させるが、智絵里の動揺は収まらない。
「ぁ………ああ!?」
「何でいきなり撃とうとしているんですか!?よく見て下さい!」
幸子が思わず叱って何とかしようとするが、智絵里の様子が明らかにおかしい。
藍子も慌てて降下して彼女の前に立つと、心配そうに聞く。
「どうしたの、智絵里ちゃん?敵だと焦ったの?」
「あ………ご、ゴメンなさい!」
起き上がろうとして機体操作に戸惑う智絵里だった為、念のために幸子が強引にビームカノンを取り上げる。
一方、タンクの方は敵でない事を示す為か、四角いモビルスーツ形態に変形し、両手を上げて戦う意志は無いとアピール。
更にコックピットが開き、中から茶髪のロン毛の気の強そうな女性が、苦笑しながら同じように手を上げる。
加えて、後ろから金髪で片目を隠した、成宮由愛や古賀小春くらいの少女がヌッと間から出て来て、機体内部のマイクを女性にかざした。
「悪い悪い、驚かせた。敵じゃないから安心してくれ。この機体は「ロト」。見ての通り小型の戦車になれる機体さ。」
「貴女達の名前は………?」
藍子が智絵里の射線を乗機で塞ぎながらも、静かにロトのパイロットに聞く。
女性は信頼を得られたとニッと笑うと、小柄な少女と共にマイクで答えた。
「アタシは松永涼(まつながりょう)!こっちは白坂小梅(しらさかこうめ)!バルチャー組織ロック・ダ・リーナの一員さ!アジトの船に案内するよ!」
「よ、宜しく………お願いね………。」
キビキビと喋る涼に、ボソボソと喋る小梅。
2人に対し、智絵里が思わずマイクで喋り始めた。
「あの………あの、私………。」
「気にするな!そういう間違いは誰でもあるからさ。只、母艦をいきなり撃つ真似はよしてくれよ!」
「……………本当にゴメンなさい。」
謝罪した後、何も言えなくなる智絵里を幸子とあずきに任せた藍子は、夏樹の元へ。
彼女に対し、母艦の事を聞いた。
「「ビッグトレー」という船をリサイクルしてるんだ。今は数名留守番してくれてるから、泥棒が入る事は無いと思うぜ。」
「ビッグトレー………。」
藍子は自分の知識を引っ張り出す。
ビッグトレーは、地球連邦軍がよく使っていた陸上戦艦だ。
ホバーで移動する大型母艦であり、火力支援も出来る物だと聞いている。
次元圧縮で世界が混在した為、バルチャーがお古を運用する事になったのだろう。
「色々とあるんですね。」
「まあそうだな。………じゃあ、行こうぜ。」
智絵里機が何とか起き上がれたのを幸子やあずきに確認を取った藍子は、そのまま夏樹と涼に案内されて進んでいく。
「ネオ・イタリア」までは、もう少しであった。
――――――――――――――――――――
アメリアスの母艦では、雪乃が部屋の外で宇宙を見ていた。
思い出してしまうのは、自身の醜い発言。
自分達に誠意を尽くそうとした未央の立場を利用し、理不尽な事を要求してしまったのだ。
アヤの気遣いでその場は何とか丸く収まったものの、それでも発言自体が消えるわけでは無い。
「私は……………。」
思い出されるのは、元の世界で行われていた結婚式。
夫となるはずの男性と共に歩んでいた芳乃は、幸せそうであった。
ジェネレーション・システムに逆らってまで、婚約をした2人であったが、あの瞬間は少なくとも雪乃は正解を選んだと思えたのだ。
しかし………その直後に起こったバルバトスのデリートで、芳乃は壊れてしまった。
「私も………壊れてしまったのでしょうか………?」
傍で茫然とする雪乃の耳に入って来たのは、「そなた」を何度も何度も呼び、泣き叫ぶ芳乃の姿。
狂ったように………いや、本当に狂ってしまった芳乃は、優しい少女では無くなった。
その姿を見て、芳乃には自分がいなければならないと感じたのだ。
だが………彼女と一緒に破壊行動を止めない自分もまた、狂っているとも言える。
そんな自分が生きている価値があるかと問われたら、自信も無くなってしまった。
「アヤちゃんの言う通り………私は未央ちゃんに………。」
「雪乃!ここにいたか!!」
感傷に浸っていた雪乃は、突如大声で我に返る。
通路を走って来たのは、池袋晶葉。
彼女は切羽詰まった表情で、叫んだ。
「不味い事になった!翠が暴走した!!」
「暴走………!?」
晶葉は端的に説明する。
実は、翠を始めこの母艦の搭乗者は、戻って来た美由紀から穂乃香についての情報………彼女が記憶を失った友達本人だという話を知った。
その後、翠は自室で寝込んだはずだったが、芳乃が見舞いに行った後、突如何かを思い立ったように勝手に1人で出撃してしまったのだ。
「ぼ、ボスは何を言ったのですか!?」
「知りたいのならば確かめてくればいいっていう、無責任な発言をしたみたいなんだ!しかも、勧めた機体がまた不味い!?ヅダFの方が数倍マシと言えるレベルだぞ!?」
「!?」
要は、芳乃は翠をけしかけたのだ。
しかも、相当危ない機体に乗せてしまったらしい。
「1人で行ったのですか!?」
「櫂が追いかけて行ったが………今用意できた機体が………。」
「私も行きます!準備を!」
「まともな機体が無いぞ!?」
西島櫂だけでは、どうする事も出来ないと晶葉は感じているのだろう。
メカニックである彼女の意見は、貴重なものであった。
故に、現在出撃できる機体も、どうしようもない機体なのかもしれない。
だが………。
(もしも、翠ちゃんが焦った結果………未央ちゃんを殺す事になったら………!)
それこそ、後悔してもしきれない。
本能で感じた雪乃は、晶葉の静止を振り切り格納庫へと走る。
何時しか雪乃もまた、未央の影響を受けていた。
今だけは、自身の憎悪とか使命とか関係無く、未央を守る意識が働いていたのだ。
混迷の各勢力の思惑と面々。
狂った時計の針が進む中、「コロシアム」で新たな出会いが待ち受けている。
本田未央さんの予測は的中してしまい、綾瀬穂乃香さんがショックを受ける事に。
また、ジェネレーション・システムの隠された秘密を知ってしまった事で、シンデレラガールズの面々も頭を悩まる事になります。
それでも次の舞台は、待ってくれるわけが無いんですよね。
さて、この章の最後の新規登場人物は、松永涼さんと白坂小梅さん。
動画版でも登場しているアイドルですね。
緒方智絵里さんが動揺したのは、彼女達では無くロトの機体の方で…。
ここら辺は、彼女の過去と関係していますね。
一方で、コロシアムには水野翠さんと西島櫂さんと相原雪乃さんも介入する事になる模様。
果たして、どうなるかは…次のPHASE9でのお楽しみです。
というわけで、PHASE8はこれで終了になります。
次回の章が出来たら、また投稿していきますので、楽しみにお待ちくださいね!