モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第12話 PHASE2-1『一夜明けて』

天海春香を乗っ取ったバルバトス………ハルシュタイン閣下は、ドームのステージで演説を行い、愚民兵達に理想郷へと導くと宣言。

洗脳をしているとはいえ、彼等の心を改めて惹きつけるが、ハルシュタイン自身は人という存在を道具としかみていなかった。

 

一方で人を殺す恐怖心から眠れなかった高槻やよいは、栗原ネネに添い寝をして貰う。

ネネ自身に、モビルスーツで戦い人を殺す理由を聞いた所、それは妹を始めとした大切な人を守る為だと言う。

ベスパによるギロチンを用いた恐怖政治に対抗する為だと聞いたやよいは、自分にはそこまでの覚悟は持てないと嘆く。

 

更に同時刻、コロニー「シャングリラ」では、対ハルファスガンダムへの「切り札」である「ガンダム」の出撃準備が進んでいた。

搭乗するパイロットは渋谷凛。

彼女は、仲間の北条加蓮に見送られながら、決意を改めて固める。

自分が、バルバトスを止めて見せると。

 

色々な者達の思惑が重なる中、「ヘリオポリス」へと向かうキャリー・ベースの運命は………?

 

 

 

ネネに添い寝をして貰った事で、落ち着いて眠る事が出来たやよいは早朝の時間帯に目を覚ます。

宇宙なので朝焼けが見えるわけでは無いが、それでもやよいは久々に気持ちの良い朝を迎えられた。

 

「おはようございます、やよいちゃん。」

「あ………おはようございます。」

 

やよいが部屋の中を見たら、ネネは既に着替えていた。

話を聞くと、これから皆の食事の準備を行うらしい。

 

(そういえば、ネネさん………パイロットだけでなく食事係も担当しているんだっけ。)

 

初めて会った時に、卵がゆを作って来てくれた事を思い出したやよいは、自分も着替えると、とりあえず手伝いを行う為に食堂へと向かう。

そこではあらかじめ、ハロが待っていてくれており、2人認識した途端、ネネの腕の中に飛び込んできた。

 

「ハロ!ハロ!」

「おはよう、ハロ。それじゃあ、みんなの食事を準備し始めようね。やよいちゃんもお手伝いをお願いします。」

「分かりました。」

 

ネネの朝食は基本的な物ばかりだが、野菜類が多く偏食を防ぐように作られていた。

御飯とみそ汁というオーソドックスな物に加え、色とりどりのおかずが有り、やよいが見ても美味しそうに感じる。

食事が出来る時間帯になると、次々とクルーやパイロット達が目を覚ましてやって来た。

そして、ネネややよいに挨拶をしながらトレーに並べられた朝食を取り、席に座って雑談をしながら食べ始める。

 

「私達も食べましょうか。」

 

ネネに連れられたやよいが席に座ったのは、2人のクルーの向かい。

昨日の自己紹介で挨拶をした綾瀬穂乃香と桃井あずきの前であった。

 

「おはようございます、ネネちゃん、やよいちゃん。私達の前って事は、この後の清掃業務の説明も兼ねてでしょうか?」

「はい。そのついでにキャリー・ベースの案内もした方がいいって思いましたので………。」

 

笑顔で挨拶を交わす穂乃香とネネ。

やよいも会釈をすると、穂乃香は笑顔で応えてくれた。

あずきも挨拶をしてくれたが、何処かぎこちなさがある感じだ。

 

「あの………あずきさん、私の事………苦手としています?」

「え?………う、ううん!そんな事無いよ!只………その、ゴメンね。実は、やよいちゃんと同じで、あずきも出会ったばかりの人とのコミュニケーション、上手くできなくて………。」

 

あずきが、申し訳なさそうに話す。

穂乃香が、本来はそういう性格では無い………と補足をするが、だとしたら、何かこうなってしまう理由があったという事だ。

そこはやよいも気になるが、人には話したくない事の1つや2つあるのだから、下手に聞くのもどうかと感じてしまった。

とりあえず、美味しい食事が冷めない内に食べた4人は、その後の動向を話し合う。

 

艦内の清掃をメインに行っているのは、雑務係のあずき。

その仕事を、穂乃香やネネなどが時たま手伝っているらしい。

………とはいえ、少人数で行うには艦内は広すぎる為、日ごとに清掃する場所を変えていって対処をしているのだ。

 

「大変な仕事ですね………。」

「うん、でも………どんな形であれ、あずきもみんなの役に立てるから、頑張れるんだ。あずきも………戦いとかダメだから………。」

 

あずきが言うには、恐怖心が勝ってしまい、パイロットとして戦闘に参加できないらしい。

これには、やよいもまた共感を抱く。

昨晩、人を殺せない事で、ネネに添い寝をして貰ったばかりなのだから………。

 

「でも………今日は艦内の案内もするから、一通り回ってみよっか。食事の片付け、あずき達も手伝うから、4人で歩いてみよう。」

「はい!宜しくお願いします!」

 

やよいは立ち上がると、両方の後ろ手を上げた状態で腰を90度曲げて頭を下げ、丁寧にお辞儀をする。

これはやよいの癖で、アイドルのファンの間からは「ガルウイング」と呼ばれていた。

微笑ましい彼女の姿を見た事で、あずきも少しだが笑みを見せた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

基本的にキャリー・ベースの作りは、他のクラップ級を始めとした一般的な戦艦と変わりはしない。

艦内の指揮を担当するブリッジ、皆が食事を行う食堂、様々な本の貸し借りが行われる図書室、やよいが最初に目覚めた医務室、皆の憩いの場となっている展望台、体を鍛える為のトレーニングルーム、捕虜の収容を行う独房、後は各自の部屋など。

只、やよいにとっては全てが新鮮な作りであった為、案内をされる度に驚きを隠せないでいた。

 

「凄く、色々な場所があるんですね。」

「やよいちゃんは、母艦に乗るのは初めてなんだね。あずき達も最初は驚いたし、当然か。」

「この艦ならではの施設とかって、あるんですか?」

「うーん………あるにはあるよ。」

 

何処か歯切れの悪いあずきの言葉を聞いたやよいは、連れられていく。

とある部屋に入ると、そこではゲームセンターのレーシングシミュレーターのような設備が10個並んであった。

 

「ここってもしかして………。」

「モビルスーツの操縦訓練を行うシミュレーターです。みんな、この設備を使って実戦に備えて訓練を行っているんですよ。」

 

穂乃香の言葉を受け、やよいの顔が少し曇る。

要はここで、人を殺す為の訓練をしているというのだ。

無論、そうしなければ自分や仲間の命が失われるのだから、必要な事ではある。

しかし、やよいはどうしてもプラスに物事を考える事が出来なかった。

 

「よっしゃーーーっ!!ようやく勝てたぁっ!!」

「ああ!負けたーーーっ!?悔しーーーっ!忍チャン!もう一度!」

 

ここで、いきなり聞こえた2人の大声に、思わず彼女はビクリとする。

シミュレーターの奥の方の席では、工藤忍と喜多見柚が模擬戦を行っていたのだ。

今回は忍に軍配が上がったらしく、彼女は左拳を突き上げ喜んでいた。

一方、行儀悪くコンソールに突っ伏していた柚は、もう1回と言わんばかりに、人差し指を立ててアピール。

 

「というか、忍チャン………30回もやれば、いつかは勝てるって!それに、いつも思うけど、何で接近戦の方がコントロール上手なのに、狙撃機使うの!?」

「そりゃ、レイヤー隊長から部隊のお下がりを貰ったから………って、ん?」

 

ここでようやくやよい達に気付いたのか、2人はシミュレーターから立つ。

戦いに対して前向きな姿に、やよいはどうしても共感出来ず………そんな自分に後ろめたさを覚えて、少し無意識の内に俯きがちになってしまう。

忍も柚も、そんな彼女の感情に気付きはしたものの、敢えて態度には出さず、4人に元気に挨拶をしてきた。

 

「穂乃香ちゃん、あずきちゃん、ネネちゃん、こんにちは。やよいちゃんの案内?」

「ここ、色んな施設があるからねー。やよいチャンも、色々と知っておくといいヨ。」

「あ、はい………。」

 

やよいは頭を下げるが、どうしても元気がなくなる。

そもそも元気のある時は、無意識の内にガルウイングをする傾向にある為、彼女の意欲に対するバロメーターは比較的わかりやすいのだ。

 

「やよいちゃん………忍さんや柚ちゃんに対し、あまり引いた態度を取らないであげて下さい。」

「え!?………あ、ご、ゴメンなさい。」

 

流石にこのままでは良くないと思ったのか、ここでネネが指摘。

やよいが慌てて頭を下げるが、やはりガルウイングでは無い。

そして、おずおずと呟く。

 

「忍さんも柚さんも………パイロットとして頑張っているんですね。」

「まあ、アタシ達も色々とあったからね。」

「みんなの世界を救う為にも、絶対にバルバトスは倒さないといけないからサ。」

 

ふと、やよいの脳裏に、昨日の柚の姿が思い浮かんだ。

自身の世界を消された事で、明らかにバルバトスへの憎悪がこもった言葉。

穂乃香やあずきもそうだが、自分の世界が消されるという意味合いは大きすぎて、やよいには理解がしきれなかった。

だからこそ、4人がその世界でどんな暮らしをしていたのかは気になったが、明確な事を聞いてはいけない気もしてしまう。

 

その時であった。

シミュレーター室の入口の扉が開き、ネネのハロに連れられて、別のぬいぐるみのような人形が跳ねながら入って来る。

 

「えぇっ!?」

 

思わずやよいは素っ頓狂な声を発する。

その人形は、三白眼のやさぐれた目をしており、緑色の猫のような外見をしていた。

身も蓋も無い表現をすれば無機質な存在でありながらも愛らしさを伴うハロと違って、「ブサイク」という言葉が良く似合う人形であったのだ。

だが………。

 

「ぴにゃこら太ーーーーーっ!!」

「はわっ!?」

 

それまで比較的大人しくお姉さん的な言動が印象的であった穂乃香(尚17歳)が、突如目の色を変えると、その人形へと思いっきり抱き着く。

幸せそうに頬ずりをして可愛がる姿は、それまでの彼女からは信じられない姿であった。

 

「ほ………穂乃香さん?」

「ああ………ぴにゃ………相変わらず何て可愛いんでしょう!ねえ、やよいちゃんもそう思いますよね!?ね!?」

「え………う………あ………!?」

 

目を輝かせながらやよいに訴えて来る穂乃香に圧を感じてしまい、彼女は思わず引いてしまう。

それを見かねたのか、忍がやよいの前に立って呆れたように薄目で呟く。

 

「穂乃香ちゃん………やよいちゃんを怖がらせて、どうするの………。ほら、正気に戻って。」

「ハッ!?わ、私とした事が………ぴにゃの愛らしさに心を奪われて………ゴメンなさい………。」

「い、いえ………。」

 

パンパンと手を叩く忍の態度が合図となったのか、申し訳ない顔をして慌ててやよいに頭を下げる穂乃香。

あずきはこのぴにゃこら太が、穂乃香の機体照合などの補助を行う為に、吉岡沙紀が「直してくれた」人形型のデバイスなのだと教えてくれる。

それを証明するように、穂乃香の手から飛び着地したぴにゃこら太が短い手を掲げ、モニターを出す。

画面には、藤原肇が「サイド7」の戦闘で鹵獲した青いティエレンの情報が入っていた。

 

「どうやら………沙紀さん達がティエレンの解析を終えたみたいです。座席シートが立ち乗りであるらしく、乗り心地がかなり悪いようですが………そこら辺は改造を行ってリニアシートに切り替えてくれているらしいですよ。」

 

ぴにゃこら太達がここにやって来た本来の目的を知って、一転して真面目な顔をする穂乃香。

どうやら、穂乃香にも格納庫に出向いて貰って、色々と調べて欲しいらしい。

 

「折角ですから、やよいちゃんを案内する為にもみんなで行きましょうか。忍ちゃんと柚ちゃんはどうします?」

「アタシ達はまだまだ訓練を続けようかな。」

「うん、忍チャンにリベンジしたいからね!」

 

早速やる気になっている忍と柚を見て、やよいは思わず驚いてしまう。

そこまで躍起になる理由が分からなかったが、代表した忍の回答は単純明快だった。

 

「そりゃ、努力しなくちゃ強くなれないもん。アタシ達は肇ちゃんや藍子ちゃんほど強くないけれど………だからって足を引っ張っていい理由にはならないよ!」

「……………。」

 

やよいは閉口する。

忍の言う通り、彼女や柚の実力や経験は、藤原肇や高森藍子よりも劣っているのだろう。

だが、その事実に甘んじてしまっては、言葉通り足を引っ張るだけなのだ。

故に、2人は………いや、それこそネネも含めたパイロット達は戦う道に己を鍛えようとしているのだと。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「みんな………覚悟を持っているんですね………。」

 

忍達と別れて格納庫に向かう中、やよいは静かに呟く。

シミュレーターに没頭するのが人を殺す訓練になるのは、全員が分かっているのだ。

それでも強くなりたい理由があるのは、昨日の夜にネネとの会話で、何となく分かり始めていた。

 

「守りたいから強くなりたい………私にも、そういう想いはあるはずなのに………。」

「やよいちゃん………。」

 

同じ境遇であるあずきが気遣うが、優柔不断だとやよいは思った。

仲間達をバルバトスから救って765プロを守りたいのに、どうしても手を汚せない自分が恨めしかったのだ。

 

(私も………戦う覚悟と力が欲しい………。)

 

やよいは俯きながらも、己の無力さを克服したい想いが僅かながらに芽生える。

 

 

この感情が、やよいの中でどう影響するのか。

シンデレラガールズの母艦は、迷える少女達を乗せたまま、「へリオポリス」へと向かう。




この第12話から、PHASE2開始です。
PHASE1が「サイド7」編であるのならば、PHASE2は「ヘリオポリス編」になります。

今回は、キャリー・ベースの中の案内。
やはり訓練をするうえで、シミュレーターは外せないかなと思ったので、採用しました。
ちなみに本日の工藤忍さんは、喜多見柚さんに30回目で勝利を収めています。
………つまり、29回連続で負けていたという証でもありますね。
そういう所も彼女らしいのかなって。
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