モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

13 / 108
第13話 PHASE2-2『オーブの少女達と特務部隊の少女達』

一夜明けてシンデレラガールズの一員として目覚めた高槻やよいは、栗原ネネと共に朝食の準備を行う。

その後、綾瀬穂乃香や桃井あずきと共に、艦内の清掃を行うついでに、一通り見て回る事になった。

 

様々な施設に興味を湧くやよいであったが、モビルスーツの訓練をしているシミュレーター室に入った事で、ネガティブな感情が湧いてしまう。

訓練を行っていた工藤忍と喜多見柚は、無意識の内に引いてしまったやよいの事は敢えて気にせず、バルバトスから歪んだ世界を救う為に戦っていると言う。

 

そうしている内に、穂乃香の解析を手伝う人形型デバイスのぴにゃこら太がやって来た事で、格納庫へと赴く事になる一同。

別れ際、忍が、実力は藤原肇や高森藍子には敵わないけれど、それに甘んじて足を引っ張る理由にはならない………と告げた事がやよいの頭に残る。

 

昨晩のネネとの会話で、誰もが覚悟を持って戦っているのだろうと、薄々彼女は感じていた。

自身も戦う為の覚悟と力が欲しいと僅かながらに望むが………。

 

 

 

格納庫では、整備士の吉岡沙紀と脇腹にまだ包帯を巻いている神谷奈緒、そして彼女に肩を貸している緒方智絵里がいた。

3人が見上げているのは、整備士仲間の成宮由愛の操作している「プチモビ」。

プチモビは、球体に手足が生えたような整備機械になっていて、丁度「サイド7」でやよいを庇って損傷したリーオーの左腕を修復していた。

只、内部もかなり派手に破損しているらしく、沙紀は設計図とにらめっこをしている。

 

「さてさて………どうしたものっすかねぇ………。」

「どうにかならないか?アタシの命を守ってくれた機体なんだ。まだ使ってやりたい。」

 

奈緒の言葉に沙紀は色々と考える。

コックピットは避けられたものの、高出力のビーム・サーベルを根元から受けてしまったのだ。

ジェネレーター部分も損傷して出力がかなり落ちており、今のままではビームライフルが使えなくなっていた。

その様子に、思わず智絵里が弱気な声で聞いてしまう。

 

「ダメ………なのかな………?」

「いや、元々リーオーは、色んなオプション兵装を装備出来る仕様だから、破損したパーツを交換すれば、まだ運用は出来ると思うっす。でも、宇宙で地上用の「105mmライフル」を宇宙で使うには無理があるし………。」

 

色々とブツブツと呟く沙紀は、やがて何かを思いついたように、由愛に対してマイクで大声を張り上げる。

 

「由愛ちゃん!左腕を付けたら、ジェネレーターも交換して欲しいっす!そのうえで出力低下を避ける為にビームライフルを外して、実体弾に換装!」

「実体弾って………何を材料に使うんですか?」

 

由愛の質問に、沙紀は格納庫の端を指差す。

そこには、スクラップ同然の肩にキャノンを担いだモビルスーツが置いてあった。

 

「前に肇ちゃんが拾ってきた破損した「ドートレス・ウェポン」!見ての通り、肩の武装は無事だから、応用してみるっすよ!」

「「500mmキャノン」を………ですか!?「ドーバーガン」でも作るんですか!?」

「理屈上は可能なはずっす!まずはやるだけやってみるっすよ!」

「分かりました………!」

 

沙紀の力強い言葉を受け、由愛も応じる。

完全に現地改修というか、応急修理の域であった。

しかし、そうしなければ今のシンデレラガールズは戦えないのも実情。

その整備士達の苦労を前にして、奈緒は思わず謝罪をした。

 

「悪いな………余剰パーツもほとんど無いのに、無茶させてしまって………。」

「まあ、これが整備の仕事だから気にしないで欲しいっす。」

 

苦笑しながら沙紀は、奈緒の肩を軽く叩く。

ある意味シンデレラガールズ内で、一番苦労しているポジションであるのが、この整備士だろう。

しかし、沙紀をはじめ、皆が献身的に作業をしてくれていた。

 

「………まあ、師匠なら、これに耐ビームコーティング付けたりとか出来そうなんだけれど、アタシの腕じゃ、無理だしなぁ………。」

『いやいやいや。』

 

只、自らの力量不足からの沙紀のぶっ飛んだ発言に、奈緒だけでなく智絵里も思わずツッコミを入れてしまう。

彼女の師匠は、一体どんな人物だったのかと。

 

「い、今の時点でも凄いって、私は思うな。沙紀ちゃんのお陰でみんな、戦えるんだし………。」

「だな。みんな感謝してるって。」

 

今度は智絵里と奈緒が笑みを見せながら、感謝の言葉を述べる。

それがくすぐったかったのか、恥ずかしそうに沙紀はありがとうっす………と答えた。

 

「リーオーは出来る限り早い内に修復するけど、奈緒ちゃんはその間はケガもしてるし戦闘が発生しても待機で。」

「待機か………。まあ、仕方ないよな。」

 

実は、その気になれば、奈緒はこの状態でも戦えるだけの身体のスペックを持っていたが、緊急時でも無い限り、無茶をする物でないと沙紀は考えていた。

 

「沙紀さん~、ティエレンにリニアシートを付け終わりましたよ~。アプロディアさんのおかげで、電子系統の接続も完了です~。」

 

ここで、3人目の整備士である古賀小春の、のほほんとした声が聞こえて来た。

見れば、鹵獲したティエレンの内の1機のコックピットの前で、アプロディアと共にプチモビで作業をしていた。

 

「グッドタイミングっすね。智絵里ちゃんは鹵獲したティエレンに乗り換えて欲しいっす。未知の機体だけれど、武装は有り合わせの物で応用できそうだし、ボールよりは数倍安全な筈っす。」

 

「サイド7」の戦闘で藤原肇が鹵獲した、ティエレン宇宙型の修理が終わった事で、沙紀が智絵里に伝える。

それまで智絵里は支援ポッドであるボールに乗って戦っていたのだから、ようやく真面なモビルスーツに乗れるようになったと言える。

 

「只、微調整が必要なんで、自分でコックピット周りの手入れをお願いするっす。」

「うん、分かった………。じゃあ、見てくるね。」

 

智絵里自身も密かに気にしていたのか、少しだけホッとした顔をして沙紀に笑顔を見せた。

そして、奈緒を格納庫の隅の椅子に座らせると、早速小春やアプロディアの下へと向かった。

だが、ここで自分のジムⅢの整備をしていた島村卯月が、本田未央と共に沙紀の所にやって来る。

 

「沙紀ちゃん、ごめん。ジムのシールドだけれど、グリップの部分が脆くなっているみたい。」

「うわわ、マジっすか!?修繕したものと取り換えるから………いや、待て?」

 

ここで、沙紀はやよいがコロニー「765」からの逃走用に使ったGディフェンサーに着目する。

そして、手を叩くと閃いたように呟く。

 

「いっそ、合体しよっか!ジムⅢにGディフェンサーを付ければ、「ジムⅢ・ディフェンサー」になるっす!」

「ええ!?出来るんですか!?」

「スペック上は可能っすよ!シールドとノーマル・ミサイル・ポッドは外さないといけないっすが、リターンは大きいはずっす!艦長に許可貰ってくるから、ちょっと待っていて欲しいっすよ!」

 

沙紀はそう卯月に提案すると、格納庫の入り口にある電話を取り、ブリッジと通信を取る。

そこに、やよい達が入って来た。

 

「お、やよいっち!元気してる?………って、まだ慣れないか。」

「あ、未央さん、こんにちは。すみません………。」

「まあ、少しずつこの暮らしに慣れて行けばいいよ。」

 

未央の挨拶に、やよいはペコリと頭を下げる。

やはりまだ本調子では無いのか、ガルウイングでは無い。

そして、ひたすら長電話をする沙紀の姿や、機体を忙しそうに整備する由愛や小春の姿を見て、ボソリと呟く。

 

「沙紀さん達………忙しそうですね。」

「そうだねぇ………実質、ほぼ3人だけで整備やってくれてるからね。よっしーやゆめゆめ、こはるんには、感謝しかないよ。」

「沙紀は稀代の整備士と言われる人の弟子だったみたいだけれど………それでも、手一杯なのが実情だからな。」

 

椅子に座っていた奈緒も、ゆっくりとだが立ち上がる。

その様子を見て、今度はネネが肩を貸した。

まだ包帯を巻いている痛々しい姿に、原因を作ったやよいの顔が曇る。

しかし、その様子を察したのか、敢えて卯月が話題を変えた。

 

「大丈夫だよ。凛ちゃんが「切り札」を持って来てくれたら、今よりずっと戦いが楽になるはずだから。そうしたら、みんな怪我する事も無いし、整備も今よりも楽になるはずだし。」

「りんちゃん………?」

「あ………ゴメンなさい。まだ渋谷凛ちゃんの事は、やよいちゃんには説明していないんです。」

 

首を傾げるやよいに対し、穂乃香が卯月達に謝ると、ぴにゃこら太と共にアプロディア達の所へと向かう。

ネネやあずきと共に残されたやよいは、凛はどういう人物なのだろうか?………と疑問を持った。

 

「しぶりんはね、コロニー「シャングリラ」で対ハルファスガンダムの切り札のモビルスーツの訓練をしている、私達の仲間だよ。」

「もしかして………楓艦長の言っていた、専門的な訓練を行っている人ですか?」

「そう。「ヘリオポリス」で合流する予定なんだ。」

 

未央の説明を受けて、やよいは納得する。

ハルファスガンダムを倒す為に………ひいてはバルバトスを止める為のピースとなっているのが、渋谷凛なのだと。

そうしている間にも、未央の話は続く。

 

「しぶりんは、未央ちゃんとしまむーの幼馴染で、かみやんと同じ部隊にいたんだ。」

「未央さんと卯月さんの幼馴染で………奈緒さんと同じ部隊?」

「ここからは、私が説明しよっか。」

 

少しややこしい事情がありそうだったので、初耳であるやよいにも分かりやすく説明するために、卯月が未央から話を引き継ぐ。

彼女は格納庫の天井を見上げ、思い出すように話し始めた。

 

「私達はね、地球のオーブって国で生まれたの。その国で私達は幼い頃から凛ちゃんとよく遊んで過ごしていたんだ。凛ちゃん私より年下だったけれど、3人の中では一番しっかりしていて、モビルアーマーの扱いも上手かったっけ。」

「モビルアーマー?」

 

ここで、やよいはまた疑問の声を挟む。

確か卯月と未央は、アイドルをやっていたと言っていたはずだ。

何処か話が、ずれている気がした。

そこに気付いたのか、卯月は慌てて両手を前で振る。

 

「あ、違うの。私達、地元のジャンク屋のお兄さんと知り合いでね。昔から色々乗せて貰っていたんだ。」

「へー………仲が良かったんですね。」

「うん………。」

 

3人は勿論、その「ジャンク屋のお兄さん」と呼ばれる人との微笑ましい光景を何となく浮かべて、やよいは少しだけ心が温まる。

恐らく、彼女達の関係は765プロにいる自分達の関係と似ていると感じたからだ。

しかし、ここで卯月の顔が曇る。

 

「でも、「私達の世界」では、早い内に次元圧縮が起こってね。オーブは技術が進んでいたけれど、小さな島国だったから、いつ危険に晒されてもおかしくない状況になったんだ。」

 

卯月が言うには、彼女の世界では、「ナチュラル」という人間で構成された「地球連合軍」と「コーディネイター」という人種で構成された「ザフト」が敵対関係にあるらしい。

しかし、オーブはどちらの人種も受け入れる中立国家として存在していた。

だからこそ、先進技術を扱っているのも有り、いつ双方から攻められてもおかしく無かったのだ。

そんな中、次元圧縮で対立国家が増えれば、更に大変な事になるのは、目に見えていた。

 

「凛ちゃんはね、何かあった時に私達を守れるようにって、軍の中で修業を積もうとしたの。でも、幼い凛ちゃんがオーブ軍に入っても、最初は下働きなのは目に見えていたから、彼女は別の働き場所を探したんだ。それで、ジャンク屋のお兄さんの情報網で、退役軍人の楓艦長を見つけてね。その伝手で入ったのが………。」

「アタシ達のいるファントムスイープ隊っていう特務部隊だったってことだ。」

 

ここで、卯月の説明を奈緒が引き継ぐ。

彼女はネネに支えられながらも、昔を思い出すように片手で顎に手を当てて呟いた。

やよいはここで、更に素直な疑問を口にする。

 

「どういう部隊なんですか?」

「簡単に言えば、年齢とか階級とかに関わらず、実力重視。その代わり、危険区域にどんどん送られるハードな部隊だな。常に無茶を要求されるから、訳アリの奴等ばかり集まるんだけれど、凛はその中に飛び込んで行きやがったんだ。」

 

奈緒は凛と出会った頃の事を思い出していたのか、少し笑みを浮かべる。

どれ位の年齢だろう?………と思ったやよいに対し、彼女は未央やネネ、あずきと同じ15歳だと言って驚かせた。

 

「凛は負けず嫌いだったからな。アタシ達の隊長は楓艦長の元上司で、部隊の中では良心だったから、モビルスーツの扱いとか色々と積極的に教わっていたよ。元々の適性が高かったうえに、努力も欠かさないヤツだったから、メキメキ実力を伸ばしていったっけ。」

「あれ?奈緒さんはどうだったんですか?それに訳アリの人が集まる部隊なら………。」

 

そこまで話して貰ったやよいは、思わず奈緒に着目して聞いてしまう。

意表を突かれた彼女は、思わずドギマギしてしまった。

 

「え?あー………まあ、なんだ?その………。」

「しぶりんの手紙の話だと、かみやんは任務ごとに、愚痴と絶叫で隊長の胃を締め付けていたらしいよ。」

「オイちょっと待て!?アイツ、手紙で何言ってやがるんだ!?」

 

間髪入れた未央の言葉に、思わず奈緒が怒りの表情で大声を発する。

やよいはその態度に苦笑するが、実は奈緒の境遇への深入りを、敢えて未央が避けるように仕向けてくれたのを彼女は知らない。

同じく表面上は苦笑していた卯月が、再び言葉を紡ぐ。

 

「後、もう1人、北条加蓮ちゃんって子が2人と組んでいるんだけれど、元々負っていた怪我の影響で体が強く無くてね………、任務の旅に死亡フラグを乱発するから、カバーに入った隊長が頭痛薬も常備する羽目になったとも言ってたっけ。」

 

割と容赦が無い卯月の言葉に、やよいはその隊長は本当に大丈夫なのか?………と不安になってしまった。

胃腸薬に頭痛薬を常備しないといけないのは、かなりの事と言える。

ここで、奈緒が悪い顔を浮かべると手をワキワキとさせた。

 

「凛め………人の弱みをペラペラと………。かくなる上は、再会した際に、必殺こちょぐりの刑に………!」

「あ、あはは………部隊内の3人も仲が良かったんですね。」

 

乾いた笑みを浮かべるやよいの言葉に、奈緒は、まあな………と、昔を思い出すように深く考え込む。

彼女にとって、ファントムスイープ隊での経歴も、色々と感慨深いものがあるようであった。

 

「………よく、トリオで任務に当たったさ。そんなわけだから、このシンデレラガールズでも、また3人で戦いたいという想いはある。」

「あれ?加蓮さんは無理なんですか?」

「体が強くないって、卯月が言っただろ?体調が安定しないから、今はオペレーター兼予備戦力扱いなんだ。今のシンデレラガールズには、とてもじゃないけど入れられないさ。」

 

やよいの質問に、奈緒は残念そうな顔で返答した。

心なしか、彼女に肩を貸すネネも残念そうな顔をしている所を見ると、加蓮と関連があるのか?………と一瞬やよいは思う。

 

「そうなんですか………。早く良くなるといいですね。」

「ま、一番いいのは、さっさとアタシ達がバルバトスを倒す事なんだろうけど………。」

 

奈緒が話を総括し、笑みを浮かべた時であった。

格納庫内に、突如警報が鳴り響いた。

 

 

対ハルファスガンダムへの切り札を扱う渋谷凛。

ファントムスイープ隊に所属している北条加蓮。

彼女達の存在が、今後どう影響していくのか?

そして、警報の理由は………?




明かされる、シンデレラガールズの現地改修の実態。
成宮由愛さんと古賀小春さんを、新規で整備士として入れたのは、吉岡沙紀さん1人では、手が回らないと思ったからです。
それでも、アプロディアやプチモビなど、様々なサポートが無ければ運用出来ないんですけれどね。

渋谷凛がファントムスイープ隊で、どんな生活を送っていたのかも、今回明らかになりました。
動画のコメントでもありましたが、ユーグ隊長の胃がこのままでは持たないかもしれません。

さて、警報が鳴って、次回からまた新展開です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。