格納庫内では、吉岡沙紀、成宮由愛、古賀小春が急ピッチで忙しそうに、パイロット達の機体の整備を進めていた。
そんな中、仲間に連れられてやって来た高槻やよいは、島村卯月や本田未央、神谷奈緒から渋谷凛の事に付いて聞く。
オーブで卯月や未央の幼馴染として育った少女で、彼女達を守る為に次元圧縮の影響で出会ったファントムスイープ隊に所属して、危険な前線に出向いて実力を上げたという凛。
怪我の影響で体が弱い北条加蓮と共に、トリオで活動していたと奈緒は語るが、そこで警報が鳴り響く。
一体、何が起こったのか………?
「こちらブリッジ!「ヘリオポリス」内部にて、戦闘が発生している模様!次元圧縮プログラムも感知!パイロットは全員、出撃準備をお願いします!」
格納庫内に、小日向美穂の放送が響き渡る。
突如発生した戦闘にやよいは思わず恐怖心を刺激される。
「ま、また戦いが………。」
「やよいちゃん、こっち!」
各パイロット達が備え付けの更衣室に走り、パイロットスーツへと着替えを行い始める中で、桃井あずきに腕を引っ張られて、やよいはブリッジへと連れられて行く。
綾瀬穂乃香は、あのヘッドギアが必要だったのか、自室に寄っていた。
「何が、起こってるんですか………?何が………!?」
「とにかく、みんなの所に行こう!」
あずきと共に走りに走ってブリッジに到着したやよいは、高垣楓達の下へと向かう。
そして驚愕する事になる。
眼前に広がっていたコロニー………「へリオポリス」が、崩壊しバラバラに散ったのだ。
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砕けたデブリが漂う中、コロニー内から出て来たのは、双胴型の艦首を持つ母艦「アークエンジェル」。
その前に出現したのは、巨大な剣を構えた赤・青・白のトリコロールのモビルスーツ「ソードストライクガンダム」である。
「「へリオポリス」が………壊れた!?どうして………!くっ………!」
そのソードストライクの中で、臨時パイロットであるキラ・ヤマトは茫然としていた。
動揺は母艦であるアークエンジェル内にも広がっており、臨時で艦長になった技術士官であるマリュー・ラミアスも、思わず狼狽えている程だ。
「「へリオポリスが………こうも簡単に………!」
「ちくしょう………クルーゼの奴!GAT-Xシリーズ強奪の為に、これはやり過ぎだろ!」
そう、コンソールを拳で思わず叩くのは、本来はパイロットであるが、これまた臨時で砲撃士を担当する事になったムウ・ラ・フラガ。
その様子に、努めて冷静を保とうとした副長であるナタル・バジルールが、通信を送る。
「格納庫、大尉の「メビウス・ゼロ」はどうだ!?」
「ダメです。損傷が酷くて直ぐに出撃するのは無理です!」
恐らく緊急でムウのモビルアーマーの修理を行っている整備主任………コジロー・マードックのお手上げのような声が聞こえた。
ムウは深く溜息を付き、面倒そうに呟く。
「………参ったね。コイツを中破させたアイツが、みすみす逃がしてくれるとは思えないのにさ。」
ここで、マリューは操縦士であるアーノルド・ノイマンに師事を出した。
「ザクト艦の動きは掴める?」
「無理です。「ヘリオポリス」の残骸の中には熱を持つものも多く………これではレーザーも熱探知も………いえ、これは………!」
ここで、警報が響き渡り、ノイマンが大声を発した。
明らかに敵機の襲撃であるのは誰にとっても明白で、皆が身構える。
「Nジャマー数値増大!熱量感知!敵モビルスーツと推測!ザフトの「ジン」が多数!これは………!?X-303!イージスです!!」
「何だと!?」
ノイマンの情報に、ナタルが衝撃を受けた。
可変モビルスールである「イージスガンダム」は、今まさにザフトが「ヘリオポリス」で地球連合軍から奪ったモビルスーツ………ガンダムの1機であったのだ。
「奪ったGをもう実戦に投入してくるなんて………!」
マリューが思わず正面から近づいてくる青白い航跡を見て、思わず呟く。
拡大された画像には、ザフトの主力機ジン6機に混じり、確かに赤いイージスが写っていた。
イージスの機影は、キラの乗るソードストライクにもしっかり視認できており、彼は狼狽していた。
何故なら、その機体を奪おうとしていた人物は、キラにとっては大切な親友である………。
「あのモビルスーツは………アスラン………まさか!?」
彼は知らない。
パイロットであるアスラン・ザラも、キラのソードストライクを見て狼狽えていた事を。
そして………彼の存在を確かめる為に、この戦場に強引にやって来た事を。
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「そんな………「ヘリオポリス」が崩壊するなんて………。中立コロニーとして、有名だったはずなのに………。」
「こんなのって無いよ!?コロニーの人達は無事なの!?」
アークエンジェルの右後ろに出現する形になったキャリー・ベースのブリッジには、モビルスーツハンガーで打ちひしがれる卯月と激高する未央の声が響いていた。
どちらもコズミック・イラ出身であるだけに、平和であったコロニーの突如とした崩壊には動揺を隠せないのだ。
一応、周りを確認したら脱出艇が出てこの宙域を離脱している為、避難に関しては問題無さそうであるが、それでも人的被害は確実に出ているだろう。
「………ショックを受けている場合ではないですよ、卯月、未央。「サイド7」の時と違い、私達は多数の敵に囲まれています。」
楓の言う通り、ザフトのジンの内、3機はキャリー・ベースへと近づいて来ていた。
イージスと、反対側に陣取っている3機のジンは、アークエンジェルとソードストライクに狙いを定めており、どうやら勢力としては一緒くたにされているらしい。
その様子をいち早く察した彼女は、素早く指示を出す。
「各パイロット、戦闘は不可避と考えて下さい!格納庫、出撃を急いで!」
「待った!艦長!凛はいないのか!?合流地点は「ヘリオポリス」のはずだ!もしかしたらこの崩壊に巻き込まれてるんじゃ………!?」
だが、ここで奈緒の狼狽する声が響く。
確かに凛は、ヘリオポリスに来ているはずだ。
その反応が無いという事は、確かにコロニーの崩壊に巻き込まれている可能性が高い。
しかし、楓は強気の声で奈緒に叱咤した。
「彼女の捜索は後です!まずは、この状況を打破する事を………!」
「………艦長、聞こえますか?楓艦長。聞こえたら応答してください。」
ところが、ここで艦内に隊内通信が響き渡る。
その声は、ブリッジにいるやよいの知らない人物であったが、楓達はハッとした。
「その声は!?」
「凛ちゃん!?」
「しぶりん、何処にいるの!?」
「ここだよ、ここ。………って、言っても分からないか。とりあえず、艦に近づく敵、蹴散らすね。」
『え?』
指定されたポイント………丁度アークエンジェルを軸に点対称である反対側を見ても、コロニーの残骸であるデブリが複数浮かんでいるだけであり、分からない。
………が、突如そのデブリの中から、巨大なビーム砲が火を噴いた。
『な!?』
皆が驚くのも束の間、ビームは後退するソードストライクの遥か前を通過し、キャリー・ベースに迫るジン3機の内、最も突出していた機体を吹き飛ばす。
そのビームが太過ぎた故に、狙っていなかった左側の機体のバーニアも溶解させて身動きを封じた為、慌ててパイロットが脱出。
直撃を避けた右側の機体が、そのパイロットを回収すると戦線を離脱していく。
「あ、アレは………!?」
あっという間にキャリー・ベースへの脅威が取り除かれた事で、やよいは驚く。
吹き飛ばされたデブリの中から出てきたのは、赤・青・白のトリコロールの機体………それこそ、「サイド7」で出会ったガンダムと同じような機体であったからだ。
だが、そのガンダムと違うのは、各部位に増加装甲を施している所。
特に印象的であるのは、今撃ったのであろう、バックパックの右側に装備されている巨大な「背部長距離ビーム・キャノン」。
更に、重装備による加速力を補う為か、腰部の尻尾にも見える「テールスタビライザー」も備えていた。
「ガンダ………ム?」
「そう、ガンダム!この機体が、隊長から譲って貰った「フルアーマーガンダム7号機」だよ!」
初めて会うはずのやよいの茫然とした言葉にも、自信を持って対応する凛。
ブリッジに映し出されたモニターには、ヘルメット越しであったが、名前の通り凛々しい顔をした、奈緒に似た青い連邦のパイロットスーツの少女がいた。
そのモニターの横に、新たにその色違いにも見える、赤いパイロットスーツの女性と、オレンジのパイロットスーツの女性の姿が映し出される。
その2人の事は誰も知らなかったのか、楓が慎重に尋ねる。
「あの、失礼ですが………貴女達は一体………?」
「凛さんの護衛です。………お久しぶりです、あずきさん。私の名前は安斎都(あんざいみやこ)。「あの時」から年が経って、26歳になりました。」
「み、都ちゃんなの!?」
赤いパイロットスーツの女性の自己紹介の言葉に、やよいの隣にいたあずきが衝撃を受ける。
その意味はやよいには分からなかったが、尋ねる前に、今度はオレンジ色のパイロットスーツの女性が自己紹介をした。
「私は並木芽衣子(なみきめいこ)22歳です!ユウ・カジマ大佐にお願いされて、ユーグ・クーロ大尉の下に派遣されました。………一年戦争時は、「悠久の旅人」って呼ばれていましたね。」
「ゆ、悠久の旅人ですか!?それに、ユウ・カジマって………!?」
今度、芽衣子に対して驚いた声を上げたのは楓。
一体、どんな機体に乗っているのかと思い、一同がモニター越しに機体を見てみる。
都は頭部カメラがスコープになっているザク………「ザクフリッパー」に搭乗しており、芽衣子は銀色の二丁拳銃のような物を構えたジム………「ハイブースト・ジム」を駆って凛の7号機の周囲を守っていた。
「た、隊長………凛の特訓相手を知り合いに頼んだとは言っていましたが………まさか………こんな………!?」
「艦長、動揺しないでよ。………と、そんな場合じゃ無かったね!」
緑色の太いビーム砲が3つ同時に飛来した事で、凛と都と芽衣子は散開する。
残った3機のジンが近くの凛達に狙いを変え、「バルルス改特火重粒子砲」を放ったのだ。
「今の内に、みんなを出撃させて!」
凛はそう通信を送ると、自分の戦いに集中した。
――――――――――――――――――――
「さてと………都さん、芽衣子さん。このジン3機、私がまとめて相手をしてもいいかな?」
凛は手持ちの「ビーム・ライフル」で牽制をしながら敢えてマイクを使い、2人の護衛役のパイロット達に言う。
その言葉に、真っ先に反応したのは都。
「あのビーム砲の前には、「フリージーヤード」を用いた「ギリースーツ」は通じません。正々堂々の勝負になりますよ?」
実は、3人の機体がヘリオポリスの崩壊から無事でいられたのは、都の活躍があったから。
彼女のザクフリッパーが、ゲル状のフリージーヤードと呼ばれる物質で飛来するデブリを絡めとり、即席の盾と迷彩………いわゆるギリースーツへと仕立てたからだ。
今度はそこからの背部長距離ビーム・キャノンによる不意打ちが不可能である以上、凛1人による1対3の戦いになる。
「大丈夫だって。………自惚れじゃないよ。それに見合うだけの訓練はした。それに、ここで隊長のガンダムがあるのに、ジン3機の相手も出来ないんじゃハルファスガンダムを倒す事なんて、夢のまた夢だよ。」
凛はそう言うと、軽くウインクをしてみる。
それに対して笑顔を見せたのは、芽衣子。
「いいね、そのやる気のある顔!確かに思いっきり旅立ってくれないと、私達も散々相手をしてきた意味が無いからね!………行ってきていいよね、都ちゃん!」
「そうですね。でも、やるからには………完膚なきまでに蹴散らしてください。」
「ありがとう、じゃ………片付けてくるよ!」
親指を立てて後退する2人に笑みを送った凛は、ビーム・サーベルを抜き放ち構える。
しかし、ジンのパイロット達は、その動きを見て、逆に興味深そうに7号機を見た。
「ほう………中々、威勢のいいお嬢ちゃんじゃないか。」
最初に聞こえたのは、豪胆そうな男の声。
「うふふ、私達が相手じゃ無ければ、上手くいったのかもしれないのにね。」
次に聞こえたのは、強気で微笑む女の声。
「我ら、「ジンの花見隊」と出くわしたのが運の尽き。」
最後に聞こえたのは、寡黙そうな男の声。
その珍妙なチーム名を聞き、凛は怪訝な顔をしてマイクで返す。
「何?それ………トリオで動いてるの?」
「まあ、そんなところだ。これでも前線を任されるだけに相応しい成果は、出しているつもりだぜ?」
「次元の歪みとやらで、モビルスーツの相手もしたけれど、どれも骨の無い奴だったしね。」
「楽しませてくれとは言わん。恨むなとも言わん。只………散れ。」
ここまで強気で語れるなんて、何者だろうと思った凛は、一応名前を聞いてみる。
意外にも、3人とも簡単に名乗ってくれた。
「俺の名前はシンベエ!」
「うふふ、私はキリ・マールよ。」
「我が名は………ランタ・ロウだ。」
凛は、正直何故か威圧感が無い名前だなぁ………と心の中で思いながらも、表面上は笑顔を浮かべる。
そして、ビーム・サーベルを上に突き上げて宣言する。
「そう、それじゃあ………コイツの恐ろしさ、存分に味わいなよ!!」
初めて、シンデレラガールズ陣営にお目見えになった、ガンダム。
凛はバルバトスを止める為に、その力をジンの花見隊に見せつける事に。
gジェネワールドでは、フルアーマーガンダム7号機が使えなかったので、小説でリメイクする際は、迷わず登場させようと決めていました。
お陰で戦闘能力がかなり上がり、渋谷凛さんの愛機として相応しい力を持ってくれます。
………いや、動画で使った時は、どうしても兵装のパワー不足が否めなかったので。
一方で、そんな凛さんを1人で送らせるのもおかしいと思ったので、護衛で付けたのが、今回登場した安斎都さんと並木芽衣子さん。
都さんの年齢が+10歳なのは、スシローイベントでの大人都さんの姿をイメージしたからです。
2人の乗って来た機体も、かなり独特なモビルスーツとなっています。
最後に登場したジンの花見隊。
何であの名前かと言うと、ほら………隊長のラウ・ル・クルーゼの声の妖精さんが、ちくわの苦手な先生だからです………。