モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第17話 PHASE2-6『黒白の騎士』

ジェネレーション・ブレイクを起こしたシンデレラガールズとアークエンジェルの前に現れたのは、更なるザフトの増援。

その中には、謎の人物が駆るシグーアサルトもいた。

 

前後から挟み撃ちをする形で襲撃してきたザフトの第二波に慌ただしくなる戦場であったが、そこに「ヘリオポリス」の残骸から、ガンダムアストレイ レッドフレームが登場。

操っているのは、渋谷凛と島村卯月、本田未央が幼い頃に関わりの強かったロウ・ギュールと、サポートの疑似人格コンピュータ8であった。

 

再会に驚き避難を呼びかける凛達を他所に、ジャンク屋の戦いを見せると言ったロウは、8のサポートを受けながらレッドフレームを動かしてしまう。

その後も凛と安斎都、並木芽衣子の援護を受けてアークエンジェル後方のザフトを蹴散らす事に成功する。

しかし、前方では、藤原肇のヅダが、その謎の人物………黒白の騎士と呼ばれている女性のシグーアサルトと高機動戦闘を繰り広げていた。

 

謎の人物は一体、誰なのか?

そして、応戦する肇はどうなるのか?

 

 

 

(速い………!)

 

肇はヅダのザク・マシンガンを放ちながら、ペダルを踏みこみ、バーニアを全開にしてシグーアサルトを追いかけながら、舌を巻いていた。

五感を敏感に研ぎ澄まして相手の動きに気を配るだけでなく、宙域に発生した残骸などのデブリに、ぶつからないように気を付けなければならない。

特にヅダは脆い為、こういう激突事故が致命傷にもなり兼ねなかった。

 

(でも、相手は卯月さんの射撃を躱しながら、上手く立ち回っている………!)

 

卯月がジムⅢ・ディフェンサーのロング・ライフルで支援を行ってくれているのは、肇にも分かっていた。

それでも落ち着いて対処が出来ているのは、肇のヅダに付かず離れずの距離を保ち、砲撃が当たらないように気を配っているから。

卯月は肇を巻き込まないようにしているので、ヅダにさえ密着すれば、ほぼ当たる心配が無いのだ。

 

「貴方、何者なの?その機体も含めて………。」

「!?………女性の方ですか。」

 

それは、シグーアサルトのパイロットの方も同様であったらしく、声が聞こえて来た。

肇が驚いたのは、その声が20歳くらいの女性のものだったから。

 

「若いわね………。何があれば、貴女はそこまでの実力を持てるのか………。」

 

肇がマイクで声を返した事で、更に声が聞こえてくる。

相手もやはり16歳でモビルスーツを乗りこなす肇に密かに驚いていたのだろう。

少しだけ過去を刺激された肇は、唇を噛み締めて敵パイロットに左腕のシールド・ピックを突きつけようとする。

だが、相手の女性は右前腕部のシールドで受け止めると、左前腕部のシールドをヅダに向け、「28mmバルカンシステム内装防盾」の機関砲を放って来た。

 

「手強い………ですね!」

 

すかさず肇は少しだけ距離を取ると、「ザク・バズーカ」で応戦。

しかし、元々射撃が下手なうえに、間が悪く間に残骸が間に入ったので、遮蔽物になってしまう。

それを見た敵パイロットは、すかさず破壊された「ヘリオポリス」の中へと飛び込んで行った。

 

「一度身を隠して、母艦を強襲するつもりですか!………すみません、艦長!追いかけます!」

「肇!?」

 

思わず高垣楓が叫ぶが、肇の言っている通り、シグーアサルトのパイロットの狙いはそこにあった。

ここで見失えば、隠れて「キャットゥス500mm無反動砲」でキャリー・ベースやアークエンジェルを狙い撃ちする事が出来る。

その為、肇は周りの制止を聞かずにコロニー内部へと飛び込んで行く。

他の仲間達は、あまりの速さと残骸が密集したコロニー内部の様子を前に、下手に追いかけられなかった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

先行するシグーアサルトのパイロットは、器用に障害物を避けながら、「ヘリオポリス」内の通路を駆け巡り、中心部へと向かって行く。

肇も同様に追跡するが、射撃が下手な分、分が悪かった。

それでも、しっかりと追いかけてくる事に、シグーアサルトのパイロットは驚いている様子である。

故に、彼女は敬意を表した。

 

「貴女………実は、かなりの実力者ね。名前は?」

「………藤原肇です。」

「そう。今だけの間柄だけれど、挨拶をしておくわ。私は黒川千秋(くろかわちあき)。クルーゼ隊のパイロットよ。」

 

肇のヅダのモニターに、緑のザフトのパイロットスーツの女性が映し出される。

ざっと見た所、背丈は女性としては高そうだし、スタイルもそれなりには良さそうであった。

それ以上に目立つのは、ヘルメット越しにでも分かる、自信のある常に高みを目指すような表情と長い黒髪。

恐らく実力に見合うだけの努力も欠かしていないのだろうと、肇は推測した。

故に、肇はこう言った。

 

「高みを目指す姿勢を持ちながら………「堕ちた」ものですね。」

「あら、精神攻撃?意外と何でもやるのね。」

 

シグーアサルトのパイロット………千秋は、呆れた表情を見せる。

だが、肇は冷たい目を見せながら、再びザク・マシンガンを構えた。

射撃は相変わらず下手ではあったが、それでも流れ弾が当たらないように千秋は「76mm重突撃機銃」を構えて応戦する。

千秋の射撃は正確である為、肇よりも数段精度は高かった。

しかし、それ故に回避もしやすいというメリットがある。

 

「だったら………!」

 

千秋は偶然近くを通りかかった、まだ電気設備が機能してそうな制御室を重突撃機銃で狙った。

彼女の思惑通り、爆発物に触れたらしく、炎が巻き起こって一時的にヅダの進行ルートが遮断される。

その隙に、彼女は「へリオポリス」の中心部………居住スペースへと機体を加速させた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

居住スペースは、崩壊したヘリオポリスの残骸が当たり中に浮かび、酷い事になっていた。

建物は軒並み崩壊し、そうでなくてもボロボロに半壊している状態。

見るも無残な様子であったが、ザフトで戦う千秋は感傷に浸る事は無かった。

 

「早く脱出して、あの母艦を沈めないと………。」

 

幸い、コロニーでの戦闘の後故か、あちこちに穴が開いていたので、そこから出向く事は出来そうである。

しかし、アークエンジェル等の母艦をうまく強襲する為の、最適ルートを割り出さないといけなかった。

 

「何処から出ようかしら………。」

 

そう警戒しながら、コンソールを弄り出した時であった。

目の前のモニターに何かが付着した。

当然ながら、邪魔であるのでマニュピレーターを使い、追い払おうとする。

だが………。

 

「え……………?」

 

ここで、千秋は固まった。

その付着した物は、亡骸であった。

只の亡骸ならば、まだ良い。

しかし、それは軍人の物でも無く、大人の物でも無く………子供であった物だった。

 

「嘘……………。」

 

恐らく、ザフトがコロニーを襲撃した際に、攻撃に巻き込まれたのだろう。

その亡骸の茫然とした表情を見た途端………千秋は、初めて動揺した。

 

「これだけの破壊と殺戮を行って置きながら………民間人は誰も巻き込まないでいると、貴女は思い込んでいたのですか?」

「ッ!?」

 

そこに追従してきた肇のヅダが、居住スペースへと追いかけて来た。

声音は更に低くなっており、冷徹で憎悪にも似た怒りが含まれている。

シグーアサルトは、マニュピレーターで子供の亡骸を大事そうに抱えていた為、隙だらけであったが、彼女は狙おうとはしなかった。

その代わり、モニターに自信の顔を映すと、ヘルメットを取った。

 

「何があれば、そこまでの実力を持てるのか?………そう貴女は聞きましたね。」

 

肇は、それこそ高槻やよい辺りが見たら間違いなく怖がりそうな冷酷な目を、この場では隠さない。

只、静かに頭に巻いている手ぬぐいを取ると、自分の頭を見せた。

 

「その傷は………!?」

 

千秋は驚愕する。

肇の左側頭部には、大きな傷跡があった。

明らかに過去に大怪我を負ったのが分かる跡。

肇は、仲間にもあまり見せないその姿を晒し、静かに呟いた。

 

「私もまた、貴女のような人達に………「住んでいたコロニー」を滅茶苦茶にされました。老若男女問わず、全ての人達が被害にあい、地獄絵図が繰り広げられたんです。」

 

千秋は、肇の言霊の力に威圧されていた。

クルーゼ隊を率いるラウ・ル・クルーゼは、「へリオポリス」が中立コロニーの体を捨ててGを作ったから、仕方なく襲撃しなければならない………と言っていた。

だが、民間人の被害を繰り出していては、過去に核ミサイルでコロニーの破壊を行った地球連合軍と変わらない。

その為、民間人に被害を出さないように、念入りに計画を練って作戦に赴いたはずなのだ。

しかし、実際はこの子供のように………。

 

「私は……………。」

「知らなかった………で済む話では無いですよ。無論、貴女自身が直接、破壊に関係していなかったとしても、無罪で済む話では無い。」

 

千秋の様子から、都合の良い事だけを吹き込まれていたのだろうと感じた肇は、僅かながら哀れみの感情を露わにする。

改めて周囲を見渡すと、そこには様々な人々の亡骸が少なからず存在した。

 

彼等は皆、どんな感情でこの襲撃の被害にあったのか。

恐怖か?絶望か?………どちらにしろ、気分の良い最期では無かっただろう。

 

「私は………皆を守る為に戦っているわ………!ナチュラルの侵略から、コーディネイターを守る為に………!」

「ですが………人を殺す時点で、奪う為の戦いでもあります。その覚悟が無いのに、高みを目指せるのですか?」

 

肇はそう言うと、右手でヒート・ホークを抜き放った。

左腕のシールド・ピックも突き出す近接戦闘に特化した姿は、彼女が一番乗機であるヅダを活かせるスタイル。

千秋も子供の亡骸をそっと横に置くと、シグーアサルトの「重斬刀」を右手で抜き放つ。

だが、その動きは明らかに先程までと違いぎこちなく、明らかに千秋自身の集中力も下がっていた。

 

「戦ううえで、被害が出るのは当然よ………。でも、守る為には必要な行為!だから、私はこの剣を振るうわ!」

「その割には………まだ「本当の地獄」を知らないみたいですが。」

「知った口を利かないで………!」

 

何とか自分を奮い立たせる言葉を述べて慎重に構えを取る千秋であったが、頭の中では肇への疑問が尽きないでいた。

本当の地獄とは、何なのか?

一体何が、この少女に傷を付け、刺々しい氷のような感情を露わにさせているのか?

その漠然とした不安が、千秋の心に霞のように掛かり、思考を鈍らせてしまう。

 

 

そうしている間に、肇はペダルを踏みこんだ。

 

「………参ります。」

 

加速したヅダは敢えて正面から飛び込み、両手の武装を振るう。

千秋もまた、右手の重斬刀を振りかぶり、左手のシールドを叩きつけるが、思考が鈍っていた分、僅かながらに動きが遅かった。

第一撃は、お互いがぶつかり合う形になるが、即座に肇はヅダの右足を振り上げ、シグーアサルトのコックピットを思いっきり蹴り飛ばす。

 

「ぐあっ!?」

 

千秋は激しく揺さぶられたが、何とか意識を保つ。

だが、その間に熱されたヒート・ホークが右手の重斬刀に叩きつけられ、溶解させられた。

 

「しまっ………!?」

 

更にシールド・ピックが、シグーアサルトの左肘に突き刺さり、シールドも腕ごと片方持っていかれる。

 

ここまで来れば、勝敗は既に決したようなものであった。

 

「こ………の………っ!!」

 

千秋は身を翻すと、シグーアサルトを加速させ、一目散に「ヘリオポリス」から脱出していく。

歯ぎしりをして、悔しさを噛み締めながら、敵に背を向けて逃げた。

 

「私は………こんな事で………!」

 

思わずコンソールに、拳を叩きつけてしまう。

屈辱以外の何物でも無かったが、それ以上に子供の亡骸に動揺した自分が情けないと感じた。

だが………その姿が頭にこびりつき、ずっと離れ無かったのだ。

 

一方で、肇は追わなかった。

元々状況的に止むを得なかったとはいえ独断行動をしているし、何より今の表情をコロニーの外の仲間に安易に晒したく無かったのだ。

だから、ひと呼吸おいて目を閉じ、再び頭に手ぬぐいを巻いてヘルメットを被る。

 

「また、攻撃的になってしまうなんて………私も精進が足りませんね………。」

 

やがて、肇はもう一度深呼吸をすると、仲間との合流を目指した。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

肇と千秋が「ヘリオポリス」内で交戦している最中、コロニーの外では、仲間達が心配そうにしていた。

だが、ここでまたしても空間にヒビが入り………ジェネレーション・ブレイクが発生してしまう。

 

「今度は何!?」

 

島村卯月が思わず不安そうに叫ぶ中、アークエンジェルの遥か後方から青白い航跡が見えてくる。

しかし、近づいて来るに連れ、仲間達は目を丸くする。

 

「モビルアーマー………?大きい………!?」

 

喜多見柚が驚く中で、その赤い機体………「ヴァル・ヴァロ」がキャリー・ベースの方へと進路を変える。

そして、宙域全体にマイクで叫んだ。

 

「見つけたぞ、高槻やよい!ハルシュタイン閣下に忠誠を誓え!!」

『!?』

 

このヴァル・ヴァロは、シークレット・ユニット。

ケリィ・レズナーを模した、ケリィ・ニューロが、やよいを狙ってやって来たのだ。

 

 

藤原肇と対峙した黒川千秋というザフトのパイロット。

彼女との出会いは、今後何をもたらすのか?

そして、やよいを付け狙って来たケリィ・ニューロは、何を告げるのか?




前回のクイズの正解は、黒川千秋さんでした。
ザフトのクルーゼ隊に所属する高潔なパイロット………というのが、今のところの設定です。
しかし………このまま敵として対峙する道を取るのかは、今後の展開をお待ちください。

それにしても、設定が色々とあるとはいえ、デレステアイドル対デレステアイドルという戦いも、熱いものがあると感じますね。
ちなみに前回で語られていましたが、千秋さんの二つ名であるタイトルは、「黒白の騎士(こくはくのきし)」というルビとなっています。
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