モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第18話 PHASE2-7『人の業』

藤原肇のヅダと機動力を活かした一騎打ちを広げる事になったシグーアサルトのパイロット。

彼女は敬意を表し、自らを黒川千秋と名乗った。

そして、肇が若いのに、どうしてそこまでの力を得られたのか興味を持つ。

 

やがて、2人の戦いは崩壊した「ヘリオポリス」内へと移り変わり、千秋はアークエンジェル強襲の為に、ボロボロになった居住スペースまで進行する。

だが、そこで彼女は子供の亡骸だったものを見て驚愕。

 

追いかけて来た肇は、仲間に見せないような冷徹な目を向けて、自らの頭に付いた傷跡を千秋に見せる。

彼女は、過去に何者かによって住んでいたコロニーを滅茶苦茶にされ、地獄絵図を見せつけられたらしい。

 

肇が断片的に語った過去に動揺した千秋は、接近戦で勝負をするが、集中力が削がれた事も有り、敗北を喫して屈辱の敗走をする事に。

肇の方は、コロニーの外にいる仲間に今の冷たい自分の姿を見せたくないと感じ、呼吸を整え追走しなかった。

 

一方で2人が「へリオポリス」内で戦っている頃、ジェネレーション・ブレイクが発生して、高槻やよいを付け狙う、ケリィ・ニューロが操るヴァル・ヴァロが現れる。

 

やよいは、このニューロに対し、何を想うのか………。

 

 

 

「あの言葉遣いはまさか………!」

「ニューロです!あの機体は、バルバトスの刺客です!」

 

キャリー・ベースのブリッジにいるやよいに、アプロディアが説明する。

そうしている間にケリィ・ニューロは、ヴァル・ヴァロの機首先端の下部ブロックを展開させ、キャリー・ベースに「大型メガ粒子砲」を放つ。

 

「うわわ!?」

 

後方から飛んできたビームに対し、姫川友紀が慌てて母艦を操作して回避を行った事で直撃は免れるが、その威力は当たれば一発で艦艇を沈められる程に絶大であった。

直営隊を担っていたハイザック・カスタムを駆る高森藍子や、ティエレン宇宙型を駆る緒方智絵里も、冷や汗をかく。

尚も、ケリィ・ニューロは警告をした。

 

「世界統合の為に、ハルシュタイン閣下に従え、高槻やよい!お前たちのしている事は、世界の平和を乱す愚行だ!!」

 

「世界の平和を乱す………?すみません、マイク貸して下さい!」

「やよいちゃん!?」

 

その言葉を聞いた途端、やよいは思わず体が動き、綾瀬穂乃香のオペレーター席まで向かい、マイクを奪っていた。

穂乃香は思わず高垣楓を見るが、彼女はアイコンタクトで許可を出す。

 

「何を馬鹿なことを言ってるんですか!!世界の平和を乱しているのは、そっちじゃないですか!!みんなを洗脳して!!次元圧縮で世界を滅茶苦茶にして!!バルバトスは自分が支配する世界を作る為に、みんなを苦しめているだけじゃ無いですか!!」

 

思わず耳を塞ぎたくなるほどの大声で、やよいが怒りを爆発させて一気に語る。

しかし、ケリィ・ニューロはその言葉に対し、むしろ冷静に告げた。

 

「成程、既にそこまで知っているのか。理解が速くて助かる。だが………バルバトスが私利私欲に走っていると考えているのは、筋違いだな。」

「私利私欲じゃないですか!!自分が望む為の世界を作って!!」

「違う。」

 

冷静過ぎる言葉がやよいの神経を逆なでして、戦いに関する恐怖心を奪い、いつも以上に強気の言葉を引き出していった。

だが、ケリィ・ニューロはあくまで静かにやよいの言葉に反論していく。

 

「バルバトスに「私利私欲」という言葉は存在しない。ついでに言えば、「感情」という物を、アレは持っていない。只、アレは人が最も善なる存在として過ごせる為に最適解を行うシステムだ。それがアレの生み出された意味であり、使命であるのだから当然だな。」

 

機械的な用語を繰り返す、ニューロの言葉。

やよいは全てを理解出来ているわけでは無かったが、それでも言っている事がおかしいというのは、彼女自身の頭に浮かんでいた。

だからこそ、更に強気で言い返す。

 

「ふざけた事を言わないで下さい!!さっきも言いましたけれど、だったら、何で人を苦しめて………!」

「お前はバルバトスが居なければ、世界が平和だと本気で思っているのか?」

「………え?」

 

ここで、やよいの指摘が一瞬止まる。

ケリィ・ニューロは、尚もシステムの一部として告げた。

 

「お前は前提を取り違えている。バルバトスは次元圧縮を行っているが、戦乱を呼び込んでいるわけでは無い。疑問には思わないのか?何故、ジェネレーション・ブレイクで、血気盛んな「軍隊」ばかりが出てくるのかを。」

「それは………そんな人達ばかり呼ぶから!」

 

告げられた質問に、やよいは少し考え込むが、自分なりに浮かべた答えを述べる。

しかし、返答するケリィ・ニューロの言葉は、残酷な物だった。

 

「ならば、お前は人を幻視し過ぎだ。この世界は真珠細工のように真っ白では無い。至る所で争いという煤が広がり、世界をどす黒く染め上げている。」

 

やよいは見ていなかったが、「ヘリオポリス」内でも実際に犠牲になった者達の亡骸が何人も何十人も漂っていた。

軍人だけでなく、大人も子供も関係なしに。

少なくともこの襲撃に関しては、ジェネレーション・ブレイク………バルバトスは関係無い。

そういう意味では、ケリィ・ニューロの言葉は、否定しきれない物であった。

ここで、彼は圧を強める。

 

「人の堕落した思考が、同族を、国を、自然を、未来を黒く塗りつぶす!分かるか?人を苦しめているのは、他でもない人自身だ!強硬手段とはいえ、その人を統率し、堕落を抑制しようとするバルバトスを、お前のような世間知らずな娘が、批判できるとでも思っているのか!?」

 

最後はやよいの発言行為その物を批判された事で、彼女の強気の姿勢は鳴りを潜めてしまう。

確かに、彼女は世界の全てを知っているわけでは無い。

只、765プロの面々を取り戻したいからと言って、このシンデレラガールズに同行している立場なのだ。

ましてや、彼女自身は戦いに恐れをなしている身分。

少なくとも、戦場に関しては「世間知らず」である事を否定は出来なかった。

 

「私は……………。」

「………よくしゃべる口ダネ。結局は統率後に、全部デリートする気なのに。」

 

だが、そこに別の人物がマイクで言葉を発した。

やよいが顔を上げてモニターを見てみれば、喜多見柚が冷めた目で吐き捨てるように呟いていたのだ。

 

「お前も勘違いをしているな。バルバトスの使命は人類の消去では無い。繰り返すが、人類を善なる存在として過ごせるように………。」

「嘘つき!!そう言いながら、アタシ達の世界は、全部滅ぼしたじゃ無いか!!」

 

柚に対してもケリィ・ニューロはバルバトスの目的を告げるが、彼女は怯まなかった。

むしろ、声を張り上げ、それこそやよいが叫んでいた時のように声を大にして否定する。

オペレーター席にいる穂乃香や後ろで見守っていた桃井あずきが、辛そうな顔をするが、やよいは柚の目に、自己紹介の時に感じたバルバトスへの憎悪を垣間見た。

尚も、「滅ぼされた世界」に住んでいた柚の言葉は続く。

 

「アプロディアに接続していたアタシ達は、バルバトス自身の言葉を聞いたよ。「この世界は、存在する価値が無い」。その直後にアイツは、言葉通りに世界を一瞬で消し去ったんだ。そんなトチ狂った奴が、世界の管理者!?逆立ちしたって許せるわけないじゃんか!!」

 

遂に彼女は怒りを爆発させる。

モニターには、柚に穂乃香、あずきと同じく、滅ぼされた世界にいた工藤忍の苦しそうな顔も見て取れた。

やよいは柚の憎しみを抱いた顔に恐怖心を感じ取ったが、それ以上にアプロディアやバルバトスが管理していた世界がどんな所だったのか気になってしまう。

 

一方で、ケリィ・ニューロはシステム。

そんな柚の憤怒の声に対しても、只、冷静に、そして冷徹に答えるだけであった。

 

「その世界は既に手遅れだった。人は既に人としての業すら捨て去る身だったのだ。そんな奴等が次元にすら干渉できるシステムを作り上げてしまった時点で、即刻取り除かなければ、全ての世界が終わるのは明白だろう!」

 

考えてみれば、柚達の発展した世界の人々は、意図的にジェネレーション・ブレイクを起こし、様々な世界に干渉出来たのだ。

つまり、その気になれば、改めて全ての次元への侵攻が可能だったとも言える。

全ての罪を世界になすりつけて、安寧に暮らす人々を脅かす存在。

だから、ケリィ・ニューロは、バルバトスがその世界の人々が罪だと言い切ったと豪語した。

最後に彼は、柚を叱り飛ばすように宣告する。

 

「私情で世界を語るな、小娘!!その世界の人はもはや、存在自体が罪だったのだ!!」

 

しばらくの間、沈黙が流れる。

柚は歯ぎしりをしながら目を強く閉じ、言葉を反芻させているようであった。

一瞬やよいは、柚が気圧されたのかと思ったが………すぐに、それが間違いである事を知る。

 

「……………なよ。」

「ちょっと柚ちゃん!?」

 

忍が危険な兆候を感じ、慌てて止めようとするが、柚の耳には入っていなかった。

彼女は怒りに任せて拳を震わせると、絞り出すように声を発する。

 

「………訂正しなよ。全てを知った気になって、世界とか人とか偉そうに語って………。お前なんかが………、お前のような奴らが………!」

 

目を見開いた柚は、明らかに激高しており、バルバトスへの復讐心が覗いていた。

だが、やよいはそれ以上に、次の柚の言葉に衝撃を受ける。

 

「プロデューサーを………愚弄するなぁッ!!」

 

プロデューサーという、「アイドル」としての言葉に驚いたやよいを他所に、アークエンジェルの前にいた柚は、オクト・エイプを反転させて、その右翼に陣取るキャリー・ベースへと攻撃を再開しようとしていた、ヴァル・ヴァロへと向かって行く。

 

「柚ちゃん!?ダメだって!!」

 

小隊長である肇が「ヘリオポリス」内に向かって居ない中、独断行動は避けた方がいいと島村卯月が慌てて通信を入れるが、もう彼女には何も聞こえていない。

そのまま柚は「ビームライフル」連射しながら、大型モビルアーマーへと向かって行く。

しかし、そのビームを弾いたヴァル・ヴァロは、逆に近づいて来た柚に対し振り向くと、「フレキシブルクローアーム」を展開し、圧壊しようとする。

 

「愚か者共が!その機体を棺桶にしてくれる!!」

「そんな事で!!」

 

しかし、怒りに任せた柚の機体の挙動は恐ろしく攻撃的で鋭く、寸での所でアームを躱しながら背後に回り、バーニアを狙おうとする。

だが、ヴァル・ヴァロもまた、宙返りをする事で、背後を取られる事を防ごうとした。

 

「柚ちゃん!ヴァル・ヴァロは「耐ビームコーディング」があるから、ビーム兵器は効果が薄いです!………って、聞いてない!?」

 

明らかに頭に血が上っている柚には、穂乃香の言葉すら届かない。

とはいえ、巨体でありながら高速で動くヴァル・ヴァロに、ジャイアントバズーカなどの実弾が当たるとも思えなかった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「どうやって援護をしようか………。」

 

それは、キャリー・ベースやアークエンジェル後方の、比較的近い場所で陣取っているフルアーマー7号機の渋谷凛、ザクフリッパーの安斎都、ハイブースト・ジムの並木芽衣子も同様で、柚の支援方法に悩んでいた。

彼女を正気に戻し、尚且つヴァル・ヴァロに上手くダメージを当てる方法。

可能ならば、今回ばかりは柚にトドメを刺してやりたいという想いも、僅かにはあった。

 

「凛さん、背部長距離ビーム・キャノンは、まだ撃てますか?」

「後1発分くらいはエネルギーがあるけれど………ビームは効かないんじゃ………?」

 

提案をしたのは都。

凛は疑問を抱くが、彼女は構わないと言って彼女に発射を促す。

何となくだが、その意図をくみ取った凛は、敢えて柚の視界に入るように、ビーム・キャノンを撃ち、ヴァル・ヴァロの頭頂部を狙った。

 

「柚………目を覚ましてよ!!」

 

放たれたビームは凛の力量も有り、ヴァル・ヴァロの頭頂部とも言える部分に炸裂。

コーティングはされている為か、当たったビームの粒子が周りに派手に飛び散り、相変わらずビームライフルを連射していた柚が、驚き飛びのく形になる。

 

「うわっ!?」

「落ち着きましたね。頭頂部に「ビームサーベル」を突き刺してください!」

「そ………そういうことか!!」

 

すかさず都が通信を送った事で、正気を取り戻した柚は、その言葉の意味合いを悟る。

凛のビーム・キャノンを受けたヴァル・ヴァロの頭頂部は焦げ付いており、コーティングが剥がれていた。

そこに、柚は加速し上から近づくと、思いっきり、オクト・エイプの銃剣になっているビームサーベルを突き立てる。

 

「墜ちろッ!ニューロッ!!」

 

コーティングを貫いたその一撃がトドメとなり、ヴァル・ヴァロはスパークする。

しかし、最期にケリィ・ニューロは、やよいに対し宣告した。

 

「水瀬伊織からの情けだ。忠告はしたぞ。次からは、問答無用で抹消に掛かる。」

「え!?今なんて………!?」

 

やよいが目を見開く中で、ヴァル・ヴァロは爆散する。

 

 

柚の告げた「プロデューサー」という言葉の意味。

そして、ケリィ・ニューロが残した最期の言葉の意味。

様々な疑問が生じる中で、「ヘリオポリス」残骸での戦いはどうなるのか………?




765プロを奪われた怒りをぶつける、高槻やよい。
バルバトスの使命を淡々と告げる、ケリィ・ニューロ。
そして、世界を滅ぼされた者としてブチ切れた喜多見柚。

全員言っている事に正しい部分があるだけに、中々こうだと言いきれないのが辛いですね。
そんな中で柚さんの言った、「プロデューサー」という言葉の意味。
こうしたフラグは、色々と活かしていきたい所です。

さて………この戦いは、このまま終わるでしょうか?
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