スペース・コロニー「765」で、追手から高槻やよいと共に逃げていた水瀬伊織。
彼女は、港でGディフェンサーを見つけると、やよいを騙す形で説得して先に逃がし、自らは囮となって捕まる事になる。
一方、「サイド7」の近くでは、キャリー・ベースを母艦とする搭乗員達が、航行をしていた。
艦長である高垣楓を始めとした面々は、「サイド7」で発生した次元圧縮プログラムと呼ばれる謎の現象を前にして、戦闘態勢を整える事になる。
果たして、サイド7宙域で何が起こるのか………?
スペース・コロニーサイド7の港から、白を基調とした「地球連邦軍」の宇宙艦「ホワイトベース」が発艦していく。
その前方を慎重な動きで進んでいくのは、同じく白を基調としたトリコロールの機体「ガンダム」だ。
ホワイトベース内部では、連邦服を着た年の若い軍人達がおぼつかない手つきで必死に艦を操っていた。
「ゲートセンサー360度、オールラジャー。ホワイトベース、ドッキング・ベイを出ました。」
「よし、とりあえずは宇宙に出たな。」
操舵を担当するミライ・ヤシマの言葉に、艦長席に座るブライト・ノアはひとまず重苦しく息を吐く。
その後ろの椅子に腰掛けながら、痛々しく負傷をしている痕を見せるパオロ・カシアスは、唇を噛んでいた。
「情けない事だ。ガンダムを狙ったジオンの襲撃で、正規兵はほぼ壊滅状態。おまけに今、そのガンダムは………。」
パオロの言葉を示すかのように、モニターにガンダムから通信が届く。
しかし、そこに映し出されたのは正規兵では無い。
あどけなさが残る、ボサボサ髪の少年………アムロ・レイであった。
「こ、こちらガンダム。ホワイトベースの前に付きました。………このまま、進んでいけばいいんですよね?」
「それで頼む。」
緊張しているアムロに対し、ブライトは指示を出すと天井を見上げる。
その脳裏には、サイド7内での信じられない光景が思い浮かべられていた。
「………しかし、こんな子供がザクを倒すとは。」
ジオン軍の襲撃で正規兵を失う中、偶然ガンダムと出会ったアムロ。
彼はマニュアルを読んで起動させると、「ジオン公国軍」のモビルスーツである「ザクⅡ」を、2機撃破してしまったのだ。
明らかに子供が持っているとは思えない、とんでもない戦闘能力。
しかし、それが現実にあったのだ。
「これがガンダムの力なのかは分からないが、彼には苦労を掛けてしまっているな………。」
ブライトと同じく、パオロが申し訳なさを抱きながら呟いた時であった。
突如、警報が鳴り響く。
コンソールを弄っていたセイラ・マスがブライトの方を見て叫ぶ。
「接近する物体有り!モビルスーツと思われます!だけど、このスピードは………!?通常のザクの三倍の速度です!」
その言葉を聞いたパオロは目を見開き、大怪我をしているのに思わず立ち上がり、手をわなわなと震わせる。
「三倍!?シ………シャアだ………。あ………赤い彗星だ。」
「え………!?赤い彗星のシャア!?」
ブライトもまた立ち上がり、思わず頭を抱えるパオロを心配しながらも青ざめる。
赤い彗星のシャアと言えば、その卓越したモビルスーツ操縦技術で地球連邦の軍人からは誰もが恐れる存在であった。
そのシャアが狙いに来たというのだ。
「に………逃げろ………。奴は、危険だ………!」
パオロはブライト達に必死に伝えながらも、大量の脂汗を流し叫ぶ。
「奴は幼女に狂っているっ!!」
………一瞬、ホワイトベース内が静寂に包まれた。
何かの聞き間違えだろうか?………と誰もが思った。
だから、ブライトが敢えて代表してパオロに聞き直す。
「………えっと、幼女………ですか?」
「奴は、東西南北全ての幼女を愛でると宣言し、「幼女愛好会(略称)」なるものを結成している!ルウム戦役では、その愛好会を馬鹿にした命知らずな連邦高官の戦艦が狙われた!その数、五隻!奴は、幼女の為なら地球すら敵に回す危険人物だっ!!」
更にガクガクと震えながら、急に早口になって説明するパオロに、ブライトは思わず体の力が抜けて倒れそうになる。
ようやく理解が追い付いたセイラは、頭を押さえながらボソリと呟いた。
「………どこの馬鹿なのよ、その男は。」
ブライトもまた持ち直すと、前を見据えながら歯ぎしりをしてしまう。
「く………そんな男と鉢合わせするなんて、何の因果なんだ!?」
文句の1つや2つを言っている間にも、眼前にモビルスーツのバーニアが作り出す青白い航跡が見えてくる。
そこには、トレードマークの赤いカラーで彩られた派手な色のザクⅡ………「シャア専用ザクⅡ」が迫っていた。
彼はコックピット内で、こう不敵に叫ぶ。
「見せて貰おうか!連邦軍のモビルスーツの性能とやらを!」
遠目には、お供に緑色のザクⅡが2機遅れてやって来るのが分かった。
ガンダムでシャアに対峙する事になったアムロは、緊張と恐怖を隠しながらも、反骨心で叫ぶ。
「………そ、そんな馬鹿にホワイトベースをやられてたまるか!見てろよ、シャアめ!」
これが、後に伝説となるアムロとシャアのファーストコンタクトであった。
――――――――――――――――――――
「………さて、次元の歪みに突っ込みましたが、いきなり歴史的な瞬間に遭遇しましたね。」
サイド7宙域へと突入したキャリー・ベースは、ホワイトベースの左斜め後ろに付く形となった。
その位置で逆噴射をして停止して距離を保ちながら、楓は興味深そうに呟く。
一方で、オペレーター席に座る綾瀬穂乃香は、情報解析と機体照合をして分析結果を伝えた。
「照合確認。コロニー周辺に存在するのは、ガンダムとホワイトベースです。」
「じゃあ、あの赤いザクは、赤い彗星のシャア専用機………なんですか?」
「場所を考えれば、アムロとシャアの出会いに巻き込まれたと考えた方がいいでしょうね。」
出撃用の機体に乗り込んでいる白いパイロットスーツの栗原ネネの質問に、楓は冷静に答える。
「この2人のように」宇宙世紀に生きる者にとっては、アムロとシャア………地球連邦軍とジオン公国軍の初のモビルスーツ同士の戦いというのは、誰もが知っている知識だ。
少なくとも、彼等よりも「未来に生きる」者達にとっては常識ともなっている。
勿論、その実力も。
「随分と厄介な敵に出くわしたな。艦長、アタシたちはどうするんだ?」
別のパイロット………青を基調としたパイロットスーツの神谷奈緒の問いかけに、楓は少し考えて答えを出す。
それは意外な物だった。
「幸い敵の狙いはガンダムのようですし、私達は無関係を装うのが吉だと思います。」
「え?無関係って………それでいいの?」
思わずオレンジ主体のパイロットスーツに身を包んだ本田未央が訝しむが、楓は念を押すように頷く。
あまり良い言い方では無いが、シャアの興味はあくまでガンダム。
キャリー・ベースは眼中に無い為、ホワイトベースと共闘する立場を取らなければ、少なくともこの時点では、勝手に自体は「歴史通りに」進んでいくとも言えた。
「モビルスーツ隊は、待機。下手に双方を刺激しないように………。」
「いえ、待ってください。新たに1機レーダーに反応があります!」
しかし、「想定外」が発生したら話は別である。
千川ちひろの言葉を受け、クルーもパイロット達も、ホワイトベースの丁度右後ろから全速力で駆け抜けようとして………ザクⅡに気付いたのか、慌てて推進剤を吹かせてその場に止まったモビルアーマー………Gディフェンサーの存在に気付く。
「あれは、Gディフェンサー?何処の所属でしょうか?」
「1機だけっていうのも珍しいよね。近づかれたら、危ないのに。」
機体の知識を持っていた高森藍子が思わず呟き、話を聞いた工藤忍が考え込む。
モビルアーマーであるGディフェンサーは近接武装の威力に乏しく、忍の言う通り、近づかれたら補助的装備である「大型バルカン」か「ミニ・レーザー砲」で対応するしかない。
機体のパイロットも状況を理解していて慌てていたのか、いきなりマイクを使いオープンチャンネルで会話を始めた。
その声を聞き、その宙域に居た全員が驚く事になる。
「あの、もしもし!私、敵じゃ無いです!追われているんです!助けて下さい!」
何と、その声は10歳半ばにも満たない女の子………コロニー「765」から逃げ出してきた高槻やよいであったのだ。
そして、その瞬間、あろうことかジオン側が同じくマイクを使い、オープンチャンネルで喋り出す。
「少佐、幼女です!あの戦闘機、幼女がいます!!」
「何だと!?だとすれば、早速捕獲………もとい、保護しなければ!!」
幼女に反応したのか、シャアを含めたザク3機が、ガンダムそっちのけでGディフェンサーへと向かっていく。
その対応に恐怖を抱いたのか、やよいはガクガクと震え出した。
「はわっ!?な、何だか凄まじい悪寒が………!?」
捕まったら、ある意味何をされるか分からない。
それを悟った奈緒が、思わず叫ぶ。
「おいおい!?なんだか不味く無いか!?もしかしなくてもあの言葉、幼女マニアの発言だろ!?」
「も、もしも、捕らえられちゃったら………。」
「過去のトラウマ」を刺激されたのか、桃井あずきが青ざめる。
その手をしっかりと握って落ち着かせながら、高垣楓は鋭い目を向けた。
「………忌々しき事態ですね。作戦を変更しましょう。藤原隊は敵隊長機に突撃!彼をGディフェンサーに近づけないで下さい!」
「ええっ!?」
あまりの言葉に、思わずコックピット内で素っ頓狂な声を上げたのは、オレンジを基調とした黒いラインが入ったパイロットスーツを着て、赤い長い鉢巻きを巻いた少女、喜多見柚。
「いきなり作戦の難度が上がった!?アタシ達には荷が重すぎる相手なんだけれど!?」
柚の言う通り、シャアが持つモビルスーツの操縦技能は破格な物がある。
普通に戦おうとしても、全く勝ち目は無いだろう。
だが、その心情をくみ取ってか、楓が指を立てながら呟いた。
「勝ち目ならあります。ガンダムに乗っているのは、アムロさんのはずです。彼と協力すれば、シャアを退けることも出来るでしょう。その隙に高森隊は少女を救出してください。」
「艦長、結構無茶な要求するね。いきなりシャアザクとやり合うなんて………。」
それでも納得がいってないのか、柚が愚痴っている時であった。
オープンチャンネルで、またもジオン兵達とやよいのやり取りが聞こえて来た。
「少佐~♪保護する前に、ちょっと遊んでもいいですよね~♪」
「おい、お前!抜け駆けはずるいぞ!後で俺にも代われよ!」
「あわわわわわわわ………。」
彼等はいわゆる、「紳士」………即ち「ジオン紳士兵」という存在なのだろうか?
そんな言葉が楓を始めとしたキャリー・ベースの面々の脳裏に浮かぶ。
とにかく、このまま放っておくのは不味い事は確かであった。
隊長である藤原肇が、紳士兵に対して冷めた瞳を向けながら、柚に対し言葉を紡ぐ。
「………迷っている暇は無さそうですよ、柚さん。」
「………みたいダネ。腹括って、握り拳に力を入れますか。」
覚悟完了………と言った所で、赤を基調としたパイロットスーツの島村卯月が叫んだ。
「艦長!指示を!!」
「モビルスーツ隊、全機発艦してください!」
楓の指示を受け、カタパルトデッキにそれぞれの機体が移動していく。
ハッチが開き、先頭の機体に乗る肇の目の前に宇宙が広がる。
「柚さん、卯月さん、付いてきてください。藤原肇、ヅダ!出撃します!」
飛び出したのは、青いモノアイの幻の機体「ヅダ」の一番機。
ジオン公国軍の試作モビルスーツであり、ツィマッド社の高機動機だ。
「了解!喜多見柚、オクト・エイプ、発進ヨロシク!」
続いて柚が駆るオレンジ色の高機動型の「オクト・エイプ」。
宇宙革命軍と呼ばれる組織が開発した空戦も可能なモビルスーツである。
「続きます!島村卯月、ジムⅢ!行きます!」
更に、赤と白のカラーが印象的なメインカメラがゴーグル状の卯月機が出撃。
「ジムⅢ」と呼ばれる機体は、バランスの良い性能を誇る量産機である。
この3機の藤原隊が、シャア専用ザクⅡへと突撃をしていった。
「智絵里、アタシの後ろから離れるなよ!神谷奈緒、リーオー!出るぞ!」
その後ろから一呼吸おいて出撃するのは、「リーオー」。
しし座の名を冠するアフター・コロニーと呼ばれる世界のモビルスーツだ。
「は、はい………!大丈夫………大丈夫………!緒方智絵里………ボール、宜しくお願いします!」
そのリーオーの影に隠れるように発艦した智絵里機は、モビルスーツでは無い。
地球連邦軍が開発した、「ボール」と呼ばれる戦闘ポッドである。
「高森隊、しんがりを努めます!高森藍子、ハイザック・カスタム、移出願います!」
そのボールをリーオーと共に前後から挟むような形に位置したのは、大型の狙撃銃のような物を持っている深緑の機体。
「隠れハイザック」の異名を持つ、「ハイザック」の狙撃仕様だ。
この高森隊の3機は、Gディフェンサーへと向かって行った。
「じゃあ、アタシ達も出ようか。………直営隊の工藤隊、これよりキャリー・ベースの護衛を行います。工藤忍、ジム・スナイパーII、ホワイト・ディンゴ仕様!GO!」
7機目に発進したのは、青と白のツートンカラーの「ジム・スナイパーⅡ」。
ハイザック・カスタムと同じく狙撃機で、「ホワイト・ディンゴ」というのは忍が「お世話になった」隊の事を指す。
「キャリー・ベースはちゃんと守るからね!………本田未央、パワード・ジム、出陣だよ!」
その後ろから、オレンジと白のツートンカラーの「パワード・ジム」が出撃する。
地球連邦軍のモビルスーツで、高機動型の装備をしているのが特徴だ。
「最後になりますね。未央ちゃんの言う通り、皆さんの家は守りますから!栗原ネネ、ジーライン スタンダードアーマー!行ってきます!」
最後に飛び出したのは、白と水色のカラーが印象的な「ジーライン スタンダードアーマー」。
増加装甲と推進剤が補強された機体で、安定したバランスを誇る機体となっている。
工藤隊と呼ばれた3機は前線には飛び出さず、キャリー・ベースのブリッジの近くに陣取り、母艦を守る役目を担う事に。
「全機、作戦開始!」
楓の号令で、これよりキャリー・ベースの作戦が始まる。
彼女達の未来を左右する、高槻やよいとの出会いと共に。
動画の方から小説に移った方は実感していると思いますが、キャリー・ベースの初期のモビルスーツ隊が3人増えています。
実は、工藤忍、本田未央、栗原ネネは動画の方では初期メンバーでは無かったんですよ。
一方で、クルーのメンバーも4人増えています。
綾瀬穂乃香、桃井あずき、成宮由愛、古賀小春ですね。
彼女達の7人の存在にも、勿論意味はありますし、これから少しずつ影響していきます。
担当アイドルが出ている方は、楽しみにして貰えると嬉しいです。