モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第22話 PHASE2-11『柚』

悠久の旅人。

連邦政府によって名付けられた二つ名を持つ並木芽衣子は確かに実力者であったが、実際にはプロパガンダによる膨張による部分も大きかった。

しかも、その二つ名持ちである故に退役も出来ず、ずっと軍に所属しているという。

 

一方で、一年戦争末期に学徒兵としてオッゴで出撃していたという安斎都は、「グローブ」の悲劇を繰り返さない為に、敢えて連邦で戦い続けているという。

 

ガンダムパイロットになった渋谷凛は、そんな苦労をしている2人だからこそ、自分を鍛えるのに協力してくれたのだと感謝をしていた。

高垣楓は、連邦やジオンの闇の部分に頭を悩ませながらも、765プロ脱走者である、高槻やよいには会ったのか?………と問う。

凛の話によると、やよいは喜多見柚の部屋へと向かったらしい。

 

柚の部屋には工藤忍と綾瀬穂乃香、桃井あずきも居て、やよいに対し、彼女達4人が元々アイドルであった事が語られた。

昔話が始まり、彼女達が住んでいた世界がジェネレーション・システムを開発し、平和が培われる楽園が築かれていた事が示される。

その反面、暴徒を鎮圧するためのモビルスーツなどが開発され、無秩序な争いを機械の手で封じられる側面もあった。

 

馴染めば不都合の無い世界で柚は、クリスマスの夜にプロデューサーと(ロマンの「ロ」の字も無く)出会い、アイドルの道に踏み込む事に。

何処かしら前途多難な様子であったが、柚は恋する乙女のようにはにかんで語っていく。

 

その理由とは一体………?

 

 

 

柚がアイドルの道に踏み込んでから、事務所では毎日大声が響いていたらしい。

………というのも、そのプロデューサー、柚を見定めたセンスはともかくとして、アイドルの育成や運営、管理に関しては、とことん素人であったらしく………。

 

「何!?ライブをキャンセルさせてくれ!?それはどういうことだ!?」

「オーディション失格だと!?」

「フェス全滅!?」

 

「うおおおおおおお!大変だああああ!!どうして駄目なんだあああああああ!?」

 

「ちょ、ちょっとプロデューサー!?一体、何を焦っているの!?」

 

当時の柚は、そのプロデューサーの暴走ぶりに、唖然とする事が多く、この日も驚愕していたらしい。

そのプロデューサーは、柚を見つけた途端、大慌てで叫んだ。

 

「おお、柚か!実は、お前のソロデビューに向けて、色々と手をまわしてみたんだが、如何せん評価が芳しく無いのだ!!」

「ソロデビュー!?ま、まさかと思うけれど、こないだの衣装を送ったんじゃないよね!?」

「む?そうだが、何か不味い所でもあったか?」

 

真顔で首を傾げるプロデューサーを見て、柚は頭に鐘を叩かれたかのような衝撃を受ける。

そして、思いっきりクラクラと頭を押さえると、思わずゲンナリする。

 

「あのね………、プロデューサー、芸人としてデビューするならまだしも、ソロボーカルをやるのにさ………。」

 

そして、この間の写真撮影で来た「着ぐるみ」のような衣装の写真をバシンと机に叩きつけて、思わず叫んでしまう。

 

「スノーマンの衣装で受け入れられるわけが無いでしょうが!?」

 

「な、なんだとおおおおお!?」

 

最大限のツッコミを披露する柚に、心の底から衝撃を受けるプロデューサー。

あまりのコントっぷりに、周りの同僚達からクスクスと笑い声と陰口が出ているが、このやり取りは何十回ぶりであったので、柚はもう気にしていない。

結局、肩を落として溜息を付くと、彼に面倒そうに言った。

 

「もうちょっと、センスに拘ろうよプロデューサー。これじゃあ、デビュー以前の問題ダヨ。」

「す、すまん………。」

 

素直に頭を下げる長身の男に、柚は冷めた目で見上げながら呟く。

 

「もうジェネレーション・システムにアクセスしてみたら?世界を統括するプログラムだし、人間の身体や内面のデータを司る「アプロディア」にアクセスすれば、最適なコーディネートを導き出してくれると思うよ。というか、他の部署や事務所は全部使ってるじゃん。」

「機械は好かん!!」

 

速攻で導き出された回答に、柚は転びそうになる。

思わず、彼女はまた叫んでしまった。

 

「そんなこと言っている場合!?」

「安心しろ、柚!そんな物が無くても、俺が責任を持って、お前をソロデビューさせてやる!まずは新たな衣装の確保だ!ガ〇ャピンの服が人気だって言うから、ちょっと調達してくるぞ!!」

「全然分かって無いじゃん、ちょっと~~~~~!?」

 

全然話を聞かずに走って事務所を出ていくプロデューサーに対し、柚は慌てて追いかけていく事しか出来なかった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「……………。」

「うん、情熱はあったんだ。只、空回りが凄かったというか何というか、プロデュースの才能、無かったんだよね。」

 

柚は相変わらず笑顔を浮かべていたが、やよいは滅茶苦茶な事をして振り回しているだけの男に、何でそこまで良い感情を向けられるのか気になった。

とりあえず、ここで疑問に思った事を口に出す。

 

「え、えっと………アプロディアさんにアクセスすると、最適なコーディネートが出来るって言ってましたよね?これって、どういうことなんですか?」

 

ここも柚はしっかりと説明をしてくれる。

ジェネレーション・システムは、元々は複数のプログラムによって構成されていたのだと。

根幹は勿論、人を最善なる存在として導くのが役目だけれど、担当する分野がそれぞれ違っていた。

アプロディアは元々、人の身体や能力、思考に関わるデータを管轄していたから、彼女にアクセスをすれば、大体の最適解を導き出してくれたのだ。

 

「簡単に言えば、貴方の適性に一番合った選択肢はこれですよって、表示してくれたわけ。」

 

柚が後から知った話によれば、アプロディアはその特性故に、治安維持活動も管轄していたらしい。

ところが、アクセス過多で負荷が掛かり過ぎていたから、治安維持専属のシステムとして、バルバトスが生み出されたというのだ。

 

「あ、だからアプロディアさんは、「お姉さん」だって言ったんですね。ポイント・ゼロが探せるのも、そういう意味だったんだ………。」

 

キャリー・ベースに保護された時の、自己紹介の言葉を思い出し、やよいは納得する。

一方で、バルバトス………という言葉を出した事で、若干ながら柚の顔が曇るが、被りを振って話を戻す。

 

そういう理由があったからこそ、機械に頼めば何でも答えが出るのが、柚達の居た世界。

しかし、どういうわけか柚のプロデューサーは、そんな機械には一切頼らず、しかも失敗ばかりして笑い者になっていた。

 

「正直苛立ったよ。失敗する度に、自分には才能が無いのかって、落ち込みもした。あまり美少女って感じでも無いし、人気が出るとも思えなかったからね。」

 

そうだろうか?………と、やよいは思った。

彼女にしてみたらプロデューサーの事を語る柚は、十分美少女であり、魅力的に映っていた。

とにかく、そんな柚は自信を喪失したらしく、ある日、思い切ってプロデューサーに聞いてみたらしい。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ねえ、プロデューサー………。正直に言ってよ。アタシって、アイドルに向いてない?」

「いきなり何を言っているのだ、柚!?今、成果が出ていないからって、諦めては………!!」

 

その言葉にプロデューサーは思わず叱咤激励をする。

だが、疑心暗鬼に陥っていた柚は、机を叩き、苛立ちを露わにする。

 

「誤魔化さないでよ!!………プロデューサー、全然ジェネレーション・システムにアクセスしてないじゃん。それってさ、システムに否定されたのを、ずっとアタシに隠しているだけなんじゃないの?」

 

柚の諦めたような目に、プロデューサーは何も言えない。

彼女はそれが図星だと考え、寂しげに告げた。

 

「だったら、もういいよ。どうせ叶いっこない事に拘る位なら、止めて新しい事を始めた方が………。」

「柚!!」

「うわあ!?いきなり何するの!!?」

 

柚が驚愕するのも、無理はない。

プロデューサーは、いきなり彼女に抱き着いて来たからだ。

だが、彼は冷静に柚に聞いた。

 

「お前の目には、今、何が写っている?」

「え?そりゃ、プロデューサーだけれど………。」

 

顔を真っ赤にした彼女の言葉に、プロデューサーは真剣な顔をする。

そして、静かに諭すように言った。

 

「そうだ。お前の目の前にいるのは、俺だ。ジェネレーション・システムじゃない。」

「……………。」

「確かにシステムに頼れば、最適解を出してくれるだろう。お前が困った時にかけるべき言葉、必要な道具、目指すべき方向性、全ての答えが載っている。それに基づき、お前に伝えるだけならば簡単だ。多分、今の数倍はスムーズに、事を運ぶことができるだろう。」

 

プロデューサーの温もりに熱くなるものを感じながら、柚は彼に問う。

 

「………それじゃあ、ダメなの?」

「……………そうなったら、お前をプロデュースしているのは、ジェネレーション・システムになる。」

「え?」

 

柚は胸が高まるのを感じながら、プロデューサーと目線を合わせる。

彼は至近距離で柚を見つめると、本音を告げた。

 

「正直、これは俺の身勝手なエゴかもしれん。だが、あのクリスマスの日、俺はお前を「俺自身」の手で、プロデュースしたいと感じた。お前はアイドルになれると。皆の中で輝けると。俺自身の手で、導いてやりたいと。」

「プロデューサー………。」

 

そこまで熱い想いを持っていたからこそ、ジェネレーション・システムに頼る道を選ばなかった。

確かにエゴだと言えばそれまでだが、自身の手で道を作りたいと思っている姿は、「シンデレラ」を導く「魔法使い」として、相応しい姿であったのだ。

しかし、彼は同時に少し目を逸らし、弱音も吐く。

 

「だが、同時に怖くもなったのだ。お前自身が才能を持っているというのに、その道を機械如きに縛らせてもいいのかと。他の部署や事務所のアイドルを見ていると思うのだ。人々を笑顔にし、生き生きと輝くはずのアイドルが、まるで機械の一部のように………、ジェネレーション・システムの手の上で延々と踊り続ける、操り人形に見えてならなかった。」

 

ジェネレーション・システムは全てにおいて最適解を出す。

その道に乗って活躍するのは、楽な道であるだろう。

だが、そこに「人」としての自由が存在していないように、プロデューサーは思っていたのだ。

最後に彼は柚をもう一度見つめると、言葉を紡ぐ。

 

「それはそれで、1つの幸せなのかもしれない。だが………俺はお前に、そうなってほしく無かった。操り人形でなく、本当の意味で笑顔を与えられるアイドルになって欲しかったのだ。」

「……………。」

 

トクン………と柚の心の中で、何かが波打ったのを感じた。

今までジェネレーション・システムに従えば、それで良いと思っていた思考に、何か穴が開いた感じがしたのだ。

そして、それ以上にこの目の前の男に対し、彼女は………。

ところが、プロデューサーはここで柚の肩を叩いて離れると、寂しげな笑みを浮かべる。

 

「悪かった。俺がお前自身を縛っていては、結局は同じだな。社長に頼んで、担当を変えて貰うようにお願いする。………本当にすまなかった。」

「あ、待って!!」

 

離れていくプロデューサーの姿を見て、柚は思わず手を伸ばし、その腕を取る。

何事かと思った彼に対し、彼女は赤面したまま、決意を述べた。

 

「その………、もうちょっとだけなら………。」

 

彼女はまだ、自身のアイドル活動を続けようと決めたのだ。

この、どうしようもないプロデューサーと共に。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

柚はやよいに説明をする。

顔はまた少し赤くなっていたが、やよいはもう、その理由を疑わなかった。

柚は自身のプロデューサーの事を………。

 

「プロデューサーはね、馬鹿で、猪突猛進で、センスが無くて、どうしようもない人だったけれど、アタシの事を心から想ってくれる人だったんだ………。」

 

柚は指を1本1本曲げるようにしながら、昔を思い出していく。

彼女の道は、相変わらず悪戦苦闘で陰口を叩かれるような物であった。

勿論、プロデューサーとも時に喧嘩して、時に落ち込んで、いっぱい笑ったり泣いたりした。

アイドルとしての道は、相変わらずダメダメであったけれど、退屈はしなかったらしい。

 

「プロデューサーが傍に居て、常に一緒に悩んでくれるって分かったから、辛く無くなったんだ。」

 

そう答える柚にとってみれば、周りの世界が変わったと言っても過言では無かったのだ。

プロデューサーは、それだけ新しい世界を見せてくれた。

 

「あの人といると、アタシもシステムに頼らなくてもやっていける自信が芽生えた。根拠の無い自信だったけれど、何処か不安は無かった。この人といる限り、アタシは大丈夫。そう、心の底から思えたんダヨ。」

「好きだったんですね、プロデューサーさんの事………。」

 

嬉しそうに微笑む柚を見て、やよいもまた穏やかな笑みを見せる。

柚は、その言葉を否定しなかった。

 

「うん、いつの間にか好きになっていた。正直に言うとね、このままでもいいって、本気で思っていたんだ。アイドルとしては失格だけれど、ずっとプロデューサーと今の生活を送れるならば、一生売れないアイドルで居続けても構わない。身勝手だけれど、それ程、アタシの中でプロデューサーの存在は、大きくなっていた。」

 

ここで、柚はずっと温かな笑みを浮かべ、見守ってくれていた忍、穂乃香、あずきを見る。

やよいに説明をするには、彼女達もまた、プロデューサーが才能を見出したアイドル達であったのだと。

 

「忍チャンも穂乃香チャンもあずきチャンも、大切な仲間。アタシ達は「フリルドスクエア」というユニットを結成する為に、敢えてジェネレーション・システムに反逆したんだ!」

「反逆って………3人も何か縛られていたんですか?」

「私は元々バレエで天才的な才能を持っていると評され、その道を行く事を強要されました。でも………自分の才能に限界を感じ、表現力を広げる為に、アイドルの道を選んだんです。」

 

最初に答えたのは穂乃香。

彼女は軽く立つと、見事なI字バランスを披露してみせる。

 

「あずきは呉服屋の看板娘がいいって、ジェネレーション・システムに言われていたけれど、アイドルの道を進む事にしたんだ。両親を説得するのに、プロデューサーさんは土下座してたっけ。」

 

次に、あずきがやよいに告げた。

アイドル時代の事を振り返る彼女は明るく、むしろこちらの方が普段の彼女なのだと、やよいは感じた。

 

「アタシに至っては、憧れのアイドル適性ゼロって、ハッキリ言われたんだよ!だから、努力を繰り返して見返してやるつもりで、プロデューサーさんと一緒にトレーニングしてたんだ!」

 

適性ゼロというのは、何とも残酷過ぎるのでは?………とやよいは思ったが、それでも努力を繰り返す姿というのは、シミュレーターで柚に勝つまで30回も挑んでいる姿からも、想定が出来た。

色んな道があるけれど、ジェネレーション・システムでなくプロデューサーに「救われた」存在である4人。

嬉しそうに語ってはいたが………その表情に陰りが見えた。

 

「でもね………いつまでも、そんな都合のいい願いは叶わない。「その日」は来てしまったから………。」

 

椅子に座る柚の拳が震え………いつの間にか、ポケットからその手に取り出した赤い鉢巻きが、強く握られていた。

 

 

昔話の終着点。

そこで、柚達は何を経験したのか………?




たまには、アイドルの名前を冠したタイトルと言うのも面白いかなぁと思い、動画でも採用したのが、今回のタイトルになります。
実際、喜多見柚さんの根幹に関わる話になりますので、かなり重要な話になるとは思いますね。
珍しくシリアス全開で紡いでいる話ですが、たまにはこういう展開もあるので、宜しくお願いします。

ちなみに、動画のコメントでは、デスティニープランの終着点という言葉もありました。
だとしたら、もしも今後、デュランダル議長と相対する事になったら………。
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