モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第24話 PHASE2-13『最初の一歩』

ある日、システム・アプロディアに接続しないといけない仕事の為に、中枢部に赴いた喜多見柚・工藤忍・綾瀬穂乃香・桃井あずき、そしてプロデューサーの5人。

この仕事が終わったら、みんなで海に行こうと紆余曲折の末に約束。

プロデューサーは部屋に入る前に柚にお守り代わりとして自身の赤い鉢巻きを渡した。

 

しかし、そのスキャンを行おうとしてシステム・アプロディアに接続したフリルドスクエアの4人は、アプロディアとバルバトスの口論を聞いてしまう。

 

「この世界は存在する価値が無い。」

 

そのバルバトスの言葉と共に世界が消失していく中、最後に柚が見たのは自身の為に手を伸ばすプロデューサーがデリートされる所であった。

 

アプロディアによって、別次元に跳躍した4人は離れ離れになるものの、こうしてまたシンデレラガールズに集う事が出来て、プロデューサーの想いを背負ってそれぞれが戦っている。

高槻やよいも同じく大切な人達の想いを受けて、この場にいる………そう柚に言われた事で、彼女は自分がこの先、水瀬伊織を始めとした仲間を取り戻す為に、踏み出さなければならない覚悟を見定める事に。

 

しかし、彼女が部屋を去った後で、アプロディアがフリルドスクエアの4人に問う。

消失した世界の出身者が、世界を元に戻したらどうなるかを誰にも話していないと。

柚は、仲間達は自分達の世界の落とし前を付けてくれているし、やよいは仲間達の事を第一に考えられる優しい少女だからと言って、バレるまでは黙っている選択肢を取る。

 

まだ、大切な人を取り戻せる、やよいの覚悟。

もう、大切な人を取り戻せない、柚の覚悟。

それぞれの歩む道は、どう転がるのか………。

 

 

 

「まさか………また土下座をされるとは思いませんでしたね。」

 

高垣楓は、ブリッジの艦長席に座り、顎に手を付き嘆息していた。

柚の部屋を去ったやよいは、その足でブリッジへと向かい、楓に頭を下げたのだ。

その要求は、シミュレーターの使用許可。

 

「良かったのですか?力を付けるという事は、今度こそやよいさんに人殺しをさせるかもしれませんよ?」

 

前の副長席に座っている千川ちひろが振り向き、楓に問う。

楓は少し悩んだうえで、ちひろに告げた。

 

「正直、私も迷いました。ですが………最初に勢いだけで戦うと言って来た時とは、目力が違いました。」

 

土下座をして楓を見上げたやよいの目は、力強い光が宿っていた。

そして、彼女は明確な意志を持って告げたのだ。

本当に765プロの皆を取り戻す為に………それこそ伊織を始めとした皆が、自分を想ってくれたように、自分も彼女達の事を心の底から救いたいのだと。

 

「れっきとした理由を持ったのならば、止められません。あの瞳を見る限り、止めても無理やりやろうとしたでしょう。」

 

それだけ、柚達の話は重く響いたのだと楓は悟った。

守る為に、救う為に、覚悟を決めて力を付けたいと願って、踏み出す勇気を得たのならば、それは後押ししなければならない。

例え、その先にあるのが、血塗られた道だったとしても。

 

「彼女がどういう道を辿るのかは、彼女次第。私達は、見守りましょう。」

 

楓はそう言うと、ちひろに対し穏やかに微笑む。

765プロからやよいを預かる艦長として、1つ大きな決断を彼女はしたのだ。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「アレ?やよいちゃん、シミュレーター使う事にしたの?」

 

そのフリルドスクエアの中で、やよいの心身の変化に最初に気付いたのは、忍であった。

彼女はシミュレーターで栗原ネネに相手をして貰っているやよいの姿に、驚いている様子だ。

だが、丁度対戦を終えたやよいは、忍にこれまで見せた事の無いような、力強い笑顔を見せて立ち上がり、忍に挨拶をする。

そのお辞儀は、絶好調の証であるガルウイングの形をしていた。

 

「私、決めたんです。人を傷つけたり………命を奪ったりする事は怖いですけれど、でも、その行為を拒絶していたら、助けたい人達も助けられない。私は、伊織ちゃん達、765プロみんなの想いで、ここに居られているんですから、絶対に救うんです!」

「……………。」

 

太陽のようにすら眩しく感じたやよいの姿に、忍は思わず無言になる。

恐らく、やよいは柚の語った昔話に、共感してくれたのだろう。

強い想いを背負っているからこそ、応える為に戦う姿勢を見せる。

やよいは、その覚悟を持ったのだ。

 

「………そっか。やよいちゃんは、踏み出そうと決めたんだね。でも、忘れないで。怖いと思ったら、アタシ達がちゃんと守るからさ。」

「ありがとうございます!でも、いつでも戦えるように、力は持っておきたいですから。………だけど、やっぱりまだ、勝つことも出来ないんですよね。ネネさん、強いですし………。」

「こう言ったら何ですけれど………私はこのシンデレラガールズの中では、あまり強くない方ですよ?食事も担当しているから、訓練の時間も少ないですし。」

 

まだ、地球連邦軍の基本的なモビルスーツである「ジム」を操るのも精いっぱいで、同じ機体で戦ってくれているネネに全敗してしまっていると、やよいは言う。

忍は、それならば………と、腕まくりをすると、シミュレーター席に向かった。

 

「ここからはアタシが相手してあげるよ。シミュレーターは何度もやっているから、気が済むまでとことん付き合ってあげる!………あ、でも流石に食事時間とかになったら、食べに行かなきゃダメだよ?腹ペコだと集中力を妨げてしまうからね。」

 

忍はそう言うと、ネネと変わって席に座る。

その際にやよいの適性などはどんな感じだったかも話す事で、似合いそうな機体を見定めていこうとした。

 

「じゃあ………宜しくお願いします!」

「手加減はしないよ!………というか、アタシそこまで器用じゃ無いし!」

 

決めたからには、やよいを鍛え上げようと躍起になる忍。

 

嘗て、忍自身が跳躍先のオーストラリアの地で無力感から泣き叫んでいた時は、次元圧縮で別次元の砂漠から飛ばされたという、とある少女に慰めて貰った。

更にその後、地球連邦軍のマスター・P・レイヤーを始めとしたホワイト・ディンゴ隊と呼ばれる隊長格の人物に拾われ、鍛えて貰ったのだ。

忍を支えてくれた人物は、そういった次元圧縮に巻き込まれた者や連邦軍の関係者も多い。

 

(力を付けて貰った分、アタシも出来る限りやよいちゃんの糧になるよ。そうやって想いは受け継いでいくものだから………。ね、ゆかりちゃん、レイヤーさん。)

 

今回忍が選んだのは、ジム系列の連邦軍の機体では無かった。

目はモノアイであったが、ジオン系列のモビルスーツでも無い。

様々な拡張性を持つ、「アフター・コロニー」と呼ばれる世界線での「マグアナック」と呼ばれる機体。

彼女を慰めてくれた、ゆかりという人物が搭乗していたモビルスーツである。

 

「変わった機体ですね………。」

「跳躍した後の世界で出会った友達の1人の機体なんだ。色々な装備を持てるから、今回は「シミター型の大剣」、使わせて貰うよ!」

「受けて立ちます!私を鍛え上げて下さい!!」

 

こうして、やよいの修行とも言える訓練が再び始まる。

シミュレーターは夕食の時間まできっちりと続けられた。

 

勿論、その間に柚や穂乃香、あずきを含め、何人ものクルーが彼女の特訓する様を見て驚く事になる。

しかし、皆がやよいの覚悟を知った事で、次第に応援をしてくれるようになった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「そうっすか。やよいちゃんは、決意をしたんすね。」

「はい。忍ちゃんやネネさんの話だと、意外と様々な機体の扱いに適性があるんじゃないか………って言っています。」

「よく言えば万能、悪く言えば器用貧乏っすね。」

 

その後、モビルスーツハンガーでは、機体の整備がてら、穂乃香が吉岡沙紀にメンテナンスのお願いをしていた。

対象としているのは、彼女が大切にしているぴにゃこら太。

機体の照合を行う際に、補助デバイスとして穂乃香を助けてくれる存在だ。

 

実は彼女が住んでいた世界がバルバトスによって崩壊する際に、穂乃香が抱えていた事により、ぴにゃこら太もまた別世界へと跳躍をした。

その時は流石に破損した状態で全く動かなかったが、心が壊れていた穂乃香にとっては、拠り所であり、如何なる時もずっと抱き抱えていたのだ。

 

「或いは、まだやよいちゃんの本当の才能が目覚めていない………そっちの方が可能性高いっすね。………と、終わったっすよ!」

「ありがとうございます。ああ、ぴにゃこら太!良かったです!」

 

穂乃香は早速ぴにゃこら太に思い切り抱き着き、その感触を確かめる。

決して可愛いとは言えない容姿ではあるが、穂乃香にとっては、ドストライクであるらしい。

 

「はは………その様子を見ると、本当に心の拠り所だったんすね。」

「はい………本当は、妹蘭さん………龍妹蘭(ろんめいらん)さんも、私の事、気に掛けてくれたんですけれどね………。」

 

穂乃香が跳躍した先は、アフター・コロニー世界の、宇宙に位置するコロニーの1つであった。

そこで、妹蘭という女性に保護された事で、心を癒す機会を貰えたのだ。

だが………。

 

「妹蘭さんは正義感の強い方でした。だから………それが仇になって、亡くなってしまったんです。」

 

喧嘩ばかりしていた夫である張五飛(ちゃんうーふぇい)は、その妻の死を受け、心にダメージを負ってしまった。

その後、次元圧縮が進む中で楓達の艦隊の話を聞いた彼は、穂乃香を半ば強引に近くへと置いて行ったのだ。

五飛が今頃、何処で何をしているのかは、彼女にも分からない。

 

「………難儀っすよね。大切な人の死っていうのは。アタシの師匠も色んなパイロットの死を経験したって言ってたし。」

 

ロンド・ベルに所属する、沙紀の凄腕の師匠もまた、様々な人々を失ったのだ。

それが戦争であり戦いであるのだから、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。

だが、それでも失いたくない想いは、誰だって持っているのだ。

 

「………私は、このままでいいのでしょうかね?」

「穂乃香ちゃんもモビルスーツ、乗りたいんすか?敵機の解析と同時進行は難しいっすよ?」

 

敵機の解析は、どういうわけかアプロディアとの接続が強い者しか行えない。

穂乃香がその役目を担う事になったのは、最後の時に、システム・アプロディアと一番早く接続をして………つまり、一番深層部分まで繋がっていたからと言える。

それに加え、ぴにゃこら太というデバイスによる補助もあるから、彼女にしか出来ない役割がこなせるのだ。

 

「それに、もしやと思ってアプロディアに聞いたっすけれど………、かなりの負荷も掛かるんでしょ?あまりやり過ぎると、鼻血とかも出るとか。」

 

解析によって脳に負荷を掛けるのだから、より激しい戦闘なんてこなせるわけが無いのだ。

そもそも穂乃香を失ったら、今のシンデレラガールズが成り立たなくなると言ってもいい。

だからこそ沙紀は、もっと穂乃香に自分を大事にしてほしかったのだ。

 

「ゴメンなさい………我儘でしたね。ぴにゃの事、ありがとうございます。」

 

それでも、去っていく穂乃香は悲しそうであった。

もしかしたら、自分を癒してくれた妹蘭を失った事も、彼女に影響しているのかもしれない。

力が無ければ、見ている事しか出来ないのだから。

 

「……………ちょっと考えてみるっすかね。」

 

そんな穂乃香の後姿を見ながら、沙紀は頭を掻いて呟いた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「あずきは………どうすればいいのかな………。」

 

同時刻、ブリッジ後方に位置する展望台では、あずきが俯きがちで喋っていた。

話し相手になっているのは、客人として一時的にシンデレラガールズに招かれている安斎都。

あずきの跳躍先は、「サイド3」のコロニーの「グローブ」という所であった。

しかし、そこで彼女が見たのは、地獄絵図だったのだ。

 

「………やはり、あのトラウマからは、簡単には抜け出せませんか。」

「当たり前だよ!あんなの………あんまりだもん!!」

 

燃え盛る街を思い出してしまったのか、両手で頭を抱え、振り払うように左右に動かす。

もし、その光景をやよいとかが見ていたら、心が壊れていたと彼女は痛感する。

 

その町は、ジオン軍のコロニー落としで憎悪に満ちた地球連邦軍の軍人が、暴徒と化していた。

男はなぶり殺しにされ、女は尊厳を奪われる形で心を壊されていたのだ。

その光景をまざまざと見せつけられて恐怖に震えたあずきは、当時13歳であった都に強引に連れられて逃げなければ、同じように餌食にあっていただろう。

 

後に「グローブ事件」と呼ばれるその出来事は、連邦の汚点として残ったほどだ。

 

「私達は運が良かったですよ。暴徒鎮圧部隊を率いて来たカジマ大佐に出会わなければ、女の尊厳を失っていたんですから………。」

「都ちゃんは………あずきの事、臆病者だって思う?」

 

恐る恐る聞くあずきの言葉に、都は静かに首を横に振る。

しばらくユウ・カジマ預かりになった都は、連邦からもジオンからも見放され、生贄という形にされたグローブの実情に絶望したのだ。

13年時が経って26歳になった今だからこそ、こうして歩む事が出来ているが、当時の都は、助けてくれたユウにすら全く心を開けないでいた。

 

「私には、貴女を否定する権利も資格も義務も、全部ありません。ですが………貴女自身は、やよいさんを見て、何か感じる物があるのでは無いのですか?」

「……………。」

 

都に心を覗かれた気がしたあずきは、押し黙ってしまう。

1歳年下のやよいですら、戦う道を選んだのだ。

それなのに、自分はこのままでいいのか?………と感じてしまうのは、当然であった。

 

「あずきは………弱いよ。足が震えて、戦う道を選べない。あずきは一歩を踏み出せない………。みんな戦っているのに………あずきだけ………。」

 

涙を流し始めるあずきを、都は黙って片腕で抱きしめ、もう片方の手で背中をポンポンと叩いた。

グローブのトラウマは、簡単には払拭できない。

だからこそ、あずきにはまだまだ時間が必要であったのだ。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

夕食を食べた柚は自室に戻ると、プロデューサーの形見の赤い鉢巻きを取り出す。

全てが消えても、この鉢巻きは消えなかった。

もしかしたら、プロデューサーの想いが、ここに宿っているのかもしれなかったのだ。

 

「アタシ達は………絶対にバルバトスを倒して、世界を戻すから………「待っていてね」、プロデューサー。」

 

柚はその想いを胸に、形見の鉢巻きを頭に巻いて戦いに赴く。

今までも、これからも。

 

 

キャリー・ベースは、順調に「シャングリラ」へと向かっていた。

そこで何が待っているのかは、誰もまだ検討も付かない。




喜多見柚さん達の昔話を聞いた事で、戦う為の力を培う覚悟を決めた高槻やよいさん。
シンデレラガールズの仲間達は、その道を応援してくれる事になりましたね。

柚さんが島村卯月さんの下に転移したのに対し、工藤忍さん、綾瀬穂乃香さん、桃井あずきさんは、それぞれ別々の人達に救われた模様。
特に忍さんが心で告げた「あの人物」については、読者の中で驚いた方もいるかもしれませんね。

また、やよいさんの姿勢に、穂乃香さんやあずきさんも考える所がある模様。
この波紋がどう動いて行くのかは、この先のお楽しみになります。

というわけで、これでPHASE2「ヘリオポリス」編は終了です。
PHASE3は、また全話書ききったうえで、見直しが終わったら順次投稿していく予定ですので、その時が来たら、また宜しくお願いします。
………次は、沢山のデレステアイドルが登場予定ですよ!

追記:完成したので、二日後からPHASE3も投稿です!楽しみにしていて下さい!
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