モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第25話 PHASE3-1『やよいの猛特訓』

戦う決意をした高槻やよいは、高垣楓に再び土下座をしてシミュレーターの許可を貰う。

皆の想いによってここにいるのだから、報いる為に救う為の力が欲しいと。

楓は、例えそれが血塗られた道であっても、後押しするべきだと悟る。

 

シミュレーターでは、栗原ネネや工藤忍によって、やよいは鍛えられていく事に。

忍は、嘗て自分を慰めてくれた少女や鍛えてくれた隊長に倣うべきだと考えていた。

 

一方で、綾瀬穂乃香は吉岡沙紀に対し、自分は戦う道を取らなくていいのかと、苦悩している事を白状する。

穂乃香は穂乃香で敵機の解析と言うやる事があるから仕方ないと沙紀は言う物の、何か手段が無いかを模索する事に。

 

桃井あずきは「グローブ事件」の地獄絵図を見せられたトラウマを抱え、ずっと弱い自分になっていた事に苦しんでいた。

そのあずきを過去に救ってくれた安斎都は、彼女が泣けるように、気を使ってくれる。

 

そして、喜多見柚はプロデューサーの形見の鉢巻きを見て「待っていて欲しい」と告げる。

 

柚の発言の意味とは一体………?

そして、「シャングリラ」に出戻りをした一行を待っている者達は………?

 

 

 

やよいの特訓は、それからシャングリラに着くまで1週間続いた。

その間も、様々なパイロットに協力して貰いながら、色々な機体を試してみている。

 

「行きますよ!今回は「ジム・ストライカー」で!」

 

自然を模したシミュレーター上の空間で、やよいは近接戦仕様の迷彩カラーのジム・ストライカーを駆る。

対するパイロットは忍。

彼女は、今回はジオン公国軍の水陸両用機体、「ズゴックE」に搭乗し、両腕部の「ビーム・キャノン」を連射していた。

ここまでのシミュレーション訓練で、忍の射撃能力は現時点ではそこまで高くない事は分かっているので、やよいは「ブルパップ・マシンガン」で牽制しながら、跳ねるように近づいて行く。

 

(忍さんは近接戦闘の方が得意だけれど………!)

 

ジム・ストライカーの特性上、下手に遠距離戦に持ち込むよりは、一気に近づいて勝負を決した方がいい。

色々な機体を扱う中で、だんだんとそういう概念が分かって来たやよいは、忍機のビーム・キャノンが僅かに上ずったのを見逃さず、一気に機体の姿勢を低くして突進。

 

「じゃあ、これで!」

 

忍は当然ながら、両腕の「バイス・クロウ」で迎撃を行おうとする。

やよいの装備はジム・ストライカー最大の武装である「ツイン・ビーム・スピア」。

真っすぐ貫くロッドモードに設定する。

だが、ここで彼女はフェイントを入れた。

 

「うっうーーー!」

「え!?」

 

そのツイン・ビーム・スピアを大胆にも投げ飛ばし、槍投げの要領でコックピットを狙ったのだ。

忍のズゴックEは慌てて左腕で払うが、ビームの刃が刺さった事で、腕部が爆発。

陸上で使用可能な武装の半分が奪われてしまう。

 

「ヤバ!?」

「ハイターーーッチッ!!」

「!?」

 

更にやよいは左腕の打突用の「スパイク・シールド」を構え突撃。

たたらを踏むズゴックEに、大上段からシールドを振りかぶる。

ここで、右腕で防御されれば、シールドが壊れる代わりに相手の右腕も稼働しなくなるだろう。

武装さえ潰せば、後は「ビーム・サーベル」を取り出して斬りつければやよいの勝利であった。

 

「ならば………!ド根性ダーイブ!!」

 

だが………忍は防御せずに、何と両足で飛ぶように機体を地面に這わせた。

そのまま、バーニアも稼働させて滑り込むと、やよいのジム・ストライカーの足下を抜けて、背後へと回る。

 

「はわっ!?」

 

これにより、やよいのスパイク・シールドは回避され、地面に刺さってしまう。

慌てて抜いて振り向いた時には時すでに遅く、右手のバイス・クロウでコックピットを掴まれ、押し倒されていた。

 

「ゴメンね、今回もアタシの勝ち!!」

 

そのまま右腕のビーム・キャノンによって撃ち抜かれてやよい機は敗北を喫した。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「はーい、そこまで!忍ちゃんの勝ち!」

 

今回審判を担ってくれた客人の並木芽衣子の言葉で、やよいは溜息を付きながら、頭に付けたヘッドギアを取る。

1週間も特訓をすれば、勝てる場合も出てくるが、大半はまだ負けてしまう。

ここら辺は経験値の差もあるが、こうも上手くいかないと、やはり悔しさは出てしまった。

 

「うー………防御すると思ったのにー………。」

「でも、今回はナイスなフェイントだったよ!只、下手に隙を見せたら危ないね。死んだら元も子も無いんだし。」

「勉強になります………。」

 

芽衣子の講評に更に嘆息するやよいであったが、忍の方も、危なかったぁ………と言って出てくる所を見ると、今回の戦いでは結構いい所まで行ったと言えた。

でも、忍は元々ジム・スナイパーⅡを駆っている中で、ジオンの水陸両用モビルスーツで戦ってくれたのだから、今回は、やよいが勝ちたかったのも事実。

やはり、まだまだ鍛えて貰わなければならないだろう。

 

「だけど、今回で接近戦に対する才能も悪く無い事が分かったよね。伸びしろがまだまだありそうだし、モビルスーツパイロットは目指せると思うよ。」

「ありがとうございます。しばらくは、色々な機体を駆ってみますね。」

 

やよいは、モチベーションが高い事を示す、ガルウイングで芽衣子や忍にお礼をする。

そうしている内に、本田未央と共に、あずきがお茶菓子を持って来てくれた。

 

「ネネちんはブリッジの方に行ってるから、今回は私達が担当ね。どう?調子は?」

「全然勝てません。やっぱり皆さん強いです。」

「あはは、でも、やよいっちも、随分立派になったって。」

 

少なくともシミュレーターに嫌な感情を持っていた頃に比べれば、段違いである。

ここら辺は、柚の話を聞いてバルバトスから仲間を取り戻す為に前向きになれたのが、大きく影響していた。

 

一方で、あずきは芽衣子や忍にお菓子を渡しながら、少し憂鬱そうな顔をする。

彼女はまだ、戦う事に前向きになれていない為、どうしても後ろ髪を引っ張られる想いなのだ。

それを察したのか、未央が話題を逸らすようにシミュレーター室に設置されたコンソールを叩き、画面に新たなコロニーを映す。

 

「艦長の話だと、もうすぐ「シャングリラ」に到着するって。」

「あ………今更気付きましたけど、何で1週間もかかったんでしょうか?凛さん達は、1日で着いたんですよね?」

「それも………うん、次元圧縮の影響なんだよね。」

 

ここは、あずきが説明をする。

どうも、様々な空間に次元圧縮の影響が出始めているらしく、次元を跳躍したコロニーに行く場合、行きと帰りとでは時間差が生じてしまうらしい。

今回の「ヘリオポリス」と「シャングリラ」は顕著な例の1つであり、最短ルートで突っ走ったとしても、これだけの差が生じるのだ。

 

「本当………碌な事しませんね、バルバトスって。」

「うん………だから、あずき達も早く止めないといけないって思っているけれど………。」

 

中々前進出来ない状況に、ヤキモキしているのが、あずきの本音だ。

これは、自身の現状も加えての結果だと言える。

どう話を転がしても暗くなりがちなあずきを見て、未央が芽衣子や忍にアイコンタクトを送り協力を求めた。

 

「あ、そうだ!やよいちゃんって、服、いい加減に買わないといけないよね!」

「え?あ、はい………。」

 

芽衣子の言葉にやよいはそう返すと、自分の着ている服を見る。

今は、栗原ネネのスペアを着せて貰っているが、どうしても身長差までは覆せず、若干動きにくい。

特に袖の部分はまくっても厳しい状態であった。

 

「じゃあ、ネネちゃんと一緒に買いに行くといいよ!あずきちゃんも服選びのセンスあるから、巻き込んじゃおう!」

「で、でもユーグ隊長とかへの挨拶は………。」

「そこはアタシ達に任せて!」

 

忍が強引にやよいを説得すると、急いでブリッジに連絡をする。

高垣楓と交渉をした結果、OKが出た。

 

「よし!………と言うわけで、決まり!ブリッジにいるネネちゃんも大丈夫だって言ってくれたし、買い物楽しんできてね!」

「あ、はい………。」

 

ここまで強引に進めるのは、何か理由があるのか?………とやよいは思ったが、服を始め身の回りの用具が欲しかったのは事実なので、ここは甘える事にする。

巻き込まれる形になった、あずきの方はと言うと、こっそり未央に頭を下げていた。

 

「ゴメンね、未央ちゃん。何か………気を遣わせちゃって。」

「いいのいいの。ももーいは、連邦軍人ダメなんでしょ?何か理由があるみたいだし、街で羽を伸ばしてきてよ。」

 

あずきはグローブ事件に遭遇してから、連邦軍人にトラウマを持っていた。

勿論、楓の上司のユーグ・クーロや彼女達を保護してくれたユウ・カジマのように、連邦軍人でもいい人達は沢山いる。

それでもマイナスイメージは、簡単に払拭出来ないのだ。

恩人である都や女である芽衣子が、例外ではあるが………。

 

「「ブランリヴァル」への挨拶は、アタシが済ませておくよ。会いたい人もいるからね。」

「ぶらんりゔぁる?」

「今のユーグさんの母艦。楓艦長が教えてくれたの。本当は、レイヤー隊長の部隊が居てくれたら嬉しかったんだけれど、今は留守みたいだから………。」

 

少し残念そうな顔をする忍であったが、こればかりは仕方なかった。

 

やがて、キャリー・ベースは「シャングリラ」へと入港する事になる。

色々な想いを持った仲間達を乗せて。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「うわ~、小春達のパパとママは居るでしょうかね~?」

「ユーグ隊長の話だと………今は留守みたい………。でも、小春ちゃん、本当にあの2人をパパとママだって言うんだね………。」

 

「シャングリラ」に入ったキャリー・ベースの眼前に、街が飛び込んでくる。

そして、その奥………丁度街の北側にはゴミ捨て場のようなジャンク山が並んでおり、経済面が安定していないのは、見るからに明らかであった。

「思い出の地」であるジャンク山の方を見ながら、古賀小春と成宮由愛は、展望台のモニターを弄りながら会話をする。

 

2人の後見人は、このジャンク山を住処にする腐れ縁の男女だ。

何でも昔は大戦に参加し、艦を率いて生き残ったというが、その昔話は決して褒められたものではない。

特に養父の方は英雄となったパイロットに対し、何度も罠で嵌めようとしたらしく、とても笑い話に出来るような内容では無かった。

………というか、銃殺刑にされても普通はおかしくないというのが、由愛の感想であったのだ。

 

「あの人達を親と言うのは、止めた方がいい気も………。」

「でも、ショックを受けた小春達を、助けてくれましたよ~?」

「そうだけれど………。」

 

嘗て、由愛と小春は学校の同級生達を、金色の不死鳥をしたモビルスーツに殺された思い出がある。

当然ながら幼い由愛達とってはトラウマで、養父と養母はそんな2人を引き取ってくれた。

だからこそ、小春はのんびりとした口調でありながらも、養父母を慕う。

 

「パパがおかしな話をするのは~、小春達を笑わせる為ですからね~。」

「全然、笑いにならないけれどね………。」

 

勿論、由愛も養父の真意は分かっている。

敢えて道化として振る舞う事で、由愛達を何とかしようとしてくれているのだ。

その結果が、暴走とも言える昔の行いであるのは本当に笑えないが、反面教師として育って欲しいとも考えているのかもしれない。

 

「大丈夫ですよ~。由愛ちゃんも受けられる日が来ますから~。」

「う、受け入れられるの………かな………。」

 

只、理解するのと納得するのとでは、どうしても意味合いが違う。

結局、由愛は溜息を付きながら、小春を連れて格納庫へと向かった。

キャリー・ベースが付けば、連邦軍人が沙紀を含めた3人の手伝いをしにやって来る。

その受け入れを、行わないといけないからだ。

養父母の思い通りになっているのかは分からなかったが、彼女達は逞しく生きていた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ユーグの所属するファントムスイープ隊と連絡を取り合った結果、キャリー・ベースはジャンク山の西側に置かれる事になる。

流石に街に置くわけにはいかないし、港に置く余裕が今は無かったのだ。

それは、ユーグ達の母艦であるブランリヴァルもそうであるらしく、現在はジャンク山の東側の離れた所で、同じように停泊していた。

機首は勿論、南側の街に向けないように北側の山へと向ける形に。

慎重に友紀が下ろした所で、待っていた連邦軍人達が軍用車で次々と入って来た。

 

「じゃあ、行ってきますね!」

 

ここでネネは、あずきとやよいと共に、ハロの操縦するオープンカーで街に繰り出す事になる。

あまりあずきを男の軍人の中に居させたく無かったし、用を済ませるならば早い方がいいだろうと思ったからだ。

 

「気を付けて下さいね。あずき、やよいの事頼みます。」

「は………はい!ゴメンなさい、本当に………。」

 

あずきは謝るが、楓は気にしないで下さい………と言い、送り出す。

最後にネネがこう告げた。

 

「加蓮ちゃんに宜しくお願いしますね!」

 

そう言うと、早速3人とハロは、街に繰り出す。

一方で格納庫からは、グランドスラムを背負ったジム・スナイパーⅡが歩いて出撃していた。

 

「じゃあ、艦長。アタシはブランリヴァルに挨拶に行ってきます!」

「グランドスラムを見せびらかしに行くんですか?向こうの方々にも、宜しく伝えといてください。」

「オッケーです!では!」

 

楓の手持ち用小型モニターに映ったパイロットスーツの忍が、敬礼のポーズを取る。

そして、連邦軍人に誘導されつつ、ジャンクの山を歩いて行った。

 

「………さて、私達は………と。」

「ビールだね!」

「その前に挨拶があるでしょう。」

 

同行を決めていた姫川友紀のノリノリの言葉にツッコミを入れながら、楓は正面から来る車を見る。

 

「お、来た来た!」

「隊長と加蓮だね。」

 

すっかり脇腹の傷が治り包帯を取れるようになっていた神谷奈緒と、久々にラフな格好をした渋谷凛が、手を振る。

その後ろからは、自機のモビルスーツに乗った都と芽衣子も出撃しており、器用にマニュピレーターで同じように手を振った。

 

「奈緒ーーー、久しぶりーーー!凛ーーー!早いねーーー!」

 

助手席で手を振るのは、コロネのような独特なツインテールを持つ少女。

一方で運転席の男は壮年ではあったが、過去の戦いの影響なのか、頬に傷が付いていた。

 

「お久しぶりです、ユーグ・クーロ隊長。そして、加蓮さん。」

 

車が止められて下りて来た2人に対し、楓が告げる。

この2人が、現ファントムスイープ隊の面々であった。

 

 

楓の元上司であるユーグ・クーロ。

そして、神谷奈緒と渋谷凛と仲のいい北条加蓮。

彼女達は、果たしてどんな人物なのか?




今日からは、予告通りPHASE3の「シャングリラ編」が始まります。

シミュレーター上とはいえ、珍しいシンデレラガールズ同士のバトル。
折角だから、動画版では活躍していない機体同士で行おうとして、ジム・ストライカーVSズゴックEという選択をしました。
1対1とはいえ、初っ端からバトルを組み込めると楽しいですよね。

さて、今回からユーグ・クーロというPS3版ガンダム戦記の連邦側の主人公が登場。
これまで、ステージのゲストという形で敵味方は登場していますが、本格的に関わるキャラは初めてになります。
こういう形のゲストもこれから徐々に増えていくので、ガンダムキャラが気になった方は、待って貰えると嬉しいです。
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