モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第26話 PHASE3-2『ファントムスイープ』

高槻やよいの猛特訓は1週間に渡って続き、工藤忍を始めとしたアイドル達によって磨かれていた。

次元圧縮の弊害で「シャングリラ」に戻るまでに少し時間は掛かってしまったものの、やよいは色々と勉強をしていく時間を得る。

 

そして、いざコロニーに着いた所で、思いを馳せるのは、そこに住まう養父母に養って貰っていた古賀小春と成宮由愛。

今は留守ではあったが、小春の方は傷ついた時代に癒して貰った事を素直に感謝していたし、由愛は父や母として受け入れられていなかったが、彼等に対する恩義は理解していた。

 

ジャンク山に下ろし、ファントムスイープ隊の作業員がキャリー・ベースの補給に入る中で、やよいは栗原ネネと桃井あずきと共に街に服などの買い出しに出る事に。

忍は会いたい人物がいるという事で、ジム・スナイパーⅡに乗って現在のファントムスイープ隊の母艦であるブランリヴァルへと向かった。

艦長の高垣楓は、久々に上官であるユーグ・クーロに会う。

神谷奈緒や渋谷凛と共に戦っていた北条加蓮とも再会を果たした中で、彼女達はこれからどんな行動を取るのか。

 

ここからは、しばしの自由時間。

皆がそれぞれ、思い思いのひと時を過ごす。

 

 

 

「コホン。………こちら、ファントムスイープの北条加蓮です。お久しぶりです、キャリー・ベースの皆さん。」

 

軍用車が楓達の前に止まると、助手席の少女………北条加蓮がゆっくりとした動作で降り、高垣楓に挨拶をする。

少々体が重そうであったのは、何処か痛めているからであろうか?

楓は気を遣わなくていい………と言うと、帽子を取って頭を下げた。

 

「お久しぶりです、加蓮ちゃん。折角ですから、自然体で過ごして貰ってもいいですよ。奈緒や凛とも会話をしたいでしょう?」

「それでは、お言葉に甘えまして………。奈緒、凛、元気してた?」

 

加蓮が許可を貰った途端、かなり気軽に楓の後ろにいる凛と奈緒に手を振る。

奈緒はニヤニヤと笑うと彼女に告げる。

 

「まあな!加蓮こそ、オペレーターの仕事は大丈夫か?歩く死亡フラグは卒業したか?」

「それなりにはね。奈緒こそ、相変わらず悲鳴を上げて、迷惑かけてるんじゃないの?」

「うっせーよ、こっちは名誉の傷がようやく治ったばかりなんだから、大事にしろ。」

 

フランクになった途端、軽口を叩き合う奈緒と加蓮。

どうやら、凛も含め、3人はこんな関係であるらしい。

奈緒の冗談?………は続く。

 

「またアタシ達のいない間に、何か馬鹿をやらかしたんじゃないのか?」

「ご心配なく!これでも部隊では大活躍なんだから!こないだも、「量産型ガンタンク」で無双したのよ!ね、隊長!!」

「………そのまま「グフ・カスタム」に接近戦を仕掛けて、危うく撃破されそうになったけれどな。」

 

加蓮は、隊を率いるユーグに対し、自分の胸に片手を当てて同意して得ようとするが、両腕を組んだユーグの言葉は重たそうであった。

どうやら、そのカバーも含めて、彼はかなり大変であったらしい。

 

「隊長………相変わらず苦労してんのな。」

「心なしか………顔のしわ増えたね。」

 

これには、奈緒だけでなく凛も同情。

ユーグはカテゴリとしては、30代の壮年男性に入るので、苦労が積み重なると肌のつやが悪くなるらしい。

彼は、お前達も相当な物だったけれどな………と釘を刺したうえで、楓に言う。

 

「お互い、無事に生きていて何よりだ。既に補給が必要という話は聞いている。「現艦長」に許可を貰い、ジャンク山に置いてあるブランリヴァルから物資を運んでもらっているから、役立ててくれ。」

 

そう言うと、早速搬入している荷物類を見て、楓は深々と頭を下げる。

これだけの荷物があれば、しばらくは補給を済ませなくて良いだろう。

 

「ありがとうございます。どうですか?折角ですし、何処かの酒場で近況を語り合いませんか?」

「じゃあ、いつも通りの馴染みの店に行くとしよう。友紀は………。」

「勿論、飲みます!」

 

食い入るように言ったのは、姫川友紀。

彼女は大の野球好きであると同時に、大のビール好きである為、こういう飲み会の場では、積極的に参加する傾向がある。

ビールを飲める機会を楽しみにしている姿は、元々の外見の幼さも相まって、20歳には見えなかった。

 

「加蓮、奈緒や凛と適当に会話をしたら、ブランリヴァルに戻っていてくれ。」

「了解です!………って、アレ、新しく入ったっていうやよいって子は?」

「ネネやあずきと一緒に服などを買いに行きました。女の子はオシャレが必須でしょう?」

 

楓の言葉にうんうん………と頷く加蓮。

どうやら、今時の流行に関しては、かなり敏感な性格であるらしい。

 

「そうだね、ネネはともかく、あずきがいるなら大丈夫か。じゃ、隊長………酔っぱらって、楓さんに手を出さないでよ。」

「善処する。」

「………冗談通じないなぁ。」

 

ユーグという男の性格を一言で表現するようなやり取りに、加蓮は苦笑。

とりあえず、軍用車を加蓮に預けると、ユーグと楓、友紀の3人は安斎都のザクフリッパーや、並木芽衣子のハイブースト・ジムに乗せて貰い、ジャンク山をゆっくりと歩いて行く。

ユーグの言う馴染みの店も、珍しくジャンク山の北方で運営されているので、移動手段としては、こちらの方が快適で楽であった。

 

余談だが勿論、馴染みの酒場まで歩いて行く事も可能ではある。

それでも、わざわざモビルスーツに乗って行く事にしたのは、ユーグも楓も「背中」がムズ痒かったからとか………。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

一方、ジム・スナイパーⅡに乗って歩き、ブランリヴァルへと辿り着いた忍は、格納庫へと歩いて行く。

中には沢山の整備員達が居たのだが、異質な風景が広がっていた。

何と、「全員同じ顔」をしているのだ。

しかし、忍は気にする様子は無い。

これが、今のファントムスイープ隊の日常なのだから。

 

「やっほー、フェイフェイ達!元気にしてる!?」

『元気アルヨーーー!!』

 

モビルスーツハンガーに機体を置いた忍は、コックピットから降りて行き、手を口に当てて叫ぶ。

帰って来た皆の大声にオッケー!………と丸を作りながら、出迎えてくれたお団子頭の中華系の少女の1人とハイタッチを交わす。

 

フェイフェイと呼ばれた少女は、地球連邦軍の「負の側面」によって生み出された少女であるらしく、単刀直入に言えばクローンであるらしい。

只、大人数………それこそ50人もいるのに、全員が失敗作の烙印を押されて処分されそうになった所で、このファントムスイープが回収したというのだ。

 

こういう所も、危険区域で戦う特務部隊ならでは………と言える。

 

「相変わらず隊長や艦長達のおかげで元気ネー。ブリッジへ案内するヨー。」

「お願いね。」

 

フェイフェイの1人に連れられ、忍はブランリヴァルのブリッジへと案内される。

キャリー・ベースよりも数段立派な作りにはなっていたが、艦を操作するのもフェイフェイ達であるらしく、初めて見る人にとっては異様な光景に映るだろう。

忍がそんな感情を抱かないのは、マスター・P・レイヤーによって地球連邦軍に保護されてから、このファントムスイープの実態も見て来たから。

フリルドスクエアの中では、一番連邦軍を知るのが忍であり、同時にレイヤーやユーグなどの一部の部隊にではあるが、一番好感を持っているのも彼女なのだ。

 

そういうわけで、彼女はブリッジに座って溜息を付いている、自分と同じ位の年齢の少女の下に向かう。

ツインテールのおさげが印象的で、眼鏡を掛けており、スタイルもかなり良いのがポイントであった。

 

「風香ちゃん!お久しぶりーーー!!」

「ひいっ!?す、すみません!!」

 

いきなり軽く挨拶をした忍であったが、不意打ちを喰らった少女………何を隠そうブランリヴァルの艦長で、現ファントムスイープ隊を率いている浅野風香(あさのふうか)は、思わずジャンピング土下座をしてしまう。

これには忍も面喰い、慌てて彼女に謝る。

 

「ご、ゴメン!脅かすつもりは無かったんだ!」

「あれ?し、忍ちゃん………?あー、ビックリしました。てっきり、また現地の人に文句を言われるかと思って………。」

「ホント、ゴメン………。」

 

前線部隊故に、他部隊などからの苦情も多く、艦長である風香は苦労をしているらしい。

ここら辺、ユーグに匹敵する位の胃薬枠でもあり、本人曰く「のみの心臓」であるとか。

とはいえ、何だかんだ言いながらも、しっかりと特務部隊を率いる事が出来ている時点で、かなりの才覚があると言えるのが、忍の密かな感想であった。

 

「風香ちゃん………いや、やっぱりこの場合、風香艦長って言えばいいでしょうか?」

「前者で大丈夫ですよ。「あの3人」は、展望台にいるので、挨拶ならばそこで出来ます。折角なので、ここからは私が案内しますよ。」

「ありがとね。じゃあ、早速GO!」

 

風香は、ここまで道案内をしてくれたフェイフェイに感謝をし、同時にブリッジにいるフェイフェイ達に後を任せると、忍を展望台へと連れて行った。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ブリッジの後ろに存在する展望台では、3人の少女達が談笑していた。

1人は、長髪でリンゴのようなヘタを模したアホ毛が印象的な少女。

1人は、サイド気味のツインテールが特徴としているギザギザの歯が特徴の少女。

1人は、派手なピンクのボサボサなボブヘアーがインパクトを与えている女性。

 

「ヤッホー、あかりちゃん、あきらちゃん、りあむさん、元気ーーー!?」

 

「あ、忍ちゃんです!待っていましたよ!」

「どうもお久しぶりデス、忍サン。良い意味で相変わらずみたいだね。」

「いいなぁ………忍ちゃん、輝いていて。めっちゃ病む。」

 

フェイフェイの時と同じく、ハイタッチを交わしながら、三者三様の言葉で返してくれるのは、辻野あかり(つじのあかり)、砂塚あきら(すなづかあきら)、夢見りあむ(ゆめみりあむ)の3人。

それぞれ、別次元から次元圧縮で飛ばされてきて、ファントムスイープ隊でお世話になっているらしい。

つまり、現ユーグの配下である貴重な戦力で、加蓮が前線で戦えない状態である時は、3人が隊長をカバーしているのだ。

 

「さっき格納庫の近くを通りかかって驚きましたよ。あの大剣は、何処で拾ったんご?」

「ちょっと、こないだの戦闘で貰っちゃって。気に入ってるんだ。」

「どう見ても接近戦の方が得意そうデスね。ジム・スナイパーⅡから乗り換えたら?」

「うーん………でも、レイヤー隊長のお下がりだし、しばらくは控えようかなって。」

「いいなぁ………ぼくらの今の機体より、よっぽど輝いてるよ………。」

「そうなんですか。………ちなみに、どんな機体に乗っているんです?」

 

3人と雑談を繰り広げる中で、りあむの話題に忍は興味を示す。

ファントムスイープ隊は鹵獲機体のテストも行っている為、良く言えばユニークな機体に試験的にパイロットが乗る事もある。

しかし、あかり達が示した答えは、忍の予想を遥かに上回った。

 

「私は「ゾゴック」んご。」

「自分は「ギガン」デスね。」

「ぼく、「アッグ」………。」

 

「じ、ジオン祭りじゃん!?しかも、何か変な機体ばかりじゃない!?」

 

一応の体で言えば連邦軍なのに、ジオン公国軍の機体ばかり操っているのだ。

しかも、かなりの変則的な機体ばかりである。

尚、あきらの話だと、ユーグが「グフカスタム」、加蓮が「ハイゴッグ」であるらしく、本当に隊長から部下までジオン祭りであった。

 

「………何ていうか、風香ちゃんも胃が痛くなるよね。こんな乗機ばかりだと。」

「心配して貰い、ありがとうございます………。」

 

それまで後ろに控えていた風香に忍が乾いた笑みを浮かべた事で、彼女は重く息を吐く。

ユーグもそうだが、現地で管理する側にしてみたら笑えない話だ。

それでもしっかりと生きている時点で、あかり達の生存能力の高さが伺い知れるが。

 

「とりあえず、それは置いておいて………。久しぶりにシミュレーターをやろうよ!パワーアップしたアタシを見せてあげるから!」

「あは!忍ちゃん、やる気ですね!………じゃあ、私の山形りんごの力で、完膚なきまでに返り討ちにしてやるんご!」

 

腕まくりをした忍に対し、あかりは腕を組んで明確な対戦の意思表示。

ちなみに今までの対戦成績はあかりの方が遥かに上であるのだが、それでも挑戦心が砕けないのが、忍のいい所であった。

 

「いいなぁ………忍ちゃんもあかりちゃんもキラキラと輝いていて………。」

「りあむサン………勝手に老いぼれてないで。」

 

やる気満々の忍とあかりを追いかけるように、りあむとあきらが歩きだす。

その後ろから、風香も苦笑しながらついて行った。

 

 

自称小心者のブランリヴァルの艦長と、一風変わったトリオによるパイロット達で構成されている現ファントムスイープ隊。

何故、彼女達がこのような形で関わるようになったのか。

まだまだ深い理由がありそうである。




前回の北条加蓮さんに続き、今回はクローンとはいえフェイフェイさんが登場。
更に、浅野風香さん、辻野あかりさん、砂塚あきらさん、夢見りあむさんと、この小説版からの登場人物も目白押しになりました。

特に「#UNICUS」の3人は運用するならば、一緒の部隊がいいと考えていたので、ファントムスイープ隊に所属して貰う形に。
この3人をメインの部下として引っ張っていく事になると、楽しそうですが胃薬の量も多そうです。
書いててなんですが、ユーグ隊長大丈夫かな…?

余談ですが、この話を書いている最中にデレステ9周年のカウントダウンによって、忍ちゃん&あかりちゃんという呼び名が分かったのは渡りに船でした。
分からなかったら、あかりさんからの忍さんの呼称は、「忍先輩」になっていたかもしれません。
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