買い物を楽しむ高槻やよい達が見たのは、ボロボロになったアーガマがジャンク山の中央部に不時着する所であった。
艦長がブライト・ノアであった事に、ブランリヴァルとファントムスイープ隊を率いる浅野風香は衝撃を受け、至急キャリー・ベースを含めた各部隊に出撃準備を指示する。
だが、そこにゴットン・ゴーの乗るエンドラや、ガザD部隊を率いたマシュマー・セロのガルスJが降下してきて、買い物帰りのやよい達のオープンカーを巻き込んでしまう。
やよいを庇った栗原ネネが負傷してしまい、桃井あずきと共に、何とか彼女をキャリー・ベースにまで運ぼうとするやよい。
そんな中、アーガマではZガンダムを子供が奪ったらしく………。
果たして、何が起こっているというのだろうか?
そして、やよい達の運命は?
「大変です、艦長!子供が………!子供が勝手にZガンダムを!!」
「へへ………!ちょっと!ごめんよッ!!その機体、拝借するぜッ!!」
アーガマの格納庫では、整備士のアストナージ・メドッソの前で、「シャングリラ」のジャンク山に住まう子供が、Zガンダムを奪っていた。
慌ててブライトがZガンダムに通信を送り、降りるように促すが、聞く耳を持ちはしない。
それどころか、彼はこう返す。
「ちょっと!おじさん!!俺は子供じゃないよッ!!ジュドー・アーシタって名前があるんだ!!へへ………コイツを売れば、リィナの学校のお金も払えるようになるぞ!」
そう言うと彼………ジュドー・アーシタは、Zガンダムで格納庫から飛び出す。
………アーガマの前にやって来たマシュマー・セロの率いるガルスJの前に。
「ほう………それが答えかね?噂のZガンダム一機とは………。私を真の騎士と見切ったなかなかの奴………!」
1対1の決闘の申し込みと勘違いしたマシュマーは、Zガンダムに対し、「ビーム・サーベル」を取り出すと、構えてみせる。
「私の名前はマシュマー・セロ!!エンドラの艦長である!貴殿のお名前は!?」
「へッ!?何、何!?まさか、敵ッ!?」
ここで幸か不幸かジュドーのZガンダムは、強奪に際してマイクがオンになってしまっていた。
彼は、ここでようやく事態の深刻さに気付くが時すでに遅く、どうしようか、頭を悩ませてしまう。
「い、いやえっと………。」
「名乗れと言っている!」
「ジュドー・アーシタ!学校はずるけている!」
「ちゃんと言えるでは無いか!!行くぞ!ジュドーとやらッ!!」
会話の節々に、色々とツッコむ所がありそうに思えるが、マシュマーは細かい事を気にしない性格であるらしい。
一方で、ジュドーの方はZガンダムを動かしたのはいいものの、肝心の武装の操作に関してはシミュレーターですら弄った事が無い。
単刀直入に言ってしまえば、扱い方が全く分からないのだ。
「行くぞって!?どうすんの!?………ビーム出ろッ!!」
とりあえず、「ビーム・ライフル」を撃とうとしたジュドーであったが、出来た操作はモビルアーマー………ウェイブライダー状態への変形。
こうなると、加速する上にブレーキも効かないので、慌てて必死に操作を行わなければならなくなる。
「誉めた矢先に逃げるとは!?どういうヤツだッ!!」
憤慨したマシュマーは、思わず追いかけるが、ウェイブライダー形態のZガンダムは、簡単に追い付く事は出来ない。
結果的にアーガマの周囲を、2機のモビルスーツがコミカルに追いかけ回す状態へとなってしまう。
「うわぁ~ッ!!どうなってんの!?」
「ええーい!真面目に戦う気があるのか!?」
「……………。」
その様子を、ブライトは茫然とした顔で見ていた。
――――――――――――――――――――
「風香!戻ってモビルスーツに乗り込んだ!状況を教えてくれ!」
「えーっと、それが、その………。」
「ど、どうしたの、風香?何で………全てを匙投げたくなるような顔をしてるの!?」
ブランリヴァルに戻ったユーグ・クーロと北条加蓮が、用意されていたモビルスーツに乗り込んだ所で、ブリッジにいる浅野風香に連絡を取る。
しかし、真面目な彼女にしては珍しく、やっていられないような顔をしていた。
クローンであるフェイフェイの1人に案内されてブリッジにやって来た高垣楓と姫川友紀も、何があったのだと聞くが、彼女は疲れ切ったように説明をする。
「ネオ・ジオンのエンドラが、ボロボロになったアーガマを襲おうとしています。只………敵の司令官が行動を起こす前に、残っていた機体のZガンダムが、近所の子供に奪われました。」
『は?』
「奪った子供は操作が分からず暴走中。結果的に敵の司令官と追いかけっこを繰り広げていまして………。」
『………………。』
丁度その時であった。
回線越しに、腹の底から響き渡るような凄まじい声が聞こえて来る。
「どうして………、どうしてこうなるんだああああああああああああ!!?」
それは、アーガマを管理するブライトの、溜まりに溜まったストレスから繰り出された魂の叫びであった。
――――――――――――――――――――
「落ち着かれましたか………?」
「ああ………すまない楓艦長。まさかこの場に、貴殿もいるとは………。」
とりあえず胃薬を飲んだ事で、少し平静を取り戻したブライト。
一方で、事情を知った楓は、風香や友紀と共にゲンナリとしていた。
もう1度分かりやすく3行で整理すれば、アーガマ隊は敵の追撃部隊に襲われている。
しかし、アーガマは前の戦いの影響で、Zガンダム以外戦えない。
そして、そのZガンダムは地元の少年に盗まれ暴走し、敵指揮官と追いかけっこ中。
「私の知りうる限りの最悪の状況だ………。ちなみに加えて、敵艦の主砲はこちらに向けられており、いつでも発射できる状態。敵モビルスーツ隊は、今は困惑しているが、いつでも襲撃可能な状態のオマケ付きだな。」
「まあ、一応モビルスーツ隊には、こちらからはユーグ隊長達が向かいましたし、キャリー・ベースも防御を固めているので………。」
「それですが、問題が発生しました。」
深刻な顔で通信に割り込んで来たのは、副長であり、楓が居ない今、キャリー・ベースを管理する千川ちひろ。
彼女が説明するには、そのガルスJが襲撃した時に、ネネがやよいを庇って負傷してしまったというのだ。
彼女達がいるポイントは、正にガザDのモビルスーツ隊が鎮座している場所であり、少しずつ歩いてキャリー・ベースに向かっている物の、早急に救助が必要だともいう。
「参りましたね………。下手に射撃武装も使えないのですか。」
本当はジャンク山を歩く事すら危ないのに、兵装が制限されるのは更に危険だ。
場合によっては、「シャングリラ」が「ヘリオポリス」の二の舞になってしまう。
「ちひろさん、陸戦で使えるモビルスーツもありましたよね?後は、こないだ鹵獲した機体も合わせれば………。」
「前者で普通にこの状況で使えそうなのは、奈緒さんの得意としている「グフ・フライトタイプ」くらいです。キャリー・ベース自体は動かせないので、砲撃士の美穂さんが、医務室で治療の準備を進めてくれていますが………。」
この状況下で、どうキャリー・ベースの戦力を割り振るか。
とにかく、まずは敵の母艦………エンドラを何とかしないといけない。
楓が悩んでいる内にも、アーガマ内の通信の様子が映し出されていく。
「うわ~~~!?言う事聞けって!?止まれ~~~~~~!!」
「駄目だ!完全にパニックになってやがる!」
ジュドーの暴走を止める為に、トーレスが必死に呼びかけを行うが、残念ながら効果が無い。
アストナージもまた、焦っている様子であったが、告げた事はとんでもない事であった。
「不味いぞ!?Zガンダムには、「ハイパー・メガ・ランチャー」が付けられている!大出力のビームランチャーだ。下手にコロニー内で暴発したら、崩壊の危険もある!」
「だけど、この状況じゃ、帰還も不時着もさせられないぞ!?アストナージ、操作系統について、ジュドーに教えてやれないのか!?」
「もうやってるって!でもパニックの奴にすぐに言い聞かせるのは無理だ!!」
アストナージとトーレスの言葉に頭を押さえながら、ブライトが必死に頭を使う。
どうすれば、この状況を打破できるか。
その時、意外な所から声が掛かった。
「艦長、ブライトさん、それに師しょ………じゃなくて、そっちの整備士さん!アタシに手があるっす!!」
回線に割り込んで来たのは、整備士の吉岡沙紀。
彼女は黄色のパイロットスーツに身を包みながら、「ヘリオポリス」の戦闘で藤原肇が鹵獲したジム・クウェルに乗り込んでいた。
「君は一体………?」
「未来の世界で、とある有名な技師に弟子入りしていた整備士見習いっすよ。ここでは臨時の際のモビルスーツパイロットもやっているっすね。だから、今から直接ジュドーさんの所に行って、マンツーマンで指導するっす。」
アストナージの言葉に、彼女なりに丁寧に答えながらも、沙紀は出撃の準備を進める。
臨時パイロットといっても本職は整備士なのだから、メインのパイロット達に比べれば腕前が低いのはどうしようもない。
しかし、未来に生きているという事と、アプロディアのハッキングの力を使えば、ジュドーの近くでZガンダムの指導をする事くらいは出来た。
周りに出撃時のフォローをお願いすると、早速アプロディアの力で、沙紀はジュドーの前にモニターを表示させる。
彼はいきなりの状況に少しパニックが収まったので、その間に彼女は状況とこれからの事に付いての説明を始めた。
「………というわけで、ジュドーさん!少しの間、待って欲しいっす!」
「ちょ!?何、勝手に決めてるの!?」
「………この映像見ても、その言葉、言えるっすか?」
少し声音を低くした沙紀は、アプロディアにこのジャンク山の周辺を映して貰う。
そこでは、ジャンク屋仲間達が怪我している様子や、家や店を壊され嘆いている様子が映し出されていた。
ジュドーが逃げ回った為、追い回しているガルスJが不可抗力でジャンク山を踏み荒らしてしまっているのだ。
流石のジュドーも、その様子には衝撃を隠せない。
「これ………!?」
「厳しい事言うっすけれど、ジュドーさんの軽はずみな行動で、こうなったんすよ?落とし前付けないと、アタシが直に射殺するっす。」
「………………。」
ジュドーが元々このような行動を取ったのは、妹のリィナの教育費を稼ごうとしたためだ。
だからこそ、妹が見たら絶対に悲しむような光景には、何も言えなかった。
「………分かりました。なるべく早く頼みます。」
暴走したジュドーの頭が冷えて折れた事で、楓は沙紀に全てを任せる事に決める。
彼女は、今いるパイロットと機体の組み合わせから、素早く部隊の編成を行う。
「沙紀のジム・クゥエルの護衛は、藍子のハイザック・カスタム、卯月のジムⅢ、未央のパワード・ジムに任せます。肇のヅダ、柚のオクト・エイプ、奈緒のグフ・フライトタイプ、凛のガンダム7号機は、南のガザD部隊の陽動と相手を。智絵里は慣れないですが、ジーライン スタンダードアーマーで、キャリー・ベースの直営を担当してください!」
火力の都合上、シャングリラに入港する際に、島村卯月のジムⅢ・ディフェンサーはGディフェンサー部分を外してジムⅢに戻している。
また、渋谷凛のフルアーマーガンダム7号機も、増加装甲を外し、軽量でシンプルな「ガンダム7号機」へとしていた。
それでも、下手にビーム・ライフルなどを撃てない以上、格闘戦重視になってしまうだろう。
只、ファントムスイープ隊と合わせれば、様々な増援が来ても対処が可能なのが救いであった。
こうして、ジャンク山の北西部分を担当するのが、沙紀、藍子、卯月、未央。
南西部分担当が、肇、柚、奈緒、凛。
北東部分担当が、都、芽衣子、瞳子、聖來、マコマコリン。
南東部分担当が、ユーグ、加蓮、あかり、あきら、りあむ、忍になる。
「気を付けて下さいね。次元圧縮プログラムが急激にこの空間に広がっています。」
最後に解析を進める綾瀬穂乃香が、御武運を………と言う事で、作戦が始まった。
――――――――――――――――――――
全てのモビルスーツが行動を始めた所で、後は状況に合わせて指揮をするだけであったが、楓や友紀の表情は冴えない。
ネネが負傷してしまった事を踏まえれば、本当は直に探しに行きたいほどであった。
しかし、下手に出た所で役に立つはずが無かったのだ。
「動かない体が悔やまれますね………。自分で機体を駆って、探しに行く事も出来ない………。」
唇を噛み締める楓に、何と問いかければいいか分からない友紀。
一方で、風香は通信機器を使い、忙しそうに各所に連絡を取っていた。
そして、長電話を終えて溜息を付くと、冷静に勤めるように息を吐きながら、ブリッジのフェイフェイ達に指示を出す。
「恐らく敵艦は、1発牽制砲撃を行うでしょう。その直後に、艦を浮上させて回頭させます。」
『え!?』
いきなりのとんでもない指示に、友紀も楓も驚くが、風香の顔は真剣であった。
どうやら今まで長電話で、「シャングリラ」の市長を始めとしたお偉いさんに、砲撃許可を貰っていたらしいのだ。
「ね、ねえ………ここに住まうジャンク屋業者を始めとした人達の避難は………?」
「残念ですけど、「シャングリラ」の経済事情を鑑みれば、待っていても永遠に終わりませんよ。だから、エンドラの「真下」の人々だけ、優先して避難させて貰いました。」
「でも、ブランリヴァルの「連装メガ粒子砲」は………!?ま、まさか………!?」
「………勿論、失敗したら、文字通り私達の首が飛ぶから一発勝負です。頼みましたよ、フェイフェイちゃん達………!」
風香はエンドラから、更にガザD6機が出撃される様子を見ながら呟く。
その目は座っており、艦長としての覚悟が備わっていた。
始まった「シャングリラ」での戦闘。
風香の策は、一体何なのか………?
このステージの動画を投稿していた時、コメントが爆笑の渦に包まれていたのを覚えています。
かなりコミカルな展開になってしまっていますが、実際にZZ序盤の展開を象徴するかのような感じのユニークな戦いなんですよね。
その分、後半の悲壮感漂う展開の反動が凄まじい作品なのですが…。
…で、実はこのステージ、実際にプレイして貰えば分かるんですが、序盤にしてはかなり嫌らしいんです。
何せジャンク山に足を取られると、地上適性が低い機体は移動力が激減してしまい、真面に動けないんですよね。
お陰でプレイする際はかなり苦労しましたし、そもそもファントムスイープ隊の増援をこのステージで解禁したのは、メタ的な視点で言えば、前後左右の増援に対応する為なんです。
さて、只でさえこんな面倒な条件が色々と重なっている中、浅野風香さんがやろうとしている事は、果たして…?