モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第30話 PHASE3-6『風香の奇策』

Zガンダムを奪ったのは、ジュドー・アーシタ。

彼は、ガルスJを駆るマシュマー・セロと、勝手に一騎打ちを繰り広げる算段になる。

だが、上手く扱えずにウェイブライダー形態で逃げ回る事になり、ピンチに。

 

ここで、吉岡沙紀がジム・クゥエルで出撃し、直にマンツーマンで指導する方針を示す。

最初は拒否するジュドーであったが、ジャンク山の被害を見せつけられた事で、従う事に。

 

そして、シンデレラガールズの部隊も分けられて作戦開始となるが、次元圧縮プログラムも強まって来ていた。

また、高垣楓や姫川友紀が歯がゆい思いを吐露する中、ファントムスイープ隊を率いる、ブランリヴァルの現艦長である浅野風香は、奇策を行おうとしていた。

 

 

 

「成程………確かに失敗すると俺達の首が飛びかねないが、状況を鑑みれば、一番妥当な策か。」

 

風香から送られてきた作戦の伝文を見たユーグ・クーロは、グフカスタムを慎重に扱いながら、ハイゴッグを扱う北条加蓮と共に前線へと向かう。

時たま周りに怪我人などの住民が映る為、本来ならば彼等の避難を「シャングリラ」の市長達には行って欲しかった。

だが、こんな危険区画に打ち捨てられた者達の為に体を張るほど、情けのある人々ばかりが管理していれば、スクラップだらけのジャンク山はそもそも存在していない。

 

故に、風香は異常な策とも言える手段を行おうとしているのだ。

ユーグは「シャングリラ」の現状に物悲しさを覚えつつも、後ろを追従する部下に指示を出した。

 

「加蓮!なるべく戦闘は回避しながら、ネネ達を探して回収してくれ!」

「了解!ハロの示す位置ポイントは確認したから、近くまでは辿り着けるはず!」

 

今の加蓮は、まだ古傷が治りきっていない。

それならば、負傷した栗原ネネと、彼女に肩を貸して2人掛かりで歩いている、高槻やよいと桃井あずきの救助に回って貰った方が良かった。

 

「避難しきれていない人々に気を付けてくれ!スクラップが飛ぶから、ジャンク山への降下はなるべく控えろ!」

「分かってるって!………じゃあ、行ってくる!」

 

加蓮と分かれたユーグは、その足で一気に跳躍し、前線の様子を確認する。

彼のいる南東側では、ガザD6機を4機の機体が相手にしていたが、如何せん状況は不利であった。

何せ、足下に気を付けないといけない為、下手に着地が出来ないのだ。

その反面、ガザDは変形して空戦に持ち込みながら、機動力を活かして惑わす事が可能。

前線部隊の動きが鈍くなるのも、仕方のない状況であった。

 

「あ、ユーグ隊長、お久しぶりです!」

「忍か。射撃はいいから、その大剣で斬る事だけを考えられないか?」

「うーん、グランドスラムを当てる事はやってみてるんですけど、上手く躱されちゃって………。もう、あかりちゃんが「切り札」使うって言ってますけれど………。」

「風香が何か策を考えている。もう少し、同じように粘る事は出来ないか?」

 

ユーグはそう言うと、コックピットに周りの状況を映し出す。

やはり、人々の避難は全て完了しておらず、所々でジャンク山に隠れて震えているのが分かった。

 

「隊長~………。飛んでるから、下手に空中で爆発させたら下に破片が飛び散っちゃうよ~………。」

「ならば、何も無い所に叩き落とせ!」

「言ってる事難しいって!炎上案件だよ~!」

 

文句を言うのは、アッグに乗っている夢見りあむ。

それでも彼女は言いつけ通り、「削岩用ドリル」でひたすらガザDの隙を狙う。

只、それでもガザDは14連装と4連装の「ミサイル・ランチャー」を撃ってくるので、どうしても周りを巻き込んでしまうのだ。

炎が上がり、悲鳴も上がる様子に、ギガンを駆る砂塚あきらは歯がゆい思いをしていた。

流石に足がホイールのこの機体では、空中に飛びあがって左腕の「クロー・アーム」を当てるのは難しい。

 

「相手の人には、降りて来て欲しいんデスけどねー………。」

「ならば、俺が何とかする!」

 

ユーグはそう言うと、バーニアを吹かし空中に飛ぶ。

コロニー内だからこそ出来る陸戦機の技術ではあるが、当然ながら敵機からは良いカモになる。

案の定、「ビーム・ガン」を1機撃ってきた。

 

「当たりはしない!」

 

だが、ユーグは身を捻る様にして回避し、その流れでガザDに右腕から鞭を伸ばす。

それは、敵機の機動力を奪うショックパルスを引き起こす「ヒート・ロッド」。

ガザD1機を動けなくすると、そのまま少し開いた空間へと蹴り落とし、シールドの裏から「ヒート・サーベル」を取り出して、コックピットに突き刺す。

1機迎撃したついでに周辺を確認すると、この場所はジャンク屋の店も無く、逃げ遅れた人々も居なくて、比較的安全な区域であった。

 

「流石、隊長!」

「各機、この場所に誘い込め!まだ安全だ!」

「分かった!忍サン、あかりチャン、りあむサン、頼みます!」

 

ユーグの言葉を聞いたあきらが、咄嗟に3人に指示を送る。

まず、工藤忍がジム・スナイパーⅡのブルパップ・マシンガンを、ユーグの指定した安全地帯から撃った。

敵は反撃でミサイル・ランチャーを撃つが、走り回る事で回避。

 

「アップルーーーッ!パンチ!!」

 

その隙に辻野あかりが、ゾゴックを背後に回り込ませ、マニュピレーターでぶん殴る「アーム・パンチ」で安全地帯上空まで思いっきり殴り飛ばす。

 

「じゃあ、トドメっと!!」

 

最後にその場所に陣取っていたりあむが、削岩用ドリルを上からコックピットに叩きつける事で、安全地帯に叩き落とした。

爆発も起きないので、周りに被害を起こさないで済む上手い作戦。

只………それでもりあむのボヤキは止まらない。

 

「あー、やっと2機………って、後こっち側だけでも4機もいるんだよね………。」

「文句言わないで下さい、りあむさん!風香さんの策に期待しましょう!」

 

ネガティブに愚痴りまくる彼女に対し、あかりが何とかしようと叱咤激励をした。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

一方で南西側でも、藤原肇、喜多見柚、神谷奈緒、渋谷凛の4人が6機のガザDを相手に苦戦をしていた。

普通に戦うのならば、そこまでは厳しく無いだろう。

だが、逃げ遅れた人に気を配らなければならないというのならば、話は別だ。

 

「まず………1機!!」

 

慎重に慎重を重ねた結果、肇のヅダがようやくガザDのバーニア部分を破壊して誰もいない場所へと落とす。

脱出したパイロットは、2機目のガザDに回収され、そのままエンドラへと帰って行く。

 

「せめて、飛行するモビルスーツで無ければ、もう少し戦い易いんだけれど………!」

 

ガンダムを操る凛も、「ビーム・ライフル」が撃てない事が、逆にネックとなってしまっていた。

最終的には柚のオクト・エイプが持つ100mmマシンガンを借りて、3機目の迎撃を狙うが、倒しきれない。

 

「何とかしたいけど、どうしよっか?」

「粘るしか無いだろ?風香が何かしようと………って、不味いぞ!?」

 

奈緒に衝撃が走ったのは、エンドラの砲塔部分が動いたから。

しびれを切らしたゴットン・ゴーが、主砲………「単装メガ粒子砲」を撃とうとしたのだ。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「本当に風香の言う通り、主砲で牽制射撃を行おうとしてる………。って、砲門の角度ヤバッ!?」

 

追いかけっこをしているマシュマーに気を使ったのか、思った以上にアーガマより遥か前のジャンク山に砲門が向いていた。

その場に突っ込みそうになった加蓮は、一度この場を離れた方がいいと判断する。

 

「!?」

 

だが、そこで彼女は見てしまった。

怯えるようにしながら、ジャンク山の影に隠れていたやよい達の姿を。

 

「アレじゃあ砲撃の直撃を免れても、飛んできたスクラップの破片で死ぬ!!」

 

加蓮は腹を括ってハイゴッグを走らせ、彼女達の前に座り込むと、長い両腕でやよい達3人とハロを包み込むようにした。

その次の瞬間………砲撃が飛来し、スクラップが嵐のように飛来してきた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「アーガマの諸君、これは牽制砲撃だ!次はマシュマー様に代わって、貴様たちのブリッジを破壊する!」

 

今度はエンドラからゴットンの警告が聞こえる。

マシュマーはそれに気づかない程、Zガンダムとの追いかけっこに躍起になっており、止める事が出来ない。

それ故に、何とかしようとしたゴットンは、ネオ・ジオンの立場から見れば正しかっただろう。

しかし、下手にメガ粒子砲を撃つと、冷却の都合上、次発までに時間が掛かってしまう問題がある。

 

「いいですか、ブリッジは狙わないで下さい。ここで撃ち落としたら、周囲に火事が起こる所では済みませんから。」

「アイアイさーってヤツネー。」

 

ブランリヴァルのブリッジで風香は、フェイフェイ達に指示を出し、浮上と同時に機首をエンドラへと向ける。

もしも今の状況で、ガザD達を撃ち落とそうとすると、どうしても手間取る上にその間に大きな被害が出てしまう。

ならば、手っ取り速いのは、搭乗用の母艦にこの場を退場して、一緒に引いて貰う事であった。

故に、風香達は牽制砲撃の後をずっと我慢して待っていた。

 

「繰り返しますが、一発勝負です。………「ミサイルランチャー」用意!目標、艦首砲塔、艦艇砲塔2機、ブリッジ前後砲塔2機!」

 

デッキの左右からミサイルランチャーが出てくる。

ブランリヴァルの動きに気付いたゴットンは、慌ててエンドラを動かそうとするが、その時にはもう遅かった。

 

「計5発、全て外さないで命中させて下さい!」

 

エンドラの真下の人達だけでも優先的に避難して貰ったのは、破壊したエンドラの破片の落下があるから。

風香は最初から、この瞬間だけを待っていた。

一番被害が出ない策だと信じて。

 

「砲撃………開始!!」

 

そして、ブランリヴァルから、ミサイルが5発、ジャンク山の人々の上空を飛来する形でエンドラへと飛んでいく。

事前にロックオンをしていただけあり、全てがちゃんと命中した。

 

「マ………マシュマー様~!!エンドラ保ちません!後退します!!」

 

ゴットンが、やけに情けない声を発しながらエンドラを回頭させて「シャングリラ」から脱出していく。

勿論、追い打ちで連装メガ粒子砲を撃てば、沈める事も出来ただろう。

しかし、ここはコロニー内だから下手に撃つことは出来ない。

何より、こうして母艦を残しておくことで、生き残ったガザDの部隊の大半が撤退を選べる。

これ以上、「シャングリラ」で余計な住民の犠牲を出さずに済むのだ。

 

「………後、残っているのは?」

「バーニアに弾が掠ったのか、撤退出来ないガザDが1機。後、面倒な追いかけっこをしているガルスJ1機ネー。」

「そうですか………。再び艦を降下させて、補給に出ている乗組員達に指示。ブランリヴァルとキャリー・ベースに、逃げ遅れた人達を一時的に収容します。」

 

風香は、現在キャリー・ベースを管理している千川ちひろとも話をして、艦を緊急の避難先として受け入れる方針も固めていた。

ここまでしっかりと自分の役割をこなした事で、後は比較的皆が安全に戦えるだろう。

しかし、風香の顔は晴れない。

 

「正しかったんだよね………一番被害を出さない為の方法として。」

 

牽制砲撃をさせる事が前提の作戦だったので、ブランリヴァルにエンドラの単装メガ粒子砲が向く事は無かったし、回避した時の流れ弾でコロニーに致命的な穴が開く事も無かった。

ジャンク山に向けられたからこそ、スクラップがクッションになってくれたのだ。

だが………それまでのガザD部隊による被害と、エンドラの牽制砲撃による被害も鑑みれば、少なからず人的被害は出てしまっていた。

一番良い策を考えたとはいえ、被害を出してしまった事で、まだ16歳の艦長は辛そうに顔を上げる。

その様子に、同じ艦長としての苦悩を感じた高垣楓は、何か言いたかったが、結局何も言えなかった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「……………。」

 

やよいは暗闇の中で目を覚ます。

目をパチクリさせ、左右を見ると、近くにネネとあずきが居た。

あずきの方は、やよいと同じように目を開閉させ、慌ててネネの様子を確認する。

彼女は酷く汗をかいていたが、まだ呼吸はしっかりとしていた。

 

「あずき達、確か砲撃に巻き込まれそうになって………。」

「ようこそ、加蓮ちゃんの癒し空間へ………と。」

 

急に目の前が明るくなったと思ったら、コックピットのハッチが開いており、コロネのツインテールの少女………やよいはまだ知らなかったが、北条加蓮が顔を覗かせていた。

だが、その顔はネネと同じく脂汗が滲んでいて、脇腹からは血が流れている。

 

「か、加蓮さん!?」

「ゴメン、あずき………。ちょっと衝撃で、古傷が開いたみたい。やよいも、初めましての挨拶するには、綺麗な顔じゃないよね。」

 

冗談を言っている所を見ると、相当辛いのかもしれない………とやよいは感じた。

よくよく周りを見てみると、飛来してきたジャンクの破片の嵐がドームのように出来ている。

その中にハイゴッグが、上手く体と長い腕で身を挺して庇ってくれる形になっていたのだ。

 

「私達の背中に当たってるのは………手ですか?」

「そう、マニュピレーター。とりあえず、ネネを連れて行きたいけど………。」

 

そこで加蓮がコックピットから倒れて落ちそうになり、あずきが慌てて支える。

どうやら、古傷はかなり深刻であるらしく、加蓮もまた危ない状態になっていた。

 

「どうしよう……………。」

 

もう半分気絶しそうになっている加蓮を、コックピットの後部に押し戻しながら、あずきが力なく呟く。

だが、ここでハロが叫んだ。

 

「生キテル!生キテル!ハイゴッグ、生キテル!」

「動くんですか?」

 

やよいが問うと、ハロは飛び跳ねた。

どうやら、その気になれば、まだ動かせるらしい。

だが………あずきは、恐怖で歯をガチガチと鳴らしていた。

やよいは知らなかったが、「グローブ」で見た風景が、まだトラウマとなって残っているのだ。

傍目から見ても、彼女が戦場という場で戦えないのは、見て分かった。

 

「……………あずきさん、2つお願いを聞いて貰えるでしょうか?」

「え………?」

 

やたら冷静になったやよいの言葉に、あずきは振り向く。

やよいはまず、協力してネネを、加蓮と同じようにハイゴッグのコックピット後部に乗せる事をお願いした。

 

「もう1つは……………。」

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

瓦礫の中に膝を付き埋もれていたハイゴッグが、派手な音を立てて立ち上がり、ジオン特有のモノアイを光らせる。

そのコックピットには、ベルトを付けて、やよいが座っていた。

小さな両肩には、あずきの腕が乗っている。

後ろでネネと加蓮の脇の下に腕を入れる形で、そのまま彼女を支えていたのだ。

 

(もう1つは……………私を、支えて下さい。)

(やよいちゃんを………支える?)

(はい………弱虫な私の「心」を………挫けないように………お願いします。)

 

初めて戦場に迷い込んで来た時はモビルアーマーのGディフェンサーだったので、この重苦しい空気の中で、戦闘用のモビルスーツに乗るのは初めてであった。

その空気を吸いながら慎重に歩いて、キャリー・ベースまで帰ろうとして、やよいは気付く。

こちらに対し煙を上げながらも、「ビーム・サーベル」を構えたガザDの姿を。

やよい達は知らなかったが、肇達と戦っている中で凛の射撃を受けて、中途半端にダメージを受けた機体であった。

 

「こうなったら………1人でも道連れにしてやる!」

「……………。」

 

相手は自分を奮い立たたせるように、自棄になってマイクで叫ぶ。

一方で、やよいは静かであった。

1人ならば、確かに何の抵抗も出来ないまま、すぐに死んでいる。

だが、この機体には………自分を助けてくれた、ネネが、あずきが、加蓮がいる。

 

「……………背負っているんです………私も………伊織ちゃんや………みんなの想いを!」

 

誰も死なせない。

それが、やよいの想いであった。

故に、彼女もまた魂を奮い立たせるように、雄たけびを上げた。

 

「うああああああああああッ!!」

 

 

本当の意味での、高槻やよいの初陣。

命を懸けた戦いに、彼女もまた赴く。




この話のエンディングに、ガンダム種運命最初のエンディングである、玉置成実さんの「Reason」を流したくなりました。
群像劇とはいえ、この作品の中心主人公である高槻やよいさんが最初に戦う乗機が、ハイゴッグになるとは、誰も思わないでしょう。
…ゴメンなさい、作者自身も流れで書いていたら、いつの間にかハイゴッグの流れに惹かれてしまいました。
恐るべし、ハイゴッグ(何)。

しかし、ガザDは冷静に考えてみれば、ジャンク山の戦闘では非常に厄介な存在。
飛べるし機動力が高いし、陸戦機で周囲の被害を抑えながら戦わないといけない側にとっては、かなり面倒極まりないです。
そう考えると、今回浅野風香さんに取って貰ったように、搭乗する母艦の方を先に撤退して貰った方が無難とすら思えますね。

次回、高槻やよいさんの「初戦闘」。
仲間を守る為、ハイゴッグが火を噴きます!
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