モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第32話 PHASE3-8『ムウとクルーゼ』

栗原ネネ、桃井あずき、北条加蓮と自分を守り支えて来てくれた人々を救う為に、ハイゴッグを咄嗟に動かす事になった高槻やよい。

彼女は満身創痍のガザDと対峙し、苦悩の末、初めて人を殺す。

 

その様子を目撃して憤りの言葉を投げかけて来たガルスJを駆るマシュマー・セロに対し、逆に怒りを爆発させるやよい。

マシュマーが攻めてこなければ、「シャングリラ」の人々や、ネネ達に被害が出る事は無かった。

動揺した彼に対し、猛攻を仕掛けるやよい。

実力差はあったが、何とか痛み分けに持っていく事が出来、無事にユーグ・クーロ達のファントムスイープ隊と合流する。

一時的に指揮下に入っていた工藤忍に大丈夫だと言われた事で、やよいはようやく安堵し、人を殺した実感から盛大に嘔吐してしまう。

だが、ジェネレーション・ブレイクが起こり、まだまだ戦いは続きそうであった。

 

 

 

「次は………何処に何が来る?」

 

ジェネレーション・ブレイクを感知しながらも、忍はジム・スナイパーⅡを歩かせ、出来る限り一直線にキャリー・ベースへと向かって行く。

コックピットの後ろには負傷したネネと加蓮、それに初戦闘で疲労しきったやよいと、ずっとその手を握っているあずき………それにハロが狭い中にいた。

忍があまり機体を飛ばせないのは、衝撃で彼女達を傷つけないようにする為だ。

やよいは、自分はハイゴッグに乗るから………と言ったが、嘔吐が酷かったうえに、もうメンタルが厳しいと判断されたので、破損した機体は放棄し、こうして相乗りさせて貰っている。

また、嘔吐した為、汚いからと拒絶もしていたが、あずきはそれに構わず、しっかりとやよいの手を固く握りしめ、最初にお願いされた通り身体も心も支えていた。

 

「もうすぐ着くから………っと、ファントムスイープ隊の人達が出迎えてくれてる。」

 

ユーグ隊長が浅野風香艦長に頼み、予め指示を出してくれたのだろう。

キャリー・ベースの前では、ストレッチャーを3台運んできた白衣に包んだ隊員が、小日向美穂と共に、真剣な顔で待っていてくれた。

忍は上手く機体を動かして立て膝を付くと、マニュピレーターを下に伸ばす。

直ぐに隊員2人がその上に乗り、コックピットの前まで運ばれた。

 

「要救助者2名!体調不良も1人!………大切に扱ってあげてね。」

 

忍の言葉に一瞬だけ敬礼した2人の隊員は、ネネを支えて下ろす。

そして、ストレッチャーに乗せると、そのまま別の隊員がキャリー・ベース内へと素早く運送していった。

同じように加蓮もストレッチャーで運び、最後にやよいの肩を支えたあずきがジャンク山に下りる事になる。

 

「もう大丈夫だよ、やよいちゃん………。」

「ゴメンなさい………足を引っ張って………。」

「何言ってるの。やよいちゃんのお陰でみんな助かったんだから。………本当にありがとう。」

 

下ろしたやよいを隊員達に渡したあずきは、ストレッチャーに乗せられた彼女の手を、ずっと握っていた。

今は、男性の連邦軍人がトラウマとか言っていられない。

只、やよい達を助けたいという想いが、あずきにはあった。

 

「あずきちゃん………後、お願いね。」

 

キャリー・ベースに搬入される面々を見た忍は、コックピットを閉じ、機体を立ち上がらせる。

綾瀬穂乃香に通信を送った所、彼女は北側の人工林からシグー1機とジン6機が出現したと報告してくれた。

 

「アタシも行った方がいいかな?」

「キャリー・ベースの直営隊に回って欲しいそうです。智絵里ちゃんがいますが、怪我をしたジャンク山に住まう人々が、かなり来ているみたいですから。」

「だね………。」

 

周りを見るだけでも、怪我人が沢山運ばれている。

副長の千川ちひろは、格納庫も臨時の治療施設にするように手配を行い、美穂を始め、成宮由愛や古賀小春も手伝っているらしい。

「ヘリオポリス」の時といい、如何に戦いが酷い被害をもたらすか、改めて確認出来た。

 

「藤原隊とファントムスイープ隊は、引き続き、南側の防衛をして………これは!?」

「どうしたの!?」

「更に1機、コロニーの北側の山々から更に出現!モビルアーマー………「メビウス・ゼロ」です!」

 

示された映像を確認してみると、オレンジの4つのバレルを背負ったモビルアーマー………ムウ・ラ・フラガの乗るメビウス・ゼロがコロニー内に出現していた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ええい!ザフトを追いかけていたら、見知らぬコロニーとはどういうことだ!?しかも、奴等、ついでに停泊中の戦艦を落とす気か!?」

 

ムウはコロニー内に出ると、上空を飛来しながら状況を確認していく。

その様子を確認した指揮官用のシグーを駆るラウ・ル・クルーゼは、忌々しそうに呟く。

 

「どうやら、いささかうるさいハエも1匹紛れ込んだようだな。私がお前を感じるように、お前も私を感じるのか?不幸の宿縁だな。ムウ・ラ・フラガ!」

 

因縁があるのか、お互いマイクを付けて会話を繰り広げる2人。

しかし、余程関わりたく無いのか、ムウもまた思いっきり鬱陶しそうに叫んだ。

 

「ラウ・ル・クルーゼ!いい加減しつこいんだよっ!!」

「この宿縁が導くその答え………確かめさせてもらう。」

 

ムウとクルーゼ………何かしらの関わりのある2人が、互いを排除するために向き合う。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ムウさん!?一体、どうしてこの「シャングリラ」に!?」

「お、意外と早い再会だったな。」

 

マイクで会話をしていた為か、ブランリヴァルの方にいる高垣楓は、ムウとの再会に驚きを隠せないでいる。

彼も楓の存在には驚いたものの、そこは熟練のパイロットとして上手く流し、最低限の事だけ聞いてくる。

 

「どうも奴等と交戦している最中に、次元の歪みに巻き込まれたみたいでな。アークエンジェルとはぐれてしまったんだよ。どうすれば戻れるかね?」

 

そのムウのメビウス・ゼロのモニターに現れたのは、珍妙な人形姿のアプロディア。

彼女は、ムウに会釈をすると説明していく。

 

「歪みは局地的な現象ですから、この区域を脱出すれば元の場所に戻れるはずです。逆に言えば、この区域にいる限りは、新たな歪みに巻き込まれる危険性はあります。」

 

要はこの「シャングリラ」から脱出しない限り、元の場所には戻れないという事であるらしい。

分かりやすい説明に納得したムウは、睨むようにクルーゼのシグーを見る。

 

「そうかい。じゃあ、この危険人物達も追い払わないと安心して帰れないな!気を付けろ、奴等は停泊中の艦を落とす気だぞ!」

「ちょ!?あのジンで攻め入る気っすか!?」

 

その言葉に過剰に反応したのは、ジュドー・アーシタにZガンダムの乗りこなし方を教えているジム・クゥエルに乗った吉岡沙紀。

ジュドーはようやく変形の仕方を学び、ウェイブライダー形態からZガンダムに戻ると、沙紀に問う。

 

「沙紀さん、ジンってそんなにヤバいモビルスーツなの?」

「実際に鹵獲したジンを見たから分かるんだけれど、あの機体、バルルス改っていう大型のビームランチャーを持っているっす!あんなものをバンバン大勢でぶっ放せば、このコロニーも楽に壊せるっすよ!!」

「マジ!?」

 

コロニーを壊すという言葉に、ジュドーの顔が強張る。

そうなったら彼の仲間は勿論のこと、溺愛している妹リィナ・アーシタに危機が及ぶのは、明白であった。

同じように顔を強張らせたのは、アーガマ艦長のブライト・ノア。

彼に対し、ムウがハッキリと告げる。

 

「ヘリオポリス崩壊の噂は、そっちにも伝わっているだろう!コイツ等は証拠を消す為なら、コロニーも潰す部隊だ!!」

 

唖然とする一同に対し、クルーゼが敢えてマイクで告げる。

 

「お喋りが過ぎるな、エンディミオンの鷹は!」

「黙れ、クルーゼ!そのふざけた口の中にちくわツッコむぞ!!」

「………余程、消されたいみたいだな貴様は。望み通り、葬ってやろう!!」

 

どうもちくわが嫌いである事は図星であるみたいだが、危険な部隊であるのも確かであるらしく、一斉にジン6機が、そのバルルス改特火重粒子砲を放つ。

アーガマまでは届かなかったが、北側入口のジャンク山を吹き飛ばし、スクラップ品を溶解していく。

 

「このままじゃ………やられちゃうって所じゃない!何とかしないと!」

「協力して対処するっすよ!武装の使い方、分かったっすよね?」

「分かりました………!これ以上、ジャンク山には近づけさせないよ!」

 

Zガンダムに乗ったジュドー、沙紀のジム・クゥエルに加え、護衛の高森藍子のハイザック・カスタムに島村卯月のジムⅢ、そして本田未央のパワード・ジムが立ち塞がる。

しかし、下手な武装は、とてもじゃないが使う事が出来ない。

特に藍子のハイザック・カスタムは、狙撃用ビーム・ランチャーを封じられているのが痛かった。

 

「どうやって………。」

「あまりスマートな戦い方じゃないけれど、数で押しましょう。………まずは任せて貰ってもいい?」

「貴女達は………!?」

 

藍子が悩む中で、更に東側から4機のモビルスーツが飛来する。

その内の1機は並木芽衣子のハイブースト・ジムであったが、残りの3機は更に変わった装備をしていた。

 

1機目は、今通信を送った服部瞳子が乗っているジムⅢ。

しかし、卯月機と違い、接近戦用の大型の「ビーム・ジャベリン」を構えていた。

 

2機目は、水木聖來が駆っている「ジュラッグ」。

「スレッジ」と呼ばれるスノーボードのようなシールド兼高速滑走用のオプション兵装が特徴的な機体だ。

 

3機目は、美少女仮面・マコマコリンが搭乗しているゴーグルアイの黒い機体である「ダークダガーL」。

色々なオプション兵装を付けられるが、今回は「ジェットストライカー」という大気圏飛行用のパックを装備していた。

 

芽衣子のハイブースト・ジムも含め、コロニー内の戦闘向けの機体ばかりである。

彼女達は藍子達の前に出ると、まずは聖來が勢いよく叫んだ。

 

「じゃあ、ダンスしよっか!!」

 

言うや否や、スレッジに乗ってジュラッグを加速させる。

ジンの1機がバルルス改特火重粒子砲を放とうとするが、それより早く至近距離まで滑り込むと、手持ちの「ビームマシンガン」であっという間にハチの巣にする。

爆炎が登る中、ジンのパイロット達は76mm重突撃機銃に切り替え、撃ち落とそうとするが、踊るように舞うジュラッグの動きについて行けず、間違えて同士討ちで1体また爆散してしまう。

 

「何をやって………!?」

 

クルーゼが舌打ちしながら聖來機を狙おうとするが、ここでクナイが飛来し、傍にいたジン2機が爆散。

マコマコリンがダークダガーL「スティレット」を素早く投げつけてコックピットに炸裂させたのだ。

 

「やーりぃ!………後任せますよ!」

「じゃ、1体貰いますね!」

 

更に、残ったジンも、芽衣子のハイブースト・ジムの突撃からのビーム・サーベルで、1機が袈裟斬りで斬り伏せられる。

更に、最後の1機も左から右に振られた重斬刀を、屈む形で躱した瞳子のジムⅢが、しっかりビーム・ジャベリンで薙ぎ払い両断する。

 

「隊長さん、退出したらどう?」

 

あっという間に部下達を全滅させられた挙句、瞳子に撤退を勧められるクルーゼ。

この早業には藍子達も驚きを隠せないでいた。

だが、局地戦向けの機体であるし、何よりジャンク山の人々の被害を鑑みなくて済む場所での戦闘であるのだ。

ガザDに苦戦していた時とは、状況が明らかに違う。

 

一方でクルーゼは、瞳子達の余裕を持った態度に一瞬唇を噛むが、すぐさま不敵な笑みを浮かべる。

この時の為の、黒白の騎士………黒川千秋のシグーアサルトであるのだから。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「これで………いいのよね!」

 

北側に戦場が移行している中、千秋は一気にコロニーへと侵入し、機動力を活かして南側から強襲。

キャットゥス500mm無反動砲をしっかりと構えると、ジャンク山の上を飛行し、アーガマを狙う。

こちらに気付いた機体も何機かいたが、構わずに直進。

アーガマさえ沈めてしまえば、被害は出ない。

そう、出ない………はずだった。

 

「あ!?」

 

だが、ここで千秋は気付いてしまう。

アーガマのブリッジを破壊した影響で、万が一ではあるが戦艦を爆散させてしまったら、周りに爆風が飛ぶのでは無いか?

そうなったら、甚大な被害が出てしまうのでは無いか?

あの「ヘリオポリス」の居住スペースで見かけたような、子供もまた………。

 

「ど、何処か別の場所を………!?」

 

アーガマに距離が近づく中で、千秋は焦る。

狙うべき場所が分からない。

被害を出さないようにする策が、思い浮かばない。

焦りが最高潮になる中で………天啓が降りる。

 

「そうだわ!無理に撃たなくても!!」

 

要は、降伏させてしまえばいいのだ。

ブリッジに、キャットゥスを突きつければいいだけでは無いか。

そう思った千秋は、更にアーガマとの距離を詰める。

だが………次の瞬間であった。

手に持っていたその無反動砲が、突如爆散したのだ。

 

「ど、何処!?………って、ええ!?」

 

千秋は驚愕する。

アーガマの前のジャンク山が動いたかと思いきや、マントのように絡めとられたスクラップ品が、突如ひるがえる。

中から現れたのは、ザク・バズーカを構えた安斎都のザクフリッパー。

ゲル状の物質であるフリージーヤードで、即席のギリースーツを作り出して、アーガマ南部のジャンク山に隠れていたのだ。

 

「擬態してた!?くっ………!」

 

慌てて重斬刀を持つ千秋であったが、それも取り出した瞬間に、都のザク・バズーカにより先制で破壊される。

一度退かないと、危ういと思った矢先であった。

背後に機体を察知したと思いきや、背中のバーニアを破壊される。

 

「藤原………肇………!?」

「その迷いに免じて………命は助けます。」

 

いつの間にか回り込んでいた藤原肇のヅダにより、機体を半壊させられた千秋は、そのまま煙を吹いて落下する。

衝撃で千秋はコックピット内で揺さぶられ、気絶する事になった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「さぁて、隊長さん。奥の手は封じられたみたいだが、どうするよ!?」

「………固執し過ぎれば元も子も無いか。この場は退かせて貰うッ!」

 

ムウの言葉を受け、クルーゼは今度こそ歯ぎしりをした。

まさか、まだこんな頭の回る伏兵がいるとは思っていなかったのだ。

厄介な戦力がいたという事実は認めないといけないと思いながら、彼は身をひるがえし、素直にコロニーから撤退をする。

 

千秋を回収する余裕までは無い。

結果的に、彼女は気絶したまま「シャングリラ」に置いて行かれる事になった。

 

そして、その瞬間、またジェネレーション・ブレイクが発生する。

 

 

再び起こるジェネレーション・ブレイク。

今度の敵襲は果たして?

そして、黒川千秋はどうなるのか?




クルーゼ隊の襲撃と共に、服部瞳子さんや水木聖來さん達の機体のお披露目になりました。

瞳子さんのジムⅢは、ガンダムUCでジュアッグを倒した機体だと思って貰えると、分かりやすいと思います。
島村卯月さんの機体がgジェネワールドでの赤色系であるのに対し、彼女の機体はgジェネオーバーワールドでの緑色系ですね。

聖來さんはスノーボードやスケートボードが得意そうなジュラッグ。
ダンサーだから、ここら辺は扱いが上手いかなって思ったのが、選考理由になります。

尚、安斎都さんは頭脳戦が得意そうなサポート機体。
並木芽衣子さんは、長距離も旅できそうな勢いの機体というのが、コンセプトです。

彼女達にも乗り換えがあるので、次はどんな機体に乗るか楽しみにして貰えると嬉しいですね。
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