モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第35話 PHASE3-11『種割れ』

ドレル・ロナのベルガ・ダラス率いるクロスボーン・バンガードと、ジャンク山の東側で対峙した水木聖來、並木芽衣子、美少女仮面・マコマコリン。

ファントムスイープ隊の尽力で人々の避難が完了して動きやすくなった事も有り、聖來達は実力と機体性能に溺れるドレル達に対し、逆に己の実力を遺憾なく発揮していく。

 

目の前でユーグ・クーロ達をアーガマの護衛に回した事で、ドレルの神経を逆なでするが、対峙した聖來はダンスを踊るようにジュラッグを操り、ついには追い込むことに成功。

だが、ドレルの最後の抵抗にあってしまい、逃がしてしまった。

 

一方でアーガマの南部では渋谷凛・喜多見柚・安斎都の3人が、新たなるジェネレーション・ブレイクに衝撃を受ける事になる。

シークレット・ユニットが複数出現したかと思いきや、何と「シャングリラ」の街並みを破壊して炎に包んできたのだ。

 

気絶した黒川千秋を捕虜として回収しないと、藤原肇が捕らえた意味が無いと言う都は、凛と柚を撤退させて、1人でユーグ達の増援が来るまで耐える選択をする事に。

 

ハイゴッグを率いるケンプファーのニューロであるミハイル・ニューロと、ザクフリッパーで対峙した彼女は、何故街を炎に包んだのか問う。

すると、自分勝手な人間へのバルバトスの示威行動だと説明する、ミハイル・ニューロ。

その理由を聞いた途端、グローブ事件を思い起こした都は憎悪の感情を隠さなくなり、ミハイル・ニューロに挑んでいく事になる。

 

索敵等で補助をしながらも、キャリー・ベースから見ている事しか出来ない綾瀬穂乃香。

冷静に冷酷に戦う都は、不利な状況を耐えきる事が出来るのか………?

 

 

 

「やれやれ………そんな機体じゃなければ、死闘を楽しめたかもしれないのにな!………喰らいなぁッ!!」

 

ミハイル・ニューロはバックパック両側面にある、二丁の「ジャイアント・バス」を構える。

しかし、これはフェイント。

ケンプファーが砲口を向けて注意を引いた瞬間に、都のザクフリッパーの右に回り込んでいたハイゴッグが、魚雷発射管から対地ミサイルを撃とうとしたのだ。

 

「考えが甘いですね………酔いすぎじゃないのですか?」

 

それに対し、都は足下に落としていたザク・マシンガンを左足で右に蹴飛ばす。

魚雷発射管から撃たれたミサイルは丁度、マシンガンに当たり、爆発を撒き散らす。

 

「おおッ!?」

 

意表を突いた戦い方に驚くミハイル・ニューロは、すぐさまジャイアント・バズを放つ。

だが、それを回避しながら、凛から借りたビーム・サーベルを2本携えた都機が、黒煙の中に突撃してハイゴッグを正面から貫く。

ハイゴッグはスパークして爆発を起こすが、その前に離れた都機はすぐさま左に振り向き、ケンプファーとの戦いに備えた。

ところが、その左腕に何かが巻き付いた。

 

「!?」

「悪いな、嬢ちゃん。俺も一応、あのバルバトスの指令を聞かないといけないんでな!」

 

それが、チェーン状に機雷が繋がっている「チェーン・マイン」だと分かった途端、都は迷わず右腕のサーベルで、左腕を斬り捨て飛びのく。

次の瞬間、爆発が起き、捨てられた左腕は木っ端微塵になった。

しかし、それだけではケンプファーの猛攻は終わらない。

すかさず専用ショットガンを構えると、ミハイル・ニューロは散弾をザクフリッパーに喰らわせた。

 

「サービスするぜぇッ!!」

 

直撃すれば間違いなくやられる。

都は後ろに下がりながらも、右腕でコックピットを覆い、急所を庇う。

 

「ぐっ………!?」

「都さんッ!?」

 

衝撃により、都はコックピット内で揺さぶられ、穂乃香の悲鳴が飛ぶ。

身体を激しくぶつけた事で全身に痛みが生じ、喉の奥から血の臭いがこみあげて来るが、逆にそのお陰で意識が飛ぶ事は無かった。

 

(機体は………?)

 

状態を確認した都は、顔をしかめる。

「カメラ・ガン」を搭載した頭部はセンサーごと破壊されており、散弾を受けた上半身も所々煙を吹いている。

コックピットを庇った右腕に至っては、ほぼ千切れかけており、手に持っていたガンダム7号機のビーム・サーベルも爆発したのか無くなっていた。

 

「勝負あったな、嬢ちゃん!」

「支援機を失ったケンプファー1機で………部隊を全滅させられるとでも?」

「地獄の御供に、嬢ちゃんのような死に損ないを、1人や2人招く事なら難しくないぜ!」

 

勝ち誇るミハイル・ニューロを前に、都はシークレット・ユニットという性質を少し理解する。

基本的に、このニューロは元々のオリジナルを模したAIだ。

だが、バルバトスへの忠誠心を加えられた事により、自爆でも道連れでも何でもしようとする。

 

「さぁて、お喋りは終わりだ。まずは、お一人様、地獄にご招待だ!」

 

ミハイル・ニューロは、再び専用ショットガンを構える。

一番手負いの機体を撃破するには効率のいい武装を選ぶところを見ると、こういう所は油断をしていない。

 

「都さん!逃げて下さい、都さん!!」

 

穂乃香の悲鳴が聞こえるが、都はまだ諦めて無かった。

まだ、下半身が動いたので、足を動かし機体を必死に走らせる。

 

「おいおい、往生際が悪いぜ!」

「何とでも言ってください!13年前も逃げて逃げて逃げぬいたんだ!!」

 

専用ショットガンを撃つケンプファーの攻撃を紙一重で交わしながら、都は時計回りに動く。

だが、次はしっかり当てようと照準を定めたミハイル・ニューロに対し、ザクフリッパーの足が止まる。

 

「都さん!?」

「時間稼ぎも無駄だったなぁ!!延長戦の前に、サヨナラだぜぇ!!」

「やめてええええええええ!?」

 

目の前で、大切な友達の恩人である人物が殺される。

絶望を感じた穂乃香が絶叫した。

しかし、都は口の端から血を流しながらも、少しだけ不敵な目を見せたのだ。

 

「アディショナルタイムは………長めに取らせて貰いますよ!!」

 

彼女はケンプファーの方に向き直ると、足下にはジャンク山を構成している脆いスクラップ品しか無いのに、その1つを思いっきり蹴り上げる。

すると、とんでもない事に、足下のスクラップ品が次々と複数津波のように捲れあがり、ショットガンの散弾を防ぐ盾になったのだ。

これには、ミハイル・ニューロも唖然とする。

 

「な、何だ!?魔法でも使ったのか!?」

「ちょっとした………トリックです!!」

 

都が蹴り飛ばしたのは、千秋のシグーアサルトが襲って来た時に、自身の身を隠していたギリースーツ。

フリージーヤードのジェルでスクラップ品を巻き込んで作った擬態用のマントは、散弾くらいならば都を守ってくれた。

 

「頭脳戦ってヤツですよ!!」

 

完全に意表を突かれたミハイル・ニューロに対し、都機は思い切って突進し、左足で専用ショットガンを蹴り飛ばす。

 

「やってくれるなぁ!!」

 

尚も、右足で蹴りを喰らわせようとするザクフリッパーに対し、ケンプファーは後ろに飛びのくと、素早く脚に搭載された「シュツルム・ファウスト」を取り出して発射。

都機も反射的に後ろに飛びながら、ムエタイのように右足を曲げて防御するが、当然ながら足は吹き飛ぶ。

更に確実に仕留める為に、彼はザクフリッパーの左足にもシュツルム・ファウストを飛ばそうとした途端であった。

 

「ッ!?」

 

そこに細いビームが飛来し、咄嗟に手から離したシュツルム・ファウストを爆破させる。

 

「誰だぁ!?死闘を邪魔する空気の読めないヤツは!?」

 

「はいはーい、どうせ、空気なんて1つも読めないりあむちゃんだよ~。悪かったね。」

 

何処か投げやりな言葉でジャンク山の物陰から現れたのは、夢見りあむのアッグ。

彼女は削岩用のサポート兵装である「レーザートーチ」を攻撃に応用したのだ。

そこに、砂塚あきらのギガン、更に辻野あかりのゾゴックも飛び出してくる。

加えてジャンク山を跳躍するようにやってきたユーグのグフカスタムが、ヒート・ロッドを放ち、ケンプファーの機動性を奪おうとしてきた。

 

「おいおい、ここで増援か!?」

 

ケンプファーは素早く飛びのきながら、ビーム・サーベルを握ってその鞭を斬り落とす。

その間に、あきらのギガンのクローアームで無理やり引っ張られる形で、都のザクフリッパーは戦線を後退。

ボロボロになりながらも、都は本当に単機でユーグ達の到着まで耐えたのだ。

 

「都サン、大丈夫デスか?」

「とりあえず、生きています。………凛さんの言う通り、確かにカッコつけるべきではありませんでしたね。」

 

口から血を流しながら苦笑する都は、自分の感情に任せた行動に呆れていた。

だけど、あのニューロ相手に、決戦兵器ガンダムという切り札を持つ凛や局地戦での機動力で劣る柚を、まだ、ぶつけたくは無かったのだ。

とはいえ、自分の役目が終わってみれば、結果はギリギリだ。

 

「26歳という年になるまで、ひたすら鍛えたつもりでしたが………弱いですねぇ、まだまだ。」

「支援用のザクフリッパーで、そこまで出来るだけでも上出来デス。後は、隊長達に任せましょう。あかりチャンも、「本気」出すみたいデスから。」

 

あきらは少しだけ嘆息し、キャリー・ベースへと都を連れて向かって行った。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ミハイル・ニューロのケンプファーには、3機の機体が張り付いていた。

しかし、元々道連れを狙っているニューロは、そんな状況に恐怖を抱く事も無い。

これまでと同じように、マイク越しで強気の言葉を並べていた。

 

「さぁて、俺と地獄に行くのはどいつだ!?」

「………じゃ、私が相手するんご。」

 

一番実力の高いユーグが前に出そうであったが、ここで反応したのは意外にもあかりであった。

彼女は改めて「許可」を貰うと、1歩前に踏み出す。

流石にミハイル・ニューロは笑った。

 

「言っちゃ何だが、ゾゴックでケンプファーの相手が出来るのか?俺も舐められたもんだ!」

「その言葉、そのまま返します。都さんとの会話は聞いていたから、貴方の危険性も分かってるので。」

 

あかりはそう言うと、集中した。

赤茶色の瞳を閉じ、脳裏にりんごのヘタ………では無く、同じ色の種を想い描く。

そして、その種を「割った」。

 

「……………行くんご。」

 

開いたあかりの瞳から、ハイライトが消えていた。

初めてその様子を見た穂乃香は唖然としていたが、それ以上にミハイル・ニューロは、気配の変わったあかりの様子に、何か嫌な物を感じ、先制攻撃を仕掛けた。

 

チェーン・マインを投げつけ、速攻で決めようとしたのだ。

だが、あかりは腹部から大型のブーメランである「ワイド・カッター」を取り出すと投げる事はせず、両手のマニュピレーターで掴む。

そして、巻き付こうとするチェーン・マインの機雷と機雷を繋ぐチェーン部分だけを器用に斬り裂いたのだ。

 

「なッ!?」

「まずは、微塵切り。」

 

尚も、接近しながら次々と、腕を振り回し機雷を切り離していくあかり。

落ちた機雷は1つ1つ後ろでりあむがレーザートーチで爆破してくれたので、足下に制限が掛かる心配は無くなる。

だが、ミハイル・ニューロはりあむに構っている余裕が無かった。

あかりの並外れた技に、言葉を失ってしまっていたのだから。

 

「シークレット・ユニットは、遠慮しなくていいから楽ですね。」

 

そのまま、胸から小型の「ブーメラン・カッター」を移出し、ケンプファーを狙う。

ミハイル・ニューロは後ろに飛びながらジャイアント・バズを握った。

しかし、今度は手に持っていたワイド・カッターを投げつけられた事で、武装に当たり、破壊されてしまう。

 

「嬢ちゃん!?何なんだその腕前は!?」

「お前に語る言葉は無いんご。」

 

残りの武装であるビーム・サーベルを握ったケンプファーは、思い切って接近戦を行おうとする。

ところが今度は、斬り落とそうと振り上げた途端にゾゴックのマニュピレーターで素早く手首を握られ、そのまま潰されてしまう。

 

「こ、こうなりゃ………!」

「自爆もダメです。」

 

両腕で真上に放り投げられた事で、ケンプファーは自爆のタイミングを失う。

その隙にユーグが赤熱化したヒート・サーベルを投げ渡してくれる。

 

「都さんの言葉、確かこうでしたね。………さっさと消えろ、クソニューロ。」

 

そのままヒート・サーベルを真上に投げた事で、ケンプファーに突き刺さる。

ミハイル・ニューロは、最期に負けを認めながら呟いた。

 

「伊達にアプロディアに集う奴等じゃねえって事か。こりゃ、戦略の練り直しもあるもしれねえな………。」

 

そのまま空中で爆発した事で、シークレット・ユニットも全滅をする。

 

この戦闘の一部始終を見ていた穂乃香は、思わず息を呑む。

都も頭脳戦で数的不利を覆していたが、「今のあかり」はそれ以上の技量を誇っていた。

 

「一体、何が………。」

「ヘタ割れ………じゃなくて、「種割れ」みたいな物です。それより、次元圧縮プログラムっていうのは、どうなったんご?」

「あ、はい………急速に縮小しています。脅威は去ったとみていいですが………。」

 

種割れという言葉が気になったが、今は街の被害への対応が第一であった。

救急車のサイレンの音が飛び交う中、ユーグはブランリヴァルの母艦に居る浅野風香に支援を行うように要請した。

 

「りあむ、あかりを連れてキャリー・ベースに迎え。シンデレラガールズの所で、休ませて貰うといいだろう。」

「りょーかい。………とりあえず、行こっか、あかりちゃん。身体大丈夫?」

「何とか大丈夫んご。………でも、やっぱりこの「奥の手」、疲れるんごね。」

「背に腹は代えられないってヤツ?とりあえず、穂乃香ちゃん、受け入れお願いね。」

「あ、はい………。」

 

あかりとりあむの会話に、色々と疑問が尽きなかったが、穂乃香は艦長代理の千川ちひろに許可を取ると、美穂達に頼み、機体の収容の準備を行って貰った。

 

 

これで、「シャングリラ」での戦闘は、全て終了となる。

だが………様々な勢力の襲撃により、被害は相当な物となってしまっていた。




この小説内における26歳設定の安斎都には、個性とも言える中々探偵要素を盛り込めません。
その為、細かい所で彼女らしさを出せるように心掛けていますね。

例えば、搭乗モビルスーツがサポート系で頭脳戦を行うのは、そうした意識の名残。
「トリック」といった探偵アニメなどで使われそうなワードを使用したのも、都さんらしさを出す為です。
ついでに言えば、ミハイル・ニューロの野球を用いた例えに、サッカーを用いた例えで返したのは、デレマスのカードにサッカーのイラストがあったからですね。

只、そんなトリックプレーでケンプファーから耐えきった都さんと交代で戦う事になった辻野あかりさんは、更に恐ろしい「種割れ」を使用。
何で彼女が「SEED」を発現させる事が出来るのかは、設定は作っていますが、公開するのは先の話になりそうです。
その力もあるとはいえ、ゾゴックでケンプファーを倒してしまうのは、かなりレアなケースかもしれませんね。
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