モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第39話 PHASE3-15『紅蓮に包まれた街』

「シャングリラ」の戦闘で敵とはいえ人を殺めた罪悪感から、夜中に嘔吐を繰り返す高槻やよい。

彼女は自身を庇った栗原ネネが、心配する余り、無理してでも添い寝をしに来てくれた事で、その優しさが染み渡り泣き叫んでしまう。

 

その後、一緒に眠りながら自分の心の弱さを白状するやよいに対し、ネネは相手の事を心配できるのは強い証拠だと言う。

だとしても、マシュマー・セロと対峙した際は、被害を出して許せないという怒りに支配されてしまい、思い返すと自分が怖かったと、彼女と語りあうやよい。

全てを受け入れてくれるネネのお陰で、やがて安心感から眠る事が出来た。

 

翌朝、彼女が見たのは被害が出た事で、シンデレラガールズ等に責任を求めに来た「シャングリラ」の街の人々。

人の醜さを知りながらも、大切な人を奪われたら、みんな狂ってしまうものだろうか?………と考えるやよいに、ネネはだからこそバルバトスは止めないといけないと語る。

同調したやよいは、そんな人達を出さないようにもっと強くならないといけないと、自然と考えられるようになった。

 

一方、別の部屋では安斎都の所に、綾瀬穂乃香、工藤忍、喜多見柚、桃井あずきのフリルドスクエアが集まっていた。

彼女とあずきは過去に何があったのか?

あずきのトラウマにも繋がっている「グローブ」で見た光景とは何だったのかを聞くために、穂乃香達は覚悟を決める事にする。

 

果たして、都の語る過去とは?

それを聞いた穂乃香達は何を想うか?

 

 

 

「「グローブ」という街は、コロニー「サイド3」にあります。私は元々ジオン公国出身で………まあ、いわばストリートチルドレンのようなものでしたね。」

 

都が言うには、彼女は気付けば路地裏の暗がりで暮らしていたという。

勿論、お金や食料に困る日々を過ごしており、食べる物を手に入れる為ならば、危険な仕事にも飛びついていた。

その最たる例が、一年戦争末期の学徒兵としての招集。

13歳という年でジオン公国軍の一兵卒として働く事になった都は、オッゴと呼ばれるジオン版ボールを駆り、戦場で文字通り生き残りのサバイバルを繰り広げたという。

 

「ず、随分………波乱万丈の人生だったんだネ………。」

「そうですね、これ以上の波乱は無いと思っていました。………その時は。」

 

唖然とする柚に対し、都は声のトーンを落とす。

戦争における使い勝手の良い駒として利用されるだけでも相当なのに、それ以上に何があったのか?………と思った穂乃香・忍・柚に対し、都はまた一杯お茶を飲ませて貰う。

どうやら精神的に強い彼女にとっても、思い出すのは中々に憚られる出来事であるらしい。

 

「戦争が終了し、連邦に敗北したジオン公国はジオン共和国になりましたが、当時在住していた連邦兵には、不満が集っていました。………元々一年戦争は、ジオンのコロニー落としで始まったようなものでしたからね。」

 

コロニーを落としによる被害は数十億と言われており、当然ながらそれだけの外道行為を行ったジオンを許せない者も多い。

中には家族や親しい者を奪われた者も居て、憎悪の感情は戦争が終わっても、燻ってしまっていたのだ。

ジオンの民を許せないというその想いはふとした切っ掛けで………ある日、爆発する事になる。

 

「それが………後にグローブ事件と語られる事になる、連邦とジオンがグルになって隠ぺいする事になった汚点であり………「生け贄」とも言える事件です。」

「生け贄………?」

 

忍が嫌な物を感じたのだろう。

眉を顰める中、静かに呟く都は1回あずきを見た。

 

最終確認であった。

ここから先は、もう止まる事が出来ない。

あずきは震えていたが、忍、柚、穂乃香………そして、都を見て1回だけ頷いた。

 

「………眼前で繰り広げられた光景は、1つの地獄絵図でした。切っ掛けが何であったのかは、今となっては分かりませんが………暴走した連邦兵は、文字通り「悪魔」になったんです。」

「あずきが………元居た世界を滅ぼされてそこに転移して飛ばされた時、この世で無い地獄に連れていかれたのかと思った………。街が紅蓮の炎に包まれていて………その悪魔が………。」

 

ガチガチと歯を鳴らし始めるあずきを、穂乃香が包み込む。

都は、この先は自分が語ると言うと、彼女にあずきを絶対に離さないで欲しいと頼んだ。

本格的にトラウマを抉る事になるのだ。

都はもう1回だけお茶を口に含むと、深呼吸をした。

 

「悪魔となった屈強な男の連邦兵達は、集団心理が働いており、容赦が無かったんです。当時、主力のジオン兵達がまだ帰って来てなかった為に、グローブの街の民は抵抗出来なかった。数少ない男性は、ほぼなぶり殺しにされました。」

 

なぶり殺しと聞き、どういう殺され方をされたか穂乃香達は聞く気にはなれなかった。

何より、都も手汗などが酷くなってきている。

柚がタオルを渡したが、まだ彼女は拭おうとしなかった。

本当に恐ろしかったのは、そこでは無いらしい。

 

「数少ない男が、屈強な男達に血祭りにあげられたのならば、残された非力な女はどうなるか………。その最悪の想像が現実として形になりました。尊厳を壊されて………いや、もうオブラートに包まない方がいいですね。」

 

都自身も手が震えていたが、覚悟を決めると穂乃香、忍、柚を見てハッキリと言う。

 

「女は………連邦兵に捕まった女は、見境なしに犯されました。」

『……………え?』

 

一瞬の間の後に、3人の疑問の声が響いた。

今、都は何を言ったのか?

その意味を噛み締め始め………そして、見る見るうちに顔が青ざめていく。

 

「それって………まさか!?」

「もう1度だけ言います。女であれば、母であっても妻であっても子供であっても、見境なしに集団で犯されました。………紅蓮に包まれる街で、堂々と。」

 

無意識の内に、柚は引いてしまっていた。

穂乃香は、ガクガクと震え出したあずきを、慌てて押さえ込もうと必死だ。

忍は息を呑むと、意を決し聞く。

 

「都さんやあずきちゃんは………その光景を………目撃したんですか?」

「………というより、襲われかけたと言った方が正しいですね。私は当然、13歳でも捕まったら最期だって理解出来たので、逃げようとしました。そしたら………、感情を失って突っ立っているあずきさんを発見したんです。」

 

当時のあずきが、どんな心情だったのかは、想像に絶する。

バルバトスに世界を滅ぼされて全てを失った途端に、この世のものとは思えない光景を見せつけられたのだ。

周りで繰り広げられている地獄絵図は、只の悪夢だと感じ現実逃避をしていたのかもしれない。

 

「妙齢の彼女が捕まれば、どんな目にあうかは一目瞭然でした。だから、私は咄嗟に彼女の手を引き、路地裏を逃げ回って暴徒と化した連邦兵から逃げ惑ったんです。それでも、最終的には追い詰められましたけれどね………。」

 

獲物を追い詰めた悪魔と化した連邦兵の目は、狂っていた。

都ですら恐怖を感じ、あずきは直視できずにうずくまってしまったのだ。

 

この世の終わりが待っている………そう2人が感じた瞬間、その暴徒達が複数の別の連邦兵達によって、なぎ倒された。

鎮圧部隊が送られて、その先遣隊としてこの場に赴いたユウ・カジマが、偶然発見した都とあずきを救ってくれたのだ。

しかし、その部隊も屈強な男達で構成されていた為、都はユウを信じられず震えるしか無かったという。

あずきに至っては………脳がキャパシティオーバーを迎え、気絶してしまったらしい。

 

「私達は当時のユウ・カジマに保護をされましたが、当然ながら簡単には信用が出来ずに警戒していましたね。………あずきさんに至っては、狂ったように貴女達3人の名前を叫んでいました。」

 

そこまで聞いて、忍はハッとする。

あずきは連邦軍の伝手で、マスター・P・レイヤーに保護された彼女と再会を果たした。

その時には既に彼女の顔は曇っており、何があったのかを聞いても答えてくれなかったのだ。

 

「アタシは………バルバトスに世界を滅ぼされたショックで、あずきちゃんが辛い目にあっていると思っていました。でも………実際は………。」

「これでも、あずきさんの運は良かったんです。忍さんの名前を叫んだ事で、再会に繋がったんですから。何より、貴女が居た事で、あずきさんはギリギリの所で壊れずに済んだのですから。」

 

気付かなかった事を後悔する忍に対し、気遣ってくれる都。

 

とにかく、こうして都とあずきは一度別れる事になり、次元圧縮が進む世界の中で、2人の時間の経ち方が変わる事になる。

あずきにとっては、あまり時間が経っていない出来事であったが、13年間ユウの下で過ごした都は、その間に己を守れる術を身に着ける事になったのだ。

今度は、柚が都に問う。

 

「………グローブのその女の人達は、どうなったの?」

「カジマ大佐の話だと、犯された後に殺されたか、そうでなくても精神が壊れたか………。確かなのは、連邦の上層部はその汚点を隠す為に真実を闇に葬り、ジオン共和国の方も他の地域の安定のためにその嘘を受け入れた………という「事実」です。」

 

いつの間にか、抵抗運動を行うグローブの市民が暴徒と化したから仕方なく取り締まった………という身も蓋も無い嘘にすり替わっていた。

犠牲になった者達は、連邦とジオンにとって、都合のいい生け贄にされたのだ。

 

「これが………グローブ事件の真相。私とあずきさんの………昔話です。」

「酷い………そんな言葉で纏めちゃいけないけど、酷過ぎる………。」

 

拳を握りしめ震える柚に対し、都は残っていたお茶を一気に飲み干すと、天井を見上げてふうと息を吐き、ここでようやく先程貰ったタオルで汗を拭きとった。

あずきは顔を押さえて大粒の涙を流しており、穂乃香も涙を流しながら黙って後ろから抱きしめている。

忍は少しだけ迷った後で、都に聞いた。

 

「あの………その話って、レイヤー隊長の部隊には………。」

「当然、後で全て話しています。だから、上の指示でコロニー落としを遂行せざるを得なかったほたるさんや、その被害で近しい者達を失った琴歌さんにも、伝わっています。」

「やっぱり………2人も知ってしまってるんですね………。」

 

どうも忍の恩人の中には、ジオンのコロニー落としに密接に関わっている者もいるらしい。

忍自身にも色々と事情があるみたいだが、都はだからといって、彼女に………そして、フリルドスクエアに難癖を付ける気は無かった。

 

「私が語る事が出来るのは、以上です。………すみません、あずきさん。辛い想いをさせて。」

 

過去のトラウマをアリアリと思いだしてしまったあずきは、何も喋れない状態であり、顔を覆っていたが、首を横に振って都にそんなことは無いと示す。

彼女をずっと包み込んでいた穂乃香は、只々涙を流しながら、一番重要な時に親友を支えてあげられず、深刻過ぎる悩みに気付いてあげられなかった事を悔いていた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

都もあずきも、過去のトラウマに深く触れた事で、少し休息が必要となった。

只、1人にはしておけないという事で、あずきには穂乃香が付き、都には忍が付く事になった。

柚はブリッジにいる千川ちひろに今回の事を報告して、ブランリヴァルにいる高垣楓にも同様の事を伝えていた。

 

「そうですか………。グローブ事件の真相を、都は話したのですね。」

「艦長やちひろさんは………その真相を知ってたんだネ。」

「はい………幸か不幸か、私達は過去にその真実を知る機会を得ましたから。」

 

楓やちひろは、柚の言葉に重苦しそうに肯定する。

仮にその真実を知っていたとしても、周りに言いふらす事が出来ないのは、柚にも理解出来た。

もしも事実が民衆に知れ渡ったら、連邦の政治が根本から瓦解してしまう。

だから、女として許せない事であっても、黙っているしか無かったのだ。

 

「艦長が知っているのならば、戻って来て、あずきチャンのメンタルケアをして欲しいんだけど………。」

「ゴメンなさい………。ブランリヴァルの方にも、「シャングリラ」の人々が集っているんです。こちらも、ユーグ隊長を始めとしたファントムスイープ隊の方々が対応して下さっているのですが………しばらくは友紀と共に、こちらに滞在になりそうです。」

 

楓と友紀は、ブランリヴァルに閉じ込められてしまった感じだ。

本当ならば、艦長である浅野風香は、すぐにでも送ってあげたいらしいが、今の状況で外に出るのは危険すぎる。

ほとぼりが冷めるまで、2人は向こうの艦の世話になった方が良かった。

 

一方で、ちひろも艦長代理として、シンデレラガールズの母艦であるキャリー・ベースに運ばれた怪我人などの管理をする為に、ブリッジから動けない。

しばらく2人は、残念ながらあずき個人に構う余裕が無かった。

 

「何か………深く傷ついた彼女が、立ち直る切っ掛けを掴む事が出来ればいいんですけれどね………。」

「あずきちゃん次第………だヨネ、きっと。」

 

もどかしさを覚える楓の言葉に、柚はとても難しい事だと考える。

実は彼女自身も、島村卯月の所に転移してからしばらくは、投げやりな生活を送っていた。

それだけ、住んでいた世界を滅ぼされたショックという物は大きい。

加えて、あずきはその直後に地獄絵図の光景を体感したのだ。

簡単に割り切る事が出来れば、苦労はしなかった。

 

(それでも………何か光明を見出して欲しいよ………。)

 

柚は心の底から、悩める親友に対しそう願う。

 

 

明かされた桃井あずきの衝撃的な過去。

彼女はこの先、本当に立ち直る事が出来るのだろうか?




遂に詳細が明かされたグローブ事件の真相。
あまりに描写が酷かったので、UCのアニメ版では燃える街しか映らないというシャットアウトぶりを披露する程の過酷な事件です。
サブタイトルは、安斎都さんの髪色をヒントに作成しました。

桃井あずきさんは、住んでいた世界を滅ぼされたうえに、地獄のような光景を見せつけられた為に、ずっとトラウマになっています。
その光景を打ち払う為の術を、どうにかして身に付けられればいいのですが………。
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