シャアを含めたザクⅡ達が、高槻やよいのGディフェンサーやアムロ・レイのガンダムに迫って来たが、キャリー・ベースから発艦した、高森藍子率いる高森隊と藤原肇率いる藤原隊によって、事なきを得る。
しかし、シャアが撤退した途端、やよいは時空にヒビが入り割れるような感覚を察知。
リック・ディアスとガンダムMk-Ⅱが飛び出して来た事に、彼女は違和感を覚えたが、そこで奇妙な人形であるアプロディアと名乗る者と、オペレーターの綾瀬穂乃香がモニターに出て来て挨拶を行う。
赤いリック・ディアスのパイロットが呟いていた「次元の歪み」とは一体………?
「………私達の詳しい紹介は後にしましょう。それより、今起こった事を説明します。」
「今起こった事って………何かヒビが入って、パリーンって割れた音がして………いきなり変な人達が現れた事ですか?」
やよいはGディフェンサーの中で何とか深呼吸をして落ち着きながらも、変な人形を模した姿をしたアプロディアに問いかけを行う。
アプロディアはそのデフォルメされた体全体を使って頷きながらも、やよいに説明を行う。
「そうです。この現象は、「ジェネレーション・ブレイク」。システム・バルバトスによる「次元圧縮プログラム」です。」
「じげんあっしゅくぷろぐらむ?」
苦手な小難しい言葉が出て来た事で、やよいは頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。
アプロディアは穂乃香に促されながら、時間を置いてゆっくりと話していく。
「簡単に言えば、空間を本来では有り得ないような繋げ方をするプログラムです。別世界の人を呼び寄せたり、別次元のコロニーを引き寄せたり、今のように、別の時間軸………、未来の出来事を手繰り寄せたりするんです。」
アプロディアの言葉を聞いた、やよいの目が見開かれる。
彼女の説明を信じるのならば、夢物語のような、いわゆる何でもありの世界を引き起こせる事になる。
勿論、すぐには信じられなかった為に、やよいは思わず疑念の言葉を返してしまう。
「そ、そんな凄い事が本当に出来るんですか!?」
「……………残念ながら、出来てしまったのです。」
表情は変わらなかったが、俯き暗く憂鬱な言葉を発したアプロディア。
穂乃香の表情も暗くなり、やよいは何か彼女達が抱えているのでは?………と一瞬思ってしまった。
しかし、ここでアプロディアは顔を上げ、やよいに更なる言葉を告げる。
「そして、恐らくこの後、非常に厄介な事が起こります。」
「厄介な事って………?」
「別次元の他勢力による、軍事介入です。」
そのアプロディアが言葉を発すると同時に、サイド7の更に後方で爆発が起こり、先に飛び出した4機の機体を追う形で、紫色のジムを模した機体が4機、更に藍子のハイザック・カスタムとよく似た機体が1機飛び出してくる。
「穂乃香。」
「照合しました。ハイザック1機と「ジム・クウェル」が4機です。………恐らく所属は、「ティターンズ」かと。」
ゴーグルの付いたヘッドギアを再び被った穂乃香が、冷静な言葉で呟く。
やよいを囲う藍子、神谷奈緒、緒方智絵里の3機が臨戦態勢に入る。
コロニーの外に飛び出して来た機体の内、ハイザックは黒いガンダムMk-Ⅱを見ると、マイクを使って叫んだ。
「「エゥーゴ」め!奪ったMk-Ⅱを持ち帰ろうって魂胆だろうが、そうはさせるか!ティターンズとして、最低限の任務は完了させる!!」
男性の軍人の声が響き渡った事で、そのガンダムMk-Ⅱに乗っている少年が忌々しそうに叫ぶ。
「くっ、もう追って来た!ジェリドめ………!」
だが、その声を聞いて更に驚いたのは、ハイザック・カスタムに乗っていた藍子であった。
彼女は、ジェリドという名を聞いて驚きの声を上げる。
「ジェリド!?まさか………ティターンズのジェリドが追って来たの!?」
この意外な反応に、奈緒と智絵里が機体同士を見合わせ藍子に問う。
知り合いなのか?………と。
「そういえば藍子って、元ティターンズのエースだったんだよな。何か不名誉な二つ名を押し付けられたらしいけれど………。何か因果でもあるのか?」
そう呟くのは、奈緒。
藍子は何とも嫌そうな顔をすると、頭を片手で押さえながら頷く。
「あ、うん………私は元少尉で、彼は一時期直属の上司だったこともあるのだけれど………。」
藍子が本当に嫌そうに説明するには、彼女はティターンズ時代、その狙撃センスから、「B-AAA」という呼び名を与えられていたらしい。
この言葉というのは、「アサルト(暴行)・アーマー(装甲)・エース(主力)の全てをブレイカー(破壊する)」という恐ろしい意味合いの驚異の狙撃手なのだ。
これだけならば、光栄な二つ名と言えるだろう。
只、藍子は実はあまりスタイルに自信が無く、それを揶揄する意味合いでも使われた言葉であったらしい。
上司であったジェリド・メサに至っては、その才能を妬まれ、「ドラム缶女」という身も蓋も無い侮蔑の言葉を投げかけていたらしいのだ。
「という事があったから、正直、彼とは犬猿の中で………。」
『……………。』
これにはやよいだけでなく、奈緒や智絵里も沈黙。
女の敵という言葉が、思わず頭の中に浮かんだ。
その時であった。
「そのハイザック・カスタム!?貴様!誰かと思ったら、ドラム缶女か!!」
「またドラム缶って言った!?もう少し女性に気遣った発言出来ないんですか!?」
急にジェリドがマイクで叫んできた事で、藍子もまたマイクで叫び返す。
あまりの急展開にエゥーゴと呼ばれた組織の機体であるリック・ディアスやガンダムMk-Ⅱも機体の顔を見合わせ、隊内通信で何かを話し始める。
「黙れ!ティターンズを裏切った面汚しめ!エゥーゴ共々、貴様らもここで殺してやる!!」
そんな様子に気付かないほどジェリドは怒っていたのか、ここで藍子に対して殺意を向ける。
これに対し、奈緒や智絵里は思わず委縮してしまう。
基本、藍子達も肇達も、チームプレーを前提として戦っている。
つまり、出撃数程の戦力は持っていないのだ。
藍子や肇のようにエース級に対応できるだけの力を持つ者もいるが、基本は数で迫られると対処しようがない。
それを感じたのか、赤いリック・ディアスのパイロットが、マイクでオープンチャンネルになるリスクを冒しても話しかけてきた。
「ふむ………どうやら君達とは利害が一致しているみたいだな。すまないが、そこのカスタム機のパイロット。良ければ一時的な協力関係を結ばないか?」
「協力関係………共闘ですか?」
藍子もまた、マイクで慎重に語り掛ける。
赤いリック・ディアスのパイロットは、自身を「クワトロ・バジーナ」だと名乗ると、藍子に対して頷く。
「ティターンズを退けたいのは、そちらも一緒だろう?デメリットは無いはずだ。」
クワトロの提案に藍子は、キャリー・ベースの高垣楓に問いかける。
割とすんなりと許可が出た事で、藍子はクワトロの提案を受け入れる事に。
しかし、ここでやよいがマイクで話しかけてきた。
「あ!だったら………だったら、私も戦います!」
「おいおい、無理するなって!」
奈緒が思わず止めようとするが、やよいは真剣な顔で話しかける。
「私、さっき助けて貰った分、恩返しがしたいんです!それに、相手はプロの軍人さんなんです!1機でも多い方が………!」
「人………殺せるのか?」
「え………?」
ゾクリ………そんな冷たい感覚が、やよいを襲った。
それまで割と軽い調子で話していた奈緒が、冷たい声で彼女に告げたのだ。
やよいは自分が撃破したわけでは無かったが、先程のザクⅡの爆発を見て茫然としていた。
人を殺した事が無い者が、いきなり戦場に慣れる事は難しい。
奈緒の宣告は、至って当然の事であった。
「そ、それは………。」
「戦うって事は、そういう事なんだよ。大人しくアタシ達の後ろに隠れてろ。」
「……………。」
涙目になって無言になってしまうやよいであったが、仕方ない事であった。
クワトロは藍子と奈緒、智絵里に挨拶をすると「ビーム・サーベル」を構える。
「決まりだな。………カミーユ君、君も無理はするな。アポリーとロベルトは、彼等の支援をしてやってくれ。」
「了解!………ところで大尉。こんな時にこんな事を聞いて申し訳無いのですが………。」
「どうした?」
黒いリック・ディアスで「ビーム・ピストル」を構えるアポリー・ベイがクワトロを見ながら………とんでもない事を告げた。
「大尉は幼女を見ても、何も思わないのですか?」
「ピチピチのロリっ子に合法ロリまで揃っているのに、反応が乏しいというか………。」
反対側で「クレイ・バズーカ」を構えるロベルトも、疑問を素直に口にする。
クワトロ………あの幼女に狂ったシャアの未来の姿である為か、一瞬藍子達は身構えてしまうが、彼の返答は意外な物であった。
「ああ………そういう時代もあったな。いや、確かに幼女は好きだったが………。ララァに勝る娘はいないと悟ってしまったのでな………。」
(嫌な悟りだ………。)
正直なクワトロの回答に、ガンダムMK-Ⅱに乗っているカミーユ・ビダンは内心、頭を抱えてしまった。
そんな彼らの会話が気に食わなかったのか、しびれを切らしたジェリドが、ハイザックの「ビーム・ライフル」を連射しながら迫って来た。
「さっきからタラタラ喋りやがって!雑魚が群がったところで何が………!」
しかし、ここでまたしても空間にヒビが入り、割れる音が聞こえる。
次元圧縮プログラムによるものだと悟った一同であったが、今度はジェリドのハイザックの遥か後方から、青白い軌跡を発しながら1機何かがサイド7へと迫って来る。
「はわっ!?あ、アレは………!?」
その存在が大きくなって来た事で、やよいの顔が青ざめる。
高速で向かって来て止まった機体は、マイクを使い大声で叫んだ。
「見つけたぞ、高槻やよい!!」
いかつい外見の機体ではあったが、その姿は巨大な砲門を背負ったガンダムに酷似していた。
突然の闖入者に、クワトロ率いるエゥーゴも、ジェリド率いるティターンズも困惑する。
だが、その声を聞いた途端、やよいは思わずコックピット内で震えた。
「はわっ!?どどど、どうしよう!?追いつかれちゃった!?」
「な、何だありゃ!?アレもガンダムなのか!?穂乃香、教えてくれ!」
奈緒の要請を受け、穂乃香が再び解析。
彼女は、敵機を調べるとこう答えた。
「あの機体は、「ガンダム試作2号機」です。ですが………核弾頭を取り寄せられなかったのか、装備は「MLRS仕様」となっています。」
「か、核弾頭って………!?元々そんな危険な機体なの!?」
智絵里も思わず震えて弱音を吐いたが、藍子が大丈夫と言って落ち着かせると、やよいに話しかける。
「やよいちゃんだっけ………?今、追いつかれたって言ったよね?そういえば、追われているって言っていたけれど、まさか………。」
そこに、試作2号機のパイロットである男の声が再び響き渡る。
かなりの高圧的な態度であり、威圧感を伴っていた。
「大人しくハルシュタイン閣下に忠誠を誓え!高槻やよい!!」
「………い、嫌です!今の春香さんはどうかしています!」
「貴様の言い分なんぞ、聞かぬと言ったはずだ!!」
一方的過ぎる宣告に、思わず怪訝な顔をする藍子達。
エゥーゴも訝しんでいるし、挟まれる形となったティターンズも、ジェリド含め身動きが取れない。
「な、何て身勝手な奴なんだ!?」
カミーユがドン引きするが、クワトロは首を傾げる。
「あの声………まさか、「アナベル・ガトー」なのか?妙だな。私の知るガトーは、少女を付け狙うような男では無かったはずだが………?」
「いえ、目の前にいるのはアナベル・ガトーではありません。」
どうやってオープンチャンネルに割り込んできたのか、アプロディアがクワトロのモニターに現れ、突然話し出す。
その異質さに表情を変えるクワトロでは無かったが、カミーユは更にドン引き。
ここで藍子が、思わずアプロディアにどういう事なのか聞く。
「アレは「シークレット・ユニット」。バルバトスの作りだしたデータです。彼からの任務を遂行するだけの存在です。実物を見るのは、これが初めてですが………。」
「いやちょっと待て!?データって、目の前に実在しているんだぞ!?アレがホログラムか何かだって言うのか!?」
シークレット・ユニットを示すアプロディアの説明に、納得できなかった奈緒が思わずツッコミを入れる。
確かにデータであるのならば、その場に存在している事はおかしい。
しかし、アプロディアは冷静に答えた。
「残念ながら、機体自体は次元圧縮を応用して手に入れた実在の物です。ですが、操っているのは、人物を模したデータ「ニューロ」なのです。この場合は、アナベル・ガトーを模した「ガトー・ニューロ」と呼ぶべきでしょうね。」
「えーっと………。」
アプロディアの説明に中々理解が追い付かないやよいであったが、穂乃香が実在の機体をコンピュータが操っているような物だと補足する。
一方でクワトロは合点がいった感じであったが、何故やよいを狙うのかは分からなかった。
ここで、アプロディアはやよいに問う。
「高槻やよい………でしたか。………どうやら貴女は、765プロの関係者みたいですね。」
「………はい。」
「ならば、このまま貴女を素直に引き渡すわけにはいきません。応戦しましょう。」
「分かりました!」
アプロディアの言葉を受け、藍子が狙撃用ビーム・ランチャーをスナイプする。
しかし、その正確な射撃を試作2号機は少し横に動くだけで回避した。
明らかに常人とは違う能力に目を見開く一同であったが、ガトー・ニューロは、高圧的な態度で「ビーム・バズーカ」の砲身を繋げて構え、撃ち始める。
「ふざけた事を!従わないというのならば、貴様たち全員抹消するまでだ!!」
高圧的な態度を崩さず、試作2号機がバーニアを吹かして突撃してきた。
初めて経験するジェネレーション・ブレイク。
そして、初めて戦うシークレット・ユニット。
高槻やよいは、神谷奈緒の言っていた人を殺す覚悟があるか?………という言葉が頭にこびりついた状態で、不安を抱きながら影に隠れて見つめていた。
小説版オリジナルの展開として、高槻やよいさんはこの時点では、機体を撃墜………即ち、人殺しをした事がありません。
元々のやよいさんの性格も鑑みれば、いきなり敵機撃墜が出来るとも思えなかったので、神谷奈緒さんとの会話が少し変わっています。
一方で、シークレット・ユニットのアナベル・ガトーは、物語の展開上、ニューロ扱いにしていますが………性格が本物とほとんど変わらない気がするのは、何故なのでしょうか………。
尚、ジェリド・メサの高森藍子さんへの扱いも、当時………リアル時間で12年前に書いていた時と変わりません。
それだけ、アイドルマスターシンデレラガールズという世界も、長続きしましたね。