モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第43話 PHASE3-19『50人のフェイフェイクローン』

桃井あずきが、ユーグ・クーロの尽力によって、トラウマの克服方法を知る事が出来た後で、昼食を食べて早速訓練に赴こうとする。

そこに現れたのは、吉岡沙紀。

彼女は、解析を行う綾瀬穂乃香が仲間外れにならないように、支援を行う人形型デバイスであるぴにゃこら太を2匹新たに作り出し、サポート体制を強化してくれた。

沙紀の心配りに感謝した穂乃香もまた、ユーグの下で修業を行う事になり、スキルを磨く事に。

 

そんな訓練の日が経つに連れ、治療して貰った怪我人達の訴えもあって、抗議していた「シャングリラ」の人々達は居なくなる。

ブランリヴァルに残りの怪我人の移送を行う中で、黒川千秋は藤原肇に、捕虜扱いだがシンデレラガールズは居心地がいいと白状した。

 

そして、出航前夜………馴染の酒場に招かれた高槻やよいは、ユーグから、クローンであるフェイフェイ達について、教えて貰う事になる。

 

彼女達は、何故存在する事になったのか………?

 

 

 

「彼女達は………ニュータイプ量産計画によって、生まれました。」

「ニュータイプ量産計画………?それがあの沢山の、フェイフェイさん達の原因なのですか?」

 

オレンジジュースを注いでくれる浅野風香に感謝をしながら、やよいは首を傾げる。

彼女の頭には、「ニュータイプ」という言葉は新しいワードであったからだ。

そこも考慮して、ユーグは説明を始める。

 

「俺達の世界では、一年戦争において、ニュータイプが凄まじい戦果を挙げた。」

 

やよいも出会った事のあるアムロ・レイ。

彼は元々、ジオン・ズム・大君の提唱したニュータイプ論の適合者であるらしい。

 

「そのダイクンさんのニュータイプ論っていうのは、よく分かりませんが………ニュータイプになるとどうなるんですか?」

「並外れた動物的直観と空間認識能力が身に着くと言われていますね。例えば、私が聞いた言葉だと、「後ろに目がある」とか何とか………。」

 

風香が真面目な顔でぶっ飛んだ事を言うが、どうやら本当の事であるらしい。

そのダイクンという者は、アムロのような人物達は、人が分かり合い争いを無くすための存在になると論じていた。

只………。

 

「残念だが、戦後の連邦政府にとって重要になったのは、概念では無く結果だ。彼らはニュータイプが切り札となり、同時に脅威になるとも考えた。」

「確かに………単純に強い人なんですから、そう考えるのも無理ないですよね。」

 

ニュータイプが1人でもいれば、今後戦いが発生した場合に、自分達を勝利に導いてくれるのでは無いか?

ニュータイプが1人でもいたら、今後戦いが発生した場合に、自分達に敗北を与える存在になるのでは無いか?

ニュータイプ=強い人という結論が染みついているのならば、十分あり得る事だとやよいも納得出来た。

 

「だからこそ政府は、少しでも自分達が有利になるような策を、裏で次々と始めた。………その1つが、ニュータイプの確保だ。」

「もしかして………その為だけに、ニュータイプ量産計画をしたんですか?」

 

少々怪訝な顔をするやよいに、ユーグは無理も無いだろうと嘆息する。

風香が彼にお酒を注ぐと、自分のグラスにはソフトドリンクを注ぎながら、説明を引き継ぐ。

 

「………そもそも、何をもってニュータイプと言うのか。どうすればニュータイプになれるのか。ニュータイプになるには何が必要な要素か。非人道的ですが、様々な観点から実証実験が必要だったんです。ほぼゼロから始める以上、些細な点も見逃してはいけないので………だからこそ、こういうのも何ですが、馬鹿げたような実験もありました。」

「えっと………それって、まさか………。」

 

嫌な予感がしたやよいに対し、風香は否定しなかった。

 

「はい。「オリジナルがニュータイプなら、クローンもニュータイプかもしれない。」………というのも、あったんです。」

「そして、その為「だけ」に、フェイフェイのクローンが50人作られた。」

「50人も!?」

 

実際の数を仲間達に聞いていなかったやよいは、思わず叫んでしまう。

これには、周りで乾杯をしていたあずきを始めとした面々も、頭を悩ませる。

彼女達も初めて聞いた時は、何を考えているんだ………と感じたのだから。

ユーグは風香に感謝をすると、再び自分が説明を引き継ぐ。

 

「結果は失敗だった。後に分かった事だが、能力発言には過度にストレスが必要であるらしい。」

「その………失敗作扱いされたフェイフェイさん達が、何でファントムスイープ隊に?」

「俺達の上の立場にいる軍上層部の方が、上手く言いくるめて処分されそうになった彼女達を、保護してくれたんだ。」

 

何でも、ユーグや風香の上司は、ストレスが必要ならば、軍に配属してジオン残党狩りに参加させればいいのでは無いか?………と提案したというのだ。

何せ、クローンの量産自体は人道的に疑問視させられる行為。

下手に処分して内外からの反発を招くならば、正規登録のされていない特務部隊であるファントムスイープ隊に配属させた方が、まだ丸く収まると言ってのけた。

こうして、今の50人のクローンフェイフェイ達が存在している。

 

このとんでもない真実を前に、やよいは唖然として………ある事に気付く。

 

「こ、これ………私に喋って良かったんですか!?」

「勿論、軍の最重要機密の1つです。バレたら私達の首が飛びます。」

「君たち、シンデレラガールズの口が固いと信じているから、こうして話している。」

 

ある意味腹を括って話す風香とユーグであったが、やよいは青ざめそうになる。

彼女は強烈過ぎるグローブ事件などは耳にはしてはいなかったが、この話を聞いただけでも、地球連邦軍は真っ白な組織では無い事を認識させられた。

 

「……………。」

 

絶対に話さないように、入れて貰ったオレンジジュースを、一気に飲み干す。

そのうえで、もう1つだけ気になった事を問う。

 

「………クローンのフェイフェイさんがいるって事は、オリジナルもいるって事ですよね?その………本物のフェイフェイさんはどうなったのですか?」

「俺達の部隊にはいない。そもそも連邦に、無理やり従わされたみたいでな。実験後に脱走したという話だ。」

「そ、そうなんですか………。」

 

オリジナルのフェイフェイが、どんな気持ちで実験を施されたのか………。

考えると不憫でならなかい。

脱走するという事は、それだけ苦痛であったという事なのだから。

ユーグは纏めとして、やよいに告げる。

 

「この先、連邦にしろジオンにしろ、他の世界の組織にしろ、闇を見る事になるかもしれない。1人で苦痛に陥った時は、仲間を頼れ。」

「ユーグさん………はい、分かりました。」

 

あずき達にも教えた事を、やよいにも告げる。

彼女はまた、前に進むためにしっかりとしようと、まだ慣れない敬礼のポーズを取った。

ここで、日本酒を飲んでいた高垣楓が問う。

 

「そういえば、トーラスとゲルググキャノン………後、肇が鹵獲したガザDをキャリー・ベースに運搬して貰いましたが、本当に3機とも頂いて大丈夫なのですか?」

 

先日運ばれた、砲戦用モビルスーツ2機と可変モビルスーツ1機。

特に前者2機はコロニー内では宝の持ち腐れだからと言ったが、宇宙に出たら必要になるのでは?………とユーグと風香に問う。

それに対して2人は、その為に先程やよいに話した、フェイフェイクローンを引き取った上の人物と交渉して許可を貰ったと答えた。

 

「本当ならば、俺達も行く事が出来ればいいが………この「シャングリラ」の戦闘で生じた怪我人の回復を見届けないといけない。それに、残念ながら俺達は「軍人」だ。まだ軍は、バルバトスの危険性を本格的に認識してはいない。」

「上が動けないと、基本は軍人も動けませんからね。………貴女達に任せてしまう以上、「裏方」として、出来る事はやらせて下さい。」

 

2人の言葉を受け、楓は敬礼では無く、静かに立ち上がり頭を下げる。

「シャングリラ」では、本当に彼等を始めとした人々に色々とお世話になった。

協力してくれる皆の為にも、バルバトスの野望は止めなければならない。

 

「私達は幸せ者です。こんな強力な方にバックアップして貰っているのですから。絶対にハルファスガンダムを倒しますので、見守っていて下さいね。」

 

皆が見守る中で、彼女は最高の笑顔を見せた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

翌日、コロニーの出立に伴い、怪我から回復した面々も含め、皆がキャリー・ベースまで挨拶をしに来てくれたユーグ達に最後の別れを行う。

これで、「ヘリオポリス」から付き合ってくれた安斎都と並木芽衣子は下船となり、服部瞳子と水木聖來と共に、ユウ・カジマの所に戻る事に。

また、辻野あかり、砂塚あきら、夢見りあむ、そして北条加蓮もまた、ファントムスイープ隊で仕事に従事する事になるだろう。

馴染の酒場から協力してくれた黒子のマスターや、美少女仮面・マコマコリンという謎の少女ともまた、しばしの別れになる。

 

その挨拶で意外な関係を見せたのが、栗原ネネと加蓮。

何でも2人は「同じ世界」出身であるらしく、昔から交流があったらしい。

 

「今回は怪我とか色々あってゴタゴタしてたけど、今度は何かメイク用具でも買いに行こうよ。」

「ありがとうございます。………加蓮ちゃんも、野菜取って下さいね?」

 

最後のネネの笑顔に何故か圧があり、加蓮の笑みが引きつっていたのを見て、やよいは何となく彼女の好みの食材を察してしまった。

 

 

 

とにかく色んな人達に支えられている事を実感しながらも、皆で思い思いの挨拶を行ったシンデレラガールズ。

見届けて貰った事で、楓は出立の為に、キャリー・ベースのブリッジの艦長席に座る。

 

「ここに来るのも久々ですね。………さて、色々とありましたが、どうにかハルファスガンダムを追う旅路に出られそうです。」

 

そこに、のワの人形の姿であるアプロディアが現れ、ドラム式洗濯機のように回転を始めた。

端から見たら奇妙な姿ではあるが、どうやら何かしらの解析を行う際は、このような行動を起こす癖があるらしい。

 

「ポイント・ゼロの侵入口を改めて探ってみましたが、どうやら地球に存在しているみたいです。」

「地球ですか。具体的にはどの国ですか?」

「残念ながら、この場所からは分かりません。降下してみないと、正確なポイントは割り出せないでしょう。」

 

楓の疑問に、アプロディアは回転を続けながらも少々困ったように答えていく。

それだけ、システムとしての彼女の力が弱まっているという事でもあるのだが、無い物ねだりをしても仕方がない。

とりあえずは、まずは地球に降下してみる事が先決という事で、楓は少しだけ笑みを見せる。

 

「まあ、目標は決まりました。物資もたっぷりと貰いましたし、焦らず騒がず着実に行きましょう………友紀!」

 

操縦士である姫川友紀は、餞別として大好物の缶ビールを貰った事で、喜んでいた。

彼女は操縦桿を握ると、笑みを浮かべて応じる。

 

「いつでもオッケーだよ~!!艦長、音頭をどうぞ!!」

「キャリー・ベース………発進!!」

 

楓の指示により、シンデレラガールズは地球へと出発をする事になった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「あ、あそこ………ブランリヴァルの前で、みんな敬礼をしてくれています。」

 

その浮上し始めたキャリー・ベースの展望台では、成宮由愛がユーグ達の存在に気付いていた。

フェイフェイ達も含め、今回の戦いや治療で世話になったメンバーが、皆敬礼をしてくれている。

 

「わ~、何か壮観です~。50人のフェイフェイさんもいますし、ファントムスイープ隊で治療を手伝ってくれた人達もいますし~!」

 

古賀小春も敬礼をしながら、喜んでいる。

これだけ沢山の人に支えられているのだから、自分達は進まないといけないだろう。

それは、今回の戦いの中で成長をしたやよいやあずきにも分かった。

 

「シンデレラガールズとして………765プロのみんなを助けて………バルバトスの野望を止めないといけませんね。」

「うん。あずき達の戦いは………始まったばかりだから。」

 

「ところで………。」

 

外に向かって敬礼をする面々の後ろから、少々気まずそうに問いかけて来たのは、黒の長髪の女性。

現時点では、シンデレラガールズの捕虜扱いとなっている、黒川千秋である。

 

「私は結局………この艦に居ていいのかしら?ブランリヴァル………に移った方が良かったんじゃ………?」

「いいんじゃないの?くろちー、この艦好きなんでしょ?」

「確かに肇に居心地はいいとは言ったけれど………ここ、正式には軍じゃないのでしょ?」

「まあね。でも、ももーいがパイロットの訓練する間は、引き続きキャリー・ベースの掃除とかの雑事を任せる人が必要だし………これも1つの役割分担だと思って!」

「はぁ………まあ、それならばやるけれど………。」

 

結局、本田未央に言いくるめられる形になり、元クルーゼ隊の彼女もまた、シンデレラガールズの同行者になる。

前に並木芽衣子が、「旅は道連れ世は情け」と言っていたが、その通りになって来ていた。

 

 

こうして、シンデレラガールズは、「シャングリラ」を立つ。

向かう先は地球。

そこに何が待っているかは………まだ、分からない。




ニュータイプは、一年戦争から様々な影響を与えている存在。
連邦政府を始め、皆がその詳細の詮索に躍起になるのは、当然だと考えています。
その結果が、EXAMとかNT-Dとか色々な厄介なシステムですけれどね。

クローンのフェイフェイさん達もまた、そうした被害者達。
連邦の監視下とはいえ、普通に過ごせているのは奇跡的なのでしょう。

さて、長くなりましたが、ようやくシンデレラガールズは、「シャングリラ」を出航です。
でも、後1話だけPHASE3はあるんですよね。
どうぞ皆様、最後までお楽しみください。
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