モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第44話 PHASE3-20『黒子のマスターの正体』

ユーグ・クーロが高槻やよいに語ってくれた、50人のフェイフェイクローンの正体。

それは、オリジナルがニュータイプ故に、クローンもニュータイプになるのでは無いか?………という実験の下で生まれた失敗作であった。

処分されそうになったところを、ファントムスイープ隊に引き取ってもらい、ジオンの残党狩りに参加して、こうして過ごしているらしい。

これからは、連邦やジオンの闇を見る事になるかもしれないと、ユーグはやよいに忠告し、困ったら仲間を頼れとも助言した。

 

そして翌日、シンデレラガールズは「シャングリラ」を出発する事になる。

 

沢山の絆を育んだ仲間達に、見送られながら。

地球を目指して。

 

 

 

「行ってしまいましたね………。」

 

「シャングリラ」を旅立ったキャリー・ベースを見て、名残惜しそうに呟くのはブランリヴァルの艦長である浅野風香。

彼女は酒場を管理する黒子のマスターを見ると、少々遠慮気味に聞いてみる。

 

「良かったのかな?フェイフェイちゃん達の事、やよいちゃんに伝えて………?」

「気にする必要無いヨー。彼女もまた、戦う道を選んだからネー。だったら、連邦の闇は知っておくべき事ヨ。それに………。」

 

そこで、黒子のマスターは、頭のフードを外した。

中から出て来たのは、フェイフェイ達と「同じ顔」をした51人目のフェイフェイ。

但し、何かの実験の影響なのか、目からはハイライトが消えていた。

 

「ユーグ隊長や風香は、フェイフェイ達の恩人だから、多少の我儘は許されるヨー。」

 

だが、その姿に驚く事なく、ユーグは冷静に51人目のフェイフェイ………「オリジナル」である楊菲菲(やおふぇいふぇい)に話しかける。

 

「俺達は恩人では無い。フェイフェイ達を手回ししてくれたのは、ゴドウィン・ダレル准将だ。………そもそも元を正せば、軍に捕らわれていた君を逃がし、救ってくれたのはユウ・カジマ大佐だしな。」

「だから、「達」と言ったんだヨー。フェイフェイの妹分50人の面倒も見て貰っているし、私悪運は強いかもネー。」

 

楊菲菲は、生きている喜びを噛み締めるように目を閉じて語る。

辻野あかりや北条加蓮は、その言葉を受け、何か感じる物があったのか少し目を伏せた。

一方、後ろに立っていた謎の存在である美少女仮面・マコマコリンも楊菲菲の横に立つと、口元に笑みを浮かべながら話す。

 

「そういう意味では、ボクも同じかな。追手に追われていた中で、ユウ大佐に救われたのは奇跡だからね。」

 

マコマコリンのこの言葉の意味は、実は加蓮を始め、ユーグすら理解していない。

彼女の境遇に関しては、ユウから味方だと言われているだけで、何処の何者であるかは、誰にも話されていないのだから。

只、同じく複雑な事情を抱える中で、まだ黒子に変装する必要があるとはいえ自由に生きられる楊菲菲は、彼女の言葉に同感し、万感の思いを込めて空に手を広げて伸びをする。

それこそ、羽ばたく鳥のように、自分の意志で動ける事を感じながら。

 

「んん~~~!………連邦の身勝手でモルモットを覚悟したけれど、人生まだまだ捨てたもんじゃないネー。」

「………それで、本題なんだけれど、君から見て彼女達はどう映った?」

 

只、ここでマコマコリンは口元を引き締め、楊菲菲に問う。

実は彼女は、ユウからある提案を楊菲菲に持ちかけていた。

今後のシンデレラガールズを左右するかもしれない、ある提案を………。

 

「窮地に陥った「シャングリラ」を救おうとしてたからね………素直にいい人達だと思ったヨー。ユーモラスもあって面白いネー。」

「それじゃあ………。」

「彼女達になら「任せられる」ネー。フェイフェイは、マコマコ達の作戦に「乗る」ヨー。」

 

楊菲菲が認めた事で、マコマコリンも笑顔になった。

これで、彼女達「裏方」でも、ある仕事が動き始める。

マコマコリンは楊菲菲に感謝をすると、ユウ達に報告をしようと意気込む。

ユーグは、自分達にも関わって来る事である為、ふうと息を吐くと、加蓮やあかり達を見る。

 

「どうやら、しばらく忙しくなりそうだな。「裏方」仕事も大変なものだ。」

「その終着点がバルバトス打倒で、やよい達を支援できるなら、我慢なんて容易いモノヨー。」

「そうだな………。」

 

シンデレラガールズは、シンデレラガールズのやり方で、世界を救おうとしている。

ならば、裏方に回る者達も、出来る限りの事をするべきなのだ。

最後にもう一度コロニーの空を見上げたマコマコリンは、1人思う。

 

(頑張ってね、やよい。ボク達も765プロのみんなを取り戻す為に、出来る限りの事はするから………。)

 

この想いの意味が分かるのは、まだまだ先の事である。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

その頃、コロニー「765」の事務所では、バルバトスが憑依した天海春香………ハルシュタイン閣下に対し、眼鏡のスーツ姿の人物が手に持ってい書類を1枚1枚見せて報告をしていた。

彼女の名は、秋月律子(あきづきりつこ)。

765プロの中では、かなりの頭脳派の人物であり、アイドル活動だけでなくプロデュース能力や事務処理能力にも長けている。

 

「………というわけで、第37愚民親衛隊は、ジオン軍に惨敗。撤退を強いられたわ。」

「そう………。」

「更に、第59愚民砲撃隊は、オーバーフラッグス隊にほぼ壊滅状態。再編を急がないといけないわ。」

「そう………。」

「一番致命的なのは、第108航空機動隊よね。フリーダム1機に全員武装解除させられて、格の違いを見せつけられたわ………。」

「そう………。」

 

次々と語る敗北の報告を律子は示していくが、ハルシュタインの方は興味を持っていない。

正直、別に戦果など、どうでもいいと思っているようであった。

 

「ねえ春香、真面目に聞いてる?ぶっちゃければ、愚民軍はほぼ大敗を喫しているって言っているのよ?どうするの?」

「どうするもこうするも、まだ愚民は沢山いるんでしょ?だったら、どんどん兵器を開発させて、数で攻め込めばいいじゃない。最終的には勝てるわよ。」

 

愚民=道具としか思っていない、ハルシュタインの考えはこれだ。

練度の低さは数の利を活かして攻め込めば、どんなエース級も打ち破れる。

確かに、その考えは間違ってはいないだろう。

だが、ここで律子は書類を机に置くと、軽く溜息を付き、人差し指を自身の頬に当てて真剣な顔で告げる。

 

「………貴方って、人を理解しているようで理解していないわね。残念だけれど、人は「結果」だけを見ないわよ?」

「………どういうことかしら?」

 

律子の提示した意見に、ハルシュタインは疑念の声を上げる。

彼女はその様子を観察するようにしながら、冷静に語っていく。

 

「人は「過程」にも目を付けるということよ。特に反対派の人は、目ざとくね。」

 

仮にこの戦いがハルシュタインの勝利として集結し、全次元の支配者となったとしても、異を唱える者は確実に出てくる。

その時に口実として付いてくるのは、彼女の歩いた軌跡の汚点。

抵抗派は目ざとく主張し、自分達に対する共感者を増やしていくのだ。

 

「考えてもみなさい。支配者である天海春香が、数に任せた力押しでしか統率できない三流のリーダーだと示されて、そんな人に統治を任せられると皆が納得できると思う?確実に反乱がおきるわよ?」

「人々は、私の力で魅了すればいい。反乱分子は、削除すればいい。」

 

しかし、ここまで言っても、ハルシュタインは己の在り方を変えようとはしない。

システムなのだから、変わらないのは仕方ないのかもしれないが………。

只、魅了と言い洗脳した者達を、完全なイエスマンにしていないのは、ここではプラスに働く。

実際、律子はハルシュタインに対し、方向修正を計ろうとしているのだから。

だからこそ、彼女はこう言う。

 

「根本が間違っているわね。そもそも、貴方の力だって有限でしょうが。本気でそれやったら、すぐにオーバーヒートよ。全次元の人を魅了しようとすれば、貴方は壊れるし、削除しようとすれば、元の世界と同じで抹消の未来しかないわ。」

「ハッキリ言うわね。………そこまで言うのならば、貴女の脳裏には明確な解決法が浮かんでいるのかしら?」

 

面白くなさそうに呟くバルバトスであったが、この「出来た参謀」の意見には興味があった。

まだその力の一端しか知ってはいないが、コンサートでの大演説を提案して、愚民兵の士気を上げたのも彼女の尽力による所が大きい。

故に、意見を参考にするべきだというのも、理解出来ていた。

ある意味「認められた」律子は、顎に手を当てて話す。

 

「そうね………。まず、貴女に問いたいのだけれど、何故、愚民兵はこんなに簡単に集まったか分かっている?」

「元々彼等が天海春香のファンであり、彼女を信奉していたから。最初から魅かれている存在を魅了するのは、通常に比べ低コスト且つ、高速度で行う事が可能。………これでいいかしら?」

 

愚民兵は置き換えれば、熱狂的なファン。

だからこそ、簡単にハルシュタインの駒になったが、彼等の練度は当然ゼロからだ。

律子は、まるで家庭教師のようにうんうんと眼鏡に手を当てて納得すると、ハルシュタインに告げる。

 

「いい答えね。ならば、貴方が全次元の人類を魅了するならば、全員を愚民兵にした方が、負荷が遥かに楽になるのも分かるわよね。」

「それは分かるわ。でも、人が全てそういう存在では無い。」

「そりゃそうよ。でも、逆に言えば、そういう人達をどんどん天海春香に魅かれるようにすれば、効率は良くなっていく。天海春香の行いに魅かれ、自然と貴方の支配を受け入れていく。貴方が支配者となった暁には、それを当然と主張し、反対派を封じ込める力となってくれる。」

 

バルバトスが手間取っているのは、システム的な効率もある。

世界をデリートするだけの力を持ちながらも、全人類を魅了する方向に舵を切った場合、元々の得意分野でない関係で、不得手になってしまっているのだ。

天海春香を洗脳したのも、その相手を魅了する力に目を付けたから。

ここら辺は、まだバルバトスにとっても、全次元をデリートするわけにはいかないという意志が見て取れた。

 

「何か具体的な計画があるみたいね?」

「ええ、任せてくれれば、実行に移すわよ。」

「いいわ。やってみなさい。」

 

僅かながらに笑みを浮かべるハルシュタインは、律子の案に乗った。

その先にあるのが、自身の目的の達成であるのだから。

 

「ふふ、アイドルのプロデュースも世界征服も、まずはビラ配りから。見せてあげるわ、秋月律子の手腕を。」

 

バルバトスの右腕である秋月律子。

その存在は、かなり厄介な物になる。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ぐ~~が~~~~~………。」

 

地球上のある場所では、ホワイトベースやブランリヴァルに似た艦のブリッジで、金髪にそばかすのある長身の男性が呑気に艦長席に座って、いびきをかいていた。

どんな立場であれ、明らかに職務をサボっている感じであるが、本人は気にしている感じは無い。

周りのクルー達が怪訝な顔を示すが、彼にツッコミを入れる者は誰もいなかった。

………ブリッジに入って来た、彼と腐れ縁の金髪の女性が来るまでは。

 

バチコーンッ!!

 

「痛ぇっ!?」

「こら!ビーチャ!!何サボってんの!?艦をいつでも動かせるようにしておけって言ったでしょ!?何熟睡してるの!?」

「あたたたたた………いきなり殴る必要は、無いだろ!?」

 

叩き起こされた男性………ビーチャ・オーレグに対し、思いっきり頭をグーで叩いた女性………エル・ビアンノは眉を吊り上げて叫ぶ。

その後ろでは長い黒髪を持つ20歳近くの女性が、微笑みながら高級そうなカメラを手に取り、色んな角度から写真を撮っていた。

 

「ふふっ、いい夫婦ですね。この写真、由愛ちゃんや小春ちゃんに見せたら、喜ぶかしら?」

「誰が夫婦だ!?………って、言っても小春はともかく由愛は難しいかもねぇ………。」

「まあな。………んで、用件は?」

 

ビーチャは、写真を撮っていた女性に艦長席を譲る為に立ち上がると、何をしに来たのか2人に尋ねた。

カメラの女性は、ゆっくりと艦長席に座ると微笑みを崩さずに告げる。

 

「モンドさんとイーノさん、リィナさんから朗報です。「マウンテンサイクル」の1つから、もう1つ艦を発掘したらしいです。中々いい性能らしいですよ。」

「そりゃ、凄いな………。ホント、「マウンテンサイクル」って宝の山なんだな。俺も美味しいお宝を分けて貰いたかったぜ。」

「アンタね………由愛達が真面目にやってるんだから、少しは必死こいてやりなさいよ。」

「冗談だよ………んで、他には?」

 

何やら大胆な計画を行っている仲間の姿にビーチャは感心しながらも、自分の欲を隠さない。

そこがビーチャという人物の長所であり短所であるのだが………とにかく、そんな余裕を見せる彼に対し、今度はエルの方から話し始めた。

 

「その発掘に付き合ってくれているカジマ大佐達から朗報だよ。何とか連邦上層部にバルバトスの危険性を訴えかけて、まずは、「この艦」だけでも自由に動かして貰えるように許可を貰ったって。」

「流石、カジマ大佐。ああ見えて、意外と押しが強いからなぁ。ブライト艦長とどっちが大胆だか。」

「どっちもじゃないの?………後、レイヤーさんとクリスさん、バーニィさんとかも、正式な軍人じゃないアタシ達の監視という名目で、自由に動かしていいってさ。」

 

次々と出てくる名前にふむふむと考えるビーチャは、ニヤリと笑みを浮かべながら、頭の上でこの後の事を思い浮かべる。

一握りではあるが、連邦軍が対バルバトスに向けて動いてくれているのだ。

ちょっとずつではあるが、戦況は確実に変化し始めていた。

 

「………って事はだ。羽目を外さなければ、俺達もお宝を回収しに行っていいんだよな。」

「言い方。」

「へいへい………シンデレラガールズの役に立ちそうな人材や兵装などを探しに行けるんだな。場所の当てはあるのか、「艦長」?」

 

ビーチャが艦長席でカメラを見ていた女性に問うと、彼女はニコニコの笑顔で話し始めた。

 

「廃墟と化した「ネオ・ジャパン」で、バルチャー達がオークションを行っているらしいです。そこでは………時たま信じられないような物品を売りさばく人物もいるとか。」

「ターゲットはそいつか。………じゃ、色々と厄介事が起こる前に行こうぜ。艦長、号令を頼むわ。」

「では、お言葉に甘えまして………。」

 

ビーチャとエルを両脇に従えながら、その黒髪の長髪の人物は、立ち上がって命令を発する。

長い黒髪がなびき、椿の花の髪飾りが揺れた。

 

「「トロイホース」、発艦!目標、「ネオ・ジャパン」!さあ、私達もいよいよ動き始めますよ!」

 

その言葉と共に、ホワイトベース級の艦の1つであるトロイホースが浮上をして動き始める。

艦長の名前は、江上椿(えがみつばき)………19歳で母艦を任されるカメラが趣味の逸材であった。

 

裏方で活躍する人物にも、物語がある。

彼女達もまた、シンデレラガールズをサポートするために手を回す。




オリジナルのフェイフェイ………楊菲菲さんが、黒子のマスターの正体でした。
勿論、動画版では口調からバレバレでしたが、色々と彼女も苦労をしているみたいです。
裏で色々と行っているユウ・カジマは、かなりの敏腕として表現しています。

また、ハルシュタインに仕える形になった秋月律子さん。
彼女はこの後、どんな策を考えて披露をするのか?

更に、最後の最後に登場したのは、ホワイトベース級のトロイホースに、ビーチャ・オーレグとエル・ビアンノ、更には艦長である江上椿さん。
シンデレラガールズをサポートする人達にも、本当に色々な物語があります。
設定も練っているので、公開出来る場があったら示したい所です。

長くなりましたが、これで本当にPHASE3「シャングリラ編」は終了です。
お馴染みの宣伝になりますが、PHASE4に関しては、すべて書き終わったうえで校閲をしたうえで纏めて予約投稿をする予定です。
まだまだ新アイドルは登場しますので、気に入ってくれた方は、引き続き視聴をして下さるとこちらも嬉しいです。

宜しくお願いします。

追記:ギリギリですがPHASE4の校閲が間に合い、予約投稿が出来たので、更に2日後からまだまだ続きます。待ってくれている方がいたら、お楽しみください!
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