シンデレラガールズが、「シャングリラ」を立った後、酒場を管理する黒子のマスターはフードを取り、その正体………51人目のオリジナル楊菲菲の姿を晒す。
彼女はユウ・カジマに救われており、同じく助けられたという美少女仮面・マコマコリンに、シンデレラガールズをどう思ったか聞かれる。
「シャングリラ」を守る為に戦った彼女達にならば、楊菲菲は全てを任せられると言い、マコマコリン達の作戦に乗る事に。
裏方として動く事になった為、ユーグ・クーロ達もこれからシンデレラガールズをサポートする為に動き出す。
一方でハルシュタインは、参報の秋月律子から愚民兵の報告を受けていたが、状況はあまり芳しく無く、今のままでは全宇宙を手中に収めるのは無理だと言われる。
そこで彼女は、律子の策を受け入れ、その手腕に期待をする事に。
更に、地球上ではユウ・カジマの指示を受けたトロイホースが、ビーチャ・オーレグやエル・ビアンノ等と共に動き出す。
艦長として指示を出すのは江上椿。
裏方として回る者には、裏方としての役目がある。
果たして、皆が紡ぐ物語の先にあるのは………。
キャリー・ベースは順調に航行を続けており、10日程で地球に到着する予定になっていた。
その間、高槻やよい、桃井あずき、綾瀬穂乃香はそれぞれシミュレーターで訓練を行う事になる。
今日3人が行っていたのは、対戦では無く協力プレイ。
チームを組んで、CPUの機体を次々と倒していく訓練である。
敵の構成は主にジェリド・メサも乗っていたハイザックで組まれており、ビーム・ライフルを連射しながら。やよい達に襲い掛かる。
それに対し、やよいの乗機はゲルググキャノン、穂乃香の乗機はガルバルディβ、あずきの乗機はジンだ。
色んな機体を試しても良かったが、今回はより実戦に対応できるように、今後の割り振りに応じた実際の機体を運用して貰う形になっていた。
「リアスカートの「3連装ミサイル・ポッド」に気を付けて下さい!後、藍子さんのようなハイザック・カスタムが混じっている危険性もあります!」
今回の旗艦は少しではあるが先輩に当たるやよい。
彼女は、事前に習った事をしっかりと覚えており、遠距離攻撃に注意する。
ハイザックは、その気になれば様々なオプション兵装を使用できる。
ビーム・ライフルとの選択になるが、「ビーム・サーベル」も使う事が出来るし、「ハイパー・バズーカ」や 「シュツルム・ファウスト」といった装備も扱えるのだ。
その気になれば、閃光弾も放てるらしい。
実際に、前線出て来た1機が放った「バズーカ」が光を纏っており、やよい達の目の前で派手な光を炸裂させた。
「………ッ!?」
咄嗟に片目を閉じる事で一時的な目潰し対応をしたが、それでも片目はしばらく使えない。
やよいは、これを機にビーム・サーベルで襲い掛かって来る3機の敵機にゲルググキャノンの「ビーム・ライフル」を撃つ事で対処。
しかし、1機にしか当たらなかったので、素直に後方の穂乃香とあずきに支援を求める。
「前に出て引き付けるので、まずは2機をお願いします!」
「分かりました!」
「了解だよ………っと!」
一番後方に構えているあずきが、ジンのバルルス改特火重粒子砲の太いビーム砲を放つ。
これまでの訓練で、彼女はフリルドスクエアの中では射撃能力の伸びが良かった。
今回も、片目だけの遠距離射撃であるにも関わらず、確実に1機を撃ち抜く。
「よくも仲間をーーー!!」
「このシミュレーター、マイクもあるんですね………。」
御親切に、戦場での臨場感もしっかりと表現するために、敵機は状況に応じてマイクで怒りの声を上げて来る。
やよいは、ヒート・ホークをしっかりとシールドで防御すると、蹴りを放って敵機のバランスを崩す。
そこにバーニアを吹かせた穂乃香のガルバルディβが飛来し、シールド裏のミサイルを1発放って、確実に撃破。
「後は………!」
ハイザックが2機、「ザク・マシンガン改」を撃ちながら接近を試みてくる。
その後ろから、恐らくハイザック・カスタムなのであろう。
狙撃用ビーム・ランチャーを構える機体が1機。
更に、青い増加装甲に包まれたキャノン砲を背負ったハイザックが1機存在した。
「あの青いハイザックは………?」
「「ハイザック・キャノン」ですね。ゲルググキャノンのハイザック版みたいなものです。………今度は私が前に出ますね。」
「お願いします!」
穂乃香機と位置取りを変更したやよい機は、2艇携行してある「ジャイアント・バズ」を取り出し、ランドセル右側に備えてある「ビーム・キャノン」と同時に撃ち、強力な実弾砲撃とビーム砲撃を同時に繰り出す。
威力のある遠距離攻撃を前にハイザックの1機が吹き飛ぶ形になり、後方のハイザック・カスタムも狙撃用ビーム・ランチャーを破壊されてしまう。
「もらいッ!」
そこにあずき機のバルルス改が炸裂して、カスタム機は爆散。
前線のハイザックは、穂乃香機に3連装ミサイル・ポッドを撃ってくるが、彼女は動きを止めず縦横無尽に動き回って回避したうえで、ビーム・ライフルで確実に撃ち抜いた。
あずきが射撃能力に特化しているのならば、穂乃香が特化しているのは機動力。
支援デバイスである3匹のぴにゃこら太の力による所も大きいが、彼女は高機動戦闘を得意としていた。
近接戦闘に特化した工藤忍とバランス型である喜多見柚と合わせて、フリルドスクエアは、皆が別々の個性を獲得する形になっていたのだ。
「鍛えてくれたユーグ隊長に感謝ですね!」
穂乃香はそのままハイザック・キャノンへと砲撃を掻い潜りながら向かって行く。
装甲を追加しているとはいえ、接近戦用の武装に乏しい青いハイザックは、胸部の増加装甲中心部から「スプレッド・ビーム砲」を出すしか接近を止める手段が無い。
しかし、穂乃香はミサイルをもう1発撃って、爆散した煙で目をくらませると、素早く上に回り込んで頭頂部からビーム・サーベルを突き刺しトドメを刺した。
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『ふう………。』
無事に対CPUとのシミュレーションを終えた3人は、席から立ちあがると汗を拭って、息を吐く。
実戦感覚を養う為の訓練とはいえ、やはりこの緊迫した感覚には慣れない物である。
「お疲れ様。飲み物を用意しておいたわ。」
「あ、ありがとうございます!」
そんな3人に対し飲み物をくれるのは、一応捕虜である黒川千秋。
………とはいえ、シンデレラガールズに反逆をするつもりは無い為、監視という名目で誰かと行動する事はあっても、そこまで行動を制限させられているわけでは無い。
彼女自身、「シャングリラ」での本田未央との会話で、ある程度は己に踏ん切りがついたのか、反ナチュラル主義からはすっかり脱却出来ていた。
それ故にやよい達は、戦いのプロである彼女にも思った事を口に出して貰う。
「どうでしたか?」
「閃光弾への対策も出来ていたし、普通の敵には対応可能だとは思うわね。只、強敵と出くわした際に、どうやって追い込んでいくかは考えておいた方がいいわ。後は………穂乃香とあずきが、まだ撃墜を行っていないのが、実戦でどう出るかよね。」
最後の言葉が、一番重い意見であった。
「シャングリラ」で敵機を撃破し………命を奪った時は、やよいは嘔吐してしまった。
立て続けに敵大将機との死闘を行ったからというのもあるが、最終的には精神的に力尽きてしまったのだ。
その為、シミュレーター上でも敵機にマイクで叫ばせてはいるが、結局の所は架空の中での敵。
実戦の空気は、想像以上に違うだろう。
「あずきはそのままのスタイルでいいとして、穂乃香は前に出過ぎない努力が必要ね。貴女がやられたら、敵の識別が出来なくなるのでしょう?」
「そうですね………。最悪ぴにゃ達が、機体のコントロールを行ってくれるとはいえ、最初から頼り過ぎていては危ないですからね。」
穂乃香が高機動戦闘に長けているのは、敵機の照合を行う彼女にとっては有り難い要素であった。
逃げ回りながら、敵の機体の性能を確認する事が出来るし、真っ先に危険性を伝える事が出来る。
但し、あくまでこの突出した能力は、しばらくは己の生存に注ぎ込んだ方がいいというのが、千秋の意見であった。
ここで、名目上はその千秋の監視係として付いてきていた渋谷凛が、4人を見て告げる。
「とりあえず、反省会は一旦中断して、実際のモビルスーツを見に行かない?沙紀達が整備をしてくれているみたいだし。」
「ヅダは直ったの?」
ジュースを飲みながらあずきが聞くのは、藤原肇の愛機の事。
「シャングリラ」の戦闘でボロボロになった機体が、完璧に直ったのか気になっていた。
それに対し、凛も千秋も少々微妙な顔。
何でも、応急修理として破損した部位や兵装は補ったが、エンジンへの負荷は完全に回復はしなかったらしい。
その為、現時点ではいつも以上に慎重な扱いを求められるのが、正直な所。
普段の出力が100%ならば、70%くらいに留めておかないと、本当に空中分解しかねないらしい。
「肇じゃなければ、完全に乗り換えなんだけれどね………。」
相性抜群な愛機故に、これまで頼り切って騙し騙し使って来たツケが今になって来たのかもしれないと、凛は溜息を付いた。
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格納庫では、「シャングリラ」で新たに運び込まれた機体の整備などが、急ピッチで進められていた。
吉岡沙紀、成宮由愛、古賀小春の3人の整備士が中心となって行っているが、実際の機体に関しては、搭乗者がコックピットで乗り心地などを確かめないといけない。
その為、ゲルググキャノンに乗る事になったやよいも、実際に操縦桿を動かし、状態をチェックした。
「どうですか………?」
「はい、バッチリです!ありがとうございます、由愛さん!」
プチモビで機体の整備を行っていた由愛の問いに、やよいは両腕で丸を作って報告。
これならば、急な出撃が来ても、すぐに乗りこなせるだろう。
同じく「シャングリラ」で譲渡されたトーラスは小春の下で、搭乗者になった緒方智絵里が状態を確認しており、こちらも大丈夫そうであった。
また、沙紀は鹵獲したガザDの整備とヅダ、シグーアサルトの修繕も終えた後、プチモビで最後の機体の修復を終えていた。
「ふう………これでとりあえずは、全部何とかしたっすね!奈緒さん、リーオー直ったっすよ!」
「お!………本当に、スクラップ品からドーバーガンを取り付けるなんてな。ありがとう!」
神谷奈緒が、当初愛機としていたリーオー。
「サイド7」でやよいを庇った際に破損して、そのまま使用不可能になっていた機体が、ようやく復活を遂げたのだ。
ジェネレーター出力の低下に伴い、ビームライフルは撤去され、代わりにスクラップとなっていたドートレス・ウェポンの500mmキャノンから作成したドーバーガンを装備している。
これで、武装自体が強化されただけでなく、ジェネレーターの効率的な利用方法も得ていた。
「これから地球に下りて使い所があるかは分からないっすが、使える機体は大いに越した事は無いっすからね!トーラスもゲルググキャノンもOKだし、これならしばらくはモビルスーツ事情もどうにかなるっすよ。」
肇のヅダだけは、やはり全快とはいかなかったが、それでも戦えるだけの状態にはした。
整備士としては、3人は周りのサポートを受けながらではあったが、しっかりと仕事をしてくれているのだ。
「お疲れ様。ドリンクを持って来たわよ。………って、シグーアサルトまで直して良かったの?」
「ついでっす。………とありがとう。折角鹵獲したジンを活用するなら、装備の使い回しが効く機体も直した方がいいと思っただけっすよ。」
千秋からドリンクを貰いながら、沙紀は腰に引っ掛けていたタブレットを取り出し、シグーアサルトの色々なデータを見せる。
肇が綺麗にバーニアを破壊して鹵獲をしてくれたお陰で、皮肉にもヅダよりも修繕が楽だったのだ。
「ちなみに肇ちゃんにシグーアサルトのシミュレーターをやって貰ったんすが………、結果は駄目だったっすねぇ………。」
「癖のある高機動機なら、全部OKってわけでも無いんだな………。と、アタシも貰うぜ。」
「どうぞ。………あくまでも、そのヅダがマッチし過ぎているだけって事なのね。でも、恩恵がこれだけの機体の鹵獲であるならば、欠かせないのも分かる気がするわ。」
すっかり肇談義になってしまう、沙紀、奈緒、千秋の3人。
ちなみに話題の肇は、今は栗原ネネと共に食事の準備を行っている。
そうしている内に、ガルバルディβの整備を終えた穂乃香とジンの整備を終えたあずきも合流。
他のパイロット達や整備士達も集まり、千秋の持って来たドリンクを飲んで会話を行う。
その中で、あずきが話題を提唱する。
「そういえば、あそこの隅っこに置いてある大きなミサイルランチャーやミサイルポッドは何?調べてみたら、ジンの装備みたいだけど………。」
「えーっと、それは………。」
「………私が答えるわ。あの装備は「D装備」。拠点攻撃用のミサイル装備と思えばいいわね。」
何でも「キャニス短距離誘導弾発射筒」と「パルデュス3連装短距離誘導弾発射筒」と呼ばれる武装であるらしく、絶大な威力を誇るらしい。
対艦攻撃用としても優秀であるみたいなのだが………、ラウ・ル・クルーゼは、アークエンジェルを沈めるという名目で、只でさえダメージを被った「ヘリオポリス」に、この装備のジンを多数連れて乗り込んだのだ。
「それって………。」
「今となっては、恥ずかしい限りだけど………最初から「ヘリオポリス」を証拠隠滅のために破壊するつもりだったのでしょうね………。私は、そこで生じる被害の大きさも、認識できていなかった………。」
肩を落とす千秋に対し、智絵里は何て言っていいのか分からない。
只、凛が何故か千秋では無く智絵里の方の肩を叩くと、沙紀に問う。
「何で、そのD装備を復元したの?」
「一応、何処かで使う機会があるかもしれない………と思ったからっすよ。実は、戦いが起こって必要になりました………って言われて、いきなり準備出来る者でも無いし。」
ここら辺は、整備士の性とも言えるだろう。
あくまで兵装は使う者の心次第になるので、使い方によって決まる。
破壊を生み出す害悪にもなれば、人を守る力にもなるのだ。
しかし、智絵里は少々暗い顔で妙な事を呟く。
「「ヘリオポリス」の崩壊は………誰の責任になるんだろう?」
「………分からないわね。でも、私が捕虜になった以上、部隊で責任を擦り付ける可能性もあり得るわ。実際に私が生きているとは向こうは思っていないでしょうし、死人に口なしって言うし。」
「そんな………ッ!?」
都合よく使われる事に珍しく声を荒げる智絵里であるが、ここで艦内放送が鳴り響き、食事の時間である事が告げられる。
喋る機会を失った智絵里は俯くが、沙紀に肩を叩かれる。
そして、奈緒が一緒になって、彼女を連れて格納庫を出て行った。
「………何か悪い事を言ったかしら?」
「怒ってましたよね………?」
「智絵里ちゃんも、色々と背負ってるんすよ。とりあえず、整備を仕上げておくんで、先に御飯を食べて来てよ。」
あまり触れない方がいいという事で、沙紀に構わないで上げて欲しいと頼まれた。
――――――――――――――――――――
その頃、キャリー・ベースとは別の方面から、地球に向かう存在があった。
といっても、それは母艦では無く、普通のモビルスーツ。
何故か両翼にはフライトユニットのようなローターを有しており、宇宙でこの装備である理由が分からない。
そもそも1機だけで「流されている」所を考えても、尋常な状況では無かった。
「………誰もいないね。」
そのコックピットから聞こえてくるのは、何とやよいよりも遥かに幼い子供の声。
別の声もその声に応える。
「ずっとこの状態でいやがるのは、つれーでごぜーます………。」
「寂しい………。」
3人の少女達は、宇宙で孤独に震えていた。
どうすればいいのかも分からず、只ずっと………。
「もうすぐ………もうすぐ、助けが来るよね?」
一番年上の少女の、祈るような呟きが聞こえた。
緒方智絵里にまつわる謎の事情。
そして、地球に流される謎のモビルスーツ。
新たな物語が、始まろうとしていた。
というわけで、完成タイミングギリギリですが、PHASE4も続けて開始です。
ユーグ・クーロ達の部隊と別れたシンデレラガールズの戦いは、新たな局面を迎える事に。
そんな中、早速配備されたゲルググキャノンやトーラスを上手く使おうと吉岡沙紀さん、成宮由愛さん、古賀小春さんが奮闘する事に。
整備士ならではの苦労はあると思いますが、しっかり必要になるかもしれない装備を揃えてくれるのは心強いですよね。
さて、緒方智絵里さんが奇妙な兆候を見せていますが…、果たして彼女に何があったのか?
ご愛読してくれている方がいれば、PHASE4も宜しくお願いします。