ゲルググキャノンに乗って、ハルファスガンダムを追い詰める高槻やよい。
しかし、その乗機に乗っていたのは、親友である水瀬伊織だった。
バルバトスに洗脳された彼女に、怨嗟の言葉と共にやよいは叩き斬られてしまう。
同室の栗原ネネに起こされた事で、悪夢である事を悟ったやよいは、まだ起床前の艦内を散歩して、気分を落ち着かせようとする。
しかし、同じく悪夢を見て、怯えて黒川千秋に慰められる緒方智絵里と出会い、彼女からその悪夢の詳細を聞いてしまう。
智絵里は連邦の軍人である育ての親の下で育ったが、その人物は任務中に智絵里の両親を巻き込んで殺した仇であるらしい。
死んでしまえばいいと呪いに呪った結果、本当に死んでしまった事で、彼女は死神と共に現れるその人物の夢を見るようになっていた。
きっと、その人物が智絵里も人を呪う死神だから、こっち側に来いと告げている………そう錯覚した彼女は、恐怖に怯える。
やよいが何とか彼女を現実に引き戻すが、智絵里は彼女に対し、伊織は生きているから自分と違い、どうとでもやり直せると説く事に。
色々と疑問が生じるやよい達であったが、ここで次元圧縮プログラムが感知され、新たな戦いの準備をする事に。
智絵里の背負う悪夢の事情とは?
そして、この先の「マゼラン残骸」では何が起こるのか?
シンデレラガールズの目的地である地球が、大きく見えるポイント。
マゼラン級の残骸などのデブリが立ち並ぶ中、戦闘が起こっていた。
追われているのは、若干ジムをスマートにした形状の、宇宙戦仕様の「ジム・コマンド」。
パイロットであるテリー・サンダースJr.は、武器である「ビーム・ガン」や「ビーム・サーベル」を失い、たった1機で地球上を周回するように逃げまどっていた。
「クソ………ッ!振り切れん!」
その後ろから追って来るのは、ザクの胴体にドムの脚部という変わった風貌の黒の機体である「高機動試験型ザク」。
機体のパイロットであるアイナ・サハリンは、「ザク・マシンガン」を放ちながら、サンダースのジム・コマンドを追っている。
只、こちらは僚機のザクⅡが8機も居て、サンダースからしてみたら、圧倒的に多勢に無勢であった。
「この機体を見られたからには、素直に返すわけにはいかない………!」
ここまで徹底してサンダースを追いかけるのは、理由がある。
アイナの乗る高機動試験型ザクは、ジオン軍の試作機体なのだ。
連邦に情報を持ち帰らせるわけにはいかないので、こうして目撃者を徹底して攻撃し、証拠隠滅を行おうとしている。
そういうわけで、とにかく物量に任せてザク・マシンガンやザク・バズーカ等を撃ちまくった結果、サンダース機のシールドが吹き飛び、バーニアにも異常が生じてしまう。
こうなってしまえば、選択肢は2つ。
捕虜になるか、死を受け入れるか………である。
「クッ………!俺の悪運もここまでか………!」
「投降しなさい!その機体ではもう………!」
一応、アイナは慈悲深いからか、サンダースにオープンチャンネルで投降を呼びかける。
だが、彼の周囲を囲う形になった6機のザクⅡは、明らかに彼を消すつもりだ。
抵抗を止めれば最期を迎えるのは、誰が見ても明らかであった。
しかし、「死神」と蔑まれているサンダースは、ここでもまだ悪運があったのだ。
「そこのジム!聞こえているか!?動けるなら退避しろ!」
『!?』
突如戦場に聞こえて来たオープン回線のマイクに、サンダースもアイナも、ジオン兵達も驚く。
連邦の増援かと思い周りを見渡してみると、とんでもない物を目撃する事になる。
何と、援軍に駆け付けて来たのは、ボール………先行量産型とも言われる「ボールK型」であった。
「ボールだと!?そんな物では無理だ!俺に構うな!!」
流石に増援が、自分よりも遥かにスペックの劣るモビルポッドであったのだから、サンダースが拒否するのも無理はない。
これでは、2人纏めて倒れてしまうだろう。
しかし、そのボールのパイロット………シロー・アマダは、「過去の出来事」もあり、そんな事でサンダースを見捨てる性格では無かった。
「強がりを言うな!そんな事が言える状況か!」
彼は、サブアームを含めた4本あるマニュピレーターで、自身の後ろにあるデブリとなったマゼラン級の廃艦を指差す。
「あそこに廃艦が見えるだろう!そこに隠れてやり過ごすんだ!!」
「だが……………。」
「早く行け!お前の邪魔をする奴は………、俺の巨砲で全てブチ抜く!!」
「りょ………了解?」
やたら勢いのあるシローの言葉に、サンダースはツッコむ事すら出来ずに、思わず頷いてしまう。
一応、ボールK型の頭部には、連射可能な2連装の「フィフティーンキャリバー」と呼ばれるキャノン砲はある。
だが、大胆過ぎる発言に、戦場に居る皆が引いたのは無理も無いだろう………。
――――――――――――――――――――
「えっと………これ、どうします?艦長。」
実際、それはボールK型のやや右後ろにも陣取る形になったシンデレラガールズの面々にも言えるらしく、小日向美穂は若干赤面しながら高垣楓達に問う。
千川ちひろは溜息を付きながらも、状況を判断していく。
「一応、一部の過激な発言を除けば、連邦とジオンの小競り合いのようですね。」
「本音を言えば、どちらにも拘らず、さっさとこの宙域を脱出したいのですが………。」
楓の言う通りシンデレラガールズは目的の関係上、連邦軍の支援を貰っているとはいえ、別に全ての勢力に関わる必要は無い。
というより、関わっていたら、それだけ新たなジェネレーション・ブレイクに巻き込まれる危険性が増えるし、身が持たないのだ。
その為、敵が許してくれるのならば、出来る限り相手をしない方が得策であった。
だが、神谷奈緒がシローの発言に呆れた顔をしながらも、皆に聞く。
「でもジオン側、新兵器の実験中なのか、血気盛んだぜ?ヤバいんじゃないの?」
恐らくこのままだと、ジオン側はシンデレラガールズも「目撃者」として襲ってくるだろう。
その場合、不可抗力で迎撃するしかない。
高垣楓は帽子を被ると、一呼吸して指示を出す。
「みたいですね………。仕方ありません、近寄る敵機だけ迎撃して………。」
「あれ、艦長?左90度の方角にいるのって………ガンダムじゃない?」
「ええ!?」
しかし、ここで姫川友紀が突拍子もない言葉を呟いた事で、楓を始め皆がどよめく。
彼女の言った方向を見てみると、確かにオレンジと白で作られたガンダムフェイスの機体がいた。
だがその機体………「M1アストレイ(シュライク装備)」は武器も持たず、不規則に回転しながら地球の方向に流れていく。
「本当だ、オレンジ色のガンダムだ!」
「何だろう、ヘリオポリスで出会ったストライクに酷似しているけれど………。」
「というよりロウさんのアストレイを、やよいちゃんや私のパーソナルカラーに染めた感じだよね。」
時系列の都合上、島村卯月、渋谷凛、本田未央は、その機体が後にオーブで量産される機体だとは知らないので、驚きの声を上げるばかりである。
そして、その機体の違和感に最初に気付いたのは整備士の吉岡沙紀であった。
「それにしては………何か変な装備っすね。」
「どういうこと………?」
智絵里の問いかけに、宇宙服を着てモビルスーツハンガーからタブレットで外の映像を眺めている沙紀は、頭を掻きながら答える。
「あのガンダム、背中に2つの丸い輪っかのような物を担いでいるじゃないっすか。アレ、アタシの勘が正しければ、大気圏内飛行用のフライトユニットっす。宇宙では動きを阻害する上に、デッドウェイトにしかならないはずっすよ。」
「言われてみれば、確かにおかしいですね。あの機体は一体………?」
ちひろも沙紀の予測に納得して首を傾げる。
一方で、当のシュライク装備のM1アストレイは、キャリー・ベースの横を流れていきながら………。
「あわわわわわ………、どうしよう!?何か千枝達、危ない所に流れてきちゃったよ!?」
「マイクです!マイクを使いやがるのです!救助を求めるのですよ!!」
「確か………ここから声が………出る………はず………。」
『!!?』
突如響いて来た三者三様の声に、その戦場にいた全ての者達が、度肝を抜かされる。
聞こえて来たのは、何と小学生では?………と思える程の幼い少女達の声であったのだ。
尚も声は、モビルスーツ内に設置されているマイクに近づいたのか、より大きな声を発する。
「誰か、助けて下さい!千枝達、ここに閉じ込められているんです!」
「仁奈達がどうやっても、コイツ、うんともすんとも言いやがらないんです!」
「お願い………何とか………して………。」
「ま、間違いないッ!?」
「あの声は、子供だッ!?」
その少女達の声を聞いたサンダースとシローは、確信する。
どういう理由があるのかは分からないが、流れて来たモビルスーツには、3人の少女が閉じ込められていると。
勿論、この波紋はキャリー・ベースで待機しているパイロット達にも広がる。
「ちょっ、どうなってるの!?やよいチャンより遥かに幼い声が聞こえるんだけれど!?」
「よく見たら、どんどん地球の方向に流されているような………。」
「あのままじゃ、燃え尽きますよ!?」
喜多見柚ややよい、ネネが最悪の事態を想定してしまう中、高森藍子が1つの推論に辿り着く。
「ねえ、あの機体………ストライクやアストレイに似ているって事はもしかして………崩壊した「ヘリオポリス」から流れて来たんじゃ!?」
その言葉に衝撃が走ったのは、宇宙服を着た状態で沙紀達と共にモビルスーツハンガーで待機していた千秋。
流石に捕虜という立場上、シグーアサルトに搭乗する許可は貰えておらず、整備班と共に行動をしていた。
だが、クルーゼ隊に所属していた自分達の行いの影響であの少女達が苦しんでいるのならば、話が違う。
思わず罪の意識から震え始めた彼女を、成宮由愛と古賀小春が気遣った。
「私は………私は何てことを………ッ!」
「お、落ち着いて下さい………!それだったら、酸素はもう持っていませんよ………!」
「そうですね~。アプロディアさん~、そこら辺どうなんですか~?」
尤もな正論を述べて、何とか千秋を落ち着かせる2人。
話を振られたアプロディアは、沙紀の持っていたモニターから顔を出し、千秋たちの方を見て告げる。
「「ヘリオポリス」と断定する事は出来ませんが、次元圧縮が頻発している状況です。何処かのコロニーの事故の影響で、重力下装備のまま流された可能性はあります。」
アプロディア曰く、次元圧縮は空間や時間の概念すら無視するらしい。
その為、「ヘリオポリス」から流出した可能性は否めなかったが、断定する事も出来ないとの事だ。
曖昧な言葉であったが、全ての可能性が当てはまるのが、今世界中で起こっている現象の正体とも言える。
ここで問題があるとしたら、この事態を前にジオン側がサンダース達や楓達とは違う考えを持ってしまった事だ。
「そんな、子供がいるなんて………!?」
「アイナ様、騙されないで下さい!こんな所まで子供が流れてはきません!録音レコーダーを使った連邦の罠です!私達が、対処します!!」
突然の事態にアイナは狼狽えてしまったものの、僚機のザクⅡのパイロット達が、連邦による罠だと認識してしまったのだ。
確かにこのジオン兵達の判断は、ある意味では正しい。
子供を使ったトラップは、人道を考えなければ山のようにある。
それ故に、サンダースのジム・コマンドを囲っていたザクⅡが1機、M1アストレイの方を見ると、ザク・マシンガンを構えた。
「不味い!?奴等、アレも落とす気だ!?」
「ええいッ!待ってろ!!………もう少しだけ持ってくれ、俺の悪運!!」
ジオン兵の狙いは、正確であった。
流れてくるモビルスーツに向けて、マシンガンを撃ち込むだけでよかったのだから。
「落ちろ!外道な連邦がッ!!」
『いやああああああああああッ!?助けてーーーーーーーッ!!?』
モビルスーツから明らかに録音レコーダーの物とは思えないような悲鳴が上がるが、ジオン兵にとっては関係なかった。
彼等の任務は、高機動試験型ザクの秘匿とアイナの護衛。
その為ならば、例え乗っているのが、本物の少女達でも関係ない。
故に、その引き金を引くのに躊躇いは無く、最悪の事態が起こった。
………咄嗟にサンダースがジム・コマンドを強引に動かし、割って入らなければ。
「うおおおおおおおおッ!!」
シールドは失っていたが、マシンガンに対してコックピットを守るように左腕で庇いながら、頭の「60mmバルカン砲」をザクⅡに向けてばら撒いた事で、奇跡が起こる。
ジム・コマンドは左腕を失い胴体にも何発か貰ってしまうが、後ろのM1アストレイには弾が届かなかった。
更に、ザク・マシンガンはバルカンによって破壊され、一時的にザクⅡのパイロットの攻撃手段が失われる。
「何ッ!?コイツ、いきなり好戦的に!?………うわっ!?」
更にザク・バズーカを構えようとした所で、シローのボールK型がフィフティーンキャリバーの弾頭を連続で発射し、ザクⅡの群れの狙いを変えさせる。
その隙に、サンダースはボロボロになった機体を何とか動かし、マイクでM1アストレイに叫んだ。
「おい、お前ら!宇宙服は着ているか!?」
「私達………死ぬの………?」
「ヒック………ヒック………助けて、助けて………。」
だが、モビルスーツ内にいる少女達は、自分達が敵に攻撃された事と、庇ったサンダース機が悲惨なダメージを受けた事で、パニックになっていた。
一歩間違えればハチの巣になって死んでいたのだから、こうなっているのも無理はない。
サンダースは、何とか自身を落ち着かせながら息を吸うと、更に大声で叫んだ。
「助ける!!だから頼む、答えてくれ!!宇宙服は着ているか!!」
「ににに、仁奈はぬいぐるみを着てやがるです!?どうなりやがるですか!?」
「くそ………!宇宙服を着ていないんじゃ、ハッチを開ける事もできない!!どうする!?」
サンダースは、自機の中で歯ぎしりを行う。
宇宙服を着ていれば、機体から少女達を回収するという手段も取れたが、そうでないのならば、安全な場所に退避させるまでモビルスーツから出す事も出来ない。
しかし、今の被弾でサンダースも自機を満足に動かせなくなった為、M1アストレイを曳航する事も不可能になっていた。
そこに、彼のモニターから、のワの顔の人形………アプロディアが飛び出し、楓のホログラムが続いて出てくる。
「な、何だ!?」
「そこのジム・コマンドのパイロット!!彼女達を保護します!何とかここまで連れて来て!」
艦長服であった事から、楓が近くに位置していた所属不明のオレンジの艦………キャリー・ベースを率いる者だと悟るサンダースであったが、ここで疑念が生じてしまう。
真っ先に出撃してきたのが、藍子のハイザック・カスタム………つまり、どちらかと言えば相手のジオン側に近い姿のモビルスーツであったからだ。
「お前達は………味方なのか!?」
「少なくとも、その子達を助けたいという想いでは一致しています。………信じて下さい!」
こればかりは、楓もこう言うしか無かった。
サンダースの方も時間が無かった為、一か八か賭けるような想いで即座に答えを出す。
「………分かった。只、俺の機体はもう言う事を利かない。悪いが、コイツ等を敵から守ってやってくれ!!」
「モビルスーツ隊は、敵の足止めを!!盾持ちは彼女達への砲弾を止めて下さい!………それとネネ、そっちは任せます!」
「はい!………そちらの男の方々、名前を教えてくれませんか?」
藍子の次に飛び出して来た、ジーライン スタンダードアーマーに乗っているネネが、シローとサンダースの名前を聞き出す。
何事かと思った2人に対し、ネネは優しい笑みを浮かべる。
そして、ボロボロになっても、少女達のM1アストレイの前に立ちはだかっているサンダースのジム・コマンドの前に移動し、彼に通信を送る。
「その機体も危険です。サンダースさんは宇宙服を着ていますよね?だったら、一時的にこちらに移って、一緒に彼女達に大丈夫だって励ましてくれませんか?」
「……………お前ら………すまん、感謝する。」
サンダースは、自分より少女達を優先するように頼んだが、楓達は彼を無視する気は最初からなかった。
ここで彼を失ったら少女達に心の傷を負わせるし、何よりも身を挺してまで庇いに入った「死神」と呼ばれるパイロットの優しさに心打たれたのだから。
「マゼラン残骸」で始まる新たなる戦い。
守りながらの戦闘が、繰り広げられる。
PHASE4の戦いがいよいよ開始されることに。
ここは、テリー・サンダースJr.を始め、撃墜されてはいけないユニットが数多く登場するステージ。
その為、「シャングリラ」とは違う意味で、非常に面倒だった記憶があります。
皆様も、このステージで頭を悩ませたのでは無いでしょうか?
そんな中で、M1アストレイ(シュライク)という、更なる護衛ユニットが追加されてしまう羽目に。
3人の少女達の正体が気になる所ですね。