モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第52話 PHASE4-8『汚れ仕事』

佐々木千枝達の乗るM1アストレイ(シュライク)をあわや撃墜しそうになった事で、パニック状態に陥るガンダムXディバイダーを駆る持田亜里沙。

彼女をガンダムエアマスターに乗る桐野アヤに任せ、ガンダムレオパルドを駆る柳瀬美由紀は、ミサイルによる飽和攻撃や信号弾による閃光でシンデレラガールズを惑わす。

共闘していたパプテマス・シロッコのメッサーラの活躍により事なきを得るが、美由紀の目的は亜里沙とアヤが無事に撤退出来る事であり、見事に達成されてしまう。

 

そのまま美由紀は捕虜になるが、二度もリミッターを外した事で、藤原肇のヅダが煙を吹き動けない状態に。

シロッコのメッサーラも、渋谷凛との出会いと本田未央が提案した共闘に感謝しながら、撤退をしていく。

 

しかし、ここで新たなジェネレーション・ブレイクが起こり、地球から民間船の天鹿がモビルスーツに追われているという異常事態に遭遇。

レズンの恫喝によって、操縦士のキャプテンが気絶した事で、シャトルは捕縛させられる。

 

乗客が混乱する中、その巨体と安心感のある口調で収めたのは、諸星きらりという女性であった。

更に、操縦室では、向井拓海がキャプテンを移動させ、藤居朋と氏家むつみが、連邦のチャンネルを使い、キャリー・ベースの高垣楓と連絡を取る。

 

彼女達は、一体、何を考えているのか?

 

 

 

副長の千川ちひろによって回線を繋がれた楓は、キャリー・ベースのブリッジで他のクルーと共に、唖然としていた。

シャトルから連邦のチャンネルで救援要請が来る事は予測が付いていたが、真っ先に映った顔が、女性………藤居朋の笑顔であったからだ。

しかも御親切に、右腕でこちらに手を振ってくれている。

アデナウアーでは無いが、正直、捕縛されているシャトルにいる人物だとは思えない。

 

「えっと………貴女がシャトルのキャプテンですか?」

「キャプテンが気絶したからその代理です!………と、真面目な話、本船はロンデニオンに向かう定期便なんだけれど、見ての通りネオ・ジオンの襲撃を受けているんですよね。」

「現在、モビルスーツ隊を向かわせていますが………。」

「分かってます。只、このシャトルに張り付いてる、ギラ・ドーガが邪魔なんでしょ?」

 

ギラ・ドーガは、近接武装の「ビーム・ソード・アックス」で、いつでもシャトルを真っ二つに出来る状態にしている。

このため、シンデレラガールズは下手に抵抗が出来ない状態であった。

 

更に言えば、レズンを含め2機のギラ・ドーガが、シャクルズの機動力を発揮しながら「ビーム・マシンガン」を撃って近づいてきている為、攻撃にも回れない。

一応、高森藍子のハイザック・カスタムや高槻やよいのゲルググキャノンが、迎撃行動に出てはいるが、元々の性能が違い過ぎて遊ばれている状態だ。

 

工藤忍達も加勢したかったが、栗原ネネのジーライン スタンダードアーマーがシールドを失っている以上、千枝達のM1アストレイを守る役割をする面々が多く必要であった。

現状を打開しないと、少女達や乗客達が危ないのだが、中々いい方法が思いつかない。

だからこそ、朋は満面の笑みで告げる。

 

「だから、単刀直入に言うけれど、余っているモビルスーツがあったら貸して欲しいんです!何を隠そう、あたし達も実はパイロットなので!」

「えっと………そうは言いますが………。」

 

これには楓も困ってしまう。

貸し出す事を、出し渋っているわけではない。

残っている機体の性能が、あまり良い物とは言えないのだ。

 

当たり前だが、機体は性能や勝手がいい物からシンデレラガールズは使っている。

その為、現時点で宇宙に出られるモビルスーツは、ジム・クゥエルにガザD、ボール、それにティエレン宇宙型2機。

一応、綾瀬穂乃香のガルバルディβと桃井あずきのジンが帰還しているが、補給が間に合っていないのが現状。

その2人のパイロットも初戦闘で撃墜をしてしまった事で、再出撃を出来る精神状態では無かった。

しかし、意外にも、今使えるモビルスーツの名前の一覧を知った朋は、顔を輝かせる。

 

「いいの残っているじゃ無いですか!………じゃあ、こういうのはどうですか!?」

 

その提案した突拍子もない作戦には、高垣楓達だけでなくシンデレラガールズの皆が呆気に取られる事になった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

とにかく、数がいなければ状況を打開できないという事で、藍子とやよいに加え、M1アストレイを守っていた緒方智絵里のトーラスも加勢。

更に、肇のヅダの曳航を渋谷凛と島村卯月に任せ、黒川千秋のシグーアサルトも大急ぎで戻って来た。

だが、4対2でも、機体の性能差が酷くて中々追いかけられない。

モビルアーマー形態に変形した智絵里のトーラスや、千秋のシグーアサルトが、何とか付いていけるくらいだ。

 

「弱いね!こんな部隊、私1人で片づけられるよ!!………ん?」

 

ここでシンデレラガールズを弄んでいたレズンは気付く。

天鹿に向けて、キャリー・ベースの艦首が向けられていたのを。

だが、連装メガ粒子砲等を撃てば、間違いなくシャトルも巻き込む為、特に気にするつもりも無かった。

 

「纏めて落としてくれるんなら、こっちも手を汚さずに済むんだけどねぇ………。」

 

汚れ仕事を進んで受け持ちたい者などいない。

だからこそ、レズンは何処か他人事のように呟いていた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「こちらの準備は整いました。そちらは!?」

「あー、宇宙服に着替えてスタンバってるぜ。大丈夫だそうだ。」

 

朋に変わって通信を引き継ぐ形になった拓海が、楓に彼女の現状を伝える。

今、朋は乗務員に頼み、むつみと共にシャトル内に用意された宇宙服に着替え、いつでも外に出られるようにしている。

そして、楓は指示を出す。

次の瞬間、キャリー・ベースから、何と無人のティエレン宇宙型がカタパルトから移出された。

 

狙いは、天鹿を捕まえているギラ・ドーガ。

宇宙では巨大な質量弾にもなりかねないモビルスーツを見て、ギョっとしたパイロットは、すぐさまビーム・ソード・アックスを振りかざし、コックピットをアックス部分で斬り裂く。

その勢いで天鹿から振りほどくように飛ばし、ビーム・マシンガンを構えて破壊しようとする。

………が、それが間違いであった事に、すぐに気づかされる。

 

何と続けてティエレンの2機目が即座に移出されており、今度こそ、ギラ・ドーガに体当たりをする形でぶっ飛ばしたのだ。

しかも、うまい具合に構えようとしていたビーム・マシンガンが手から離れ、シャクルズからも切り離されてしまう。

 

「いい感じ、いい感じ!じゃ、むつみちゃん宜しく!」

「了解………プロデューサー。」

 

それを見計らって朋とむつみがシャトルから素早く飛び出し、ぶつかった後で漂うティエレンのハッチを開きコックピットに乗り込む。

予め、「本命」のティエレンは沙紀達の改造でリニアシートになっていた事も有り、乗り心地は抜群であった。

 

「ティエレンにしては、凄く快適じゃない!いいメカニックがいるわねぇ!」

「プロデューサー………来るよ。」

 

操縦を担当する事になったむつみは、怒りに燃える敵パイロットが、シールド裏の「グレネード・ランチャー」を移出してきたのを見る。

下手に破壊した場合、スモークディスチャージャーの煙が出て目くらましになる可能性もある為、ここは機体を軽く動かして回避を選択。

 

只、この時点で相手はティエレンを脅威とは見ていなかった。

性能差はギラ・ドーガの方がまだまだ高かったし、ティエレンは初見でも分かる通り、ビーム兵器もそれを防ぐ手段も持っていなかったからだ。

故に、敵はビーム・ソード・アックスを持って一気に迫る。

 

「タイミングは一瞬よ!」

「大丈夫………間違えないから。」

 

むつみは、右腕のカーボンブレイドを右に振りかぶって構えて応戦の構え。

当然ながら、ビーム兵器を持っている敵は、それに構わず横に一刀両断にしようと同じように振りかぶる。

………そこに、隙が出来るとも知らずに。

 

「「カーボンネット」発射………。」

 

むつみが呟いた次の瞬間、ティエレンの左脇下から、特殊な四基のロケットを持つ網が展開され、ギラ・ドーガにまとわりつき、絡まって動きを封じた。

思わぬ形で動きを封じられた敵は、ビーム・ソード・アックスを振りかざした状態で動きを固められ、ティエレンに勢い余ってぶつかってしまう。

こうなると、そのティエレンに網を斬って貰わなければ、身動きが取れない。

 

機体の中に居たら、トドメを刺されてやられると思ったのだろう。

慌ててパイロットは機体から飛び出し脱出するが、そこで唖然とする。

目の前には、ティエレンから抜け出し、待っていましたと拳銃を構えていた朋がいたのだから。

勿論、咄嗟に手を上げて降参のポーズを取るが、朋は容赦しなかった。

 

「最初に皆殺しにしようと追いかけ回したのは、誰だったかしら?」

 

それだけを言うと、敵パイロットの心臓に向けて、3発拳銃を発射し射殺。

すぐさま哀れな敵の出て来たギラ・ドーガのコックピットに飛び乗ると、ハッチを閉めてマイクでむつみに呼びかける。

 

「いいわよ、むつみちゃん!ネット斬って!」

「了解………。」

 

ティエレンが、カーボンブレイドでネットを斬り裂いた事で、自由を得た朋搭乗のギラ・ドーガは、ビーム・マシンガンとシャクルズを回収すると、シンデレラガールズと交戦している2機のギラ・ドーガを見る。

 

「さてさて………、ここから、盛り上げちゃうわよ!」

 

朋はそう言うと、むつみに天鹿の護衛をお願いし、一気にシャクルズを加速させた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「どうなってるんだい!?アレは!?」

 

部下が射殺されて、機体を奪われた事で、ようやく事の重大さを理解したレズンは、残っている僚機を向かわせ、シンデレラガールズとの戦闘も中止しようとする。

しかし、そこにモビルアーマー形態のトーラスを駆る智絵里がビームライフルを連射して来た。

 

「どうして、貴女達は民間船を狙うの!どうして、そんな酷い任務を請け負うの!?」

 

いきなりマイクで声をかけて来た大人しそうな少女………智絵里の怒りの声に、レズンはカチンと来た。

智絵里は任務の為ならば、平然と汚れ仕事を請け負うレズンが気に入らなかったのだ。

 

「ハンッ!何を言うかと思えば、任務に酷いもクソも無いだろう!!」

 

だが、それはレズンにも言えた。

彼女からしてみれば、仕方なくこういう仕事を引き受けているというのに、平然と何も知らずに非難してくる智絵里は気に食わない。

故に、敢えて挑発するように言ってのける。

 

「戦争に関係ない人達を巻き込んで………、人道に背いた行いをして………、それで犠牲になる人達の事、考えた事あるの!?」

 

だからこそ、智絵里もヒートアップしてしまう。

 

「智絵里さん………。」

「まさか、あの過去の事………。」

 

やよいや千秋は、戦闘が始まる前の彼女の会話を思い出していた。

智絵里の話が確かなら、育ての親であった連邦の軍人は、実の両親を任務に巻き込んで殺している。

その事実が、彼女にとってはどうしても許せない事であるのだ。

だからこそ、似たような事をしているレズン達に怒りを覚えている。

 

「小娘が………一人前に説教してるんじゃないよ!アンタはきれいごとだけで戦争が出来るとでも本気で思っているのかい!?そんなバカなこと出来れば、戦争なんて起こりはしないんだよ!!汚れ仕事も首を縦に触れないようじゃ、一人前に戦ってなんかいられるか!!」

 

レズンにとっても火に油を注ぐ結果になったらしく、ビーム・マシンガンを智絵里機に当てようとしながら、苛立ちを思い切りぶつける。

綺麗ごとだけで片付けられるのならば、戦いというのは起こらない。

しかし、片付けられないからこそ、軍人がいる。

それもまた、正論なのだ。

でも………その言葉を、智絵里は受け入れられなかった。

 

「やっぱり同じだ………あの人と。」

「………何だって!?」

「貴女達なんて………あの人のような人達なんて、いなければいいのにッ!!」

「この………頭の中、お花畑の癖にッ!!」

 

互いに相反した事で、怒りが最高潮に達する。

レズンの狙いは完璧に智絵里機に向くが、智絵里も機動力に任せて突撃を繰り返そうとするから、お互いの攻撃が当たらない。

代わりに他の機体も援護ができないが、口論は尚も続く。

 

「何を言っても「汚れ役」って言って………!何て訴えても、「歯車」だって言って………!その言葉だけで、次々と人を不幸にしていって!!」

「ええい!!聞けば聞くほど腹が立つ!!」

「私は只、あの人に………「あの人」に………ッ!!」

 

智絵里のいつもの調子から信じられないようなキレかたに、「事情を知っている」シンデレラガールズのメンバーすらも困惑する。

只、このままでは彼女が危ないので、何とか千秋が止めようとする。

 

「智絵里!落ち着いて!貴女、今危ないわよ!?」

「残りの僚機の方は………!?」

「あたしにお任せ!………しばらく、その専用機、相手にしていてよ!」

 

藍子の言葉に、朋が軽い調子で部下のギラ・ドーガに向かって行く。

 

初めて乗る機体であるはずなのに、その腕前はかなりのものであった。

ビーム・ソード・アックスをぶつけ合って鍔迫り合いをすると、敢えて乗っているシャクルズを蹴り飛ばすようにして、両膝の部分にぶつけ、相手のバランスを崩す。

そのまま飛ぶように下がると、シールド裏の「シュツルム・ファウスト」を発射。

頭部にぶつけ、メインカメラを破壊してしまう。

慌てふためく相手に素早く最接近すると、貫通力の高いピックでコックピットを貫き無力化。

更に、そのまま行き場の無くなったシャクルズを掴んで、自機のサブ・フライト・システムに再び飛び乗り、智絵里機と対峙しているレズン専用ギラ・ドーガへと向かって行く。

 

「そのトーラスって「ビームサーベル」ある?」

「え………!?」

 

レズンに対して熱くなっていた智絵里は、連邦のチャンネルで、笑顔で話しかけて来た朋の出現に唖然とするが、すぐさま千秋が事情を掻い摘んで説明する。

確かに智絵里の乗っている白いトーラスは、ビームサーベルを2本マウントしている。

しかし、振るうにはモビルスーツ形態にならないといけないので、機動力が失われてしまう為、使用できないのだ。

 

「何か怒ってるみたいだし、トドメは譲ってあげる。それと機動力なら、これ使って!」

 

そう言うと、先程無力化したギラ・ドーガのシャクルズを智絵里の方に飛ばす。

受け取った智絵里は、モビルスーツ形態になって飛び乗るが、その様子を見ていたレズンは朋の行動に激怒。

彼女のギラ・ドーガから破壊しようと「ビーム・ソード・アックス」のアックスを横に振るう。

 

「コイツ!!」

 

「おっとっと!」

 

しかし、朋はわざと頭を押さえて屈むようなポーズを取り、すれ違い様に刃を回避。

完全に舐められている事に気付いたレズンは、反転して後ろから斬ろうとする。

だが、ここでレズン機のシャクルズのエンジンが破壊された。

後ろを見ると、何といつの間にかむつみのティエレンが音も無く近づいており、200mm×25口径長滑腔砲で、狙い撃っていたのだ。

 

「よっしゃ!今!!」

「は、はい!!」

 

横から智絵里が二振りのビームサーベルを構えて突撃してくるが、レズンは咄嗟に壊れたシャクルズを、智絵里機に向けて投げ飛ばす。

 

「わわ!?」

 

反射的に智絵里はビームサーベルでシャクルズを突き刺す形になり、爆発。

自機や自分の乗っているシャクルズが誘爆する事は無かったが、その間にレズンは、撤退していく。

 

「ガキの我儘で追いつめられるなんて………、冗談にもほどがあるッ!!」

 

「あっちゃー………残念だったね。」

「す、すみません………。」

 

協力してくれた朋に申し訳ない想いを抱きながらも、能天気そうな口調で介入した彼女の言葉で頭が冷えた智絵里は、お辞儀をして謝る。

とにかく、レズン機が去った事により、次元圧縮プログラムも急速に収束していく事になる。

 

 

戦闘はとにかく、終結を迎えた。

問題は、今後の後処理である。




どんな強力なモビルスーツのパイロットでも、不測の事態と白兵戦ばかりはどうしようもない。
鉄血のオルフェンズとかだと、散々見た展開ですよね。
今回登場した藤居朋さん達がやったのは、正にそんな戦い方でした。

また、レズン・シュナイダーに激高した緒方智絵里さんも、何やら心の底に色々と抱えているみたいですが………?

作者としては、やっと鹵獲したティエレンを活躍させられた事で、1つ満足しています。
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