モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第54話 PHASE4-10『保護された少女達』

「マゼラン残骸」での戦闘を終えたシンデレラガールズは、その後処理を行い、保護した人々を確保し助けた人々と別れを告げた。

 

そんな中、天鹿に戻って来た藤居朋は、仲間達と会話をする中で、一時的に共闘した高垣楓達の部隊がシンデレラガールズでは無いかという憶測を立てる。

そこで出てくるコロニー「765」や天海春香の補佐である秋月律子の名前。

彼女達は、律子に雇われた面々であったのだ。

 

一方、全ての後処理を行い、佐々木千枝、市原仁奈、佐城雪美を救出したシンデレラガールズは、彼女達に食事を取らせたうえで事情を聞く事に。

モビルスーツで色々な運搬を行っていた黒川千秋は、楓に捕虜の立場でありながら出撃を許可して貰った事に対し、感謝を述べる。

だが、楓はもう、千秋もシンデレラガールズの仲間であると断言し、この部隊で自分の信念を貫いて欲しいと諭してくれる。

狭い価値観から脱出出来た千秋は、この部隊で改めて「黒白の騎士」として、二つ名と力を振るう事を決意した。

 

 

 

千枝達は食事を取った後、ブリッジへと栗原ネネ達によって招かれる事になる。

そこには、先に休息を取っている綾瀬穂乃香や桃井あずき、付き添いの工藤忍以外のシンデレラガールズの面々が集まっており、皆が一通りの挨拶をした。

 

「ありがとうございます、助けて下さって。千枝達、もう駄目かと思いました………。」

「ジムって機体に乗っていたおじちゃんもそうですが、仁奈達はいい人に出会えたみたいでごぜーます。」

「温かい人達………落ち着く………。」

 

三者三様で感謝の言葉を述べてくる千枝達の様子を見て、楓達は改めて無事でよかったと感じる。

もしも、彼女達を見捨ててしまったのならば、取り返しの付かない事になっただろう。

しかし、だからこそ………。

 

「では、本題に移りますね。何故、貴女達はあのモビルスーツの中に?」

 

楓は屈みこみ、千枝達と同じ目線に立って問う。

3人は顔を見合わせた後で、まず、一番年長でしっかり者のイメージのある千枝が代表して話し始める。

 

「えっと………、千枝達、「リボーコロニー」の学校に通っているんです。それで学校の行事で、コロニー内のモビルスーツ工場の見学をしていたんだけれど………。」

「そしたら、いきなりパパパパーンって、音が鳴り響いて工場が慌ただしくなったのでごぜーます。それでみんなで避難する事になったのでごぜーますが、仁奈達だけはぐれてしまって………。」

「どうしようか………悩んでいたら………、銃を持った軍人の人に………多分一番安全だからって………あの機体の中に押し込められたの………。」

「その中でしばらく待っていたら、急に凄い音と共に揺れて………、気付いたら宇宙に………。」

 

順繰りに思い出すように話し出す千枝達の情報を、楓は冷静に纏めていく。

どうやら、何者かが彼女達のいる工場を襲撃した故に、安全の為、止むを得ず試作機か鹵獲機に入れられたというのだ。

しかし、襲撃の影響か、コロニーに穴が開いて彼女達は宇宙に吸い出されてしまった。

結果的に千枝達はこうしてキャリー・ベースに保護される事になったが、かなり綱渡りで生きていたというのがよく分かった。

ここで、話を聞いていた千川ちひろが顔をしかめる。

 

「………ですが、おかしいですね。私の知る限り、「リボーコロニー」で穴が開いたという話は聞いた事はありませんよ?一度核攻撃隊が襲って来たという話は聞いていますが、それも未遂に終わっているはずですし………。沙紀さんはどうですか?」

 

話を振られた吉岡沙紀は、頭を掻きながら考える。

そして、浮かんだ意見をちひろに告げた。

 

「いや………アタシもそんな話は全く耳にした事が無いっす。別次元の部隊が襲って来たって事かな?」

「別次元ですか………。でも、操縦系統や開発系統が異なる機体を、わざわざコロニー襲撃のリスクまで犯して、狙いにくるものでしょうか?」

「確かに………扱いにくいっすからね。手に入れたとしても、活かしにくいし………。」

 

2人で頭を悩ませている所に、急にアプロディアが現れる。

どうやら、穂乃香達の様子を見て来ていたらしく、到着が遅れたらしい。

只、会話はしっかりと把握していたのか、自身の意見を述べた。

 

「1つの可能性として考えられる意見ですが、そのコロニー自体が局地的な次元圧縮の被害を受けたのでは無いでしょうか?」

「お人形さん………!?」

 

いきなりの、のワの体の出現に千枝が思わず正直な言葉を告げるが、当のアプロディアはドラム洗濯機のように高速回転をして、システムだと自己主張する。

そして、大事な話だから真面目に聞きなさい………と軽く叱った為、千枝は不満顔。

とりあえず、話の腰を折らないようにと、楓が話を進める。

 

「局地的な被害とは、どういう意味ですか?」

「コロニーそのものが次元圧縮により、別次元のコロニーと内部構造が繋がってしまったかもしれないという事です。」

 

アプロディアが言うには、襲撃犯は元々別次元の別工場を狙い、その作戦の為に別コロニーに穴を開ける予定であったのに、次元圧縮の影響で「リボーコロニー」とその内部の工場に被害を及ぼしてしまったのでは無いか?………との事。

 

「成程、纏めれば、別コロニーで起きるはずだった事件が、「リボーコロニー」を巻き込んで発生してしまったという事ですね。」

「これも次元圧縮の弊害です。A地点の事件がB地点やC地点で発生するのですから。このままバルバトスの計画が進めば、大混乱に陥るでしょうね。」

 

アプロディアと楓の話が複雑化してきたことで、千枝達は何とか理解しようとしているが、よく分からない状態になってしまう。

成宮由愛や古賀小春、高槻やよいだって、頭にクエスチョンマークが浮かんでいるような状態なのだ。

仁奈や雪美は、脳の理解が追い付かなくなって、少しうつらうつらとし始めた。

 

その様子を、敏感に察知したのが、緒方智絵里である。

 

「………艦長、原因を突き止めるのも大切だけれど、先にこの子達の今後について考えませんか?元のコロニーがどうなっているのかも分からないし、このままじゃこの子達………。」

「そうですね。今すぐに元の場所に返すのも危険だと思いますし………、どうしましょうか。」

「ユーグ隊長にお願いしたら?ロリコンじゃないし。」

 

ここで、操縦士として舵を握っていた姫川友紀が、振り向いて意見を述べる。

後半部分は割と直球であったが、大事な事ではあった。

しかし楓は、実質的に50人のフェイフェイクローンを匿っている形であるユーグ隊長の下に、只の子供を3人も預けるのは得策では無いと考える。

765プロ関係者であるやよいの時とは、条件が全然違っているのだ。

その会話を聞いていた智絵里が、再び屈んでいる楓に進言。

 

「………しばらくの間は、私達で守ってあげる事は出来ないでしょうか?」

「私達で………ですか?でも、私達はこれから………。」

「分かっています。でもこの子達、急に知らない所に放りだされて、凄く不安になっていると思うんです。だから、下手に知らない人達に頼むよりは、さっきの戦闘で少しは信頼できるようになった私達で、守ってあげた方がいいかなって………。」

『お姉ちゃん………。』

 

あくまで千枝達3人の目線に立って考えてくれている智絵里。

上手く本音を言えない中で代弁して貰えたのか、彼女達は思わず泣きそうな顔であった。

 

「………貴女達は、どうしたいですか?」

 

楓がもう一度千枝達に視線を合わせたうえで、優しい笑顔で聞いてみる。

千枝達は互いの顔を見合わせてしばらく黙っていたが、意を決すると自分達の望みを発した。

 

「千枝は………ここに居たいです。知らない人の所は、怖いから………。」

「仁奈もここがいいでごぜーますよ。何か手が足りないというなら、手伝うでごぜーます!!」

「お姉ちゃんたちの助けになら………なれるから………。」

 

彼女達の真っすぐな瞳を見た楓は、少しだけ目を伏せると、順番に3人の頭を撫でる。

そして静かに立ち上がると、微笑みを見せて告げた。

 

「分かりました。しばらくの間ですが、宜しくお願いしますね。」

 

「ありがとうございます!」

「宜しく頼むでごぜーますよ!」

「一緒に………居させてね………。」

 

ここで千枝達は、初めて満面の笑みを見せてくれる。

その様子に全員が安堵した中で、ちひろが彼女達を手招きする。

早速空き部屋を、千枝達の部屋にする為だ。

こうして3人は食事を作ってくれた栗原ネネに連れられる形で、ちひろについて行く。

その様子を見ていた智絵里は、彼女達がブリッジを出た後で安堵した顔でボソッと一言。

 

「………良かった。この艦から放り出されなくて。」

「……………智絵里。」

 

楓が振り向くと、彼女は本当に心の底から良かったように言葉を紡ぐ。

幼い頃の自分自身を振り返るような、苦笑した顔で。

 

「私も、両親が事故で無くなって1人になったから、何となく分かるんです。頼れる人達が急にいなくなって、厄介者として誰にも引き取られないのは、物凄く怖い事なんですよ。だから、私達がここで手を差し伸べられて、本当に良かったなって………。」

「………貴女の場合は、いなかったのですか?」

 

楓は聞きにくそうであったが、神妙な顔で問う。

ネネが彼女の過去の事情を知っていたという事は、当然ながら艦長である彼女も把握しているという事だ。

生みの両親を事故に巻き込んだという、育ての親を憎みに憎んだという、智絵里の事情を………。

 

「私は、親族関係はみんな余裕が無かったので………。だから、手を差し伸べられた時は、凄く嬉しかったんです。………本当に、何も知らなかった時は………。」

 

悲しそうに呟いた最後の言葉は消え入りそうではあったが、全員聞き取る事が出来た。

それは出撃前に事情を知ったやよいや千秋も同じであり、何とも言えない気分になる。

 

 

こうして、ブリッジに集った一同は一度解散する事になった。

やよいはしばらく、どうすればいいか分からなかったが、肩に手を当てられる。

千秋であった。

 

「………聞いてみる?智絵里の事。」

「そうですね………でも、その前に………。」

 

やよいは千秋と共に、とある部屋へと向かった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

やよい達2人が訪れたのは、穂乃香とあずきの部屋であった。

フリルドスクエアは、全員で戦場に出る事が決まった後、忍と喜多見柚と合わせて4人で大部屋を割り振って貰っており、そこで生活をしている。

今、柚は別件で部屋にはいなかったが、穂乃香とあずきの付き添いをしてくれている忍は、やよい達の訪問に入口であったが応えてくれた。

 

「穂乃香さん達は、大丈夫ですか?」

「うん、大分落ち着いたよ。やっぱり、初めて撃墜をすると、どうしてもああなるよね。」

 

体験談であるのだろう。

忍が、超えなければならない道だと告げる。

恐らく、さっきまで穂乃香やあずきも嘔吐していたのだ。

人を初めて殺したという罪悪感から。

やよいが、そうであったように………。

 

「えっと………千秋さんも、そうだったんですか?」

「そうね。コーディネイターとナチュラルという価値観に縛られている時でも、初めて撃墜した時は酷かったわ。」

 

エース級である千秋もさらりと肯定してしまう所を見ると、やはり人殺しの罪悪感は、大抵は誰でも通ってしまうらしい。

ここでようやく穂乃香とあずきが、青い顔ではあったが、3機のぴにゃこら太と共に出て来た。

 

「あ、ゴメンなさい………なんか無理させて………。」

「いえ………こちらこそ申し訳ありません。先程の戦闘は足を引っ張ってしまって………。」

「あずき達、先が思いやられるよね………。」

「大丈夫だと思います。………2人目は、そこまで酷く無いと思いますから。」

 

言った後で、やよいは自分の言葉が嫌になった。

人殺しの罪悪感を抱かなくなっていくのは、あまり良い話では無い。

しかし、実際にやよいは、2人目以降は耐性が出来てしまっていた。

 

「こんな自分が嫌になりますが………でも、本当に吐く事は無くなると思うので………。」

「そっか………。そうやって慣れていくしかないんだよね。」

 

複雑そうに告げるやよいの言葉を受け、あずきも考え込む。

戦いに慣れるというのは、戦闘技術を磨く事だけでは無い。

そうした人道面での背徳感に慣れていく事もまた、必要であるのだ。

勿論、平時であっては、絶対に許されないが………。

 

「出来れば………こんな思いをする人が、少ない方がいいんですけれどね………。」

「やよいちゃんの言う通りですね。こんな辛い想いをする人は、絶対に増やしてはいけません。………特に、あの3人の子供達には。」

 

穂乃香の静かな言葉に同意する一同。

 

 

少しずつではあるが、高槻やよい達はこうして戦いに慣れていく事になる。

苦しい自問自答をしながら………佐々木千枝達のような者達を守る為に。




保護された3人の少女…アイドル達ですが、実は動画版から1人増えています。
それが佐城雪美さん。
彼女を増やしたのは、カツレツキッカの法則もあるからですね。
後は、チョットした事情があります。

高槻やよいさん達が抱く人殺しの罪悪感は、絶対に感じなければならない事。
しかし、感じ過ぎると明日は我が身ですから、複雑ですよね…。
彼女達が背負っているものは、大きすぎるのかもしれません。
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