「マゼラン残骸」での戦闘を終えたシンデレラガールズは、その後処理を行い、保護した人々を確保し助けた人々と別れを告げた。
そんな中、天鹿に戻って来た藤居朋は、仲間達と会話をする中で、一時的に共闘した高垣楓達の部隊がシンデレラガールズでは無いかという憶測を立てる。
そこで出てくるコロニー「765」や天海春香の補佐である秋月律子の名前。
彼女達は、律子に雇われた面々であったのだ。
一方、全ての後処理を行い、佐々木千枝、市原仁奈、佐城雪美を救出したシンデレラガールズは、彼女達に食事を取らせたうえで事情を聞く事に。
モビルスーツで色々な運搬を行っていた黒川千秋は、楓に捕虜の立場でありながら出撃を許可して貰った事に対し、感謝を述べる。
だが、楓はもう、千秋もシンデレラガールズの仲間であると断言し、この部隊で自分の信念を貫いて欲しいと諭してくれる。
狭い価値観から脱出出来た千秋は、この部隊で改めて「黒白の騎士」として、二つ名と力を振るう事を決意した。
千枝達は食事を取った後、ブリッジへと栗原ネネ達によって招かれる事になる。
そこには、先に休息を取っている綾瀬穂乃香や桃井あずき、付き添いの工藤忍以外のシンデレラガールズの面々が集まっており、皆が一通りの挨拶をした。
「ありがとうございます、助けて下さって。千枝達、もう駄目かと思いました………。」
「ジムって機体に乗っていたおじちゃんもそうですが、仁奈達はいい人に出会えたみたいでごぜーます。」
「温かい人達………落ち着く………。」
三者三様で感謝の言葉を述べてくる千枝達の様子を見て、楓達は改めて無事でよかったと感じる。
もしも、彼女達を見捨ててしまったのならば、取り返しの付かない事になっただろう。
しかし、だからこそ………。
「では、本題に移りますね。何故、貴女達はあのモビルスーツの中に?」
楓は屈みこみ、千枝達と同じ目線に立って問う。
3人は顔を見合わせた後で、まず、一番年長でしっかり者のイメージのある千枝が代表して話し始める。
「えっと………、千枝達、「リボーコロニー」の学校に通っているんです。それで学校の行事で、コロニー内のモビルスーツ工場の見学をしていたんだけれど………。」
「そしたら、いきなりパパパパーンって、音が鳴り響いて工場が慌ただしくなったのでごぜーます。それでみんなで避難する事になったのでごぜーますが、仁奈達だけはぐれてしまって………。」
「どうしようか………悩んでいたら………、銃を持った軍人の人に………多分一番安全だからって………あの機体の中に押し込められたの………。」
「その中でしばらく待っていたら、急に凄い音と共に揺れて………、気付いたら宇宙に………。」
順繰りに思い出すように話し出す千枝達の情報を、楓は冷静に纏めていく。
どうやら、何者かが彼女達のいる工場を襲撃した故に、安全の為、止むを得ず試作機か鹵獲機に入れられたというのだ。
しかし、襲撃の影響か、コロニーに穴が開いて彼女達は宇宙に吸い出されてしまった。
結果的に千枝達はこうしてキャリー・ベースに保護される事になったが、かなり綱渡りで生きていたというのがよく分かった。
ここで、話を聞いていた千川ちひろが顔をしかめる。
「………ですが、おかしいですね。私の知る限り、「リボーコロニー」で穴が開いたという話は聞いた事はありませんよ?一度核攻撃隊が襲って来たという話は聞いていますが、それも未遂に終わっているはずですし………。沙紀さんはどうですか?」
話を振られた吉岡沙紀は、頭を掻きながら考える。
そして、浮かんだ意見をちひろに告げた。
「いや………アタシもそんな話は全く耳にした事が無いっす。別次元の部隊が襲って来たって事かな?」
「別次元ですか………。でも、操縦系統や開発系統が異なる機体を、わざわざコロニー襲撃のリスクまで犯して、狙いにくるものでしょうか?」
「確かに………扱いにくいっすからね。手に入れたとしても、活かしにくいし………。」
2人で頭を悩ませている所に、急にアプロディアが現れる。
どうやら、穂乃香達の様子を見て来ていたらしく、到着が遅れたらしい。
只、会話はしっかりと把握していたのか、自身の意見を述べた。
「1つの可能性として考えられる意見ですが、そのコロニー自体が局地的な次元圧縮の被害を受けたのでは無いでしょうか?」
「お人形さん………!?」
いきなりの、のワの体の出現に千枝が思わず正直な言葉を告げるが、当のアプロディアはドラム洗濯機のように高速回転をして、システムだと自己主張する。
そして、大事な話だから真面目に聞きなさい………と軽く叱った為、千枝は不満顔。
とりあえず、話の腰を折らないようにと、楓が話を進める。
「局地的な被害とは、どういう意味ですか?」
「コロニーそのものが次元圧縮により、別次元のコロニーと内部構造が繋がってしまったかもしれないという事です。」
アプロディアが言うには、襲撃犯は元々別次元の別工場を狙い、その作戦の為に別コロニーに穴を開ける予定であったのに、次元圧縮の影響で「リボーコロニー」とその内部の工場に被害を及ぼしてしまったのでは無いか?………との事。
「成程、纏めれば、別コロニーで起きるはずだった事件が、「リボーコロニー」を巻き込んで発生してしまったという事ですね。」
「これも次元圧縮の弊害です。A地点の事件がB地点やC地点で発生するのですから。このままバルバトスの計画が進めば、大混乱に陥るでしょうね。」
アプロディアと楓の話が複雑化してきたことで、千枝達は何とか理解しようとしているが、よく分からない状態になってしまう。
成宮由愛や古賀小春、高槻やよいだって、頭にクエスチョンマークが浮かんでいるような状態なのだ。
仁奈や雪美は、脳の理解が追い付かなくなって、少しうつらうつらとし始めた。
その様子を、敏感に察知したのが、緒方智絵里である。
「………艦長、原因を突き止めるのも大切だけれど、先にこの子達の今後について考えませんか?元のコロニーがどうなっているのかも分からないし、このままじゃこの子達………。」
「そうですね。今すぐに元の場所に返すのも危険だと思いますし………、どうしましょうか。」
「ユーグ隊長にお願いしたら?ロリコンじゃないし。」
ここで、操縦士として舵を握っていた姫川友紀が、振り向いて意見を述べる。
後半部分は割と直球であったが、大事な事ではあった。
しかし楓は、実質的に50人のフェイフェイクローンを匿っている形であるユーグ隊長の下に、只の子供を3人も預けるのは得策では無いと考える。
765プロ関係者であるやよいの時とは、条件が全然違っているのだ。
その会話を聞いていた智絵里が、再び屈んでいる楓に進言。
「………しばらくの間は、私達で守ってあげる事は出来ないでしょうか?」
「私達で………ですか?でも、私達はこれから………。」
「分かっています。でもこの子達、急に知らない所に放りだされて、凄く不安になっていると思うんです。だから、下手に知らない人達に頼むよりは、さっきの戦闘で少しは信頼できるようになった私達で、守ってあげた方がいいかなって………。」
『お姉ちゃん………。』
あくまで千枝達3人の目線に立って考えてくれている智絵里。
上手く本音を言えない中で代弁して貰えたのか、彼女達は思わず泣きそうな顔であった。
「………貴女達は、どうしたいですか?」
楓がもう一度千枝達に視線を合わせたうえで、優しい笑顔で聞いてみる。
千枝達は互いの顔を見合わせてしばらく黙っていたが、意を決すると自分達の望みを発した。
「千枝は………ここに居たいです。知らない人の所は、怖いから………。」
「仁奈もここがいいでごぜーますよ。何か手が足りないというなら、手伝うでごぜーます!!」
「お姉ちゃんたちの助けになら………なれるから………。」
彼女達の真っすぐな瞳を見た楓は、少しだけ目を伏せると、順番に3人の頭を撫でる。
そして静かに立ち上がると、微笑みを見せて告げた。
「分かりました。しばらくの間ですが、宜しくお願いしますね。」
「ありがとうございます!」
「宜しく頼むでごぜーますよ!」
「一緒に………居させてね………。」
ここで千枝達は、初めて満面の笑みを見せてくれる。
その様子に全員が安堵した中で、ちひろが彼女達を手招きする。
早速空き部屋を、千枝達の部屋にする為だ。
こうして3人は食事を作ってくれた栗原ネネに連れられる形で、ちひろについて行く。
その様子を見ていた智絵里は、彼女達がブリッジを出た後で安堵した顔でボソッと一言。
「………良かった。この艦から放り出されなくて。」
「……………智絵里。」
楓が振り向くと、彼女は本当に心の底から良かったように言葉を紡ぐ。
幼い頃の自分自身を振り返るような、苦笑した顔で。
「私も、両親が事故で無くなって1人になったから、何となく分かるんです。頼れる人達が急にいなくなって、厄介者として誰にも引き取られないのは、物凄く怖い事なんですよ。だから、私達がここで手を差し伸べられて、本当に良かったなって………。」
「………貴女の場合は、いなかったのですか?」
楓は聞きにくそうであったが、神妙な顔で問う。
ネネが彼女の過去の事情を知っていたという事は、当然ながら艦長である彼女も把握しているという事だ。
生みの両親を事故に巻き込んだという、育ての親を憎みに憎んだという、智絵里の事情を………。
「私は、親族関係はみんな余裕が無かったので………。だから、手を差し伸べられた時は、凄く嬉しかったんです。………本当に、何も知らなかった時は………。」
悲しそうに呟いた最後の言葉は消え入りそうではあったが、全員聞き取る事が出来た。
それは出撃前に事情を知ったやよいや千秋も同じであり、何とも言えない気分になる。
こうして、ブリッジに集った一同は一度解散する事になった。
やよいはしばらく、どうすればいいか分からなかったが、肩に手を当てられる。
千秋であった。
「………聞いてみる?智絵里の事。」
「そうですね………でも、その前に………。」
やよいは千秋と共に、とある部屋へと向かった。
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やよい達2人が訪れたのは、穂乃香とあずきの部屋であった。
フリルドスクエアは、全員で戦場に出る事が決まった後、忍と喜多見柚と合わせて4人で大部屋を割り振って貰っており、そこで生活をしている。
今、柚は別件で部屋にはいなかったが、穂乃香とあずきの付き添いをしてくれている忍は、やよい達の訪問に入口であったが応えてくれた。
「穂乃香さん達は、大丈夫ですか?」
「うん、大分落ち着いたよ。やっぱり、初めて撃墜をすると、どうしてもああなるよね。」
体験談であるのだろう。
忍が、超えなければならない道だと告げる。
恐らく、さっきまで穂乃香やあずきも嘔吐していたのだ。
人を初めて殺したという罪悪感から。
やよいが、そうであったように………。
「えっと………千秋さんも、そうだったんですか?」
「そうね。コーディネイターとナチュラルという価値観に縛られている時でも、初めて撃墜した時は酷かったわ。」
エース級である千秋もさらりと肯定してしまう所を見ると、やはり人殺しの罪悪感は、大抵は誰でも通ってしまうらしい。
ここでようやく穂乃香とあずきが、青い顔ではあったが、3機のぴにゃこら太と共に出て来た。
「あ、ゴメンなさい………なんか無理させて………。」
「いえ………こちらこそ申し訳ありません。先程の戦闘は足を引っ張ってしまって………。」
「あずき達、先が思いやられるよね………。」
「大丈夫だと思います。………2人目は、そこまで酷く無いと思いますから。」
言った後で、やよいは自分の言葉が嫌になった。
人殺しの罪悪感を抱かなくなっていくのは、あまり良い話では無い。
しかし、実際にやよいは、2人目以降は耐性が出来てしまっていた。
「こんな自分が嫌になりますが………でも、本当に吐く事は無くなると思うので………。」
「そっか………。そうやって慣れていくしかないんだよね。」
複雑そうに告げるやよいの言葉を受け、あずきも考え込む。
戦いに慣れるというのは、戦闘技術を磨く事だけでは無い。
そうした人道面での背徳感に慣れていく事もまた、必要であるのだ。
勿論、平時であっては、絶対に許されないが………。
「出来れば………こんな思いをする人が、少ない方がいいんですけれどね………。」
「やよいちゃんの言う通りですね。こんな辛い想いをする人は、絶対に増やしてはいけません。………特に、あの3人の子供達には。」
穂乃香の静かな言葉に同意する一同。
少しずつではあるが、高槻やよい達はこうして戦いに慣れていく事になる。
苦しい自問自答をしながら………佐々木千枝達のような者達を守る為に。
保護された3人の少女…アイドル達ですが、実は動画版から1人増えています。
それが佐城雪美さん。
彼女を増やしたのは、カツレツキッカの法則もあるからですね。
後は、チョットした事情があります。
高槻やよいさん達が抱く人殺しの罪悪感は、絶対に感じなければならない事。
しかし、感じ過ぎると明日は我が身ですから、複雑ですよね…。
彼女達が背負っているものは、大きすぎるのかもしれません。