モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第55話 PHASE4-11『憂いの瞳』

シンデレラガールズに保護された佐々木千枝、市原仁奈、佐城雪美の3人が、何故モビルスーツに乗って流されていたのか?

ブリッジで事情を聞く限り、「リボーコロニー」の工場見学をしていた際に、何者かの襲撃に巻き込まれ、安全の為にモビルスーツに押し込まれて宇宙に吸い出されたらしい。

高垣楓達がアプロディアと会話をする内に、次元圧縮による弊害では無いか?………という結論に至るが、ここで緒方智絵里が、シンデレラガールズで彼女達を守ってあげられないか進言する事に。

 

頼りになる人達がいきなり居なくなって、知らない人達の所に出るのは本当に心細いから………と、彼女達の目線に立って告げる智絵里。

その言葉を受け千枝達3人は、この艦に居たいと言い、楓達は受け入れる事に。

無事に保護された事に安堵した智絵里は、自分も何も知らない昔はそうだったと語る。

 

そして解散した後、高槻やよいと黒川千秋は、工藤忍によって看病されている綾瀬穂乃香や桃井あずきの下を訪れる。

人を殺していく罪悪感と戦う事の辛さを語り合う中で、千枝達のような子供達にこんな思いをさせない為にも、彼女達は戦いに慣れていくことを改めて決意した。

 

 

やよい達が、穂乃香達フリルドスクエアの部屋を訪れていた頃、渋谷凛の部屋には、島村卯月や神谷奈緒が訪れて椅子に座っていた。

先の戦闘で気になった事を相談する為に、凛が呼んだのだ。

 

「ニュータイプ?凛が………?」

「うん、あの紫のモビルアーマー………メッサーラのパイロットが言っていた。あの男が私の事を把握したのは、私自身がニュータイプだからだって。」

 

先の戦闘でパプテマス・シロッコは、凛の素性とシンデレラガールズの組織名を、名乗っていないのに言い当てた。

その時にシロッコが言ったのが、ニュータイプという言葉だ。

しかし………。

 

「でも………私達の世界では、そんな言葉は無かったよね。凛ちゃんはコーディネイターだから、それがニュータイプという意味も含んでいるのかな?」

「いや、それはちょっと違う気がするぞ。隊長から聞いた話だと、ニュータイプは自然発生するものであるはずだ。コーディネイターっていのは、遺伝子組み換えで産み出されているんだろ?根本が違っていないか?」

「………出生は関係なしで、成長と先天的な適性が関わっているのかもしれない。ナチュラルにも空間認識能力に長けている人はいるという話だし、そっちに近いのかも………。」

 

卯月、奈緒、凛がそれぞれの持論を述べていくが、上手く纏まらない。

凛は元々、オーブに住まうコーディネイターであり、遺伝子組み換えで産まれた人間なのだ。

一方でニュータイプは、フェイフェイクローンを匿っているユーグ・クーロの話だと、オリジナルのクローンならば、オリジナルと同じにならない事が証明されている。

凛がニュータイプであるのならば、自然発生で生まれるというニュータイプの概念から外れてしまうのでは無いか?………とも考えられた。

勿論、全てが推論である為、何が正解なのか、何が間違っているのか、見当も付かない。

考えている内に頭がパンクしそうになったのか、奈緒が頭をわしゃわしゃと掻きながら愚痴る。

 

「ややこしいな。色々な世界の概念が混じっているから、何が何を指すのか全然分からない………。」

「私達の世界では、まだ存在しない言葉なのかもしれないね。」

 

結局の所、この卯月の言葉が一番妥当に思えた。

世界が交わった事で、まだ存在していない概念が芽生えてきている。

だから、凛のように特殊な事例も発生してきているとも言えた。

でも、憶測でしか全てを判断できないという事は、一寸先は闇という可能性もある。

故に、彼女は肩を落としてしまう。

 

「正直、不安になってくるよ。只でさえコーディネイターというのは、他の世界では異質な言葉なのに………。それなのに、ニュータイプかそれに似た何かなんだと言われたら………。」

 

勝手に知らない他者に自分自身を定義されたうえに、肝心の自身は己が何者か分かっていない。

それは、不快であり苦痛であり混乱すらしそうであった。

しかし、そんな憂いの瞳を抱く凛を見て………奈緒は一言。

 

「………お前、馬鹿か?」

 

「え!?奈緒に馬鹿って言われた!?」

 

「ブン殴るぞお前ェッ!!」

 

容赦の無いストレートな言葉に対し、思わず涙目で拳を握りガチギレをする奈緒に、凛は慌ててゴメン!………と、両手を上げて待ったを掛ける。

そんな彼女のおでこに、指を突きつけながら、奈緒は睨むように叫ぶ。

 

「真面目に聞け!コーディネイターだかニュータイプだか知らないが、お前は「渋谷凛」でしか無いだろう!!なのに、シャトルのケツ追っかけるしか能の無いような男の戯言1つでウジウジしてるなよ!!」

「いや、確かにそうかもしれないけれどさ………。私達の世界では、割と馬鹿に出来ない問題なんだよ?戦争にまで発展してるし………。」

 

おでこにビシビシと指を叩かれながらも、凛は落ち込む。

しかし、奈緒は敢えて重苦しそうに溜息を付くと、彼女にハッキリと言う。

 

「………それで、お前自身が潰れたら、何の意味も無いだろう………。」

「奈緒、でも………。」

「囚われるなよ、渋谷凛。そんな戯言1つ、適性1つで、お前の周りの環境が変わるわけじゃ無いんだ。大体、この艦のみんなが、お前がニュータイプに発現した所で、神扱いすると思うか?そんなわけ無いだろ?」

「……………。」

 

自信の無い顔を見せる凛に対し、奈緒は自分の胸を叩いて立ち上がる。

 

「アタシを見ろよ。「出来損ない」の烙印を押された身でも、どうにか生きてやっていけているんだぞ?」

「出来損ないって………。」

「深く考えすぎるなって。お前は見掛けに反して生真面目なんだから、もう少し阿呆に振る舞ってもいいんだ。」

 

一転して奈緒はニヤニヤと笑みを浮かべると、その握り拳を両手で打ち合わせ、ファイティングポーズを取る。

そして、立て膝を突いて凛と目線を合わせると、ハッキリと言った。

 

「それでもあの男のような奴が怖ければ、その時は呼んでくれよ。顔面ぶん殴ってやるから。」

「一応、さっきの戦闘で助けてくれた恩人だけど………。」

「でも、そこまでお前を困惑させている以上、変態と変わらない。」

 

実際、本当にぶん殴りそうな勢いの奈緒であったが、そう言って貰えると凛は心が軽くなった。

言っている事はぶっきらぼうで滅茶苦茶であったが、だからこそ自分自身を支えてくれる存在がいる事を、ハッキリと実感出来たからだ。

 

「ありがとう、奈緒。でも、1つだけいいかな?」

「ん?何だ?」

「私の友達に、「出来損ない」はいないよ。みんな、私を支えてくれてるから。」

 

故に、凛は奈緒の出来損ない発言を否定した。

彼女の根本を蝕む要素であるからこそ、敢えて………。

そして、ずっと見守っていた卯月もそれに習う。

 

「奈緒ちゃんも大切なシンデレラガールズの仲間なんだから、卑下したらダメだよ。」

「う、うん………ったく、馬鹿扱いしといて、それは無いだろ………でも、ありがと。」

 

誉められた奈緒は赤面し、照れ隠しかぶっきらぼうに愚痴りながらも、2人にお礼を言った。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

更に同時刻、捕虜になった柳瀬美由紀の下を、楓とアプロディアは訪れる事になる。

同行した面々は、実際に彼女と戦った者の1人である藤原肇と、千秋が捕虜になった時に彼女を諭した経歴がある高森藍子、そして美由紀と同じ世界の可能性である喜多見柚であった。

ちなみに監視は、千秋を諭したもう1人の立役者である本田未央が行っている。

何か不味い事になっていないか心配になる一同であったが、独房に訪れた5人?が見たのは、何と格子越しに正座で座りながらトランプで遊ぶ、未央と美由紀の姿であった。

 

「うーん………ババ抜きで勝てないなー。みゆき、顔に出やすいから。」

「みゆみゆ、自覚あるなら直した方がいいんじゃないの?」

 

早速打ち解けて、独特の渾名を付けている辺り、未央のコミュ力の高さが伺える。

とはいえ、いつまでも遊んでもらって貰っていては困った。

 

「未央………そろそろいいでしょうか?」

「あ、艦長。あーちゃんに、はじはじ、きたみーにアプロディアもいらっしゃい。みんなも混じる?」

「混じりません。………美由紀と言いましたね。すみませんが、質問に答えて貰います。」

 

「何?尋問?うーん、熱湯風呂とかはイヤだなー。」

 

「随分古典的ですね………まあ、いいでしょう。率直に聞きます。貴女は何者なのですか?」

 

楓の質問に、24歳の美由紀は未央にトランプを返しながらも首を傾げる。

彼女にとっては、どうやら的外れな質問のようであった。

 

「アプロディアは、何も答えてないの?」

 

「まるで、アプロディアを試すような言葉ですね。………知っているのですか?」

 

美由紀の言葉を受け、楓達はアプロディアを見る。

視線が集まった彼女はしばらく考え込んだ後で、静かに語り出す。

 

「………コア・インパクトという概念そのものは、あの戦闘で初めて知りました。検査の時に貴女が言った通り、私は力の大半を失っていますからね。ですが………。」

 

アプロディアにしては、やけに言いにくそうにしていた。

まるで信じられない………と言わんばかりに。

だが、それでも告げる事は告げていく。

 

「それでも起こった現象から、弟や妹のシステムの存在を感知する事は出来ます。………コア・インパクトを起こした力の源………貴女達の背後にいるのは、「システム・アメリアス」ですね。」

「システム・アメリアス………?」

 

ここで疑念の顔を浮かべたのは柚だ。

アプロディアと同じ世界出身である彼女は、少し迷ったうえで問う。

 

「待ってよ。アタシはそんなシステム聞いた事無いヨ?アプロディアやバルバトスのようにジェネレーション・システムを統治するのならば、ちゃんと民衆に知られているはずじゃ………?」

「誕生したばかりのシステムだったんです。民衆に公開する直前で、バルバトスが世界を消去した故に、彼女もまたデリートされたと解釈していました。」

 

アプロディアは、ずっと考え込んでいるようであった。

もしかしたら、彼女なりに妹のシステムの登場には想う所があるのかもしれない。

尚も、柚の質問は続く。

 

「そのアメリアスっていうのは………ジェネレーション・システムから生まれて、何を司る予定だったの?」

「彼女が担当する分野は「人々の幸福」。私よりも更にその概念に踏み込み、より人々が幸せに生活する為の方法を模索していくのが役割でした。」

 

幸福のための手段は言うまでも無く、思想や意識の反映結果などを科学的に解明して貰う予定であったらしい。

それはそれで、柚達の住んでいた世界の人々の考え方に異常性を感じるが、今問題であるのはそこでは無い。

 

「ですが、私が理解できるのはここまでです。何故、生まれて間もないアメリアスが、バルバトスからのデリートを逃れる事が出来たのか………。」

 

そもそも姉に当たるシステムであるアプロディアは、今でこそ力を失っているが、元々はジェネレーション・システムの数少ない古株。

バルバトス………そしてアメリアスは、彼女の負担を減らす為にそこから分け隔たれる形で産みだされたのだ。

ある意味ではアプロディアは2人の「母」と言える存在でもある為、「子」が暴走したとしても、消去を免れる事が出来た。

しかし、バルバトスと並列されたシステムであるアメリアスは、そうはいかない。

アプロディアから分け隔たれた彼女は、突然暴走したバルバトスの影響を受け、成す術も無く消去されているはずだ。

 

「美由紀………答えて下さい。何故、幼いアメリアスは消去を免れたのですか?」

 

「簡単だよ。アメリアスはね………幼かったから、怖くて抵抗したんだ。」

 

「抵抗………?」

 

独房の格子の前で座っている美由紀は相変わらず笑顔だ。

だが、その表情に少しだけ陰りが出たのが近くにいた未央には分かった。

 

「生まれて間もないアメリアスは、システムだけれど消えるのが怖かった。生きていたいって、心の底から願った。だから、彼女はみゆき達を取り込んだの。」

 

「取り込ん………だ?」

 

怪訝な顔をする柚を見て、美由紀は頷く。

そして………明るそうな彼女にしては珍しく、憂いの瞳を浮かべる。

 

「きっと無我夢中だったんだね………。でも、そうやって見境なしに取り込んだ結果………色んな所で悲劇が起こった。」

 

「悲劇って………バルバトスが全てを消去したから?」

 

「その影響もあるけれど………うーん、説明がむずかしいや。ここから先は、直接みゆき達の所で話を聞かない?」

 

そう言うと、美由紀は格子の隙間から手を出す。

怪訝な顔をした一同に、彼女はこう言う。

 

「手を握ってくれれば、美由紀の「別の身体」の下に、一時的に精神を連れて行ってあげる。そこで一例として、さっきの戦闘で気が動転した亜里沙ちゃんから話を聞こう。」

 

「聞こうって………精神を連れて行くって………。」

 

藍子が思わず、動揺して呟いてしまう。

美由紀の発言は、どうしても危険な香りがした。

もしも本当に彼女の言葉通りに精神を連れていかれるのならば、戻ってこられないのでは?………という懸念を抱いたのだ。

何せ美由紀は敵対している存在。

罠の可能性も十分に有り得る。

 

勿論、その反応は覚悟していたのか、当の本人は苦笑。

 

「………やっぱり、信用しないよね。みゆき達は世界を壊したいんだし。」

 

「……………。」

 

しかし、ここで肇が一歩前に出る。

彼女にしてみたら、先の戦闘で気が動転した持田亜里沙の事は気に掛かった。

世界を呪いながらも、佐々木千枝達を誤って手に掛けそうになって、トラウマを抉られそうになった彼女の事が。

 

「艦長、私が行きます。ここは………。」

「ストップ。はじはじが行ったら、小隊長が1人いなくなっちゃうよ?」

 

しかし、そこで楓よりも前に止めたのは、未央。

彼女は敢えて笑顔で自分の右手を出そうとする。

 

「待ちなさい、未央!」

「でも艦長が行くわけにもいかないし、あーちゃんやはじはじは小隊長。きたみーも戦力の1人だし、私が行くのが一番無難じゃない?」

 

未央は先の戦闘で、乗機を破壊されてしまった。

勿論、代わりの機体は幾らでもあるが、パワード・ジムほど上手く扱う事は出来ないだろう。

乗機が壊れた事に関して言えば、肇も同じではあるが、彼女には小隊統率能力がある。

 

正論を言われた事で、楓は未央を止める事が出来なくなってしまった。

だからこそ、彼女は最悪のパターンを事前に告げる。

 

「………貴女を貶める罠だったら?」

「その時は、みんなで未央ちゃんを助けに来てよ。でもさ、くろちーの時もそうだったけど、頭ごなしに否定していたら、何も始まらないじゃん。」

「……………。」

 

言いくるめられてしまった楓は、美由紀をもう一度見た。

相変わらず人懐っこそうな笑みを浮かべている彼女が、何を考えているのかは分からない。

だからこそ、念入りに釘を刺した。

 

「未央を………攫うつもりは無いでしょうね?」

 

「さらわないよ。」

 

「その約束………破った時は、相応の覚悟をして貰います。」

 

「はーい。………じゃ、行こっか。」

 

美由紀はあくまで軽い口調で手を差しだす。

未央は、本心ではかなり緊張していたが、覚悟はあった。

大切な仲間に危険な目にあわせる位ならば、自分が飛び込んだ方がまだ安心感がある。

それに………トランプをしている時は、24歳とは思えない幼さを感じたのだ。

だからこそ、直感で彼女の招待に応えるべきだと考えた。

 

「それじゃ、行ってくるね!」

 

未央もまた軽い口調で楓達を安心させるように言い、美由紀の手に自分の手を重ねる。

その瞬間、意識が何処か遠くへと飛んでいく感覚を覚えた。

 

 

本田未央は出向く事になる。

アメリアスというシステムの下に集う、世界の破滅を望む謎の勢力達の下へ。




皆様、今年も一年ありがとうございました。
予約投稿を使用しているので、恐らくこれが2024年最後の投稿になると思います。
良いお年を過ごして下さいね。

さて、物語はアメリアスという言葉が出て来た事で、更なる展開を迎える事に。
彼女の名前はgジェネレーションオーバーワールドをやった人ならば、知っているかもしれません。
設定はかなり、この小説オリジナルに振り切ってはいるんですけれどね。

本田未央さんの運命は、2025年に持ち越しです。
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