モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第56話 PHASE4-12『亜里沙の下へ』

パプテマス・シロッコの述べたニュータイプという言葉に悩む渋谷凛は、神谷奈緒と島村卯月に相談に乗って貰う事に。

色々な世界の定義が混じる中で不安に陥る彼女に、奈緒は馬鹿だとバッサリ。

どう転んでも凛は凛でしか無いと言い、どうなってもこの艦の仲間達の反応は変わらないと諭してくれる。

信頼してくれる仲間の存在に、凛は改めて頼もしさを感じるのだった。

 

一方で捕虜になった柳瀬美由紀と話を行おうとしたのは、高垣楓、藤原肇、高森藍子、喜多見柚、そしてアプロディア。

一足早く本田未央とトランプに興じる美由紀に何者か問うが、彼女は、アプロディアは知らないのか?………と口にする。

アプロディアは自分自身の考えを疑いながらも、生まれたばかりの「幸福」を司るシステムであった、アメリアスが背後に関わっていると考えた。

 

しかし、何故バルバトスのデリートを避けられたのか分からないアプロディアに対し、美由紀は、アメリアスは幼さ故に抵抗する為に乱雑に自分達を取り込んだと説明。

そして、その先の説明は、別の自分の体の近くいる持田亜里沙自身に説明して貰うのがいいと話す。

だが、その為には美由紀に精神を連れて行ってもらわなければならないらしく、罠の可能性すら疑ってしまう一行。

 

ここで名乗り出たのが、未央。

自分ならば居なくなっても、そこまで大きな喪失にはならないし、いざという時には頼れる仲間に助けて貰えると彼女は踏んだからだ。

正論を述べられて止められなくなった艦長の楓は、美由紀に釘を刺したうえで許可。

未央は、単独で美由紀達の下に出向く事になった。

 

果たして、彼女は何を知る事になるのか………?

 

 

 

一瞬ではあるが、意識が飛んだ未央が目を開くと、そこはキャリー・ベースとは違った宇宙に浮かぶ艦の中であった。

通路のような場所に立っており、自分を見下ろすと体が服を含めて半透明になっている。

この事から、美由紀が精神だけ連れて行く………と言った意味が分かった気がした。

 

「私………今、体から離れてるんだ。」

「そうだよ。みゆきから右手を離さないでね。」

「………それが、みゆみゆの本当の体?」

 

未央の前に立っていたのは、前髪の一部を結んだ所謂「田舎結び」にした少女。

24歳のような大人っぽさは無く、むしろ逆に子供っぽい姿であった。

 

「もしかして、小学生?」

「むー、失礼だなー。これでも一応14歳だよー?モビルスーツを操縦する為に、普段はあの成長した体にしてるの!」

 

成長した体という言葉を聞いて、未央は首を傾げる。

まるで、オリジナルとは別の体を操るかのような発言であったからだ。

未央が最初に浮かんだのは、フェイフェイクローンのような存在であるが、彼女達には1人1人に命も人格もあった。

しかし、美由紀の言葉と今の精神を転送する力が正しければ、彼女には複数の体を自由に生き来する能力があると言える。

 

その未央の疑問を察したのだろうか。

美由紀は繋いでいない反対の左手の親指を立てて告げる。

 

「これは、みゆきだけの力じゃないよー。ここに居るみんなの力………。というより、全てを消されたアメリアスが「偶然見つけた力」。」

「偶然………あ、じゃあ、みゆみゆを捕虜にしても………。」

「うん、肇ちゃんには言ったけれど、意味無いよ。新しい体が用意されているもの。」

 

捕虜にされても全く悲壮感を持たず、あそこまで余裕があったのは、そういう理由があったからなのだろうと未央は悟る。

しかし、新しい体が複数あるのならば、彼女達の命は何処にあるのか?………と考えた所で、独房での会話を思い出す。

 

「そういえば、アメリアスに取り込まれたって言ってたね。じゃあ、みゆみゆ達の命………というか、魂は………。」

「うん、アメリアスの中にあるの。柚ちゃん達のようにはいかないみたいだね。」

 

アプロディアに接続していた事で、消滅を免れたフリルドスクエアの4人とはまた定義が違うのだと未央は感じた。

それが分かっただけでも、何とも言えない気持ちになるが、とりあえず今の時点で気になった事を問う。

 

「ここは、宇宙に浮かぶ母艦の中?」

「そうだよー。名前は言えないけれどね。アメリアスやボス、仲間達がいるし。」

「そのボスって誰?」

「言えなーい。怒られちゃうもの。」

 

どうも機密情報はしっかりと分かっているらしく、余計な事は言わないらしい。

限定的な情報だけでも、持ち帰らないといけないかな………と未央は感じながらも、美由紀に連れられ、ゆっくりと通路を歩いて行く事になる。

宇宙が映る窓の反対側を見ると、幾つかの扉があった。

どうやら寝室も兼ねた個室であるらしく、複数人で生活しているのは分かる。

 

「あ、そうだ。1つだけいい事教えてあげる。」

「いい事?」

「手加減してくれたのは嬉しかったけれど………次からは、みゆき達の事を本気で殺していいよ?………見ての通り、体は沢山あるし死なないから。」

「……………。」

 

さっきの命の定義の話がある為なのか、何処か含みがあるようなニュアンスに聞こえたが、未央は追及するのを止めておいた。

その代わり、トランプをしていた時からどうしても疑問に思っていた事があるので、思い切って聞いてみる。

 

「ねえ………みゆみゆ自身の事情は、説明してくれないの?」

「みゆきはそこまで大した事無いよ?元々は、カニの工場のみんなと過ごしていたけれど、バルバトスに全部消去させられちゃっただけ。」

 

軽く一気に話した美由紀であったが、握る手の力が僅かに強くなったのを未央は見逃さなかった。

そもそも親しい者の身近での消失の辛さは、柚から聞いている。

だからこそ、惨い事を聞くな………と思いつつも、更に追求した。

 

「………それ、両親とかも一緒にいたんでしょ?目の前で消されるって、十分酷い事だと思うんだけれど。」

「でも、亜里沙ちゃんとかもっと酷いからさ。みゆきがあんまり、わがままを言っていられないよ。」

 

美由紀は前を見ながら、苦笑していた。

悲しそうに。

辛そうに見えないはずが無かった。

 

「ねえ、みゆみゆは………。」

「あ、アヤちゃーん!」

 

未央の言葉は、美由紀の呼び声で塞がれた。

前を見ると、とある部屋の前で別の女性が壁にもたれかかるように立っている。

髪を後ろでお団子にして長いポニーテール状に流しているその人物は、未央を若干睨むような眼で見てくる。

 

「何だ、美由紀。敵を連れて来たのか?」

「亜里沙ちゃんの事、心配してくれていたからね。未央ちゃんだよ。」

「えっと………ダルマにされたパワード・ジムに乗っていた本田未央だけれど………君が桐野アヤって人?」

 

とりあえず自己紹介をした未央に、呼ばれた女性………桐野アヤは溜息を付く。

そして、良く単身で乗り込む覚悟があったもんだ………と呆れながらも、未央に自己紹介をしてくれる。

 

「アタシは桐野アヤ。19歳で格闘技観戦が趣味だ。………これでいいか?」

「じゃあ、きりのんで。」

「……………。」

 

いつも通りのペースで、とりあえず渾名を付ける未央に、アヤは更に呆れるが、美由紀にわざわざ付いて来たという事で、度胸はあると踏んだのだろう。

精神体であるのも関係しているだろうが、まじまじと見ただけで、いきなり襲い掛かるような真似はしなかった。

 

「それで、亜里沙ちゃんはどうなってるの?」

「あー………ショックで寝込んでた。美由紀だけなら早く無事な姿を見せて欲しいけど………ちょっと待ってろ。」

 

未央のいる理由を察したアヤは、亜里沙と話をしに部屋に入っていく。

そして、数分経った後に、部屋の中から手招きをした。

 

「じゃあ、入ろっか!」

「うん………。」

 

流石に未央は緊張した。

あの戦闘中、ある意味ではアヤ以上に攻撃的だった女性と面と向かう形になるのだ。

下手したら、対応は更に辛辣な物になるかもしれない。

 

(逃げちゃダメだ………。)

 

喉を鳴らして部屋に入った彼女は………唖然とする。

 

ベッドから身を起こしていたのは、長い三つ編みを垂らした若干垂れ目の女性であった。

その顔は優しそうで、美由紀ほどでは無いが、小柄で細い方。

更に、部屋はインテリアが可愛く飾り付けられており、机の上にはパペットだろうか?

ウサギの着飾ったぬいぐるみが置いてあった。

 

幼稚園の先生………といった雰囲気が似合う彼女を前にして、あの戦闘中の狂気は何だったのか?………と未央は思ってしまう。

 

「いらっしゃい、貴女が未央ちゃん?」

「えっと………ありさ………先生………ですか?」

 

思わずいつもの癖で渾名を付けてしまい、しまった………と思った未央だったが、何故か亜里沙は少し笑みを浮かべる。

そして、彼女は立ち上がると右手にウサギのパペットを入れて、驚きの行動を始めた。

 

「初めまして、私は持田亜里沙。この子は相棒のウサコちゃんよ。」

「ウサコだウサー。宜しくだウサー!」

「ふ、腹話術………!?」

 

茫然とする未央の姿を見て更にうふふ………と笑みを見せながらも、亜里沙はパペットのウサコちゃんを置く。

そして、改めて未央に対して挨拶をした。

 

「ゴメンなさいね、怖がらせてしまったみたいで………でも嬉しかったわ。私の事………初対面で「先生」って呼んでくれるなんて思ってなかったもの。」

「ありさ先生………あの、間違っていたらこちらこそゴメンなさい。先生は、実は元々は幼稚園の先生だった………とか。」

「そうね。まだ始めて1年くらいだったけれど………。」

 

未央は、柚達の話していたジェネレーション・システムに付いて思い出す。

基本的に彼女達の世界でのそのシステムは、人々に最適な生き方を提供する物であったはずだ。

システム通りに生きれば、最適解な人生が得られるのならば、この目の前にいる持田亜里沙という女性が幼稚園の先生になったのは、正に天職だと思った。

 

「それで、ここには何をしに来たの?アヤちゃんは私達の事を知りに来たんじゃないか?………って言っていたけれど………。」

「はい。はじはじ………ヅダのパイロットの人達と、先の戦闘で敵対したけれど、その時に色々と話していたじゃないですか。私も回線で聞いていましたけれど、アレが全部事実なのか確かめたくて………。」

「………そうね、事実よ。」

「だったら、何でバルバトスやアプロディア関係なしに世界を滅ぼしたいのか、気にはなりました。それに………子供達を誤って手に掛けそうになった際の反応も………。」

 

この3人はバルバトスでは無く、ジェネレーション・システムそのものに憎悪を抱いている。

更に言えば、世界全てを滅ぼしたいと感じているのだ。

そんな中で亜里沙は、佐々木千枝達を手に掛けようとしてしまい、激しく動揺した。

「また子供達を」………と狂ったように叫んでいたのだ。

 

「また………って事は、1回目があるんですよね?多分、きたみー達と同じ、バルバトスに滅ぼされた世界に居た時に。」

「……………。」

「みゆみゆに連れて来て貰ったのは、それを確かめる為なんです!ありさ先生に何があったんですか!?見境無しに攻撃してきたのならば、私達にも知る権利があるはずです!!」

 

思わず叫んでしまった未央の言葉を受けた亜里沙は、無言で俯いていた。

しかし、突然発作のように体を震わせ始める。

アヤが大丈夫か?………と落ち着かせようとするが、亜里沙は右手で制すると、未央を見る。

そこにあったのは、狂気というよりは恐怖といった感情。

未央が亜里沙から聞くのは無理か?………と思った時、彼女は左手を出す。

 

「みゆみゆの時と同じく、手を取れって事ですか?」

「………ある程度は聞いていると思うけれど、私達の命はアメリアスが管轄しているわ。彼女は私達を取り込んだ影響で、私達の中にある記憶を見せる事も出来るの。」

「じゃあ、私もありさ先生の説明を聞きながら、直接記憶を追体験すれば………。」

「待て待て!?それは危険すぎるだろ!?」

 

ここでアヤが口を挟んでくる。

どういう意味なのか未央が聞くと、アヤは言葉を選びながらも説明し始めた。

 

「亜里沙さんにとって、その出来事はトラウマなんだ!いつも悪夢として見てしまう程なんだよ!!」

「それなら、口だけで説明してくれれば………。」

「いいえ………ここまでわざわざ踏み込んできてくれた未央ちゃんには、その一部始終を知る権利があるわ。」

 

亜里沙はそう言うと、震えながらも左手を出す。

未央は本当にいいのか?………と思わずアヤを見るが、彼女はこの事態を招いた美由紀を睨みながら、大きく溜息。

 

「仕方ねぇな………。ヤバかったら、アタシと美由紀が説明と対応引き継ぐ。これでいいか?」

「みゆき、上手く説明できないよ?」

「責任取れ!とにかく………未央だっけ?覚悟はできてるだろうな?」

 

頷いた未央の左手をアヤが強引に取る。

美由紀の右手と合わせる形で、亜里沙の左手に重ね合わせた。

すると、また意識が飛んでいくのを感じた

 

 

本田未央、桐野アヤ、柳瀬美由紀の3人は、持田亜里沙の記憶を追体験する事になる。

一体、何が彼女に狂気を与える事になったのか?

その理由を、未央は知る事になる。




新年明けましておめでとうございます!
章ごとの不定期投稿になると思いますが、今年も宜しくお願いしますね。

さて、謎のアジト…母艦?へと突入した本田未央さんですが、ここで本来の14歳の柳瀬美由紀さんの登場です。
桐野アヤさんや持田亜里沙さんとも本格的に話をし始め、その戦闘中とのギャップに驚く事になります。

無論、本来の亜里沙さん達はこのような優しい性格なので、興味があったら調べてみてください。
…特に亜里沙さんのデレマスの「ハロウィンクイーン」のカードイラストは、衝撃的でしたね。
Pと添い寝するアイドルは、結構限られているんですよ。
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