緒方智絵里の育ての親に付いて、もっと詳しく知りたかった高槻やよいと黒川千秋は、展望台にいる彼女に話を聞く事に。
彼女は過去の事件を隠蔽する影響で、様々な機関の情報操作によって、複数の子供達を不幸にした両親の忌み子にされていた。
育ての親が、彼女に手を差し伸べてくれたのは、そうした智絵里を見捨てなかったから。
だから彼女は育ての親を憎みながらも感謝もしているという、複雑な感情を持ってしまっていた。
最終的にやよいに、その親と話せたら何を言って欲しいのか聞かれるが、死者と話せるわけが無いと弱々しく語る。
一方、格納庫で高森藍子から本田未央が寝込んだ話を聞いた吉岡沙紀、成宮由愛、古賀小春の3人は、前の戦闘でダルマになったパワード・ジムの改修案について考えていた。
柳瀬美由紀の乗っていたガンダムレオパルドをどう活用するか考えてもいたが、そのまま修復しても弾薬不足になる。
ならば、未央の機体の補修パーツにしてしまうのも手では無いか?………という考えを、沙紀は抱いていた。
藍子がその修繕した機体に付いて問うと、沙紀は「パワードジムカーディガン」という名前を付けて、パイロット達を守って貰う事を望む。
そして、コロニー「765」では、藤居朋達が秋月律子に迎えられていた。
アプロディアに集うシンデレラガールズに、アメリアスに集う謎の勢力、そしてバルバトスに集う傭兵達。
愚民兵とはまた違う、朋達の登場で、戦いは新たな局面を迎えそうになりそうであった。
765プロの事務所では、ハルシュタイン閣下………バルバトスが憑依した天海春香が、椅子にのんびりと腰掛けていた。
そこに、宇宙港から戻って来た秋月律子が現れ、春香の下にやってくる。
「あら………予定は済んだのかしら?」
「ええ。下準備は大方整ったわ。後は貴方に、今回の作戦全般を説明するだけなのだけれど………その前に1つ聞いてもいいかしら?」
「何かしら?」
あくまで椅子で足を組みながら優雅に聞く春香に対し、律子は立ったままではあったが、顎に片手の拳を当てながら問う。
「貴方の行動原理であり、最終的な目的は、全次元を圧縮し、その世界を支配して人々を管理する事よね。」
「そうよ、間違ってはいないわ。」
バルバトスにとってみれば「天海春香」というのは、そのプロセスの構築の為の愚民兵が集う為の象徴であり、支配者としての傀儡。
だからこそ、言い換えれば、バルバトスが次元圧縮を行っている間、春香は人々の支持を得ていくのが一番効率的であるのだ。
故に、この「ハルシュタイン閣下」は、その律子の意見も肯定する。
「………でも、だからどうしたというのかしら?」
しかし、律子の話が見えてこない為、春香は首を傾げる。
そこで、彼女は単純な話よ………と言ったうえで、腕を組んで告げた。
「今回、天海春香には、少数の精鋭と共に争いに介入して貰い、様々な軍事組織と同盟を結んでもらうわ。」
その言葉を聞いた瞬間、思わず春香は椅子から立ち上がり、律子に問い詰める。
「ちょっと待ちなさい。理解できないわ。何故、天海春香自身が出向く必要があるの?何故、わざわざ少数精鋭なの?何故、支配するはずの奴等と同盟を結ばないといけないの?」
理解が追い付かないバルバトスに対し、あくまで律子は特に表情を崩さない。
そして、真正面からその燃えるような視線を受けると、質問に答え始めた。
「………順番に説明していくわ。まず、春香自身が出向く理由。これは、純粋に春香に対する信奉を集める為。人は単純なものでね、後ろでコソコソしている奴よりは、積極的に前で戦う勇将の方が数段、魅力的に感じるのよ。口だけの指導者でなく、有言実行を守る者だと高く評価するわ。」
バルバトスは治安管理システムであった分、モビルスーツの扱いも出来る。
律子はそこに目を付け、前線で剣を振るう「ジャンヌ・ダルク」のような役割を担って貰おうと考えたのだ。
人はそうした勇ましい存在には魅了されるものであるのだから。
「………少数精鋭である理由は?」
「これも、春香への評価を上げる手段ね。数に任せた戦いよりも、少数で大勢を制する指導者の方が、評価が高いのよ。愚民兵や敵の兵にしてみても、比較的個々の命を大切に出来る将の方が、仕えるに値する存在だと値踏みするわ。更に、少数で活躍した方が、世界に与える影響力は帰って大きいの。ソレスタルビーイングが代表的ね。一騎当千とは言えなくとも、少数精鋭で戦う人達の方が、単純に格好いいと思えるのよ。」
「つまり、人々は自ら出向き、大数を圧倒する英雄のような存在が好みというわけね。………単純極まり無いわね。」
律子の言葉を少し理解した春香………バルバトスは、深く溜息を付く。
「英雄」に憧れる民衆という構図は、確かに分かりやすい構図だ。
しかし、これまでの歴史が証明しているのだから、そのやり方を採用するのは有りだとも考えられた。
尚も、春香の質問は続く。
「評価を得る為の手段は分かったわ。でも、最後の理由はどうなの?何故、行き着く先が同盟なのかしら?私が絶対無比の指導者にならねばならないのだから、他の組織は全て滅んでもらわなければならないわ。」
「………それは別に、貴女自身が滅ぼす必要は無いわよね。」
「どういう事かしら?」
ニヤリと悪い笑みを見せる律子に対し、春香はまた首を傾げてしまう。
律子はその顔に苦笑しながらも、説明していく。
「戦乱の世界で永遠に君臨する組織なんて、存在しないわよ。どんな大きな組織も、必ず瓦解する時が来る。もしも、そうなってしまった場合、滅んだ組織の人々はどうすると思う?」
「組織が潰れるものなら、その人員も滅びを迎えるんじゃないの?」
ザックリとした回答をする春香に対し律子は、人はそんな単純なモノじゃないわよ………と言いながらも、丁寧に解説していく。
まるで、赤子にゼロから教え込んでいくように………。
「生憎、人間はそこまで潔い生き物じゃなくてね、彼等は組織の再興と復讐を狙い、水面下でゲリラ的な戦いを繰り広げるのよ。………親密な支援団体に依存しながら………ね。」
ここまで聞いた春香は、ようやく律子が言いたい事を理解する。
本来ならば、時間という制約故に、組織の崩壊というのは悠長には待ってはいられない。
だが、バルバトスには次元圧縮が存在する為、何時、何処が滅びるかを判断する事が出来て、それに伴って付き合うべき組織を見極められる。
仮にハルシュタイン軍と親密になったのならば、自分の組織が滅んだ後の兵士たちは、愚民兵にならざるを得なくなるだろう。
後は次元圧縮を進めていくだけで、大半の滅んだ組織の兵は、いつの間にか下僕になっている始末となる。
「面白いと思わない?貴女は只、対等に同盟を結んでおくだけで、後に従順な臣下を増やしていく事が出来る。後は、戦乱の歴史が、勝手にこのハルシュタイン軍を………愚民兵を、最大規模の組織へと膨らませてくれるわ。」
愚民兵が膨らめば膨らむほど、最終的にバルバトスの管理下における勢力は増えるし、手駒も増える。
結果的に春香への信奉も集まり、次元圧縮も進めやすくなるという循環が出来上がる事になるのだ。
これには、春香も思わず笑顔。
「愚民兵が集えば集う程、その切っ掛けを作った少数精鋭の私の部隊は、世界に対する影響力を大きくできる。世界は天海春香の戦略と指導力を痛烈に意識し、彼女に対する認識を改めざるを得なくなる。」
「後は、何も知らない赤子たちでも理解する事が出来るようになるわ。ハルシュタイン閣下こそが、絶対の存在であると。その支配を受け入れる事こそが、たった1つの正しいやり方なのだと。」
最初は小さな一歩になるだろうが、その歩幅は少しずつ大きくなっていく作戦。
気が付けば、一大勢力となっているはずのハルシュタイン軍の律子案の戦い方には、春香も満足がいった。
「流石、秋月律子。本当に面白い作戦だわ。貴女を手中に収められたのは大きいわね。」
「ふふふ、誉め言葉と受け取っておくわ。」
洗脳した765プロの仲間達の中では、律子の存在が一番大きいのだろうと、春香………バルバトスは思った。
その律子は正式に許可が出た事で、両腕をギュッとさせて笑顔で彼女に言う。
「さて、正式な許可も出た事だし、早速貴女の親衛隊を紹介するわね。」
「あら、もうそこまで集めていたの。流石に早いわね。」
春香にしてみれば、今初めて自分に仕える親衛隊の存在を知った為、興味深い顔をする。
律子がどんな駒を用意しているのかは、非常に気にはなったからだ。
「次元圧縮があるとはいえ、時は金なりと言うものね。さあ、入ってらっしゃい。」
律子の言葉で入口が開き、事務所に入って来たのは1人の女性………朋であった。
彼女は、春香の顔を興味深そうに見ると、敬礼のポーズを取る。
「あたしの名前は藤居朋!ちょっとは名の知れた傭兵よ。モビルスーツの扱いに関しては、そこそこの実力はあるつもりだから、宜しくね!」
「へえ、傭兵ね………。一応聞くけれど、愚民兵からの選出じゃ無かったのね。」
マジマジと見られながらも、特に気にした様子の無い春香は律子に問う。
当たり前だが、洗脳している愚民兵は春香への忠誠心が高い。
コスト的にも一々外部から探すよりは、効率も良いと感じられた。
その理由を律子は、眼鏡をキリっと上げながら話す。
「少数精鋭の親衛隊なのに、適当な人を選ばれたら貴女にとって迷惑でしょ?だから、実力のある彼女に「プロデューサー」になって貰って、路頭に迷っている人達からパイロットとして実績のある女性を選んでもらったの。」
「女性に拘るわね。」
朋も女性であるが、律子の言葉を聞いていると、親衛隊全員が女性という事になりそうだ。
流石にその理由は、春香にとっても気にはなった。
律子は、これもちゃんとした意味があるわ………と言ったうえで話す。
「春香の今の立ち位置が「人気女性アイドル」だからよ。華を飾る事によって、イメージアップにつなげようと思ったの。」
ここら辺は、律子の趣味による部分も大きいらしい。
屈強な男性を侍らす構図も良いと思われたが、むしろ綺麗な女性で固める事で春香の魅力を引き立てる方が、良い結果を生み出すと考えたのだ。
「ちなみに、朋。貴女は「ちょっとは名の知れた傭兵」と言ったけれど、通り名は何だったのかしら?」
「聞いて驚いて!その名も………「どすこいの朋」よ!!」
「………いきなり不安になったけれど。」
笑顔でケラケラと笑う朋に対し、ジト目で春香は律子を見るが、彼女は苦笑。
「まあ………通り名なんて、そんな物よ。世の中には「蛇の尻尾」とかいう傭兵もいるみたいだし。」
「成程ねぇ………それで、朋。何人くらい、親衛隊の隊員は選出出来たのかしら?」
春香は興味深げに朋に聞くと、朋は自信満々に答える。
両手の指を使い、8本立てると彼女にニカッと笑う。
「今ここに連れて来ているのは、8人よ。既に律子ちゃんにチェックして貰っているから問題ないわ!」
そこで、律子が眼鏡を光らせ満面の笑顔を見せる。
彼女にしてみれば、朋以上にかなりの自信があるらしい。
更に………。
「ふっふっふ………。既に立派な「二つ名」も考えているのよ。紹介するわね!来なさい、親衛隊の諸君!その名も………!!」
手をパチンとならした途端、予め打ち合わせをしていたのか、律子の掛け声で8人の女性が駆け込んでくる。
そして、春香の前に並んで立つと、8人で手をクジャクのように広げ、奇妙なポーズを取った。
そして、律子が両腕を掲げて解説。
「傲慢の蘭子!嫉妬のむつみ!憤怒の拓海!怠惰の杏!強欲の春菜!暴食のかな子!色欲の美波!フラスコの中の巨人(きらり)!!」
「却下。」
即座に春香が、珍しく満面の笑顔で取り下げる。
その態度に律子も朋もドン引きしてしまう。
「ちょっ!?人の力作を簡単にはねのける!?人の七つの大罪を成敗するハルシュタイン軍という感じで、ピッタリじゃないの!?」
「例えが悪すぎるわ!!大体、最後の巨人はどう見たって不味いでしょう!!」
パクリ的な意味で確かにセンスとしては問題。
ちなみにポーズを取っている一部の女性が赤面している所を見ると、どうやら律子による職権濫用であるらしい。
「そんな~、格好いいのに~。ねえ、朋も何か言ってよ、私徹夜して考えた力作なのよ~?」
「その徹夜に付き合って、ポーズの練習をしたあたし達って一体………。」
「………ちなみに、律子は私が喜ぶと言っていたの?」
「ええ、大好物だって。」
「おバカ!!」
コントのような会話に春香は思わず頭を押さえてしまうが、深呼吸………というか、深く溜息を付いて自分を落ち着かせると、未だに律儀にポーズを取っている親衛隊8人に、もういいから………と言って自由にさせる。
そのうえで、8人をジッと見て告げた。
「そんな事より………とりあえず、自己紹介して貰える?私の親衛隊の為に集まったメンバーが、どういう人達なのか知りたいわ。」
こうして、若干不信を抱く天海春香に対し、親衛隊候補の面々の自己紹介が始まる。
彼女達の抱えている事情とは一体………?
部隊は変わって、765プロへ。
バルバトスが憑依した天海春香さんに、秋月律子さんが色々と計画の説明を行う事になります。
そして、何処かで聞いた事のあるネタと共に、親衛隊候補の面々が登場。
藤居朋さんの「どすこい」は、シンデレラガールズ劇場の叫び声ですね。
色々と彼女も、小ネタが多いアイドルです。
さて、複雑な事情を抱えてそうな集ったメンバー達ですが………?