765プロでは、バルバトスが憑依した天海春香の元に集う親衛隊が、秋月律子の手によって作られていた。
傭兵として、親衛隊の面々をテストしてくれた藤居朋。
月で参謀を担っていった経験のある、上条春菜。
ザンスカール帝国で、ベスパに所属していた向井拓海。
木星帝国で、ナンバーイレブンの称号を持っていた神崎蘭子、諸星きらり、双葉杏。
OZのトレーズ派に居られなくなり、脱退した新田美波。
バルチャーとして、お金が必要である三村かな子。
ロゴスの生体CPUとしての実験をされていた、氏家むつみ。
この個性的な面々で、親衛隊が結成される事に。
しかし、春香の不安は解消されていなかった。
「それにしても、総合的に見ればかなり癖の強いのばかり集まったけれど………。選考を行った朋の実力も明確に分からないし、大丈夫かしら?」
自己紹介が終わった後で、今更ながらだが、春香がもっともらしい事を述べる。
朋の傭兵としてのレベルによって、親衛隊のレベルも変わってくるからだ。
しかし、そこは待っていましたと言わんばかりに、律子が説明。
「彼女の審査については心配ないわ。実は彼女達の前に、3人ほど試験的に採用して貰ってね。今、響に戦果のチェックをお願いしているのだけれど、中々見事な働きをしてくれているわ。」
我那覇響(がなはひびき)は765プロのアイドルで、身体能力のスペックが高い。
何処か抜けている所もあるが、色々と万能な働きを見せてくれるので、戦力としては重宝する存在だ。
何より面倒見がいい側面があるので、後輩として親衛隊予備軍として先行して働いている者達を、元気づける意味では最適と言えた。
その彼女が納得しているのだから、恐らく余程の事が無い限りは大丈夫なのだろう。
「成程、実証データは既に取ってあるのね。貴女って、本当に頭が回るわね………。」
時期を考えれば、律子が春香に提案する前から、朋の勧誘や審査は始まっていたとも言える。
そういう意味では、手回しは優れているとも言えるだろう。
故に、春香は興味本位で律子に問う。
「もしかして、既に私達の最初のターゲットも決めてしまっているのかしら?」
「ええ、モビルスーツも準備が出来ているし、御望みならば、今すぐに出てもいいわよ?」
律子は眼鏡を光らせて、春香に笑みを見せる。
その顔を見ただけで、彼女は満足であった。
「ふふふ………、じゃあ、早速始めようかしら。この部隊の名前は?」
当然ながら、ハルシュタイン軍親衛隊なんて、つまらない名前では無いだろう。
律子は満足したように、あらかじめ考えていた名前を告げた。
「「アイドルマスター」。偶像を極めし者という意味よ。この作戦を遂行するのにピッタリでしょ?」
「いい響きね、始めましょう。ハルシュタイン閣下という偶像の名を、この世界に知らしめるために。」
春香はそう言うと、立ち上がりマントを翻す。
全ては次元圧縮を行い、自身による支配を行う為。
それだけが、春香………バルバトスの頭の中にあった。
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その頃、キャリー・ベースでは、高垣楓が本田未央の部屋に入っていた。
1時間ほど前に未央は目覚めたのだが、まだ体が上手く動かないらしく、ベッドに寝込んだままだ。
目が覚めたばかりの時は、アメリアス達の勢力の母艦に精神体となって行った時の記憶………世界が崩壊した際に、絶望に沈んだ持田亜里沙の事を思い出してしまっていた。
その為、思わず涙を流してしまい、看病していた渋谷凛や島村卯月は動揺してしまっていたのだ。
異常を察した彼女達によって、艦長の楓が呼ばれる事になったが、念の為に人払いをして今に至る。
「そうですか………そんな事が………。」
「ゴメンなさい、艦長………。本当は、もっとありさ先生達の事を知りたかったけれど………。」
亜里沙の記憶を知った未央は、同志の桐野アヤに問い詰めた。
子供を失う絶望を味わっているのに、世界を滅亡させたいのはおかしいと。
そういう行動原理に至ったのには、何か「別の理由」があるのでは無いかと。
最終的にアヤは口ごもってしまうが、精神体として連れて来ていた柳瀬美由紀が、強制的に未央を帰してしまったのだ。
「きりのんも、みゆみゆも………悪い人じゃなかった………。仲間思いだし、私に対して謝って感謝もしてくれたし………。」
未央の脳裏には、美由紀の本気で怒ってくれてありがとう………という言葉が記憶に残っていた。
明らかに未央に対し申し訳なさを覚えている3人が、完全な悪とは思えなかったのだ。
「未央………申し訳ありませんが、今大事なのは、彼女達が何者かという事です。その美由紀の告げていた「ボス」の存在も気になりますし、アメリアス自身が何を考えているのかも、これから重要です。何より………。」
「今度出会ったら………本気で殺すの?」
「……………。」
先に考えていたことを告げられた事で、楓は言い淀んでしまう。
一番重要な事実は、アメリアスの元に亜里沙達の意識が集っているお陰で、肉体はどういう理屈かは分からないが、増産できる借り物であるという事だ。
だからこそ、今も独房に居る「今回襲って来た美由紀」は、美由紀自身によって捨て置かれている。
彼女は未央に対して、借り物の肉体だから、今度出会ったら本気で殺していい………とわざわざ告げてくれていた。
その事実もあるからこそ………。
「ゴメンなさい、未央。私は一応艦長ですから………一番大事にしないといけないのは、この艦に住まう者達の命です。だから、手加減の必要の無い相手に対しては、自分の身を守る事を第一に考えろと皆に告げます。」
「でも………。」
「彼女達を「特別」とするわけにはいかないでしょう?」
「……………。」
残酷な事を告げている………と楓は思った。
今までだって、人を殺して来ているのだから、あの3人だけを特別扱いするわけにはいかなかったのだ。
勿論、未央の持ち帰って来た事実を告げる事で、やりにくさは生じるだろう。
しかし、下手に実力者達である故に、加減なんて出来るわけも無いのだ。
「肇にも、今度は容赦をするなと伝えます。………本当にゴメンなさい、未央。」
「私……………。」
再び未央は涙を一粒流す、
少し、彼女は頭の中を整理する時間が必要だと、楓は感じた。
体もあまり回復していない以上、下手に出撃はさせられないのもある。
楓は深々と頭を下げると、部屋を後にした。
そして、ブリッジでミーティングが開かれ、この事実は全員に周知される。
未央の体験した事実は、特にアプロディア達と同じ世界に居た、喜多見柚、工藤忍、綾瀬穂乃香、桃井あずきの4人に特に重く響いたように感じた。
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それから数日後、楓は連邦軍から地球への降下の許可を貰うのを待っていた。
浅野風香やユーグ・クーロ達が言っていた通り、軍はまだバルバトスやアメリアスに付いての危機感を抱いているわけでは無かったが、とりあえず認められる事になる。
「じゃ、キャリー・ベース………降下開始するよ!」
操縦士である姫川友紀の音頭で、シンデレラガールズの母艦は降下を開始する。
「まずは、ポイント・ゼロの位置を探し当てる所からですね。」
「ハルファスガンダムさえ倒せば、バルバトス関連は全て問題が解決するはずです。」
「アメリアス関連は………?」
「………順番に対処するしか無いでしょうね。」
楓の問いかけに対し、アプロディアは表情には出ないものの、渋い顔をしているのが何となく分かった。
彼女もまた、思わぬ勢力の出現に戸惑っている部分があるらしい。
「艦長もアプロディアさんも………悩んでばかりでは先に進めませんよ。まずは、行動を開始しましょう。」
「そうですね………。」
副長である千川ちひろの言葉を受け、楓は頬を軽くたたき気合を入れ直す。
アプロディアも無言で探索に集中し始めた。
シンデレラガールズはこうして、地球へと降りていく。
そこで、新たな出会いが待っているとも知らずに。
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「コア・インパクトにアメリアス………。随分と、愉快になって来たじゃ無いの。」
「呑気に言ってる場合?三つ巴の展開もあり得るかもしれないんだよ?」
「そうは言っても、それこそ考えたって、どうしようもないだろ?」
地球を飛行するトロイホースのブリッジでは、ビーチャ・オーレグとエル・ビアンノが、頭を悩ませながら、連邦軍の情報網を伝って届けられた、シンデレラガールズからの報告書を読んでいた。
艦長席には、江上椿が同じく悩ましげな顔で座っており、文書に何度も目を通している。
「私としては、肉体を複数存在させられるという技術に驚きですね。」
「クローン技術の悪用よりもタチが悪そうだよな、これ………。」
「まだまだこの世界には、高度な技術が存在しているって事なんだろうね………。」
3人で悩んでいる所に、ブリッジの扉が開く。
すると、新たに3人の人物が入って来た。
「レイヤーさんにクリスさん、それにバーニィさんも。作戦室での会議は終わったのですか?」
「ああ。もしやと思い、地球連邦軍基地のジオン残党軍による襲撃データを読み取ってみたら、不可解な物が幾つかあった。」
赤髪の長髪の女性と金髪のパーカーを着た青年を率いて来たのは、薄い金髪が特徴的な男性だ。
彼は、「マスター・P・レイヤー」。
一年戦争時は「ホワイト・ディンゴ隊」を率いていた隊長であり、リーダーシップに優れている。
シンデレラガールズの忍が、良くお世話になったと告げているのは彼の事であり、それだけ面倒見のいい人物であるのだ。
「明らかにジオンの機体とは思えない物が、複数あったわ。」
「ジオンの機体でも、出自が謎で分からない物もあったね。」
レイヤーの説明を補足するのは、2人の男女。
女性の方が「クリスチーナ・マッケンジー」。
連邦軍のテストパイロットである。
そして、男性の方が「バーナード・ワイズマン」。
ジオン兵として戦っていた「サイクロプス隊」の見習いだ。
運命のいたずらか、己の信念を貫く為に2人は戦い合ってしまったが、「奇跡的に」無事で済んでいる。
それでも、バーナード………バーニィの片腕には、戦闘の影響なのか、包帯が巻かれているが。
「やっぱり、ジオン残党軍などに偽装して、破壊工作を行っているんですね。」
「一年戦争は終わったのに、これじゃあジオンのみんなも納得できないよ………。」
「それで………私達はどうするべきだと、カジマ大佐は言っていましたか?」
「基本的にやる事は変わらないわ。………というより、バルバトス以外の敵も出た事で、余計にシンデレラガールズの為に、早く行動しなくちゃならなくなったわね。」
椿はバーニィとクリスチーナ………クリスに確認を取る。
彼女達の取るべき行動は、どうやら変わらないらしい。
「ネオ・ジャパン」に赴き、バルチャー達のオークションに参加し、シンデレラガールズ達の役に立つ兵装を見つける事が最優先事項であるのだ。
「すまないな。これだけの事実があっても、連邦軍は簡単には動かない。そういう組織であるのだから、仕方ないが………。」
「気にしないで下さい。………とにかく、この事実をパイロットや整備を行っている方々にも説明しないといけませんね。」
椿はそう言うと、艦長席を立つ。
このトロイホースにも、頼りになるパイロットは居る。
それこそ、歴戦の実力を持つレイヤーも認める程の者達が………。
「早速みんなに報告しに行きましょう。今は、「彼女達」も食事を行っているでしょうか?」
「いや………パイロットの面々はともかく、整備の中心であるあの2人が格納庫で………。」
レイヤーがここで苦い顔をして、頭を掻いた。
その話題になった途端、クリスが苦笑して、バーニィが呆れてしまう。
「ふふ、メイとミアは、相変わらず改造方針に付いて、言い争っているわ。」
「今は何か、モビルスーツが連邦軍の方針で使用できる物が限定されるなら、この艦自体を改造するべきだって話題になってるよ………。」
「あら、バーニィ。一応は貴方の所属の人達でしょ?言い争いを止めるのはお手の物じゃない?」
「クリス………俺、あのジオニックとツィマッドの言い争いには、話の内容を考えても、付いていけない………。」
どうやら、かなりコアな人物達が会話を繰り広げているらしく、バーニィに至ってはお手上げ状態であった。
そんな2人の会話に笑みを浮かべながら、椿は率先して先頭に立ち、5人を連れて歩き出す。
「じゃあ、言い争いを止めるという意味でも、あの2人の所………格納庫から行きましょうか。」
「そう言って、ギャーギャー喚いてる所を、写真に収めるつもりじゃね………?」
「言わない約束ですよ、楽しみですから!」
ビーチャの疑念を平然と肯定して、椿は歩いて行く。
シンデレラと対立する組織。
シンデレラを支援する組織。
様々な組織の思惑が、重なっていきそうであった。
シンデレラガールズに対して、結成されたハルシュタイン軍の親衛隊が、アイドルマスター。
この対比構図は、動画版の最初から考えていましたね。
今後のPHASEによっては、こちらの部隊の動きも見ていきたいと思います。
一方で、アメリアス勢力に悩む本田未央さん。
果たして彼女は、今後どうするのでしょうか?
そして、トロイホースの面々も次々登場。
マスター・P・レイヤーにクリスチーナ・マッケンジー、バーナード・ワイズマン。
更には、整備で知っていそうな顔がいそうな予感です。
次はPHASE5になります。
完成したら、また2日に1話ずつ投稿していくので、待っていて下さい!
宜しくお願いします。