バルバトスが憑依する天海春香の下に集まった親衛隊の面々。
秋月律子は、ハルシュタイン軍親衛隊というありふれた組織名では無く、「アイドルマスター」………偶像を極めし者と名乗る事を提案する。
その響きに満足した春香は部下達を率い、最初のターゲットの下へと向かう準備を始めるのだった。
一方でキャリー・ベースでは、目覚めた本田未央が、艦長である高垣楓に話をしていた。
アメリアスの勢力下に所属する持田亜里沙、桐野アヤ、柳瀬美由紀が敵とは思えないと告げる彼女であったが、楓は大切なのはこのシンデレラガールズの面々の命だと言う。
だが、次出会った時に、スペアの体があるとはいえ本気で殺すのか?………と抗議してしまう未央に、楓は彼女達だけを特別扱いする事は出来ないと冷静に述べる事に。
そのうえで楓は、しばらく未央には、頭を整理する時間を与える必要があると感じるのだった。
更にシンデレラガールズのサポートを行うトロイホースでは、江上椿、ビーチャ・オーレグ、エル・ビアンノが、このアメリアス関連の新しい情報に頭を抱えていた。
マスター・P・レイヤーやクリスチーナ・マッケンジー、バーナード・ワイズマンという連邦軍やジオン関係なしに頼もしい面々が集まるものの、結局は自分達の成すべき事を成すしかないという結論に達する。
シンデレラガールズと敵対する組織が増える中、支援する組織もまた、着実に歩もうとしていた。
そして、地球に降下したシンデレラガールズに待ち受けている事とは………?
青い空が広がる中、シンデレラガールズを乗せたキャリー・ベースは、順調に航海を続けていた。
ブリッジでは艦長である楓を始め、クルーの面々が宇宙やコロニーでは見られない景色を堪能している。
それは、報告に来た高槻やよいもそうであった。
『ふ~~~~~~~~~………。』
「気持ちいいですねぇ………。」
「うん、青い空、白い雲、ぽかぽかの太陽………。やっぱりこうしていると、地球はいい所だな~って、思うよね。」
やよいと共に陽光を堪能しているのは、砲撃士の小日向美穂。
元々バルチャーである彼女は、「とある事情」から、こうした何気ない地球の日常を思わせる光景を噛み締める癖がある。
事情を理解している楓は、すっかり羽を伸ばしている様子を咎める真似もせず、話に便乗をしていく。
「そうですね、様々な世界で人は宇宙に進出してきましたが、それでも古巣は地球。こうして大地と風を豊かに感じられると、地球に生まれて良かったと思います。」
しかし、言葉を述べた後に、楓もまた地球連邦軍時代で一年戦争に身を投じていた際の「苦い思い出」がよみがえったのか、残念そうな顔をする。
「………只、こうした感情が、アースノイド対スペースノイドのような争いを生み出す元になるのだと思うと、あまり公に口に出す事は出来ないんですけれどね。」
「そうですね………。人は自分たちの権利を獲得する為なら、母星すら滅ぼそうとする事が出来ますから………。」
「難しいものですね………地球を想うというのは。」
これに関しては、副長の千川ちひろや砲撃士の姫川友紀も何かしら感じる物を覚えているらしく、日光浴を楽しみながらも溜息を付いてしまう。
それだけ色々な世界で、地球を巻き込んだ戦いが広がっているという証拠でもあるのだ。
「か、艦長………それで、報告なんですけれど………。」
流石にこの空気に耐えられなかったのか、やよいが楓に言葉を掛ける。
楓はそうでした………と頭を下げると、改めて彼女に向き合う。
「やよい、M1アストレイの操縦は上手くできそうですか?」
「はい、沙紀さんにもチェックして貰いましたし、シミュレーターでも、思ったよりは上手くできましたから大丈夫です。」
「マゼラン残骸」で佐々木千枝・市原仁奈・佐城雪美の3人が閉じ込められていたM1アストレイ(シュライク装備型)は、楓を始めとした皆で話し合った結果、やよいが乗る事になった。
大気圏内における戦闘では、飛行できるモビルスーツを揃えたい所なのだが、シンデレラガールズでは、扱える面々がまだ多くは無い。
名前を上げると、オクト・エイプに乗る喜多見柚、グフ・フライトタイプに乗る神谷奈緒、シグーアサルトに乗る黒川千秋くらいである。
一応、トーラスに乗る緒方智絵里も変形させれば飛行は出来るが、やはり可変機という事もあって、癖が強く連携に支障が生じてしまう。
同じく可変機のガザDは専用のパイロットがいないし、トーラスよりも実は癖が強い。
更にGディフェンサーは、島村卯月が、ジムⅢ・ディフェンサーにドッキングさせているので、下手に切り離すのは逆に戦力ダウンになってしまう。
そういう意味では、偶然とはいえ、飛行機体であるM1アストレイが手に入ったのは有り難かった。
「私にも扱いやすい装備だったのは、驚きですよね。」
「色々な意味で、恵まれていたのかもしれませんね。」
M1アストレイの装備は「イーゲルシュテルン」と呼ばれるバルカン砲塔システム、「ビームライフル」、「ビームサーベル」、更に貴重な対ビームコーティングが施された実態盾で成り立っている。
基本的な事しか出来ないが、逆に言えばその分、慣れるのに時間が掛からないというメリットがあった。
これならまだパイロット歴の浅いでやよいでも、すぐに馴染む事が出来るのだ。
「これで、やよいちゃんは次の出撃から、アストレイを使う事が出来るね。」
「頼みますね、やよい。特に対ビームシールドは、貴女の特注品ですから。」
「はい!場合によっては、他の皆さんに貸し出しますね!艦長の期待に応えられるよう、精いっぱい頑張ります!」
やよいは元気にガルウイングで、楓達にお辞儀をした。
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その頃、柚を始め、工藤忍、綾瀬穂乃香、桃井あずきの4人は、フリルドスクエアの自室で話し合っていた。
話題に出たのは、前の「マゼラン残骸」で襲って来た3人のガンダム使い………亜里沙、アヤ、美由紀についてである。
未央の話から、彼女達が自分達と同じ滅ぼされた世界………アプロディア、バルバトス、それにアメリアスがいた世界の出身である事は確定していた。
しかし、その立場は大きく違う。
魂はアメリアスが管轄しており、体は何かしらの技術で作られたスペアの利く物で、美由紀の言葉を借りれば、肉体を殺しても死なないらしい。
更に、世界をシステムに裏切られる形で滅ぼされて絶望を感じた事と「何かしらの追加要素」によって、全ての世界を滅ぼす破壊者に彼女達はなってしまっていた。
実際、「マゼラン残骸」の戦闘で藤原肇が説得を行っても、3人はアプロディアの下に集っているシンデレラガールズと協力しようという気が、微塵も感じられなかったのがその証拠。
「未央チャンの話だと、あの人達の母艦には他にも部屋がありそうだったから、まだそういう人達がいるのかもしれないネ………。」
柚が珍しく重苦しそうに溜息を付いて、話をする。
手には無意識の内に、彼女が好きであったプロデューサーの形見である赤い鉢巻きが握られていた。
艦長である楓は、殺しても死なないというのもあるが、「敵」である彼女達だけを特別扱いするわけにもいかない………と言って、次からはコア・インパクトで出現した面々は、確実に仕留めるように指示を出していた。
実際、その判断は間違っていない。
襲ってくるのならば、撃墜しないと死ぬのはこちらなのだ。
和解が難しいのならば、力で屈服させるしか無いのも、世界の道理。
だが………理解が出来ても感情が割り切れるかと言えば、そうでも無かった。
「穂乃香ちゃん、大丈夫?顔、青いけれど………。」
「大丈夫です。只………ちょっと責任を感じますね。私かアプロディアが「コア・インパクト」と言えば、その人達は「同郷の敵」になるのですから。」
「そういえば、そうだよね………。」
忍が穂乃香の言葉を理解し、気難しそうにする。
コア・インパクトを判断できるのはアプロディアか、成り行きで彼女と深く繋がってしまっている穂乃香だけだ。
そういう意味では、彼女達の発言に重みが出てしまう。
穂乃香の一言で、同郷の存在が、敵になってしまうのだから。
「人を殺す覚悟を持つだけでも大変なのに………あの人達と、また戦わないといけないのって、辛いよね。」
「でも、繰り返しになりますが、だからと言って千枝ちゃん達を危険に晒すわけにはいきません………。」
あずきと穂乃香は、加えてまだモビルスーツの操縦に、そこまで慣れていない。
一応、それぞれジンとガルバルディβを操ってみてはいるものの、まだまだ専用機を模索している段階だ。
躊躇いが死に直結する危険性がある以上、余計に気を使ってしまう。
それでも戦わなければ、失われるのは恐らくキャリー・ベース………つまり、千枝・仁奈・雪美の幼い少女達の命なのだ。
彼女達を守らなければならないだろう。
「ちなみに、3人は今何をしているの?」
「ネネちゃんや智絵里ちゃんに習って、艦内の掃除をしてくれているよ。」
この柚の質問には、あずきが回答。
あずきや千秋が戦うようになった事で、雑用係がどうしようもいなくなっているので、今は栗原ネネや緒方智絵里と共にせっせと動き回っている。
ネネは戦闘中に励ましてくれたし、智絵里は戦闘後に親身になってくれた事もあって、千枝達は特に懐いているような感じであった。
そんな彼女達の健気さを感じると、やはり大切にしたいという想いは湧いて来る。
「やっぱり………アタシ達が戦うしか無いんだよね。でも、実際にあの人達と交流をした未央ちゃんは………。」
「さっき、寝間着のままですが、部屋を出ていく未央ちゃんを見かけました。もしかしたら、行く場所は………。」
穂乃香の言葉に、忍を始め皆が納得をする。
心の整理が付いていない彼女が行き着く場所は、1つしかなかった。
――――――――――――――――――――
「……………やっぱり、眠っているね。」
パジャマ姿の未央は、穂乃香達の予想通り、独房へと足を運んでいた。
ここの一室では、牢屋の柵越しに24歳の女性………ガンダムレオパルドで襲って来た美由紀のスペアの肉体が、眠るように倒れている。
彼女の本来の体は、14歳でかなり小柄である為、モビルスーツを操る時は、大人の体を使っていると、アメリアスのいる母艦の方で未央は聞いた。
「みゆみゆ………また、トランプしない?」
未央は静かに優しく問いかけるが、残念ながら美由紀は目を覚まさない。
この肉体は、完全に捨ててしまったのかもしれないと彼女は感じた。
だからこそ、そっと柵越しに美由紀の肌を触ってみる。
「ほんのりだけれど………温かいや。」
人肌と呼ぶには冷たかったが、それでもこの美由紀は確かに「生きている」。
何の技術を使えば、肉体の複製が出来るのかは分からなかったが、未央はやるせない思いを感じずにはいられなかった。
「私は………そんなにメンタル強くないから、自分の体が模造品だって言われたら、発狂しちゃうかな………。」
美由紀に精神を連れられて、共にアメリアスの母艦に行った時のことを思い出す。
アヤはぶっきらぼうで敵である未央を警戒していたが、実際には面倒見の良い姉貴分であった。
亜里沙に至っては、完全に「ありさ先生」という未央が直感で付けた渾名が似合う程の、子供を大切にする優しい人物であり、戦闘中のあの姿が嘘のように映った。
「仮初めの肉体だから………3人共耐えられなくなった………わけ無いよね。」
未央はずっと、頭を巡らせる。
3人が世界の破壊者になっている理由を。
でも、どう考えても答えが見つからない。
切っ掛けが無いのだから、見つかるはずも無いのだ。
確かなのは、未央の持っている今の情報では、まだ結論を見出せないという事。
「教えてくれれば………私達で相談に乗れるのに。」
未央は眠っている美由紀の顔を眺めながら、静かに囁く。
相談出来ない、深い理由があるのだろうか?
「もしかして……………。」
だが、ここで未央は、悲しそうに苦笑しながら呟いていた美由紀の言葉を思い出す。
『でも、亜里沙ちゃんとかもっと酷いからさ。みゆきがあんまり、わがままを言っていられないよ。』
更に、錯乱する亜里沙の前でアヤと言い争ってしまった為、精神を強引に送り返す際に美由紀が呟いた言葉も。
『あのね、ここには色んな立場の人達がいるの。アヤちゃんも言ったけど、亜里沙ちゃんだって色んな事情があるから………だから、本当にゴメン!』
わがまま………色んな立場の人達………未央の頭の中に、美由紀の呟いていた「ボス」という3人の上に立つ人物を指す言葉が浮かぶ。
「みゆみゆ達は………アメリアスやボスの命令に従っているだけ………?従わされているの………?」
1つの結論に達した未央が、美由紀を思わず衝動的に揺すり起こそうとした時であった。
ドゴォォォォォォォォォォォーーーーーンッ!!
「な、何!?爆発!?」
突如、爆発音が響き渡り、キャリー・ベースに激震が走った。
皆様、お久しぶりです。
インフルエンザなどが原因で入退院を行っていた関係で、体力がガタ落ちした擬態人形Pです。
ここまで戻すのに、かなりの時間を要してしまいました…。
とりあえず、PHASE6までは書き溜めをしましたので、楽しみにして貰えると嬉しいです。
さて、肝心の話ですが…今回から、PHASE5《AEU軌道エレベーター編》が始まります。
地球に降り立ったシンデレラガールズですが、いきなり非常事態に陥ったみたいで…?
果たして何が起こったのか?
2日に1話ずつ投稿していきますので、皆様、改めて宜しくお願いします。