トールギスを駆るゼクス・マーキスは、その圧倒的な機動力と力量で、シンデレラガールズやガンダムのパイロット達を翻弄していく。
その中で、僚機のエアリーズを高森藍子と緒方智絵里、輿水幸子が対処する事になったが、幸子が初めて人を撃ち落とし、動揺してしまう。
仕方なくキャリー・ベースに回収して貰い、事なきを得るが、トールギスは以前対処が難しい状態。
だが、ここで黒川千秋が高槻やよいとガンダムエクシアのパイロットと協力して戦術を考えて、不利な戦況を徐々に拮抗に持っていく事に。
エクシアのパイロットである「少年」は、ここで初めて喋り、やよいにこの先の策はあるのかと問うが、彼女は頼りになる仲間がいると自信満々に言う。
次の瞬間、その言葉に応えるように、トールギスのシールドが半壊する事になった。
一体、誰の攻撃が、トールギスにダメージを与える事になったのか?
「誰だ………?」
油断なく半壊したシールドを構えながらも、ゼクスは戦場を見ていた。
3機の機体を相手にしながらも、他の機体の動向も常にチェックをしていたつもりだ。
実際、動き回っていた事で、藍子のガザDや智絵里のトーラスはその動きに付いていけていなかった。
神谷奈緒のグフ・フライトタイプは千秋のシグーアサルトの装備を持っていた為、戦えない。
喜多見柚のオクト・エイプも、ウッソ・エヴィンの破損したVガンダムを支えているので、戦闘への参加は無理だ。
「だとしたら………!」
ゼクスが着目したのは、浮上してきていたキャリー・ベース。
今までは栗原ネネのジーライン スタンダードアーマーが、対空砲火担当としてカタパルト上で待機していたが、現在彼女は別の機体を支えていた。
それは、巨大な対艦ライフルを構えていた渋谷凛のガンダム7号機。
「悪いね、肇。………ヅダの装備、借りるよ!!」
凛はキャリー・・ベースのカタパルトから、本来はヅダが使用する対艦ライフルを上に構えると、もう一撃戦艦をも落とす強力な実弾を放つ。
しかし、二度も同じ手を喰らう程、ゼクスは甘くは無い。
「面白い武装だ。だが………固定砲台で何処まで出来るかな?」
「………だろうね。だったら、こっちも搦め手を使わせて貰うよ!」
「!?」
ここで、ゼクスは初めて動揺する事になる。
カタパルト上にもう1機機体が現れたかと思いきや、その手にした武装を上に向ける。
しかし、その砲門………工藤忍のジム・スナイパーⅡ(ホワイト・ディンゴ仕様)のロングレンジ・ビーム・ライフルは、トールギスを狙っていなかった。
「最初に言っておくよ。アタシ………狙撃、あんまり上手じゃないから。」
忍はそう言うと、狙撃用のライフルを放つ。
そのビームはトールギスの近くを横切り………その背後の上空で鎮座している母艦、スーパーソニックトランスポーターのブリッジの横を通過していった。
いきなり飛んできた攻撃を受け、母艦内で待機していた護衛用のエアリーズが更に2機飛び出すが、忍はマイクで叫ぶ。
「余計な事をしないで!アタシ、射撃下手だから………次はブリッジに当てるかもしれないよ?」
脅迫とも言える言葉に、エアリーズはその場から動けなくなる。
当然ながら、トールギスも。
母艦でやって来た彼等は、その艦を失ってしまっては、基地へと帰る手段も喪失してしまう。
思わぬ介入で不利になった事で、ゼクスはマイクで呟く。
「戦術的勝利を得るか。………降参だな。大人しく降伏すればいいか?」
「アタシ達の望みは、この基地からの脱出だよ。邪魔しなければ、追撃はしない。」
「成程………では、ここは無様に退かせて貰おう!」
ゼクスはそう言うと、身を翻し、スーパーソニックトランスポーターへと戻っていく。
彼等は母艦を守るようにしながらも、そのまま戦線を離脱していった。
「………大丈夫ですか?忍さん。」
「脅しは得意じゃ無いんだけれどね………仲間を守る為なら、仕方ないか。」
「でも、かなりの強敵だったね。やよいも千秋も大丈夫?」
心配をするネネの言葉に、忍は肩の力が抜けたように、カタパルトに立て膝を付く。
一方で、凛の問いかけには千秋が答える。
「こちらは大丈夫よ。艦長、このまま撤退しますか?」
「ええ。ウッソ君とそちらのガンダムのパイロットも一緒になる形ですけれどね。」
高垣楓の言葉に、空戦機体がキャリー・ベースを守るようにしながら、「AEU軌道エレベーター」の軍事基地からの撤退を行おうとし始める。
ウッソは柚にもう大丈夫だと感謝すると、何とか飛行しながら高槻やよいとエクシアのパイロットの傍に並んだ。
「我が母艦は、可能な限り全速前進!安全圏まで、一気に進みます!!」
楓の号令で、一気にキャリー・ベースが加速する。
そんな中、ウッソが改めて礼を言った。
「ネネさん、皆さん………。こちらも助かりました。お姉さん達がいなかったら、僕も危なかったです。また、何処かで共闘する機会があったら、恩を返させて下さい。」
「良かったです、ウッソ君も無事で。体に気を付けて下さいね!」
ネネの励ましを受け、ウッソはVガンダムの片手を上げて応える。
一方でやよいは、その微笑ましい光景を見ながらも、エクシアのパイロットにも礼を言う。
「そちらのガンダムのパイロットさんも、ありがとうございました。」
「……………お前は、ガンダムか?」
「え?」
無言を貫かれると思ったが、意外にも言葉が返って来たので、やよいは驚く。
しかし、その意味が分からないので、一瞬戸惑ってしまう。
「その機体………、お前はお前の意志で、ガンダムに乗っているのか?」
「えっと………。」
M1アストレイ(シュライク装備型)をマジマジと見られていると思ったやよいは、若干返答を考える。
そして、思い切って自分なりの答えを呟いた。
「ガンダムかどうかは分からないですけれど、私達は私達の意志で戦っていますよ。それだけは、確かです。」
自分の意志で戦っているからこそ、相手を殺めるし、卑怯とも言える行動を取る場合もある。
しかし、それは全て仲間を守る為であり、大切なものを取り戻す為。
だからこそやよいは、こうエクシアのパイロットに答えた。
そして、その言葉を聞いた少年は、妙に納得したような言葉を発する。
「そうか………。ウッソ・エヴィンじゃないが、俺達はまた、何処かの戦場で出会う気がした。」
「え………?」
「何故だかは分からない。只、何となくそう感じた。」
今までと比べると、意味の分かりやすい言葉だったからだろうか。
やよいもウッソも、妙に得心がいった。
「私達がまたどこかで………。」
「不思議です、そう言われると僕も………。」
「おしゃべりはそこまで!増援が来る前に離脱します!」
離脱をしていく楓の言葉を受け、エクシアは別方向に向きを変える。
しかし、その背中にやよいは語りかけた。
「あ、あの………!!」
「……………なんだ?」
やよいは基地から大分離れたのを確認して、もう聞き取られる心配が無いだろうと念入に確かめたうえで、マイクで自己紹介をする。
これは、一時的とはいえ共に戦ったやよいなりの誠意であった。
「私、シンデレラガールズの高槻やよいって言います!もしよければ、名前を聞いてもいいですか!?」
「……………ガンダムエクシアのパイロット、刹那・F・セイエイ。」
無視されるかと思ったが、そのパイロット………刹那は、やよいの言葉に応じた。
機密事項である故に、帰ったら雷が落ちるであろうが、自分の道を貫く彼にはそんな事は関係無い。
「刹那………さん?」
「私設武装組織「ソレスタルビーイング」のガンダムマイスターだ。」
それだけを言うと、刹那はエクシアを駆って去っていく。
ウッソもまた、その名前を心に刻むと、改めて一礼をして去っていった。
「刹那さんにウッソさん………。」
やよいは、将来戦友になるかもしれない2人の名前を、ずっと呟いていた。
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戦いから数時間後、モビルスーツを回収したキャリー・ベースの格納庫では、艦長の楓が整備士の吉岡沙紀と会話をしていた。
応急修理はまだ続いているらしく、成宮由愛と古賀小春がプチモビを駆使してエンジンの回線の修復を必死に行っている最中だ。
「一時はどうなるかと思いましたが、どうにか戦域を離脱する事に成功しましたね。」
「でも、こちらもダメージがデカいっす。藍子さんは無事だったけれど、ハイザック・カスタムは完全に御釈迦で基地に放置。ヅダもエンジンが爆発してしまったし、これで、頼りの隊長機2機が、スクラップになってしまったっすよ。」
肩を落とす沙紀の言葉に、楓も何とも言えない顔をする。
ちなみに当の高森藍子と藤原肇は、黒焦げになったヅダを見て落ち込んでおり、周りの人々は何て声をかけていいか分からない状態だ。
「更に今回出撃した飛行系モビルスーツも、修理や補給が必要な状態だし、終いにはキャリー・ベースは応急処置を施しているだけで、またいつエンストを起こしても、おかしくない状態っす。」
「どこかでゆっくりと、修理を行う必要がありそうですね………。アプロディア、この近くで何処か安全そうな場所はありますか?」
楓が静かに声を掛けると、何処からともなく、のワの姿のアプロディアが現れる。
そして、ドラム型洗濯機のように1回転すると、2人に検索結果を告げた。
「そうですね………ここからなら、「イングレッサ領ノックス」が一番近いです。」
「「イングレッサ」?はて、地理的にそこまで近い場所でしょうか?」
検索結果に疑念を抱く楓にアプロディアは頷きながらも、説明をする。
何でも、この地球圏でもバルバトスの次元圧縮の影響は出始めており、都市によっては次元的に有り得ない繋がり方をしているらしい。
その為、場所と場所の距離感が狂い始めてしまっているのだ。
イメージとしては、至る所にワームホールのようなものが出現しているようなもの。
「イングレッサ領ノックス」にはそのワームホールを駆使する事で行く事の出来る最短ルートであり、追手をかわす意味でも有効だと彼女は踏んだのだ。
「分かりました。では、友紀にそのルートの指定をお願いします。流石に貴女でなければ、把握できないでしょうから。」
「了解しました。」
楓の指示を受け、アプロディアはその場から消えブリッジへと向かった。
これで、キャリー・ベースは何とかそこまで飛行が出来るだろう。
アプロディアと入れ替わりで、自分の機体の状態を確認していた奈緒がやって来る。
「随分と面倒な事になったな………。補給したばっかりだってのに、もうボロボロだとは………。」
「悪いっすね………。本来ならば、パパパッと直せればいいんだけれど………。」
「いや、流石にそれは無茶だろ?幾らお前らが凄くても、3人じゃ限界がある。」
「奈緒の言う通りです。誰か、専属で貴女達を支えてくれる人達がいれば、もっと負担は減るんでしょうけれど………。」
謝る沙紀に対し、奈緒や楓はすぐさまカバーをする。
実際、整備士は沙紀に加え、由愛と小春だけなのだ。
その3人だけで多くの機体を一気に整備するのは、無理がある。
楓の言う通り、せめてサポートできる人材が少しでもいないと、この問題は解決しないのだ。
「まあ、無い物をねだってもしょうがないっす。とりあえず、比較的損傷の軽い物から修理を行っていくっすよ。………只、レオパルドも燃えちゃった以上、機体を復元するのは難しいっすね。」
「未央の機体のパーツにするか、迷ってたんだっけ?そっちは大丈夫なのか?」
「脚部や腕部とかは無事だから、応用はまだ効くっす。どちらにしろ、イングレッサで安全に組み立てる事が前提になるけれどね。」
以前シンデレラガールズを襲って来た柳瀬美由紀のガンダムレオパルドは、ヅダの爆発で引火してしまい、修復不可能になってしまっていた。
この為、本田未央の新しい機体………パワードジムカーディガンに、そのパーツを移植する路線で確定したらしい。
尚、未央は寝間着のまま出撃したので、着替えを終えたらその足で、独房で眠っている美由紀の肉体を心配しに向かっていった。
「とにかく、今は母艦と各機の修理っすね。」
「………宜しくお願いします。」
「それじゃ、また後で。」
必要な事だけを言うと、沙紀は手を振って走って行った。
後姿を見送りながら、奈緒はうなだれる。
「………何だかんだ言って、一番ヤバいのは沙紀達だよな。アタシ達も、もっと手伝えればいいんだけれど………。」
「そうですね。次の街に着いたら、新しく誰かを雇う事も考えた方がいいのかもしれません。」
「問題は、アタシ達の目的をまともに信じてくれる人達がいるかどうかだよな………。」
奈緒の言葉に、楓は何とも言えない顔をする。
次元圧縮というワード自体が異質である以上、話を聞いた者達が素直に信じてくれるかは分からない。
そもそも、今でこそシンデレラガールズや、その協力組織として戦っている者達だって、最初から信じられたわけでは無いのだ。
「私は卯月から話を聞きましたが………。正直、世界を消去するバルバトスの存在など、中々信じる事はできませんでしたからね。」
「アタシや隊長達もだ。………ぶっちゃけ、アプロディアの説明よりも、あの頃の柚達の廃れっぷりの方が説得力あったからな………。今のアタシ達の話を聞いて、果たして協力してくれる奴らがいるかどうか………。」
「厳しいものですよね………。」
2人揃って溜息を付いた時であった。
別の所から、声が聞こえてくる。
「あの~、もしもし~?お話し中済みませんが、それでボクはどうすればいいんでしょうかね~?」
「………あ、何だ。お前、まだいたのか。」
「ちょっと!?まだいたのか………じゃないですよ!?勝手にそちらの組織に服従させておいて、それはあんまりじゃないですか!?」
思わず両手を振って駄々をこねるのは、先程の戦闘でキャリー・ベースに収容された輿水幸子であった。
トールギスがダメなら搭乗する母艦を狙えばいいという、ちょっと頭を捻った作戦。
こういう時の為の、ジム・スナイパーⅡと言えるのかもしれません。
あまり共感を貰えないかもしれませんが、特定の機体が、別のモビルスーツの武装を使う場面に惚れ惚れする事が多いんですよね。
今回の場合は、ガンダム7号機にヅダの対艦ライフルを持たせた感じです。
ようやく名前が明らかになったガンダムエクシアのパイロット…刹那・F・セイエイ。
高槻やよいさんやウッソ・エヴィンとパーフェクトコミュニケーションを達成しますが…?
これが、後にどのような影響を与えるのでしょうか?