モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第69話 PHASE5-8『隠れた努力家』

成り行きからキャリー・ベースに収容されていた輿水幸子は、高垣楓や神谷奈緒に自身の技能をアピールし、仲間にしないかと問う。

正直、操縦技術はともかく戦闘経験が乏しい故に、怪しさ抜群であった事から、奈緒は邪険に扱うが、楓はあっさり了承。

提案者の幸子すら拍子抜けするほどに簡単に仲間にしてしまった事で、奈緒は楓の意図に疑念を持つが、それには理由があった。

 

個室に移った後で、楓は幸子に自身の推測を言う。

彼女は刹那・F・セイエイ達の駆るガンダムエクシアや所属するソレスタルビーイングが存在する世界線の未来に住んでいる存在。

次元圧縮の影響でタイムスリップをしたからこそ、あの時あの場所で、AEUイナクト指揮官機を強奪して刹那の仲間になろうと行動した。

彼女がそこまでの博打を行ったのは、本来の時間軸でソレスタルビーイングが、彼女の求める「何か」に関わっているから。

そのうえで、楓は幸子に戦力になるとともに、エクシアやイナクトなどの知識を提供して貰うように求める。

 

奈緒は、話を聞く幸子の冷徹な陰りを映した目に、何かしらの「闇」を感じる事に。

一方で幸子は、楓の推理を受け入れたうえで、自身が求めているのは、5年後のソレスタルビーイングは対立している「アロウズ」という組織であると明かす。

 

幸子とアロウズ………果たして、その因果関係に何があったのだろうか………。

 

 

 

楓の話が終わった後、幸子は奈緒にキャリー・ベースの中を案内される事になる。

食堂やブリッジ、展望台等で色々なクルーと挨拶をしたうえで、彼女が最後に行き着いたのは、シミュレーター室であった。

 

「ここでみんな、訓練をしているんだ。流石にお前の世界線の機体は無いけれど、色んな世界の機体のデータがあるから、戦闘経験を積むには持ってこいだと思うぞ。」

「そうなんですか。」

 

奈緒は親切に説明をするが、幸子はそのシミュレーターに没頭するパイロット達の姿を見ても、あまり興味を抱く様子が無い。

その様子に、奈緒は思わず聞く。

 

「そうなんですかって、お前………戦闘経験、ほぼ無いんだろ?だったら、ここで修行するべきじゃないのか?」

「修行?………奈緒さん、何か勘違いをしていませんか?」

 

幸子は奈緒の説明に大げさに溜息を付くと、自分の胸に手を当てて、フフンと鼻を鳴らす。

 

「ボクはモビルスーツの扱いは得意なんです!今更こんなシミュレーターで訓練しなくても、十分実戦で通用します!」

「………そうは思えないけれどな。」

「貴女とは違うんですよ!ボクは才能に溢れているんです!地道な作業をこなさなくても、もう一人前なんです!」

 

あくまで自分はトップクラスのパイロットだという姿勢を崩さない幸子に対し、奈緒はジト目で半笑いを見せる。

その反応にムッとした幸子は、思わずハッキリと言ってのける。

 

「ボクの心配をするくらいならば、貴女があのトールギスに勝てるように、訓練したらどうなんですか?ボクに追い付けるように、もっと特訓が必要でしょう?」

「へいへい。………じゃ、部屋に戻るか。」

 

奈緒はそう渋々言って立ち去ろうとした時であった。

ふと思いついたように手をポンと叩くと、幸子に対して告げる。

 

「そういえば言い忘れていた。このシミュレーター、コンピューター戦にも対応しているんだっけ。相手がいなくても訓練出来る優れものだったな。」

「だから何だって言うんですか!?」

「いやいや、一応艦長に任された以上は、説明はしておかないといけないと思ってな。」

「御親切にどうも!」

 

奈緒はそう言うと、シミュレーター室を出ていく。

幸子は彼女にバレないように、そっと内部を見回して追いかけて行った。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

その日の夜、キャリー・ベースは「イングレッサ領ノックス」に向けて航行を続けていた。

あのエクシアによる通信を阻害する粒子の影響は無いので、今度は事前に通信を送る事が出来る。

その為、そこまでのトラブルは心配が無いのがせめてもの救いだ。

とはいえ、道中何が起こるか分からない以上、楓を始めとしたブリッジのクルーは、深夜でも持ち場について非常事態に備えていた。

また、整備士に関しては、流石に幼い成宮由愛や古賀小春は隅で眠る事になったが、吉岡沙紀が緒方智絵里や島村卯月などの協力を得ながら、エンジン回路に異常が起こらないように見張っている、

 

そんな中、真っ暗になったシミュレーター室に、人影があった。

 

「……………誰も、いませんよね?」

 

それは、昼間あれだけシミュレーターを拒絶していた幸子。

彼女は、奈緒がコンピューター相手でも戦えるという言葉を聞いて、こっそりと訓練しようとやって来たのだ。

流石に電気を付けるとバレてしまうので、敢えて暗闇の中を歩いて行くが………。

 

 

パッ!

 

 

突如部屋の電気がついて、目の前に巨大な手鏡が映し出された。

つまり、目の前に幸子自身の顔が映る事になったとも言える。

 

「ギャアアアアァッ!?カワイイーーーッ!?」

 

「………素っ頓狂で意味の分からない悲鳴を上げるな、お前。」

 

手鏡を持っていたのは奈緒。

昼間邪険にされた仕返しと言わんばかりに脅かしたつもりであったが、想像以上に変な悲鳴を幸子が上げてしまったので、相当呆れている様子だ。

ちなみに電気を付けたのは、渋谷凛と工藤忍である。

 

「ちょ!?奈緒さんに、凛さんに忍さん!?な、何でこんな所に!?」

「それは勿論、私達でシミュレーターを使って訓練しているからだけれど………。」

「こんな遅い時間に!?」

「アタシ達、本気出すと結構時間をおして、この部屋を使っちゃうんだよね。でも、今日は奈緒ちゃんに付き合ってかな?」

 

ここで幸子は悟る。

奈緒は最初から、自身が深夜にこっそり訓練しに来る事を読んでいたのだ。

思わず言い訳を考えようとして口をパクパクさせるが、すぐには浮かばない。

その代わり、奈緒が先に聞く。

 

「なぁ幸子。………何で自分に実力が無い事、認めるのが嫌なんだ?」

「じ、実力が無いって!?………だ、だってボクは………。」

 

言い淀む幸子の言葉に奈緒は、周囲を頼りにくい側面や、自身の劣等感を認める事に抵抗を感じる事にも、何かしらの「闇」が関わっていると予測する。

実際、幸子はアロウズという組織と関わりがあると言っただけで、その理由や彼女自身の過去に関しては、ほぼ話していない。

故に、奈緒は俯いてしまった幸子の前で屈みこむと、彼女の顔を見上げて静かに告げた。

 

「幸子………実はアタシな、元居た場所では、「出来損ない」って呼ばれていたんだ。」

「え………?」

「まあ………お前も見たと思うが、アタシはチキンな部分があるからな。そういう理由もあって、組織に始末されそうになって、命からがら脱走してきたんだよ。」

 

奈緒の明確な過去を知っている凛は、その言葉に少し何か言いたげであった。

只、奈緒自身がそれを制すると、立ち上がって幸子に言う。

 

「ここに居るみんなは、色んな事情があってここに流れ着いた奴等ばかりだ。中には、とんでもない「闇」を抱えている奴等もいる。………お前と同じようにな。」

「……………。」

 

幸子は、奈緒の身の上話を聞いても無言だ。

だが、それを気にせず奈緒は言ってのける。

 

「シンデレラガールズって組織名は、やよいが付けてくれたんだけれどさ。いい所だって、アタシは思っている。色々後ろめたい物を抱えているみんなが、切磋琢磨して強くなろうとしているんだ。支え合う事が出来る。」

「………ボクも、その一員になれと言うんですか?」

「そういった、個人的なしがらみも含めての………仲間だろ?」

「仲間………ですか。」

 

仲間という言葉すら、抵抗のありそうな幸子であったが、奈緒は無理に問い詰めようとはしなかった。

只、彼女に対して、いきなり無理やり頭をわしゃわしゃと撫でると告げる。

 

「運命共同体になった時点で、嫌でも仲間だ。………アロウズやソレスタルビーイングに関わりたいのならば、鍛えないといけないのは、お前自身が一番分かっているはず。だったら………ちょっとはアタシ達と歩幅を揃えて歩く事も、覚えた方がいいんじゃないのか?」

「でも、ボクは……………。」

 

最初こそ抵抗していた幸子であったが、途中から何か言いたげな様子でボソリと呟こうとすると、奈緒はそれを制した。

恐らく、彼女の根幹に関わる部分に関する事だと直感で察したからだ。

それを聞くには、まだまだ早すぎる。

 

「仲間関係がまだ嫌なら、とりあえずアタシ達を「利用」してみたらどうだ?自分の目的を成し遂げる為に、ここにいるみんなに頼ったっていい。」

「それで………いいのですか?」

「繰り返すが、運命共同体になった時点で、アタシ達は仲間だと思う事にしたからな。この艦のメンバーは、そんな態度で腹を立てるほど、心の狭い奴らじゃないさ。」

 

奈緒はそう言うと、ニッと笑ってのける。

年上としての余裕みたいなのを感じさせたが、幸子はやがて渋々彼女を見上げた。

 

「だったら………貴女達を踏み台にしますけれど、いいですよね?」

「踏み台のつもりが、高い壁にぶち当たるかもしれないけれどな。」

「むっ………!?言わせておけば………!じゃあ、見せてあげますよ、ボクの実力!」

 

そう言うと、ここで幸子は奈緒の手を払ってシミュレーターへと向かう。

奈緒は凛や忍を見て少しだけニヤリと笑みを向けながらも、反対側へ座った。

 

「そう言えば、艦長から伝言だった。今は余ったガンダムが無いから、次からゲルググキャノンに乗ってくれだって。」

「ゲルググキャノン?………って、何ですかこの機体!?ゴテゴテしているし、飛べないじゃ無いですか!?」

「うちではかなり性能の高い機体を選んでくれたんだから、使いこなせよ。じゃあ、行くぜ!」

「もう………後悔させてあげますよ!」

 

そういったやり取りを聞いていた凛や忍はクスリと笑みを見せたが、幸子はそれに気づかず、シミュレーターで奈緒に挑むことになる。

結果、彼女は負けまくる事になるが、戦闘経験は急速に積めることになった。

 

 

幸子自身が戦う理由や、仲間に抵抗を示す理由は奈緒達にはまだ分からない。

だが、こうした隠れた努力家の力によって、確かな戦力が1人増えそうなのは事実であった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

同時刻、宇宙にある「コロニープラウド」に、7機のモビルスーツが襲来していた。

オレンジの粒子を発する、赤を基調にした槍を構えた機体は、擬似太陽炉搭載型モビルスーツである「ジンクスⅢ」。

正確には、独立治安維持部隊アロウズの主力モビルスーツである為、「ジンクスⅢ(アロウズ型)」である。

その6機の僚機を率いるのは、ジンクスよりもガンダムへと基本構造が似ているアロウズのエース達に配備される「アヘッド」だ。

 

「アヘッド第1小隊「コロニープラウド」に到達。オートマトン搭載コンテナ。各機能異常無し。これより予定通り、新型「オートマトン」の性能実験を行う。ハレヴィ准尉聞こえるか?貴官は初陣だ。戦場の空気を感じるだけでいい。」

「ハッ!ジニン大尉!」

 

先頭でやって来た、アヘッドを駆るバラック・ジニンが僚機に指示を送る。

その傍で戦場と化すコロニーを見つめるのは、ルイス・ハレヴィ。

4年前のガンダムの襲撃で、全てを失い復讐者と化した娘である。

 

「コンテナ分離。新型オートマトンの稼働を開始する!」

 

バラックは「プラウド」の外観に「オートマトンコンテナ」を設置する。

それに伴い、中から小型の自動人形が多数出て来て、コロニーの中へと入って行った。

 

「各機現ポイントで待機。新型オートマトンの性能実験をスキャンする。」

 

やがて、コロニー内部から響き渡る悲鳴と断末魔。

攻撃用(キル)モードで起動されたオートマトンが、対人機銃で内部の作業員に対し、殺戮を行っているのだ。

全ては中に混じっている可能性のある、反連邦勢力「カタロン」のメンバーを始末する為。

カタロンの中の過激派組織は、アロウズへの報復として無差別テロを行っており、実際バラックの妻なども、その犠牲になっている。

だからこそ、彼等はカタロンを始末する為ならば、無関係の者も巻き込む事すら辞さない。

それが彼等の示す正義であり、恒久的な平和に通じると本気で思っているのだから。

 

しかし………ここで、その無差別とも言える虐殺に、待ったを掛ける存在がいるとしたら………?

 

「何だ!?オートマトンの数が減っていく!?」

 

オートマトン稼働から数分後、突如バラックは戦慄する。

「プラウド」の中で稼働していた機械人形が、何者かによって殲滅させられていったのだ。

アロウズの面々が驚愕する中で、更に事態は進んでいく。

 

「Eセンサーに反応!?」

 

オートマトンを殲滅した元凶が、姿を現したのだ。

それは青と白のカラーに包まれた、5年前に革命を起こした存在。

 

「あの機影………?あのGN粒子は………!?」

「!!………!あれは………ガンダム!?」

 

所々装甲がひび割れており、左肩にはボロボロのマントが掛けられている状態。

更に、主兵装の「GNソード」すら、先がひび割れて真面な硬度と切断力を保っていない。

それでも、緑の粒子を発するその機体は、間違いなくルイスの言う通り………彼女にとっては呪いとも取れる存在であったガンダムであった。

 

「変わってない………。あの頃から何一つ………こんな物求めていない………こんな世界等………!」

 

「ガンダムエクシア!?ソレスタルビーイングだと!?何故、今になって現れたッ!?」

 

「破壊する………只、破壊する!こんな行いをする貴様達を!!この俺が………駆逐する!!」

 

5年前の決戦でボロボロになった「ガンダムエクシアリペア」。

継ぎ接ぎだらけのパーツをなびかせ、刃こぼれしたGNソードを構えながらも、成長した刹那・F・セイエイはアヘッド達に挑もうとする。

だが………。

 

 

 

 

「待っていたわよ、この瞬間を。」

 

「ッ!?」

 

「何者だッ!?」

 

何処からともなく聞こえて来たマイクでの声に、バラックも刹那も身構えた。

すると、空間がひび割れ、ジェネレーション・ブレイクが起こる。

それに伴い、1体のモビルスーツがその割れた空間を駆け抜けるように、1隻の戦艦を従えて飛来してきたのだ。

 

「さあ、始めましょう。私達の戦いを………。」

 

赤い騎士風のモビルスーツである「R・ジャジャ」。

戦場でアロウズの赤いモビルスーツよりも目立つ真紅のカラーの機体を乗りこなし、天海春香………ハルシュタイン閣下率いるアイドルマスターが、第三勢力として乱入してきた。




何故か、シンデレラガールズの仲間を認めたがらない輿水幸子さん。
神谷奈緒さん達が心配をしますが、やはり色々と深い事情がありそうです。
ちなみに、渋谷凛さんと工藤忍さんが、マジになると加減が利かないのは、シンデレラガールズ劇場ネタですね。

一方で、「コロニープラウド」では、天海春香さん率いるアイドルマスターがアロウズと対峙しますが…?

気になる所で、PHASE5はこれで終了になります。
この流れのまま、明後日からはPHASE6に突入です。
激しい戦闘が繰り広げられるので、楽しみにして貰えると嬉しいですね。
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