次のジェネレーション・ブレイクでガンダムを狙ってきたのは、セルゲイ・スミルノフ率いるティエレン宇宙型の集団であった。
しかし、ソーマ・ピーリスのティエレンタオツーも合わせ、敵陣営の情報を得られず困惑する綾瀬穂乃香の言葉を受け、藤原肇はセルゲイの動きを利用。
喜多見柚のオクト・エイプと島村卯月のジムⅢの援護を受け、ヅダの機動力と持ち前の技量を利用し、ティエレンを無力化してパイロットだけを逃がすという荒業を披露する。
部下を見捨てられないセルゲイは、ソーマと共に保護する事で撤退。
キャリー・ベースへと向かっていた部隊も、工藤忍、本田未央、栗原ネネを始めとした面々に撃破をされる。
これで、安全かと思いきやセルゲイは最後に、生き残った部隊が逃げる時間を稼ぐ為に、ラオホゥ級宇宙輸送艦を無人特攻させるという奇策に出た。
果たして、肇やアムロ達は止められるのか?
「不味い………!?」
無人の大型コンテナが3つ特攻を開始した事で、肇は焦燥感を抱いた。
コンテナは1つ1つが質量弾となっており、アムロ・レイのガンダムはまだしも、後ろのホワイトベースクラスの母艦の大きさでは回避が難しい。
それまで全く援護が無かった所を鑑みても、まだ搭乗員が母艦を制御しきれていないのは明白であった。
「肇チャン、叩き落とそう!」
「はい………!」
迫るコンテナに向け、肇はヅダの「135mm対艦ライフル」を取り出す。
戦艦の装甲すら簡単に撃ち抜ける大型のライフルで、この場で使用するには持ってこいの武装。
………なのだが、実はここで致命的な問題があった。
「く………当たらない!?」
何と、肇は格闘センスに優れる代わりに射撃センスが壊滅的に悪く、一直線に迫って来るだけのコンテナに当てるだけでも、一苦労であったのだ。
しかも、対艦ライフルは連射が利かない為、一度外してしまうと、再度狙いを付けるまでに時間が掛かる。
「落ち着いて、肇チャン!」
そうしている間にも、喜多見柚がジャイアントバズーカの鉛玉を2つ目のコンテナに撃ち尽くす。
着実に効果があったのか、それだけ撃ち込めば特攻するコンテナを1つ破壊する事が出来た。
しかし、一方で3つ目のコンテナに対し、島村卯月のザクⅢは苦戦。
「ミサイル、使っちゃったから………!」
シャア専用ザクⅡをけん制する為に、ノーマル・ミサイル・ポッドを全弾使用してしまった為に、「ビーム・ライフル」を撃ち込むしか無かった。
ビームであるので貫通力はあるが、対艦兵器などに比べれば、威力が心許ないのも事実。
そうこうしている間にも、ホワイトベースとコンテナの距離は詰まっていく。
「あ、当たった………!」
ようやくヅダの対艦ライフルが当たり、コンテナを1つ破壊した肇であるが、残弾は心許ない。
何より残された時間が無かった。
「肇チャン、貸して!」
「すみません………!」
見かねた柚のオクト・エイプが肇のヅダの対艦ライフルを半ば奪い取る形で取ると、通り過ぎようとする最後のコンテナの前面まで出てホワイトベースに背を向けて武器を構える。
危険な動きであったが、確実に当てるには一番の手段であった。
「落ちろーーーっ!!」
その中心部に向けて、対艦ライフルを発射。
ピンポイントで直撃した最後のコンテナは、柚機の手前で爆発を起こした。
その爆風には、ギリギリ巻き込まれない距離。
冷や汗をかいた柚は、ヒュウ………と口笛を吹くと、コックピット内で上を向き荒く息を吐いた。
「ありがとうございます、柚さん………。助かりました。」
「ン………とりあえず、良かったよ。」
肇に対艦ライフルを返し、柚は深呼吸。
その間に卯月はジムⅢで周囲の確認を行い、セルゲイ達の部隊………人革連の艦隊が撤退した事を悟る。
「今度こそ、戦闘終了だね。忍ちゃん、藍子ちゃん、そっちはどう?」
「こちら、工藤隊。キャリー・ベースは守ったよ。」
「高森隊です。奈緒ちゃんとやよいちゃんは、収容したよ。今、沙紀ちゃん達が応急処置を施して医務室に運んでいる所。」
忍と高森藍子の言葉を聞き、とりあえず全員が無事であると知った事で、今度こそサイド7宙域の戦闘が終わった事を悟る。
モニターに、綾瀬穂乃香の顔が映し出された。
「次元圧縮プログラムが、急速に収束しています。消失するのも時間の問題ですね。皆さん、お疲れ様でした。」
ヘッドギアを外し、笑顔を見せる穂乃香の姿を見て、卯月はようやく安堵する。
肇と柚は、器用に機体同士でハイタッチを交わした。
――――――――――――――――――――
高槻やよいは、夢を見ていた。
彼女は宇宙の真ん中で、自分がコロニー「765」から逃走する足に使っていた、Gディフェンサーに乗っている。
「私は………。」
しかし、その前方から、あの試作2号機がビーム・サーベルを持って迫って来る。
やよいは、思わず逃げようとするが、機体が上手く動かせない。
金縛りにあったみたいになって、体が全く動かないのだ。
そうしている間にも、試作2号機は迫り、やよいのGディフェンサーにサーベルと突き立てようとする。
「ひ、ひいっ!?」
自分は死ぬ………と思った瞬間、間に何かが割って入った。
その機体は、リーオー。
だが、リーオーは袈裟斬りに斬り裂かれてしまう。
「うわああああああ!?」
「あ……………。」
少女の甲高い悲鳴が聞こえた。
やよいは、コックピット越しに斬り裂かれたリーオーを見る。
そこには機体の残骸に混じって、無残な姿になったパイロットが浮かんでいた。
まだ名前すら知らない、自分を庇って散っていった少女………神谷奈緒の亡骸が………。
「ああああああああああああっ!!」
やよいは両手で顔を押さえ絶叫する。
自分の戦場におけるミスで、奈緒は命を散らしたのだから………。
――――――――――――――――――――
「わあっ!?」
悪夢を見ていたやよいは、思わず飛び起きる。
大量の脂汗をかいて荒く息を吐いた彼女は、自分が学校の保健室のような場所………医務室で布団を被っていた事に気付く。
「こ、ここは………?」
パイロットスーツから検査着に着替えさせられていたが、その服も嫌な汗でかなり濡れてしまっていた。
今まで見ていたのは悪夢だったのか?………と考えてしまうが、それは違うと記憶を巡らせる事で理解してしまう。
確かに自分のせいで、あの少女の機体は破壊されてしまったのだ。
「わ、私のせいで………あの人は………!?」
「勝手に殺すな。」
「え………?」
だが、横から呆れたような声が聞こえた事で、やよいは反射的に振り向く。
見れば、反対側のベッドに、湿気が酷いと凄い事になりそうなウェーブ状の長髪の少女が腰を上げて座っていた。
腹に包帯を巻いている所と声の質で、やよいは悟る。
この少女は、やよいを庇った………。
「い、生きてる………?」
「だから、勝手に殺すなっつーの。………まあ、死んだと思ったから暴走したみたいだしな。」
茫然としているやよいに、特に恨みを込めた目を向ける事も無く、少女は近くにあった通信用の受話器を手に取り、誰かとやり取りをした。
そして、そのうえでやよいの方をマジマジと見ると、呟く。
「自己紹介、まだだったな。アタシは神谷奈緒。………確か、あのニューロの言葉だと、高槻やよいだっけ?何処かで見た事あると思ったけれど、765プロのアイドルとしてテレビに出てたんだな。」
顎に片手を当てて聞いてくる奈緒の言葉に、やよいはとりあえず頷く。
そして、恐る恐る問う。
「あの………怒って無いんですか?」
「ん………?ああ、この傷か?別に気にするなよ。こういうのは、ファントムスイープ隊で慣れてるからさ。」
「ふぁんとむすいーぷ?」
「ああ………ここに所属する前にいた部隊だ。とにかく、アタシは怒って無いから、そんな恐怖心や罪悪感を持った目で見るのは、出来ればやめてくれ。」
奈緒なりの気遣いの言葉を受け、やよいは思わず泣きたくなったが、彼女の要望を受けて何とか我慢をする。
そうしている内に、部屋の入口のドアがノックされて扉が開いた。
「おはようございます。着替えと食事の卵がゆを持ってきましたよ。とりあえず、これを食べて落ち着いて下さいね。」
言葉と共に入って来たのは、ふんわりした黒髪の細めの体型の少女。
その姿を見た途端、やよいは何処か清楚で儚げなイメージを持った。
少女は手にお盆を持って湯気の立つ食事………卵がゆを持って来てくれたのだ。
更に後方からは着替え用の服を持って来た茶色っぽい後ろ髪が跳ねた少女と、同じく茶髪がかったショートボブの少女が入って来た。
「初めまして、この艦の皆さんの食事管理と担当している栗原ネネと言います。そして、後ろにいるのは、今回手伝ってくれた本田未央さんと工藤忍さんです。」
「やっほー!やよいちゃんって事は、「やよいっち」って呼べばいいかな?宜しくね!」
「もー、未央ちゃんはすぐあだ名付けるんだから………。アタシ達3人はモビルスーツパイロットもやってるんだ。」
「ど、どうも………。」
いきなり知らない人が増えた事でやよいは困惑するが、ネネがベッドに収納されてる机を出して卵がゆを置いた事で、思わずお腹が鳴ってしまう。
赤面するやよいは、我慢が出来ずに一口おかゆをすくって食べた。
「………美味しい。」
「良かった、気に入ってくれて。疲れていたのか、丸一日眠っていたんですよ?まずは少しずつ胃に優しい物を食べて、英気を養って下さいね。」
「ありがとうございます………。」
やよいは少しずつ卵がゆを食べていく。
ネネの作った食事は不思議なことに優しい味がして、温かい物に包まれる感じがした。
完食した頃には、自分を庇った奈緒が助かった安堵感もあって、思わず涙が出てしまう。
「うう………私………。」
「藍子さんから聞きました。ずっと、怖かったんですね………。もう大丈夫ですから、安心してください。」
小さい子供の扱いには長けるのか、ネネは優しくやよいを抱きしめ落ち着かせる。
やよいはしばらく泣いてしまったが、誰もそれを邪推はしなかった。
ひとしきり泣いた後で、彼女は用意されたハンカチで涙を拭い感謝の言葉を述べる。
そして、清楚な服を着ているネネに対し、初めて少し笑みを向けた。
「ネネさん………ですよね。ありがとうございます。お姉さんのように優しいなぁ………。」
しかし、その言葉にネネは困った顔を見せる。
やよいが首を傾げると、彼女は素直に告げる。
「それなんですけれど………やよいちゃんって、確か14歳ですよね?私、15歳なんです。」
「えーーーっ!?」
自分と1歳しか違わなかった少女に、やよいは思わず叫んでしまう。
怪我人の奈緒がいるのに大声を出してしまったと、思わず口を塞ぐが、奈緒は気にするなという顔。
ちなみにより話を聞くと、未央も15歳、忍は16歳、奈緒ですら17歳であるらしい。
「そ、それなのにモビルスーツを駆って、あんな危険な………って、あの追手は!?」
「大丈夫、この未央ちゃんとしのむー………えっと、忍ちゃんで倒したから。」
未央が忍とアイコンタクトをしながら、告げる。
本当はその撃墜する際の連携にネネも組み込まれていたが、今はやよいが心を開きかけている相手。
怖がらせるかもしれない要素は、少しでも消した方がいいと咄嗟に判断したのだ。
事実、やよいは無意識の内に、ちょっとだけ未央達に引いていた。
「怖い人達じゃないから、安心して下さいね。とりあえず、臨時の服として私の服を持って来たんですけれど、着替えられますか?」
「あ、はい………。」
促されたやよいはネネの衣服を着替えていく。
意外にもスタイル的には丁度良かったが、如何せん身長の差がある為か、長袖がぶかぶかで膝下サイズのスカートも、足首まで行ってしまっていた。
「切りましょうか………?そうした方が、動きやすいですし。」
「そ、そこまでしなくていいですよ!」
「「ヘリオポリス」に立ち寄った時に、買い物をしようよ。そうすれば、服に悩む事は無いし。」
「へりおぽりす?」
忍の言葉に、やよいは首を傾げる。
彼女はこのキャリー・ベースの、次の目的地であると伝えた。
「詳しい話は、艦長のいるブリッジで聞こうぜ。丁度みんなに集まって貰うように頼んだし。………と。」
「奈緒ちゃん、支えるよ。」
「悪い、忍。………じゃ、行こうか。」
奈緒が、忍の肩に腕を回して立ち上がる。
また知らない人達と会う事になると思ったやよいは、思わず震えた。
彼女は特に人見知りするタイプでは無かったが、流石にずっと孤独で追手に追われていただけに、この見知らぬ場では不安感の方が大きかったのだ。
だが………。
「一緒に行きましょうか。」
「ネネさん………。」
やよいの心境を察したネネが、笑顔で手を繋いでくれた。
その優しい手を取ったやよいは、ゆっくりと歩きだす。
向かうキャリー・ベースのブリッジで、果たしてどんな出会いが待っているのか。
高槻やよいの物語は、ここから始まる事になる。
この小説の藤原肇さんは、接近戦………高機動の格闘戦に特化し過ぎてる分、射撃戦へのセンスが致命的に悪いという分かりやすい特徴があります。
動画ではまだヅダに乗っている内は射撃も出来ましたが、リメイクに伴い対艦ライフルの命中率も落ちているという設定です。
ここまで極端だと、むしろ清々しいですよね。
尚、栗原ネネさんがかなりの細身というだけあって、高槻やよいさんと3サイズはそんなに変わりません。
その代わり、身長は10センチ以上の差があるので、どうしても服がダボダボになってしまうんですよね。
ここら辺は、やよいさんが小柄ですから、仕方ない部分が強いです。
ちなみに本田未央さんの付けた「やよいっち」ってあだ名は、双海真美さんと双海亜美さんの呼び名。
その呼び名に、やよいさんは何を想うか………。