戦場に現れた天海春香………ハルシュタイン率いるアイドルマスターの目的は、アロウズに自分達の実力を示す事。
本来ならば秋月律子の方針上、真っ先に友好を結ぶべき組織であるのだが、無名の状態では鼻で笑われてしまう。
だからこそ、その高い親衛隊としての力を示す必要があった。
ガンダムエクシアリペアを駆る刹那・F・セイエイは、春香達を過去に見知った事があり激高したが、彼女は素知らぬ顔。
一方でバラック・ジニン率いるアロウズ小隊は、オートマトンを駆使してでも殲滅をしようとする。
いよいよ戦いが始まる中で、遠くから戦場を見つめる影が。
「彼女」達は一体何者なのか………?
対人機銃で抵抗するオートマトンの殲滅は、想像以上に呆気なかった。
エクシアリペアの右隣に位置する天海春香と合流した上条隊は、上条春菜のVダッシュガンダムが動き回り、機銃を回避ながら「25mmバルカン」を撒き散らして片っ端から破壊していく。
一方でエクシアリペアの左隣に位置するザンジバル側で掃討を担当する向井隊に至っては、諸星きらりのビグロが機銃をモノともせず、「クロー・アーム」で纏めて薙ぎ払って行った。
「只、破壊するだけなら楽なんだけれどねぇ………。」
春香が面倒そうに、あくびをしながら言う。
もっと大出力の武装は備えてはいるのだが、それでは「コロニープラウド」を傷つけてしまう。
本番であるアロウズとの戦闘にも、影響を及ぼしてしまう可能性だってあり得る。
ここら辺は、律子の指示で細心の注意を払っていた。
「アイドルマスター………ハルシュタイン軍の親衛隊だと!?何故設立されたばかりの勢力が、アロウズの作戦の邪魔をするんだッ!?」
オートマトンを殲滅されていく中で、明確に自分達と敵対している事を知ったバラックは、突然の闖入者に驚きを隠せないでいる。
一方で、僚機のルイス・ハレヴィは、春菜や三村かな子の存在によりガンダムが増えた事で、錯乱が激しくなっていた。
「ガンダム………ガンダムが沢山ッ!?」
「しっかりしろ准尉!気を確かに持てッ!」
「だだだだだ、大丈夫です大尉!私の周りには、12人の沙慈がいますッ!!」
「全然ダメだな!?どうして戦いに志願したッ!?」
もはや錯乱というか、混乱状態に陥っているルイスにバラックは頭を抱えてしまう。
彼女は特殊な経緯でアロウズに入隊している為、何故こんな戦場にいるのか、彼は分からなかった。
繰り返すが、この会話が通信でなくマイクで繰り広げられていれば、刹那が気付いたかもしれないが………。
「………貴様達の目的は何だ!?何故、このような場所に現れた!?ここで何をしようとしている!?」
「警戒しなくても、今はアロウズの鼻っ面をへし折ってやる為にいるわ。その後については相手の行動次第だけれど、今の時点では奴らに尻尾を振る気は無いから安心しなさい。」
再度刹那がマイクで春香に叫んできたので、彼女は上から目線ではあったが返事をした。
過去がどうあれ、今、お前が誰と敵対するべきか、判断は下せるだろう?………と言わんばかりに。
彼はグッと堪え若干考え込んだが、ボロボロのGNソードを、春香のR・ジャジャに向けて宣言する。
「……………ここでの共闘が、後の共闘に繋がるわけはない。貴様達は歪んでいる。俺は、その歪みを破壊する。」
「矛盾した考えと態度ね………。人はそういうものなのかしら?まあ、いいわ。精々、貴方は貴方のもがき方をしなさい。」
「………エクシア、目標を破壊するッ!」
それだけを言うと、刹那はGNソードをまだ残っていたオートマトンに向けた。
しかし………ここで、その刹那機の背後から、新たな機械人形がコロニー内より出現する。
「しまった!?GNドライブが………!?」
幾らこの4年間で刹那の腕が成長していても、幾らこの4年の間で刹那の意志がブレていなくても、肝心のエクシアリペアは満身創痍だ。
それは核となるGNドライブも同じであり、当たり所によっては、対人機銃でも安易に破壊できる状態にまで陥っていた。
「クッ………!?」
やられる!?………と刹那自身が思った時であった。
突如、空間にヒビが入り………ジェネレーション・ブレイクが発生し、白と黒の大きめの機体が飛来する。
そして、素早く「GNビームサーベル」を取り出したかと思いきや、器用にコロニー表面のオートマトンだけを薙ぎ払って行ったのだ。
「新手………?いや………あれは………ガンダム!?」
「やはり………アロウズの動きを探っていたか。久しぶりだな、刹那・F・セイエイ。」
驚く刹那に対し、彼に対してその機体………GNドライブ搭載の「セラヴィーガンダム」から、マイクで声が届く。
その声は、彼が知っている者の声であった。
4~5年前、何度も意見がぶつかり、銃も向け合って、それでも絆を築いたソレスタルビーイングのパイロットの1人。
「ティエリア・アーデ………!」
「4年ぶりか。随分、雰囲気が変わった。」
「そういうお前は、何も変わっていない。あの頃のままだ。」
「フ………よく言われる。」
一見すれば淡泊な会話ではあるが、昔の2人を知る者ならば、確かな仲間意識があると分かるだろう。
そんな良い関係が紡がれている時であった。
「こ、この気配はッ!!??」
丁度オートマトンの駆除を終えた春菜が、突如戦慄する。
彼女はセラヴィーガンダムに向き直ると、マイクで叫んだ。
「そこの太いガンダムさん!!」
「………まさか、セラヴィーの事を言っているのか?というか、君達は確か………。」
刹那がアイドルマスターを知っているという事は、ティエリアも同じ。
思わず、彼と同じようなツッコミを仕掛けた時であった。
「貴方!眼鏡を付けていますね!!」
春菜の叫びに、一瞬静寂に包まれる戦場。
同じ上条隊の三村かな子や新田美波が思わずコックピットの中でズッコケそうになる中、ティエリアはしばらく無言。
しかし、ここら辺は律儀なのか、ご丁寧に回答をしてくれる。
「……………確かに、日常時は眼鏡を着用しているが。」
「ああ、やっぱり!!この空間の眼鏡密度が上がった気がしたのは、貴方のお陰だったのですね、同志よ!!」
「同志?待て、そもそも僕らは敵対していたはずなのだが………。」
「そんな事、今はどうでもいいんです!!………ああ、眼鏡を愛する者に出会えるなんて、今日は何ていい日なんだろう!」
月で眼鏡を推奨していただけあって、こういう所は眼鏡ストとしての本領を発揮するのが春菜であるらしい。
ティエリアはそのマイペースぶりに困惑しているが、彼女はお構いなし。
ちなみに、同じ眼鏡の同志である律子はザンジバルの中でニコニコしている。
「………刹那、状況を説明してくれ。」
「すまない………俺も話についていけていない。」
この2人のマイスターがお手上げ状態になる時点で、相当な事態。
アロウズの面々ですら、どう行動すればいいか分からなくなるほどだった。
「眼鏡!眼鏡!………どうですか?この後、眼鏡信仰を広めにいきませんか?」
「こんな奴らに、僕らは4年前敗北を喫したのか………。」
最終的には溜息と共に、半ばあきらめの感情を持って呟くティエリア。
………その時であった。
また、空間にヒビが開いて割れたと思いきや、突如その隙間から黄色のビームがセラヴィーガンダムへと飛来する。
しかし、セラヴィーガンダムは背中の巨大なガンダムフェイスをオープンにし、大半の射撃を無力化に出来るGNフィールドを展開した。
「アロウズとは違う新手の部隊か。挨拶も無しに攻撃とは………僕らのように正体を隠したい者か、余程の狂犬と見た。」
しっかりと防御をしたティエリアが振り向くと、アロウズとは反対側から、「ビーム・ライフル」を構えている、紫のカラーが特徴的な専用機である「アクト・ザク」が出現していた。
更に、その後ろに追随するように動く「リック・ドムⅡ」が3機、遠方から接近してくる。
また、4機のモビルスーツの背後には、律子が艦長を勤めるアイドルマスターの母艦とは別物の、ザンジバルが1隻控えていた。
「ソレスタルビーイングめ!やはり現れたか!!」
アロウズのようなEセンサーを持っているわけでは無い為、GN粒子による通信阻害の影響を受けているのだろう。
マイクを使用し、先頭のアクト・ザクのパイロットが雄たけびをあげる。
その血気盛んな様子は、本人………マレット・サンギーヌが聞いたら怒り狂うだろうが、ティエリアの言う通り狂犬に近い。
「マレット様。ソレスタルビーイングがこの辺りにいる事を御存じだったのですか?」
「当然だ!アロウズが動き出した時から、俺には分かっていた!奴らは間違いなく、オートマトンの駆除に現れると!このチャンスは、この俺が新たなジオンを作る為の第一歩だ!」
左側の「ジャイアント・バズ」を二丁構えたリックドムⅡを駆る、まだ若いリリア・フローベールの言葉に、マレットは自信たっぷりに答える。
その様子に疑問を持った中央の老練、ユイマン・カーライルが首を傾げる。
「新たなジオンですと?」
「そうだ!優良種たるジオン国家から最優良種だけを選び出して、新しい国家をつくる!」
「新しい国家?」
最後に右側に位置するギュスター・バイパーが言葉を発した事で、マレットは笑みを携えて語る。
「よく聞け、その名も………!ウルトラジオン公国!!」
『……………。』
また訪れる静寂。
このマレットの発言には、部下達だけでなくアイドルマスターや刹那にティエリア、更にはアロウズも無言。
言うまでも無いが、あまりに彼の言葉にセンスが無いからであり、慰めのつもりで部下達がみんなで生易しい言葉を掛けて行く。
「マレット様………酸素欠乏症に掛かって………。」
「おい、リリア!?どういう意味だ!?何を泣いている!?」
「マレット様、カードゲームのやり過ぎは宜しくありませんぞ?」
「何を言っている、ユイマン!?俺を馬鹿にしているのか!?」
「この場合………恐らく戦場の全員が、マレット様に馬鹿にされていると思っていますよ?」
「ギュスター!?いい度胸だな!?というか、最優良種はウルトラレアだろう!?ジオン公国もウルトラを付けたらいけないのか、おい!?」
マレット本人としては、ここまで総スカンを喰らうとは思っていなかった為、機体を上下左右に動かしたうえに、特徴的なモノアイをぐるぐると動かして不機嫌さをアピールする。
こういう駄々をこねる所に、精神的に未熟な部分も映った為、特にティエリアは眉間にしわを寄せる事になった。
「にょわ~………何か仲間内でもめてるにぃ~。」
「鳴り響く不協和音は絶望の嘆き(あんなんじゃ、先が思いやられるわ)。」
「アレで連携なんて出来るわけ無いよね~。」
きらり、神崎蘭子、双葉杏が次々と苦言を言うが、今回に関しては本当にそうなので誰も何も言わない。
尤も、3人の自己紹介を知る向井拓海辺りは、お前らが言っても全然説得力が無い………と言いたげであったが。
「とにかく優良種たるこの俺の力が、劣等種を駆逐する為に解き放たれる時が来たのだ!………ユイマン!リリア!ギュスター!………いいか!我が部隊に負けがあってはならん!勝つことのみ許可されると心に刻め!勝つ!………それだけだッ!!」
『ハッ!!』
文句を言いながらも、こういう所は3人共従順であるのか、マレットの命令に合わせて返事をして機体を動かす。
最初の狙いはセラヴィーガンダムであるらしく、4機で一斉に射撃をしながら一直線に向かって行く。
ティエリアはとりあえず機体を後方………アイドルマスターの部隊の方に下げながら、GNフィールドを展開し、相手を見極めている段階だ。
「どうやらあの部隊は、私達とやろうとしている事が似ているみたいね。私達が華々しいデビューを飾るのにアロウズを相手に選んだのに対し、あちらはソレスタルビーイングを選んだみたいだけれど、どうするのかしら?」
「破壊する………!相手が何者だろうと、俺が………俺の意志で!」
春香が、何処か他人事のように刹那に聞いたが、彼はブレなかった。
敵対するのならば、容赦はしない。
しかし、エクシアリペアが満身創痍であるのは変わらないうえに、前方にアロウズ、後方にマレット達のジオン軍。
前後から挟まれている状況を考えると、あまり良い戦況では無かった。
「どうするの、律子?」
「まずは早急にアロウズを迎撃しましょう。春香や上条隊はアロウズを。向井隊はソレスタルビーイングの援護をして、あの狂犬達をターゲットに!」
律子の指示で、アイドルマスターの役割が素早く分担される。
春香は言われた通りに、手短なアロウズのジンクスⅢを狙おうとした時であった。
「え………コア・インパクト!?」
「……………。」
律子の驚愕の言葉を受けた春香は、本能で動きを止める。
その瞬間、「上」から槍が飛来し、R・ジャジャの僅か前を通過して「コロニープラウド」の隕石部分に突き刺さった。
「今度は上方に新手です!でも………機体の種別が全部違います!?」
音無小鳥の通信を受け、皆がギョッと反応する。
確かに、そこには種別の違う機体が3機、空間のひび割れと共に出現していた。
「ごきげんよう………とでも言いましょうか、バルバトス。」
聞こえて来たマイクの通信を聞き、春香はコックピット内で不敵な笑みを浮かべる。
通信の「バルバトス」という単語と、律子の発した「コア・インパクト」という言葉で、彼女は全てを悟った。
「………てっきり消去されていたと思ったけれど、無事だったのね。アメリアス。」
「理解が速くて助かりますわ。死にゆく者に、余計な説明をしなくて済みますもの。」
淑女のような言葉を発するリーダー機は、持っている殺意を隠さず堂々と告げる。
「「彼女」は貴方が怖いそうです。ですから………今度は貴方が、大人しく消去されて下さいな。」
シンデレラガールズにも襲い掛かった、コア・インパクトによるアメリアスからの刺客。
その刺客が………アイドルマスターにも襲撃してきた。
味方も敵もどんどん加勢が来て、混沌とする戦場。
特に最後に現れたアメリアス勢力は、小説オリジナルの要素であるので、実質3勢力にアイドルマスターは囲まれる形に。
大将機に乗るのは、淑女のような言葉を発する人物。
前回、紅茶を飲んでいた事も合わせて、もう答えに辿り着いている方もいるのかもしれませんね。
刺客の正体と搭乗機体に関しては、次回をお待ちください。