ハルシュタイン軍アイドルマスターとソレスタルビーイングに襲い掛かる、アロウズとジオン軍とアメリアス勢力。
特に真鍋いつきのライトニングストライクガンダムによる超長距離狙撃の前に大苦戦を強いられる天海春香達であったが、秋月律子の策とティエリア・アーデの奮闘で状況を徐々に巻き返していく。
バラック・ジニン率いるアロウズを撤退させ、マレット・サンギーヌ達のジオン軍を敗走させ、絶望的な状況からは脱する事に成功。
しかし、その間にもいつきの超長距離狙撃は行われ、春香や刹那・F・セイエイを守っていた三村かな子の、ガンダム試作2号機(MLRS仕様)のラジエーター・シールドが破壊されてしまう。
春香のR・ジャジャにトドメを刺すチャンスを前に、いつきは狙いを定めるが、そこに迫っていたのは、有り得ない速度で飛来してきた氏家むつみのギャプランであった。
ハルシュタイン軍とアメリアス勢力の戦いは、どのような結末を迎えるのか………。
「どうなっているの、あのパイロット!?「強化人間」でも乗っているの!?」
いつきは自分に迫るギャプランの速さに驚愕しながらも、70-31式電磁加農砲を構える。
センサー外にいたライトニングストライクに最短ルートで向かってきているという事は、恐らく狙撃の炸裂した角度から位置を判断されてしまったのだろう。
見つかってしまった以上は、R・ジャジャよりも先にギャプランを撃ち落とさなければならない。
口では驚きの言葉を述べながらも、しっかりと右腰に構えたレールガンで一直線に迫るモビルアーマーに狙いを定めたいつきは、掛け声と共に発射する。
「イッケーーーッ!!」
しかし、まるであらかじめその狙撃のタイミングを読んでいたかのように、ギャプランは横回転をして回避。
いつきが自信を持って放った電磁加農砲は、見事に外れてしまう。
「避けられた!?何で!?………まさか、向けられた砲門の角度から狙撃タイミングを判断したッ!?」
宇宙という戦場である以上、実弾による狙撃は、基本的に直進する。
その為、見方によれば、砲門が自機へと真正面に向けられて固定された段階で、狙い撃たれると判断する事も出来るのだ。
無論、それだけ冷静に自身への攻撃を見極められるパイロットは、早々いないはずだが………。
「ヤバイ!?ヤバイ!?ヤバイ!?」
この肝の据わった相手を前に、いつきは本気で焦り始める。
ライトニングストライクは射程に優れる分、近づかれたら本来の仕事が出来ない。
慌てて連結式の70-31式電磁加農砲を分離すると、右腕と左腕に接続。
この状態ならば、右腕から近・中距離に対応できる「71式強化徹甲尖頭弾」を放てる。
狙撃が出来ないなら、射撃で撃ち落とすしかない。
しかし………。
「……………って、当たらなーい!?」
そもそも砲門の角度で発射タイミングを判別できるような相手が、ギャプランに乗っているのだ。
悪あがきに近い徹甲尖頭弾による射撃を、パイロット………むつみは円を描くように回転しながら回避し、両腕のムーバブル・シールド・バインダーに備わった、2門の「メガ粒子砲」を放つ。
いつきは一旦後ろに下がりながら上昇してビームを回避するが、その間にギャプランは彼女の居た空間を通過し、華麗に旋回して反転して来る。
そして、モビルスーツ形態へと姿を変えると、「ビーム・サーベル」を二振りサイドスカートの裏側から取り出し、背後から迫った。
「目標………補足。」
「不味い………!?でも、まだ………!」
回避が困難だと思ったいつきはライトニングストライカーパックを分離し、後方に飛ばす。
相手の進路を阻み、身を守る壁になった事で、むつみのギャプランの斬撃はストライカーパックを破壊するに留まる。
「私の本領は、これから!!」
素のストライクガンダムになったいつきは、爆発を起こした煙に向き直り、コンバットナイフである「アーマーシュナイダー」を両腰から2本取り出して構える。
白兵戦用の装備を取り出した事で、まだまだ戦う気満々であった………のだが………。
「え………?」
煙の中から、ギャプランは出てこなかった。
周りを見渡してみれば、むつみ機は明後日の方角。
斬撃を決めた後、深追いせずに再びモビルアーマー形態に戻り、今も戦いが続く戦場へとトンボ返りしていたのだ。
「しまったーーー!?最初からライトニングストライカーパックを破壊する事だけが目的だったんだッ!?」
厄介すぎる超長距離狙撃を封じられれば、それでいい。
あまりに潔すぎるむつみのギャプランと、その指示を出した者………艦長の律子の手腕に、完全な置いてきぼりを喰らったいつきは、頭を抱える羽目になった。
――――――――――――――――――――
「ライトニングストライカーパックを壊された!?」
「ご、ゴメン………。」
R・ギャギャを駆る相原雪乃は、真の切り札である超長距離狙撃が封じられた事で、今度こそ動揺をする羽目になった。
今戦場に残っているのは彼女以外だと、鷺沢文香のジャベリンと道明寺歌鈴のアドヴァンスドジンクス、そして、マレットが置いて行ったジオン軍のザンジバルである。
ザンジバルのクルーは指揮官の敗走に戸惑っているのか、連装メガ粒子砲による砲撃が止まっていた。
更に、藤居朋のコレン・カプルが向かっているので、加勢は期待できないだろう。
一方で、朋以外のハルシュタイン軍アイドルマスターの面々は、続々と春香の下に集結しており、圧倒的にアメリアス勢力が不利になってしまっていた。
「困りましたね………文香さん、歌鈴さん、状況はどうですか?」
「こちら文香です………。武装は失っていませんが、あまり宜しい状態ではありませんね。」
「か、歌鈴でしゅッ!私もまだ大丈夫ですが、これだけの人数が相手だと………。」
ルイス・ハレヴィとの戦いで失ったビーム・スマートガンとブーツを、母艦から補った上条春菜のVダッシュガンダムと、オーバーハング・パックを拝借したままの新田美波のゲイツR。
この2機と交戦をしていた文香と歌鈴が、雪乃に合流する。
2人の機体は武器等を失っていないが、雪乃のR・ギャギャは春香のR・ジャジャとの対峙でアームに繋がれたシールドを失い、主な遠距離攻撃手段を失ってしまっていた。
一応、機体の両肩に直接接続されているヴァリアブルシールドは健在だが、備えられている「ガトリングガン」では、そこまでの威力は期待できない。
「………散々小馬鹿にした報いを、受ける覚悟は出来ているかしら?」
「春香、彼女達は捕虜にするべきよ。情報を色々と聞き出さないと。」
「システム・アメリアスの勢力ならば、消去すべきよ!」
「少しは頭を冷やしなさい!貴方が単独行動をしたから、状況が危うくなったのよ!?」
「……………。」
感情的になってしまう春香に対し、律子は叱り飛ばす。
実際に超長距離狙撃で左肩から先を失っているだけに、春香は何も言えない。
そんな春香の前では、かな子の試作2号機が新しいラジエーター・シールドを構えている。
彼女を守るという意味もあるが、逆に背後から下手に暴走して突出しないようにという意味もあった。
「とにかく、この状況じゃ敗走も出来ないでしょう?大人しくお縄に着いた方が良いわね。」
「確かに、ここから形成を逆転するのは無理ですわね………だったら………。」
大人しく投降するか?………と思われた時であった。
雪乃の言葉で、文香がショットランサーをかな子に向けて放ったのだ。
ラジエーター・シールドに突き刺さり、また大きくへこんでしまう。
「ええ!?交戦を止めないんですか!?」
「私達にとっては………、バルバトスさえ倒せば勝ちなんです!」
文香の発言に驚いたかな子は、咄嗟にビーム・バズーカを撃つが、3機は散るように回避をすると、一斉に突撃を行おうとする。
1機だけでもいいから、被弾している春香機にトドメを刺せればいい………という考え方だ。
あまりの無謀さにアイドルマスター陣営の面々は驚愕するが、彼女達はまだ知らない。
アメリアス勢力の面々の肉体は借り物の器に過ぎず、例え死んでも別の肉体で生きる事が出来るという事実を。
だからこそ、こんな有り得ない選択も可能なのだ。
「やっぱり消すしか無いじゃない!」
「今の春香さんは足手まといだから、下がっていてください!!………って、ええ!?」
かな子まで春香を叱り飛ばす始末だが、ここで予想外の現象が起こってしまう。
空間にひびが入って割れたかと思いきや、ジェネレーション・ブレイクが発生。
突如、雪乃達の背後の空間から、複数の黒色の機体が無機質な電子音と共に現れる。
「アレはトーラス!?でも………あの動きは!?」
美波が驚愕する中、機械的に隊列を整えながら動くトーラスは、一斉に大型ビーム砲である「ビームカノン」を放つ。
その砲撃はアイドルマスター………というより、彼女達と行動を共にしているソレスタルビーイングを狙っていた。
「あの隊列は………無人機か!?」
即座に敵機のフォーメーションからパイロットがいないと判断したティエリアは、セラヴィーガンダムを刹那・F・セイエイのガンダムエクシアリペアの前に出し、GNフィールドを張る。
これで護衛対象のソレスタルビーイングの2人が被弾する事は無くなったが、厄介なのはアイドルマスターの面々が、ビームの嵐の前に一時的に怯んでしまった事だ。
「!!………撤退しますよ!」
この隙に乗じ、雪乃の号令でアメリアス勢力の3機が一斉に反転し、戦域を離脱していく。
攻め込むトーラスの隙間を縫って、全速力で離脱をする。
「逃がすか!」
「だから、春香さーーーんッ!!」
そんな3人を逃がすわけにはいかないと、春香が激高しながらR・ジャジャを加速させる。
かな子が悲鳴を上げるが、もうお構いなしだ。
「ラムウの雷よ!(「メガ粒子砲」!)」
「こっちも「メガ粒子砲」だにぃ!」
慌てて神崎蘭子の量産型クァバーゼと、諸星きらりのビグロが春香の方を向こうとするトーラスを薙ぎ払い、援護をする。
春香がそこまで見えていたかは分からないが、彼女は最後尾にいるR・ギャギャに狙いを定めていた。
「貴様!仕留めてやる!」
雪乃は純粋なバルバトスへの憎悪と、超長距離狙撃を当てる為の囮になる役割から、散々春香を挑発していた。
それが、彼女にとっては気に食わなかったらしく、何が何でも落とす気でいたのだ。
しかし………後少しで手にした銃剣付きビーム・ライフルが届きそうになったところで、割り込む影があった。
「だ、ダメです!雪乃さんが撃破されたらダメ!!」
「歌鈴さん!?」
「文香さん!雪乃さんを連れて、逃げて下さい!雪乃さんが死んだら、ボスが悲しみます!!」
「………仕方ありません!ゴメンなさい………!」
両肩のGNディフェンスロッドを回転させて防御行動を取り、盾になる歌鈴。
このまま3人でやられるよりは、1人でも多く帰投させた方がいいという判断からの行動であった。
咄嗟の歌鈴の行動で距離が開いてしまった事もあり、文香は戸惑う雪乃機を引っ張り、戦場から離れていく。
「小娘………!舐めた真似を!」
「あ、貴方が………貴方のせいで………!私の思い出の家が………神社が………家族が………参拝客の皆さんが………ッ!」
1人になり声を震わせながらも、アドヴァンスドジンクスのプロトGNランスをR・ジャジャに向けて構える歌鈴。
その声音には、確かにバルバトスに対する憎しみが含まれていた。
「みんな笑顔だったんですよ!?安産を祈願する若い夫婦も居たし、蹴鞠で遊ぶ小さな子供達もいた!その笑顔を………貴方は全て奪い去ったッ!!」
「あの世界で祈願だと!?機械に任せていたくせに、ふざけた言葉を!!」
「……………ッ!傲慢さを償って!バルバトスッ!!」
怒りに満ちていたとはいえ、春香の言動は逆に歌鈴の逆鱗に触れるには十分であった。
彼女はプロトGNランスを突き出し、一直線に突貫してくる。
「うわああああああッ!!」
「そんな力任せの突撃で笑わせる!」
だが春香は、R・ジャジャの右肩にまだ残っていた3連装ミサイルポッドを発射。
接近する歌鈴機のプロトGNランスを破壊してしまう。
「消えて………無くなってーーーッ!!」
「グッ!?」
しかし、煙の中から出て来た歌鈴は、「アドヴァンスドGNビームライフル」を握っていた。
射撃武器だが、バレル下部に「GNビームサーベル」が備えられているのが特徴の武装だ。
そのサーベルが、R・ジャジャの銃剣付きビーム・ライフルを薙ぎ払い破壊してしまう。
「このおおおおおおッ!!」
「ええい!ふざけた真似を!」
大上段に振られたGNビームサーベルに対し、春香は下がりながら最後の3連装ミサイルポッドを発射して破壊。
だが歌鈴は、ならばと両手のGNクローでコックピットを潰そうとしてくる。
「みんなの………仇ーーーッ!!」
「させるかぁぁぁぁぁッ!!」
ここまで来たら、春香も死に物狂いであった。
機体を強引に逸らす事で、GNクローを無理やり回避。
ところが、その代償に両足にクローが刺さってしまい、爆発を起こす。
「小童がぁぁぁぁぁぁッ!!」
「うぅッ!?」
煙の中から上半身だけで出て来たR・ジャジャは、残った右手にビーム・サーベルを握っていた。
歌鈴は即座にGNクローでコックピットを守り、両肩のGNディフェンスロッドを回転させるが、もうそんな防御姿勢は春香には関係なかった。
「貴様は………残虐に消去してやる!!」
「ヒィッ!?」
今までになく冷徹で冷酷な春香………バルバトスの発言を前に、歌鈴の顔が引きつる。
R・ジャジャのビーム・サーベルが引かれたかと思いきや、R・ギャギャの前で見せた連続突きを放ち始める。
「ひ、ひあああああああああッ!?」
ビームのラッシュの壁を前に、GNディフェンスロッドが徐々に砕かれていき、GNクローも破壊され、アドヴァンスドジンクスその物が原型を無くしていく。
宣言通り残虐に命を削り取っていくバルバトスの行為に、歌鈴は一気に闘志を奪われ恐怖に包まれた。
やがて、そのコックピットにも数発ビームの突きが炸裂し、変形していく。
「あ!?あ、ああ………!?」
「ちょ!?春香、やり過ぎ!?」
「眠れ!!安らかにな!!」
律子の言葉すら聞く気が無いバルバトスは、数十発の突きを喰らわせた後、最後にコックピットをビーム・サーベルで貫通させた。
その後、強引にサーベルを引き抜いた事で、アドヴァンスドジンクスは擬似太陽炉による目立つ赤い爆発を起こす。
「はあ、はあ………。」
「貴方ねぇ………。」
珍しく荒い息を吐く満身創痍のR・ジャジャを駆るバルバトスを前に、律子は頭を痛める事になった。
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アドヴァンスドジンクスの爆発は、離脱する2機のモビルスーツにもしっかり映っていた。
幾ら肉体のスペアがあるとはいえ、仲間が間違いなく1回殺されたと悟った雪乃は、庇われた事もあり唇を噛む。
「いつきさんと合流した後、母艦に戻りましょう………。歌鈴さんも、きっとそこで新しい肉体を得ているはずです。」
慰めにならないと分かりながらも、文香が静かに言葉を発した。
今回の一件で、彼女達はよりバルバトスへの敵対心と憎悪を抱く事になる。
何としても、消去をしないといけないという想いも………より強まる事になった。
氏家むつみさんの活躍もあり、アメリアス勢力を撃破…とはなりましたが、かなりの激しい戦いの後に何とも後味の悪い結末になってしまう事に…。
一応、道明寺歌鈴さん視点で見れば、あと一歩の所まで追い込んだんですけれどね。
元居た世界についての怒りの独白が、痛々しいものです。
さて、ここで気になるのは、ジェネレーション・ブレイクを起こした組織になりますが…。
次回、まだまだ戦闘は続きます。