モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第76話 PHASE6-7『矛と盾』

ジェネレーション・ブレイクを起こしたのは、メリクリウスに搭乗するヒイロ・ユイと、ヴァイエイトに搭乗するトロワ・バートン率いる、OZであった。

モビルドールであるトーラスを操る所から、トレーズ派ではなくロームフェラ派だと断言する、元OZの新田美波。

彼女の話から、トレーズが人の業から逃げていなかった事を知った天海春香は、かなりの好印象を持つことに。

だが、彼が総帥から外されたという事実を知り、人は責任から逃れる物と皮肉も述べる。

 

一方、マレット・サンギーヌに取り残されたジオン軍のザンジバルでは、前川みくと呼ばれる少女が、戦果を挙げようとクルー達と躍起になっていた。

そこに藤居朋のコレン・カプルが無力化しようと向かったが、みく達の頭を使った戦術の前に苦戦させられる。

コレン・カプルの切り札を使う事で、何とか無力化させられる事が出来たが、その機転の利いた戦法に、朋は感心する事になった。

 

後は、ヒイロ達のOZをどうにかするだけだが………。

 

 

 

「モビルドールは、操っている大本がいるはずです!恐らくあの宇宙母艦さえ破壊すれば全機の機能が停止するはず………!」

「じゃあ、あの赤いメリクリウスと青いヴァイエイトと一緒に、片付けて頂戴!」

 

襲い来るトーラスを破壊しながらであったが、美波の的確なアドバイスを受け、秋月律子が指示を送る。

距離が離れていたが、そういう時の為の対艦ビーム砲を備えているのが、上条春菜のVダッシュガンダムだ。

 

「ぶっ放します!!」

 

トーラスの迎撃を美波のゲイツRや諸星きらりのビグロに任せた彼女は、オーバーハング・キャノンを宇宙母艦に向けて、一直線に放つ。

普通ならば、誰も妨害する事の出来ない一撃になるはずであったが………。

 

「母艦を狙ってくるか。考えは間違っていない。」

 

そこに、ヒイロのメリクリウスが割って入った。

背部に10基搭載された無線誘導兵器を起動させると、強力な電磁フィールド………プラネイトディフェンサーを発生させる。

 

「な!?」

 

その電磁フィールドにオーバーハング・キャノンが触れた瞬間、周囲に弾け飛ぶようにビームの粒子が拡散。

背後の宇宙母艦だけでなく、防御行動を取ったメリクリウス自体も無傷になっている。

 

「対艦ビーム砲を………無効化するなんて!?」

 

「成程。出力に関しては、そちらも自慢があるようだ。」

 

いつの間にかメリクリウスの背後に回っていたトロワのヴァイエイトが、背部右側のビームジェネレーターをフル稼働させ、ビームキャノンの発射体勢に入る。

彼が狙っていたのは、刹那・F・セイエイのガンダムエクシアリペアを守る、ティエリアのセラヴィーガンダム。

 

「こちらの砲撃、受け止めて貰おう。」

 

前のヒイロ機が動くや否や発射されるビームキャノン。

その砲門は巨大である為、逆に言えば狙われているかどうかの判断は付きやすい。

ティエリアはGNフィールドを発生させると、こちらも強力過ぎるビームの粒子を弾き飛ばしていく。

 

「梃子でも動かん!………しかし、これでは!?」

 

ヴァイエイトの攻撃はGNフィールドで防ぐことが出来るが、その間セラヴィーはやはり動けない。

こうなると、周りからトーラスが襲い掛かってくるため、刹那のボロボロのエクシアリペアは回避行動を取らないといけなくなる。

 

「まだ………終われない!」

「お手伝いするにぃ!」

「反対側は任せろ!………あいつら、まるで矛と盾だな!?どうする!?」

 

ここで右側のトーラスをきらりのビグロがメガ粒子砲で薙ぎ払い、左側は向井拓海のゲドラフがビーム・シールドで守りながら、「ビーム・ライフル」を連射して撃ち落としていく。

しかし、矛であるヴァイエイトと盾であるメリクリウス、そして無人機であるトーラスの連携をどうにかしないと、その内、護衛対象となってしまっている刹那機が危ういだろう。

しかし、律子は割と自身満々な顔をしていた。

 

「矛と盾ね………。だったら………これはどうかしら?………蘭子!!」

「我が世の春が来た!!(この時を待っていました!!)」

 

意思疎通の難しい言葉と共に、前に出たのは神崎蘭子の量産型クァバーゼ。

彼女は頭部をメリクリウスに向けると、メガ粒子砲を放つ。

 

「その攻撃は、もう見切っている。」

 

だが、春香を援護した際、トーラスの部隊にその武装が放たれていたのを見ていたヒイロは、落ち着いて対処。

プラネイトディフェンサーを展開する事で、また受け止めてしまう。

 

「アレクサンダーの光よ!!(もう一発!!)」

 

「何度やっても無駄だ。」

 

一度でダメならば二度。

集中的にメガ粒子砲を放つ蘭子であったが、ヒイロは涼しい顔で受け止める。

明らかに意味の無い攻撃であったが………。

 

「01のパイロット。母艦がロストした。」

「何………?」

 

トロワの声と共に突如、背後で爆発する宇宙母艦。

正面からの攻撃は可能な限り防いでいた為、戦艦がやられた理由を、ヒイロはすぐには理解できなかった。

しかし………。

 

「そういう事か………。」

 

「勝利の鍵は、大蛇の手よ!(こちらには、ビームカッターがあります!)」

 

自身の背後で動く光輪を把握したヒイロは、蘭子の戦術を把握する。

彼女は只、メガ粒子砲を放っていたのでは無く、隙を見計らって左腕のスネークハンドの先のビーム・ソーからビームカッターを移出したのだ。

回転するビームの輪は、ブーメランのように弧を描いてヒイロやトロワの横を通り、背後の母艦へと突き刺さっていた。

 

「さあ!我と余興を………アレ!?」

 

無人機であるトーラスが動かなくなった事で、ここからが本番………と思った蘭子であったが、急に素の口調になってしまう。

不利になるや否や、ヒイロとトロワはあっさりと回れ右をして、撤退を始めたのだ。

勿論、逃すまいと美波が愚民兵達と共に、オーバーハング・パックの対艦ビームを一斉に放つが、ここら辺は腕がいいのか、ビームの嵐を軽々と掻い潜ってしまう。

 

「どうやら、相手にはピエロがいるらしい。」

「ピエロはお前だ。………戦力は、「あの時」のシンデレラガールズよりも上みたいだな。」

 

………などと涼しい顔で会話を繰り広げ、矛と盾のモビルスーツは、あっという間に戦場を離脱してしまった。

 

「去り際があっさりしているというか………、逃げるタイミングを間違えなかったというか………。」

 

ここまで潔く敗北を認める相手であると、春香ですら怒りを通り越して逆に感心してしまう。

むしろロームフェラ派のOZとして派遣されたあの2人のパイロットは、最初からアイドルマスターやソレスタルビーイングの殲滅を狙っていたのでは無く、情報を入手出来ればそれで良いという感覚だったとも感じた。

 

とにもかくにも、これでハルシュタイン軍親衛隊であるアイドルマスターの初陣は終わる。

色々とイレギュラーが発生して、春香のR・ジャジャが撃墜寸前まで追い込まれたが、結果的に華々しく初陣を飾る事が出来た。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「………で、ザンジバルをもう1隻、無事に確保できたのね。」

「みんな相当、あの狂犬に恨みがあったみたいよ………軽く話を聞こうとしたら、マシンガントークが始まったわ………。」

 

「ふにゃーーー!!マレットチャンは、みく達に八つ当たりばっかりにゃーーー!!何であんなのが総大将にゃーーーッ!!」

 

「はいはい………ってわけで、実はあたし達にかなり協力的な姿勢なのよね。」

 

苦笑いを浮かべる朋の声と、間接的に聞こえてくるマイクの大音量による、みくの愚痴を耳にした律子は、何と言っていいのか分からないような顔をする。

ここまで嫌われる総大将というのも珍しいというか、あのマレットという男は、それだけ部下に理不尽な事を要求していたのか?………と彼女はみく達に同情したくなった。

 

「まあ………色々と得られたのは朗報ね。」

 

今回の戦いで、アイドルマスターが得たものは、マレットが捨てていった前川みくを含むジオン軍の捕虜。

更に、モビルドールによって動かされていた為、挙動が停止したトーラスが数機。

 

「各機、油断せずに回収と曳航の準備を行って!………後、春香はこれ以上無理しない事!」

「……………退屈ね。ああ、そうそう………。」

 

1人待つように言われた春香のR・ジャジャは、アメリアス勢力との戦いで右腕と上半身以外が残っていない状態であったが、器用にバーニアを吹かして刹那機の前に来る。

エクシアリペアはまだ、左腕を失っている程度であり、春香機よりは見栄えはマシであったが、武装を完全に喪失してしまっていた為、抵抗する力は無かった。

戦闘前のように、破損したGNソードを向けて対立の意志を示す事すら出来ないのだ。

無論、お互い五十歩百歩だと言えばそれまでだが、刹那にしてみたらティエリアはともかく、ずっと春香を含むアイドルマスターの勢力に守られていたのが、無念でたまらない。

 

「俺は……………。」

「まあ、貴方も災難だったわね。でも、アイドルマスターデビューの生き証人になれた事は、誇りに思ってもいいわよ。」

「……………。」

「じゃあ、また縁があったら、何処かで会いましょう。ソレスタルビーイングの皆さん。」

 

それで春香は、ティエリアも含む2人に残った右手のマニュピレーターを振り、母艦へと帰投していく。

満身創痍でも余裕のある彼女の姿が、刹那の無力さをより刺激した。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「……………。」

「刹那……………。」

 

アイドルマスターが撤退しても尚、刹那のエクシアリペアはしばらくの間、「コロニープラウド」の上で立っていた。

ティエリアが心配そうに見つめる中、彼は言葉を発する。

 

「………ティエリア、俺は力が欲しい。」

 

それは、刹那の心の底からの声。

 

「今の俺とエクシアでは、アロウズの暴挙に立ち向かうのに、敵対していた組織の力を借りなければ何も出来なかった………。それどころか守られてばかりで………これではハルシュタインの言葉通り、奴らの活躍を物語るだけの生き証人だ。」

 

ティエリアは只、無言で刹那の話を聞く。

彼に慰めが必要で無い事は、4~5年前で既に分かりきっている事だからだ。

刹那はエクシアリペアの首を上げて虚空を見上げながら更に呟く。

 

「情報も足りない。突如現れたハルシュタイン軍親衛隊アイドルマスターについて。頻発する次元の歪みの原因について。俺はまだまだ知らない事が多い。この4年、俺は痛感した。俺は………俺達は、何も知らないで戦っていたんだと。」

 

刹那のエクシアリペアは無意識のうちに、右手のマニュピレーターを握りしめている。

彼もまた、コックピットの中で同じように両拳を握りしめていた。

 

勿論、刹那達が知らなかったのは、無理はないという考え方も出来る。

まず、ソレスタルビーイングという組織が、元々は量子コンピュータ「ヴェーダ」を元に戦術プランを立てていたのだ。

そんな中でバルバトスによって、次元圧縮というイレギュラーが発生してしまった。

色々とヴェーダでは対応しきれない事態に発展しても、おかしくないと言える。

 

しかし………その代償として、彼らは重すぎる物を支払っている。

特にティエリアは、この事実を痛感しているからこそ、敢えて自らへの戒めも兼ねて言葉を発した。

 

「そうだな………僕らはヴェーダに頼り過ぎていた。知るべき現実から目を背け、いらぬ犠牲を払ってしまった………。」

 

ヴェーダという機械に頼りっきりにならず、その目で現実を直視していれば、失われなかった命もあるだろう。

自分の足で歩もうと思えば、もっと違った道を進めたかもしれない。

ティエリアも刹那も、痛みを伴い成長出来たからこそ、今の自分を客観的に見つめられた。

 

「今のままでは、俺はガンダムになれない。俺には、全てが足りない………!」

「ああ。その為にも、ソレスタルビーイングを、まずは再建しなくてはならない。そして、今度こそ僕らの目で、世界と向き合っていかなければならない。」

 

ティエリアはセラヴィーの右手を伸ばす。

そして、改めて刹那を………ガンダムマイスターとして歓迎した。

 

「共に来い、刹那。エクシアの太陽炉を使った、新たな君のガンダムを用意してある。その機体で皆と共に、世界に立ち向かうんだ。」

「ああ。………今度こそ、俺が………俺達が、ガンダムになる為に!」

 

刹那もまたティエリアの方に向くと、右手を伸ばしてその手を握った。

 

 

今回の戦いで、刹那・F・セイエイのプライドはアイドルマスターにズタズタにされた。

しかし、悪い事ばかりでは無い。

ガンダムマイスターである刹那・F・セイエイが、4年の歳月を得て蘇ったのだから。

この経験と痛みを持って彼は、エクシアの正当進化系である新しい機体、「ダブルオーガンダム」を駆る事になる。

今度こそ自分の目で、世界と向き合う為に。




最後に活躍をしたのは、神崎蘭子さんの量産型クァバーゼ。
ある意味では、メリクリウスに対しては特攻とも呼べる装備を扱うのがクァバーゼのコンセプトですから、当然と言えば当然かもしれません。

何とか無事に戦闘は終了しましたが、刹那・F・セイエイは力の無さを痛感する羽目に。
むしろ、ボロボロのエクシアリペアで良くここまで戦って来たと言えますが、アロウズと本格的に戦うには、もっと力が必要になりそうです。

成長した刹那やティエリア・アーデは、当時かなり人気だったのを覚えています。
自分の非を認められるようになると、人は強いですよね。
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