モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第77話 PHASE6-8『祝勝会』

残ったOZのロームフェラ派との戦いは、盾であるヒイロ・ユイのメリクリウスと、矛であるトロワ・バートンのヴァイエイトの連携の前に苦戦を強いられる。

しかし、神崎蘭子の量産型クァバーゼが突破口を開いた事で形成が逆転し、2人を退却させる事に成功した。

 

無事にアイドルマスターの初陣は勝利に終わり、天海春香は無力さから生き証人にしかなれなかった刹那・F・セイエイに皮肉を言って引き揚げていく。

自身の想いを吐露する刹那に対し、ティエリア・アーデは、新たな機体………ダブルオーを準備していると提示し、再び彼をガンダムマイスターとして歓迎した。

 

アイドルマスターの今後と、ソレスタルビーイングの今後。

シンデレラガールズには、どのように絡んでくるのか………。

 

 

 

それは、アイドルマスターの面々がコロニー「765」に帰還し、事後処理を行った夜の事であった。

 

「ノってるかーい!!」

『オーーーッ!!』

 

「楽しんでるかーーーい!!」

『オーーーッ!!』

 

「それじゃ乾杯ーーーッ!!」

『乾杯ッ!!』

 

事務員である音無小鳥の音頭で、その事務所に集まったアイドルマスターの面々や愚民兵が、一斉に乾杯を行いワイワイと騒ぎ出す。

その様子を見た春香は、冷めた顔で一言。

 

「……………何これ?」

「何って、祝勝会よ。今日は、アイドルマスター初勝利の日!めでたい時は、パーッとやらないと!!」

 

戻って来たら事務所には、居残りの愚民兵達によって、いつの間にかカラフルな飾りつけがされていた。

テーブルには豪華な食事や飲み物が置かれ、美味しそうな匂いが漂っていた状態だ。

どうも、これらは全て秋月律子が手配した物であるらしく、盛大に勝利を祝おうと考えていたらしい。

只、春香にしてみたら面白くもなんともないらしく………。

 

「まだ1回任務をこなしただけだというのに、お祭り騒ぎだなんて………。人は、そんなに騒ぎたいのかしら?」

「時には騒ぎたいものなのよ。息抜きはしなくちゃ!………ほら、貴方は主役なんだから、もっと楽しそうにする!」

「……………。」

 

律子に諭される春香であるが、どうも納得がいかずに不満顔。

そんなやり取りをしている間にも、集まっている者達は思い思いの時間を過ごしていた。

 

双葉杏は好物の飴を舐めながら、諸星きらりにブンブンと振り回されており、その様子を見た蘭子が溜息を付いている。

新田美波は男の愚民兵に20歳になったら一緒にお酒を飲もうと絡まれそうになり、向井拓海がメンチを切って追い払っていた。

感情の薄い氏家むつみは、三村かな子に色々とお菓子を配られ、上条春菜に伊達眼鏡を試されていて戸惑っている。

色々とツッコミ所があるが、ある意味では戦場にはない普通の生活という物が、そこにはあった。

 

「よしよし………みんな、楽しんでいるわね。」

「ねえ、律子さん………ちょっといい?」

「あら?どうしたの、朋。」

 

満足そうに見つめていた律子の下に、フライドチキンを二刀流で構えて美味しそうに食べている藤居朋がやってくる。

彼女曰く、「コロニープラウド」の戦闘で捕虜になった前川みくを始めとしたジオン兵の処遇に関して、春香の意見を聞きたかったのだが………。

 

「探しても見当たらないのよね。何処に行ったか知らない?」

「え?………そう言えば………。」

 

いつの間にか、主役である春香は事務所から消えていた。

その行動に呆れた律子は、溜息。

 

「も~、勝手に何処に行っちゃったのよ、あの子は………。朋、悪いけれどこの場をお願い。ちょっと春香を探してくるわ。」

「OK!………気を付けてね~!」

 

慌てて事務所を出ていく律子を、朋はフライドチキンを持った手を振りながら見送った。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

春香は、事務所の外で涼んでいた。

彼女を発見した律子は、腰に手を当て明らかに不機嫌な顔をすると、その横に歩いて行く。

 

「………ちょっと春香、主役がさっさと消えてどうするのよ。」

「別に、私がいてもいなくても、あの様子なら問題無いでしょう。人のバカ騒ぎには、興味は無いわ。」

「貴方ね………仮にも人の支配者になるつもりならば、もう少し人に馴染む努力をしなさい。」

「私の目的は人の統率であって、人の生活に堕落する事では無いわ。」

 

ここら辺はかなり頑固とも言える春香に、律子はしばらくジト目を向ける。

しかし、やがて軽く嘆息すると、今回は諦めたように言った

 

「……………まあ、いいわ。そこは追々理解して貰いましょう。私も2人だけの場で聞きたい事があるし。」

「聞きたい事?」

「貴方がアメリアス………と言った勢力の事よ。」

「ああ………。」

 

ここで春香は、シンデレラガールズ側ではアプロディアが説明した通りの事を律子に話す。

 

アメリアスは生まれたばかりのシステムで、「人々の幸福」を司るはずであった。

バルバトスが世界を消去した際に、一緒にデリートされたかと思われたが、どういうわけか生き残っていたのだ。

 

「成程ね………。じゃあ、モビルスーツの配備に関しても、「貴方と同じ」なの?」

「恐らくそうでしょうね。」

 

実は、アイドルマスター陣営のモビルスーツは、天海春香が次元圧縮の副次効果で取り寄せたものだ。

色々な次元の影響を管理できるバルバトスだからこそ、別次元から機体だけを選別する事が出来る。

 

只、そこには次元圧縮による管理の影響力の大きさも関わって来る為、即座に強力無比な機体を取り寄せられるわけでは無いらしい。

例えば春香の初期機体がR・ジャジャであったのも、現時点での影響力から判断して総合的に良いと思えたから。

可能ならば、もっと素晴らしい機体を取り寄せるのが普通であるだろう。

 

「アイドルマスターの名が広まって、次元圧縮の影響力が強まれば、アプロディアに送るシークレット・ユニットの質も上がる。只、それはアメリアスにも言えるのでしょうね。」

 

時間が経てば経つほど、アメリアスは自分の力を引き出す事が出来るだろう。

それに加えて、R・ギャギャのような改造機を送って来た所を考えると、向こうには優れた整備士がいるのかもしれない。

どちらにしろ、今後脅威になりそうなのは確かであった。

 

「アメリアスに関しては、少しは分かったわ。詳しい話はまた後で聞くとして………戦闘中の貴方の言葉で気になったんだけれど、意外な人が好みなのね。」

「意外な人?………何か言ったかしら?」

「トレーズ閣下の事よ。貴方、美波の話を聞いて、彼を好ましく思っていたじゃない。」

 

人の業から逃げない人間、トレーズ・クシュリナーダ。

そんな姿が、春香の中ではかなり好意的に映っていたように律子は感じたのだ。

春香は、ああ………と納得すると、語り始める。

 

「そのことね。別に好ましくは無いけれど、人の中では真面な考えの持ち主だと判断しただけよ。それが何か意外かしら?」

 

律子は少し考える素振りを見せると、顎に拳を当てて、首を傾げる。

 

「貴方は………というか、ジェネレーション・システムは、人の支配する世を終わらせる為に作られたんでしょ?つまり貴方は、機械によって人を管理する為に作られた存在。その貴方がモビルドールを否定して、トレーズ閣下を指示するのって、自己否定につながらない?」

 

バルバトスが、戦いに疲れた人に変わって世界を収める立場だと言うのに、真逆の立場であるトレーズを支持しているのだ。

律子にしてみたら、その考え方が疑問であった。

 

「……………貴女は、私が人をどのように解釈しているか、正確に理解していないみたいね。」

「え?」

 

不敵な笑みを浮かべる春香の言葉に、律子は目を見開き頭に疑問符を浮かべる。

春香はコロニーの夜空に向かって顔を上げ、両手を広げると勝気な笑みを浮かべていく。

 

「私はね、人を善なる存在に導くために生み出されたシステムなの。そんな私にとって最も許されない事態は、人が人の業を捨て、全てを機械に任せてしまう事なのよ。」

「人の業を捨てる………。つまり、貴方達を作り出した張本人達こそ、最優先で裁くべき存在?」

「そう。だって客観的に見て、一番人の倫理から外れているのは、そういう人達でしょう?」

 

自信満々に語る春香は、反論できないでいる律子に、分かりやすく説明していく。

そういう者達は、破壊、殺戮、何が起こっても全ての判断と処断を機械にゆだね、責任から逃れていた。

 

生みの親である人々には、良心も反省も無かったのだ。

故に、本来人に備わるはずの抑制も効かなくなる。

敵の悲鳴も激高も、全てが無意味なものと化してしまう。

 

「だから、私は私を作った人々を消したの。彼ら、次元圧縮プログラムで様々な次元を侵略してもおかしく無かったし。」

 

春香の目は何処か寂しさや悲しさもあったような気がした。

しばし無言であった律子は、そんな彼女の目を見て問う。

 

「……………貴方は、このままだと他の次元全てが、貴方の世界の末路を辿ると考えているのね。」

「そうよ。トレーズのような男が後、世界に何人いるか。仮にいたとしても、時の流れの中で消えて行ってしまう。」

 

技術の発展で、人は機械や人工知能に頼り、己の業から逃げ破滅を招いて行く。

引き金を引いた人は、己への恐怖から、徐々にそんな世界を構築していってしまうのだ。

 

「だから、私は人を善なる存在に導くために救うのよ。その世界が手遅れになる前に、私自身の手で支配をして。人が業を捨てないように。人が人でなくならないように。私が監視役をして……………ッ!?」

 

自慢げに自らの思想を語る春香であったが………突如、重度の痺れが頭に走ったかと思いきや、強烈な頭痛に襲われる。

思わず立っていられなくなった彼女は立て膝を付き片手で頭を押さえる。

 

『それで世界が平和になると、本気で思っているの?』

 

「何………だ………!?」

 

律子が近くに来て支えるが、それすら分からない程、春香………バルバトスは余裕が無くなる。

頭の中にノイズが走って、自分でない何かが語りかけて来るような不快な感覚。

尚も、耳障りな言葉は続く。

 

『それじゃあ、貴方の危惧する世界と変わらない!貴方が力づくで管理をしたって、人が人でいられる世界にはならない!』

 

「………クッ、じゃあ………どうしろというのだ!?管理をせず人を導く方法があるというのか!?」

 

口調まで変わったバルバトスは、己の内側から聞こえる声に反発していく。

だが、声は尚も大声を響かせる。

 

『もっと、人を信じようよ!私達は、そんなに弱くない!貴方の力が無くてもやっていける!そんな簡単に業を捨てたりしない!』

 

バルバトスは、自分を全否定するこの「女の声」が気に入らなかった。

この女は、何も分かっていないと………怒りすら覚える。

 

「ふざけた事を!貴様はあの未来世界を知らないから、そんな夢想を言う事が出来るんだ!業を捨てた人が何処まで無邪気に残酷になれるか、貴様は知っているのか!?小指を弄る感覚で暴動鎮圧をする世界の姿を、直視できるのか!?そんな些細な言霊で人が変われるというのならば、そもそも我らはこの世界に存在していない!!」

 

『貴方は……………。』

 

「小娘の脳で、我の邪魔をするな!!」

 

冷や汗を流しながらも早口で喋るバルバトスは、最後に内なる声を一蹴する。

声はそれで聞こえなくなり、バルバトス………春香は、荒い息を吐く。

 

「ちょっと………大丈夫なの、春香?」

「心配ないわ。………それよりも、そっちの質問に答えたんだから、こっちも質問してもいいかしら?」

「ええ、構わないけれど………。」

 

心配する律子を押しのけて立ち上がると、春香は汗を懐に忍ばせていたハンカチでふき取る。

そして、何事も無かったように律子に問う。

 

「前の戦いで貴女………アロウズと同盟を結べる事で得られる対価が大きいと言っていたわよね。その理由に関して何か確信を持っていたみたいだけれど、それは何?」

「ああ、そのことね。それは、アロウズの後ろには、「イノベイター」と呼ばれる組織がいるからよ。」

 

律子の言葉に、春香は情報を思い出す。

イノベイターとは、「イオリア計画」の為に生み出された優れた能力を持つ人造人間である。

その計画と存在概念に関しては謎が多いが、アロウズが高度な技術を保っていられるのは、彼らからの支援の影響も大きい。

 

「………でも、彼らの存在が、そんな強力なメリットになるかしら?むしろ、アロウズ含め、他組織を下等分子としか見ていない以上、目の上のコブでしかない気がするけれど。」

「まあ、付き合っていくうえでは、悩ましい存在である事は確かよ。普段はアロウズの後ろに隠れて高みの見物をしているし、中々お目見えする事も出来ないものね。でも、彼らの手の中には、頭脳として優秀なスーパーコンピューター、ヴェーダがある。」

 

律子の言葉を聞き、春香は呆れる。

ヴェーダは、様々な情報や無慈悲なミッションプランを、勝手に導き出してくれる夢のような機械。

テロ活動を行うソレスタルビーイングや、暴虐に振る舞うアロウズ、イノベイターが頼っているだけあって、彼女にしてみれば、これもまた人間の腐敗の象徴に映ったのだ。

 

「………で、アロウズやイノベイターを介して、そのヴェーダを手の届く位置まで手繰り寄せて、何のメリットが手に入れられるの?まさか、アイドルマスターのミッションプランも導き出して貰おうって魂胆じゃないでしょうね?」

「そんなことはしないわよ。」

 

ジト目で見つめる春香に対し、律子は満面の笑みを浮かべて否定。

しかし、狡猾な表情を浮かべると意味深な言葉を述べる。

 

「只ね、春香。戦いとは常に二手三手先を考えて行動するものなの。もしもの時に備え、「保険」を確保しておくのは大切なのよ?貴方の為にも………ね。」

「保険………?」

「そう、保険。貴方の為の………ね。」

 

自身が綿密に関係していると聞き、春香は思わず律子を睨みつける。

しかし、律子はそんな春香の様子も気にせず、逆に満足気な顔をした。

 

「心配しなくても大丈夫よ、春香。事は全て順調に進んでいるわ。アイドルマスターは、様々な勢力に介入して、ハルシュタイン軍としての影響力を高めていく。今回の戦いで不足していると感じた親衛隊候補の確保も、今後積極的に行って行くし、765プロのみんなにも、他の場所で色々と協力して貰うわ。そう………他の場所でね。」

「まあ………期待しているわよ、律子。」

 

言葉とは裏腹に、全く期待していないような表情で呟く春香。

律子は、そんな天邪鬼な「この春香」に苦笑するのであった。

 

 

アイドルマスターの戦いは、まだまだ始まったばかり。

一方で、他の勢力はどうなったのか………。




勝利を祝したイベントは、アイドルマスターには必須…なのですが、この天海春香さんは納得がいっていない模様。
彼女には彼女なりの持論があるみたいですが、ここで内側からの声が聞こえてくる事に…。

どうやら、バルバトスが憑依している彼女にも、まだまだ問題点がありそうな感じ。
秋月律子さんは、そんな春香さんに対して、色々な事を考えている様子です。

PHASE6は次回が最後になります。
最後まで楽しみにして貰えると有り難いですね。
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