アメリアス勢力の母艦では、戦闘中に撃破された道明寺歌鈴が、スペアの肉体で復活する。
しかし、残虐にバルバトスに殺されたその精神は無事とは言えず、錯乱してしまう。
苦しみ喘ぐ様子を見せつけられた柳瀬美由紀は、死なないというのは間違っていると痛感してしまった。
「ネオ・ジャパン」へと向かうトロイホースの格納庫では、整備士として雇われているメイ・カーウィンとミア・ブリンクマンが開発プランで口論をしていた。
その日常茶飯事の様子に、ビーチャ・オーレグは面倒そうにして、艦長の江上椿は楽しみながら写真に収める。
また、パイロットである西園寺琴歌は、同じくパイロットである白菊ほたるを巻き込み、ロックなミニコンサートを開いて青春を謳歌していた。
只、皆が色々な事情を持っている為、椿もビーチャも少しやるせない顔をしてしまう。
そしてロウ・ギュールは、とある男に開発したモビルスーツを、シンデレラガールズに送るように依頼をしていた。
どうやら、とあるパイロットの為に作られた機体であるみたいだが………?
シンデレラガールズは、今はどうしているのだろうか………?
更に、他の勢力の動向は………?
「………ゴメンなさい、みんなに迷惑をかけて。」
「いいのよ。そんな恐怖を味わって、辛くない方がおかしいのだから。」
アメリアス勢力の母艦では、パニックを起こした歌鈴がようやく落ち着き、嘔吐で汚した検査着から着替えていた。
とはいえ、いつ心に刻まれた恐怖がフラッシュバックするか分からないので、持田亜里沙が常に見守っている。
それだけ、今の歌鈴は不安定な状態とも言えるのだ。
「美由紀ちゃん、許してくれたけれど………酷い事しちゃったな………。」
検査着をたたみ、別の服に着替えながらではあったが、歌鈴が自分の錯乱ぶりを思い出して深く溜息を付く。
恐怖心があったとはいえ、目覚めるなり、心配して覗き込んでくれていた美由紀を力いっぱい拳で殴り飛ばしてしまったのだ。
当の美由紀は確かに笑って許してくれたが、鼻血を流していたのは忘れられない。
「雪乃さん達は………?」
「ボスやアメリアスに報告に行っているわ。一応、貴女の今の精神状態の事も伝えているつもり。」
「そう………ですか。」
スペアの肉体があるとはいえ、天海春香………バルバトスに残虐に殺されてトラウマを刻まれた以上、しばらくは歌鈴の出撃は難しいと、「この母艦専属の医者」に判断された。
その結果も踏まえて相原雪乃達の出撃メンバーは報告に行ってはいるが、肝心のボスという人物が、どういう判断を下すのかは分からない。
滅ぼされた世界の訳アリの人物達が集っている勢力である以上、歌鈴だけを特別使いしにくい事情もあるのだ。
只………。
「尤も、歌鈴ちゃんの場合は、私達とは比べ物にならない位の特別な事情があるのよね………。」
「そ、そんな!?私の事情は、そこまで………。」
「今の精神状態でも………日課となっている「対話」をやるの?」
亜里沙は心配そうな顔で、歌鈴を見る。
歌鈴は着替え終わると、少しだけ自分自身を見つめて無言になった。
その服は普段着とはかけ離れており、少々派手な振袖の付いた巫女服である。
「ボスがあんな状態になっちゃっていますし………、私が話す事で、苦しんでいる「魂」を少しでも導ければいいかなって。」
若干迷うような素振りはあったが、歌鈴は亜里沙に悲しそうな笑みを見せた。
そして、少し念を入れるように気合を入れてベッドに座り込むと、急にスイッチが切れたかのように虚ろな目になり、だらんと腕が下がる。
口からは、何やらブツブツと念仏のような言葉が聞こえ始めた。
「……………だいじょうぶ…………こっちにおいで……………。………はい……………いっしょに……………だめ………こわがらないで……………ほら………みんなで……………。」
まるで、うわごとで「何か」と話しているような歌鈴の様子を見ながら、亜里沙は何とも言えない気分になる。
「………幾ら、貴女が巫女の系譜だからって………降霊の儀式を使って、「あの世界全員の魂」を救済しようだなんて………無茶苦茶よ………。」
歌鈴のやろうとしている事を知っている女性は、せめて自分も少しは手伝ってあげられないものかと苦しい気持ちを吐露した。
………と、そこで部屋がノックをされたので、速足で出口に向かい扉を開けて、歌鈴が瞑想中だから静かにするように促す。
しかし、扉の前にいた人物………桐野アヤは血相を変えていた。
「どうしたの………?」
「ボスとアメリアス………!よりにもよって、この歌鈴のショックの後で、美由紀の単独出撃を強制しやがった………!」
「え……………?」
亜里沙は、思わず固まってしまう。
歌鈴のトラウマをマジマジと見せつけられた後に、精神年齢が14歳の美由紀を単身出撃させたのだ。
しかも、その出撃場所は………。
「本気………なの!?」
瞑想をしている歌鈴の為に声を荒げてはいけないと思いながらも、その滅茶苦茶な指令に亜里沙はアヤと2人で戦慄をした。
――――――――――――――――――――
江上椿が艦長を勤めるトロイホースとは別ルートで、荒廃する「ネオ・ジャパン」の中を「新宿シティ」へと向かっているモビルスーツの群れがあった。
目的は、そこで開かれるオークション。
傭兵の集いともバルチャーの集いとも呼べる多種多彩なモビルスーツの軍団は、滅んだ建物の間を慎重に歩きながら、ゆっくりと進んでいく。
その中で唯一、飛行可能なモビルスーツに乗っている、とあるパイロットの「少女」は空から異常が無いかを確認しながら、偵察行動を行っていた。
「ゴメンなさいね、「お荷物」を乗せちゃって。」
「おいおい………何度も言うが、流石にそれは酷いぜ。」
「今の状態じゃ、事実でしょう?」
「否定できないのが辛いねぇ………。」
通信で理知的な眼鏡の女性と話すのは、パイロットの少女ではなく、その座席の後ろでサブシートを開いて座るフードを被った大柄の人物。
声質からして男であるみたいだが、お荷物と言われる辺り、相当扱いは酷いみたいである。
「ま………立場上、「未完成品」である事は否めないが、もうちょっと言い方って物があるんじゃないのか?」
「「出来損ない」、「役立たず」、「キザな馬鹿」………どれがいい?」
「もう好きに呼んでくれ………というか、最後の悪口はストレート過ぎるだろ?」
男はかなり文句を言いたげな様子であった。
只、相手が口論で敵う女性では無いのと、事実をグサグサと言われているだけあって、普通に言い返せない。
項垂れていると、ここで少し会話が面白いと感じたのか、パイロットの少女が少し笑みを浮かべた。
「何だ?そんなに俺が馬鹿にされるのが、おかしいか?」
「はい………ゴメンなさい。笑っちゃいけないのは分かっているんですけれど………。」
サイドテールが印象的な少女であった。
少々大人びている感じではあるが、実は年齢は15歳。
まだまだ若いというより、幼いと言える年だ。
そんな彼女が傭兵達に混じり、モビルスーツパイロットをやっているのには明確な理由がある。
「只、外の景色を見ているだけだと………ちょっと辛くなっちゃって。」
「この周りの廃墟の事か?」
「ビルとか高いじゃ無いですか。元は、かなり発達した都市だったんだなって思って………。」
「……………思い出してしまったのか。」
男の言葉に、少女は静かにコクリと頷く。
そして、悲しそうな顔をすると自嘲気味に呟いた。
「何度も繰り返すようですが、「あの世界」では、家族と仲良く暮らしていたんです。弟や妹と買い物に行くのが楽しくて………でも………バルバトスには、それすら許されなくて………。」
「……………。」
「最期に聞いた声、忘れられないんですよ。「姉ちゃん助けて!」って………だけど、私は何にも出来なくて………。」
「あー………ちょっと休憩しねえか?流石に、周囲に目を凝らすのは疲れた。」
どんどん負の面に陥りそうになった少女の姿を見て、男は通信先の女性に意見を求める。
女性の方も、こればかりは賛同するしかないと思い、周りのモビルスーツのパイロット達に連絡を取り始めた。
「ほら、1回降りるぞ。」
「何で………何で、私だけ生き残っちゃったんでしょうか?みんなと死ねば………。」
「悪い、厳しいがこれだけは言わせてくれ………それはお前の家族への冒涜だ。」
「!?」
少女は、いつの間にか涙に濡れていた目を見開き、男を見る。
彼は申し訳なさそうに頭をかきながらも、少女に言う。
「死に損なった俺に、お前を付き合わせてしまったのは謝る。だが………それで、死にたいと願ってしまうのは、お前の無事を願っているはずの家族達に失礼じゃないのか?」
「だって………私………みんなに………会いたいよ……………。」
「じゃあ、ここで真っ逆さまに地面に突っ込むか?」
「……………。」
男の言葉に、少女は僅かに震えた。
モビルスーツの操縦桿を握ってはいるのだから、やろうとすれば可能だ。
しかし、そんな勇気は無かったし、心の奥底ではまだ心残りがあった。
「……………やっぱり、バルバトスをこの手で消すまでは死ねない。」
「だったら、死にたいなんて言うな。折角マキノ達に助けて貰った命なんだ。バルバトスを後悔させてやるつもりで強くなれ。それが、お前の出来る事だろ?………五十嵐響子。」
「うん………そうですね。頑張ろうね………「トルネードガンダム」。」
涙を拭うと、少女………五十嵐響子(いがらしきょうこ)は、少しだけ柔和な笑みを浮かべて、操縦している愛機を撫でた。
トルネードガンダム………文明の発達した世界で、暴徒鎮圧用に開発されたモビルスーツ。
五十嵐響子は、その世界の生き残りの1人であった。
そして、彼女の魂を管轄するのは……………。
――――――――――――――――――――
ハルシュタイン軍親衛隊アイドルマスターとして、勢力の拡大を目論むバルバトス。
世界の戦いに介入し、破滅を目論むアメリアス勢力。
支援をする為に「ネオ・ジャパン」を目指す、ホワイトベース級トロイホース。
そして、謎の少女である五十嵐響子が所属している、傭兵一派。
これらの様々な勢力が出てきている中で、シンデレラガールズは「イングレッサ領ノックス」に無事に到着していた。
次期領主と言われているグエン・サード・ラインフォードの計らいにより、シンボルとも言える「ボストニア城」の傍で、母艦キャリー・ベースを停泊させて貰っている。
そこで、整備士である吉岡沙紀が筆頭となり、艦の修理が急ピッチで進められていた。
「いらっしゃ~い!美味しいパン、美味しいパンはいかが~!!」
「「ヒップベビー」!「ミリシャ」自慢のヒップベビーの模型売ってるよ~!!」
「こっちは「ブルワン」だよ~!精巧な作りが自慢だよ~!!」
『お~~~~~!!』
「ノックス」ではお祭りが開かれているのか、夕闇に沈む街は活気づいており、所々で豊かな出店が催されている。
そんな楽しい空気を味わいながら、佐々木千枝、市原仁奈、佐城雪美の3人は、珍しい店や催しに目を輝かせていた。
「凄い!辺り一面に色んなお店が並んでいるよ!」
「あっちでは、何か楽しそうなお祭りもやっていやがるです!!」
「こ、このパン………何か不思議な味………。」
「とにかく、みんなあっちに行ってみようよ!」
子供達が三者三様で楽しみながら街を散歩しているのは、この母艦の修繕の時間を休暇として楽しんでいるから。
仕方なかったとはいえ、モビルスーツにすし詰めにされ、その後も命の危機に何度も陥ったのだ。
こうして羽を伸ばしたって、彼女達にバチは当たらないだろう。
「こらこら、そんなに走ったら転んじゃうよ。順番に回って行こうね。」
『はーーーーーーい!!』
そんな少女達を引率しているのは、今回は緒方智絵里と高槻やよいであった。
今までの経緯から、こうした役目を担うのは、智絵里か栗原ネネになる事が多い。
そのネネは現在、修理を行っている者達の為に健康的な食事を作っていた為、智絵里とやよいが任される形になっていた。
しかし………。
「……………。」
「………やよいちゃん?」
「いいんでしょうか?私達、こんなにのんびりしていて…………。」
智絵里はともかく、やよいはかなり不満そうな顔。
どうも765プロが大変な中で、自分だけこんな息抜きをしていていいのか?………と考えてしまっているらしい。
「………仕方ないよ。キャリー・ベースは長期的な修理が必要な状態だもの。モビルスーツも軒並み整備が必要な状態だから、この街でキッチリと整えないと。」
「ですが……………。」
「焦る気持ちは分かるよ………。やよいちゃんの大切な人達が、今どうなっているか分からないもの。でも、それで焦って、やよいちゃんにもしもの事があったら、それこそ本末転倒だよ。」
やよいはシンデレラガールズの一員として戦う事を決めた後から、シミュレーターで特訓をする事が多くなった。
勿論、戦士としての自覚が出て来たというのもあるが、その理由として智絵里はネネから「悪夢」に関する話を聞いている。
765プロ時代の親友である水瀬伊織が、洗脳されてハルファスガンダムに乗り、やよいを殺しに来る悪夢。
その夢を見始めてから、やよいは満足に眠れることが少なくなってきた。
今でもたまに、夜中にその悪夢を見て目覚めてしまう事があるのだ。
同じ「悪夢」に対する恐怖を理解している智絵里だからこそ、その辛さは痛い程分かる。
だからこそ………。
「こういう機会に少しでも外に出て、気分をリラックスさせないと………。また戦いの時は、嫌でもやってくるんだから………ね。」
次の戦いに向けて、十分な休息をとるのも戦士の仕事。
遊んで疲れてぐっすりと寝て、そうした生活リズムは、14歳の少女には必要であった。
やよいは少しの間無言になったが、やがて、はにかんだ笑みを見せて智絵里に応える。
「そうですね………ありがとうございます。それじゃあ私も、今は思いっきり楽しみますね。」
そうしてお礼をするが、智絵里は見逃さなかった。
絶好調の証である、ガルウイングで無かったことを。
それだけ、彼女の精神的余裕が無くなってきているのだ。
(やよいちゃんの見る悪夢………収まってくれればいいんだけれどな………。)
智絵里はやよいの心労を鑑み、心の中で溜息を付く。
「イングレッサ領ノックス」。
ここで、シンデレラガールズの物語が再び始まる。
お久しぶりです、擬態人形と申します。
しばらく色々あって執筆が遅くなっていましたが、PHASE7が完成したので投稿です。
また、2日に1話ずつ22時に上げていきますので、宜しくお願いしますね。
ちなみに遅くなったのは、gジェネエターナルとジークアクスで、改めてガンダムを履修していたからです。
その経験を、後に活かす場面もあるかもしれませんね。
さて、ここに来て更なる勢力が現れました。
新登場の五十嵐響子さんを含む傭兵軍団は、果たして何者なのか?
どう関わるかは、今後をお待ちください。
余談ですが、この話を投稿時点で、リメイク小説に登場予定のデレステアイドルは、千川ちひろさんを含め、121名になりました。
まだまだ増やしたいとも感じているので、こちらも待って貰えると嬉しいですね。