ラオホゥ級宇宙輸送艦による最後の無人特攻に対応する事になった藤原肇、喜多見柚、島村卯月。
肇が射撃センスの悪さによって足を引っ張ってしまうが、柚の機転でどうにかホワイトベースの防衛に成功する。
これにより、「サイド7」の戦闘は終了し、一同は安堵。
一方、戦闘中に暴走して気絶させられたやよいは、悪夢を見た。
追いかけて来た試作2号機によって自分を庇ったリーオーが大破させられ、パイロットである奈緒が無残な亡骸になる夢。
飛び起きた彼女は、キャリー・ベースの医務室に収容されていた。
そこで怪我で済んだ奈緒と再会したやよいは、彼女が自分に対し怒っていない事に驚く。
更に、食事と着替えを持って来た栗原ネネ、本田未央、工藤忍と出会った事で、彼女は安堵の涙を流した。
その後、心を開いたネネの手を取り、ブリッジへと向かう事になる。
不安を抱くやよいが遭遇するのは………?
ネネに連れられて通路を歩いていたやよいは、奥から跳ねる奇妙な丸い緑色のロボット………ハロがやって来た事に気付く。
ハロはひとしきり飛び跳ねると、両手を出したネネの腕の中に収まった。
「お疲れ様、ハロ。みんな集まっている?」
「ハロ!ハロ!」
「そのハロって………ネネさんのなんですか?」
「はい、妹の「しーちゃん」が友達の少年に教わって作ってくれて………大事にしているんです。」
ネネの言葉を受け、やよいは彼女に懐いているハロを見る。
仕事でハロ自体を見る機会は何度かあったが、こうして個人が持っている物を見るのは初めてであった。
「さあ、ハロも大丈夫って言っていますし、行きましょうか。」
「は、はい………。」
再びやよいの手を取るネネ。
先導するように跳ねていくハロを見て、忍に肩を借りている奈緒や、未央と共にブリッジへと向かい、いよいよ扉を開く。
そこには、様々な知らない女の人達が集まっていた。
「う………。」
思わず唾を飲むやよい。
ネネがギュッと手を握ってくれるが、中々落ち着ける物では無い。
ここで、一番前に立っていた艦長………高垣楓が話しかけてくる。
「ようこそ、キャリー・ベースへ。ここの艦長を務めさせて貰っている高垣楓です。」
「よ、宜しく………お願いします………。」
いざ言葉を告げられると、どうしても緊迫感が増してしまう。
今から自分がどうなるのか、全く予想が付かなかったからだ。
そんなやよいを気遣うように、高身長の楓は膝をついて告げる。
「怯えなくても大丈夫ですよ。貴女をどうこうするつもりはありません。」
「本当………ですか?」
どうしても拭えない不安から、やよいは恩人に対し失礼な言葉を紡いでしまう。
だが、楓は気にする様子は無く、むしろ満面の笑みでとんでもない事を告げた。
「信用なりませんか?ならば、敵意が無い事を示す為に、素っ裸になっても構いませんよ?」
「はわっ!?」
本気でコートを脱ぎ始めた楓を見て、やよいは思わず両手をジタバタして慌てて止めようとする。
止めないとこの目の前の女性は、勢いで行きつくところまで脱ぎかねなかった。
「そ、そんな事しなくていいですから!?」
「うふふ。………とりあえず、互いに自己紹介から始めましょうか。」
「は、はい………。私、高槻やよいっていいます。765プロのアイドルです。」
楓の冗談?………で、幾分か緊張がほぐれたやよいは、自己紹介を始める。
既にあのガトー・ニューロの言葉で知られていたが、彼女はコロニー「765」のアイドルであった。
それに対し、楓は膝を付いたまま自分の胸に手を当て語り掛ける。
「改めまして、私は高垣楓。元連邦の軍人です。一年戦争時代では、ユーグ・クーロ隊長の下で戦いました。その時に怪我を負った影響で、今は一線を退いていますが、このキャリー・ベースで艦長をやらせてもらっています。」
楓曰く膝に矢を受けてしまったらしいのだが、真面目に話せば服の下には結構深い傷があるらしい。
やよいは性格に反して大変な経歴を持つ人だと思った。
次にやよいの傍で膝に来て、手を当て前屈みになったのは、システムエンジニアの制服の三つ編みの女性。
「私は千川ちひろと言います。アナハイム・エレクトロニクス社にて、モビルスーツの研究に携わっていました。他社とのパイプラインの確保の役割も担っていたんですが、汚職の冤罪を着せられてここに流れ着き、副長をやっています。」
こちらのちひろも中々の経歴の持ち主。
アナハイム・エレクトロニクスというのは、「宇宙世紀」において大きなモビルスーツ関連の会社であるらしい。
次に前に出てきたのは、アホ毛が特徴のボブヘアーの連邦軍の制服の少女。
「私は、小日向美穂です。戦闘時に砲撃士を担当しています。実は、ここに来る前は仲間とバルチャー稼業をやってたんだけれど、みんなとはぐれちゃって………。」
美穂が言うには、バルチャーはモビルスーツのジャンク品を売買して、生計を立てているらしい。
仲間とはぐれたという所に関しては、やよいも共感を抱いてしまった。
続いて何故か缶ビールを片手に持った長髪の女性が笑顔で、前に出てくる。
「あたしは姫川友紀!宇宙コロニー「ネオ・ジャパン」出身の、野球大好き娘だよっ!!このキャリー・ベースでは、操縦士を担当しているんだ!バッチリエスコートするから宜しくねっ!」
酔っぱらっているのが素なのか、友紀は片手でタブレットを持って野球の試合を勧めてくる。
飲酒運転で大丈夫なのだろうか?………とやよいは思ってしまった。
入れ替わる形で出てきたのは、整備服に身を包んだ、ボサボサのショートヘアの少女。
彼女はやよいよりも年下に見える、ふわふわの灰色の髪のボブカットの少女と、茶色にもピンクにも見えるボブヘアーの少女を伴っていた。
「アタシは吉岡沙紀って言うっす。こう見えて、前はロンド・ベルで整備士見習いをやっていたっす。………で、こっちの2人が成宮由愛ちゃんと古賀小春ちゃん。3人で整備士として働いているっすね。」
「宜しくお願いします………。私達は色々あって、コロニー「シャングリラ」で暮らしていたんです………。」
「小春達は、ジャンク屋のパパとママの下で暮らしていたんですよ~。」
「パパとママって………えーっと、あの人達が………?」
ニコニコ顔で告げる小春に、由愛が少々苦い顔でツッコミを入れる。
どういうことなのか疑問を抱いたやよいに対し、沙紀が、色々あるんすよ………と苦笑しながら告げる。
その後に出て来たのは、あのやよいを助けてくれたお団子ヘアーのパイロットであった。
「高森藍子です。元々はティターンズの兵士でしたが、組織の横暴に反対してここに来ました。………その組織で当てつけのようなあだ名で呼ばれていたのが、物凄い悩みの種です。」
思いっきり、心の底から深い溜息を放つ藍子。
B-AAAやらドラム缶女やら言われれば、組織に怒りを持つのも当然なのでは?………とやよいは一瞬感じる。
ここで彼女の後ろで、忍に支えられている奈緒が改めて自己紹介をした。
「アタシはファントムスイープっていう特務部隊出身で、パイロットの1人として戦っている。………元々は聖ガブリエル学園の生徒だったんだけれど、色々あって逃げて来て、こんな所まで来ちまったんだ。」
どうも奈緒は、結構色んな経歴を持っているらしい。
藍子とは違う意味で深く溜息を付く彼女を見て、やよいはどんな事があったのだろう?………と少し考える。
そこに、少々遠慮しがちで前からツインテールの少女が出て来た。
「えっと………緒方智絵里って言います。コロニー「インダストリアル7」で暮らしていました。あんまり得意じゃないけれどパイロットやっています。あの………、よ、宜しくお願いします………。」
自信の無さそうにペコリと頭を下げる智絵里を見て、やよいは何処か親近感を抱いた。
同時に今の自分もこんなに自信の無い姿なのだろうか?………と思ってしまう。
だが、ここでやよいは目を見開く事になる。
今度出てきたのは、何と他の皆が普段着なのに、紫の作務衣を着て頭に手ぬぐい用のタオルを巻いた独特の服の少女であった。
「私の名前は藤原肇です。まだまだ若輩者ですが、この艦では小隊長を務めさせて貰っています。ちょっと恥ずかしい話ですが、ここに来る前は、宇宙海賊の一味として、祖父の下で修業をしていました。」
作務衣?手ぬぐい?小隊長?宇宙海賊?………大人しそうな表情とは裏腹に、色々とインパクトのある外見や言葉を残す肇に、やよいは目を白黒させる。
とりあえず、何で平時でもこの格好で過ごすのか、彼女には分からなかった。
更に続いて、黒い長い髪の少女が後ろから登場し、未央と片手でハイタッチをする。
「私は島村卯月です。このキャリー・ベースでは、パイロットの1人として頑張ってます!実は、ここに来る前は、「オーブ」という国で未央ちゃんと一緒にアイドル活動をやっていたんですよ。」
「そんな有名じゃなかったけど、しまむーとは一緒だったんだ!」
何と卯月と未央は、やよいの同業者であったらしい。
思わぬ縁がある事に驚く彼女であったが、ここで手を繋いでくれていたネネが、やよいをの方を振り向く。
「改めまして、私は栗原ネネです。「ポイント・カサレリア」出身で、「リガ・ミリティア」という組織とこの艦のパイプラインを担っています。故郷の妹を守る為にこの戦いに参加しているんです。」
ネネが言うには、若干病弱の妹が「カサレリア」という所に住んでいるらしい。
やよいにとって、彼女がお姉さんに映ったのは、こうした背景があったからなのだと悟る。
そして、最後にパーカーを着た少女が、綾瀬穂乃香とお団子頭の少女と共に出てくる。
「アタシは喜多見柚。まだまだ未熟だけれど、一応パイロットの1人だよ。出身は………そっちにいる工藤忍チャンと、ここにいる綾瀬穂乃香チャンと桃井あずきチャンと共に、アプロディアと同じ世界から来たって言えば、分かりやすいかな………?」
「………という事で、アタシは工藤忍。一応、キャリー・ベースの直営隊の小隊長やってるよ!」
「2回目になりますが、綾瀬穂乃香と言います。このキャリー・ベースでは、オペレーターを担当させて貰っています。アプロディアの力を借りて、敵機の照合などを行っていますよ。………さ、あずきちゃん。」
「えっと………桃井あずきだよ。このキャリー・ベースで雑務を行ってるの。………宜しくね。」
ここで、やよいは妙な違和感を覚える。
最後に名乗ったあずきという人物は、何処か暗い感じを抱いた。
それが、元々の性格であるのならばいい。
しかし、直感ではあったが、これは本来の彼女の性分とは違っているようにも思えたのだ。
「あずきの顔に、何か付いてる………?」
「え、いえ………あの、アプロディアさんって、確か………。」
しばらくあずきを眺めていたやよいが、慌てて話題を逸らそうとしてアプロディアの名前を出すと、柚の前にのワの顔の裸のデフォルメ人形が出てくる。
その姿に一瞬ギョっとしたが、彼女?は構う事無く話し出した。
「私です。改めまして、こんにちは。ジェネレーション・システムの管理者であった、システム・アプロディアです。現在は、このアバターで存在を保ちながら、次元圧縮プログラムの感知や、システム・バルバトスの把握をしています。」
「システム・バルバトス………?戦闘中も言ってましたが、それは何なんですか?」
訳の分からない単語が出て来た事で、やよいは思わず聞いてしまう。
ここで、楓が再び前に歩んできて、少し真剣な顔でゆっくりと説明を始める。
「バルバトスというのは、この次元圧縮を行っている元凶であり、私達が追い求めている敵です。彼を倒し、この次元圧縮によって入り混じった世界を元に戻すのが、私達の目的なのです。」
「そう………なんですか………?」
説明を受けても理解が出来ないやよいに対し、アプロディアが彼女の前まで浮遊しなが進むと、静かに告げた。
「ところでやよい。そろそろですが、貴女の事情を説明してもらえませんか?貴女が765プロの関係者ならば、ハルシュタイン閣下とも関わりがあるはず。彼女は………バルバトスと密接な関わりがある可能性があるのです。」
「え!?どういうことですか!?」
やよいはアプロディアの言葉に、思わず前のめりになって食いついてしまう。
至近距離で彼女と面する事になったが、アプロディアの方は動揺する事なく衝撃の真実を告げる。
「彼女は………いえ、彼女の仲間達は、バルバトスに洗脳されている可能性があるのです。」
「……………。」
洗脳という言葉を聞き、やよいは思わず押し黙る。
何故ならば、ハルシュタイン閣下というのは………やよいの765プロの仲間であるアイドルの、天海春香(あまみはるか)であったからだ。
キャリー・ベースの搭乗員と、自己紹介を交わしたやよい。
彼女が逃げ出してきた、ずっと友と暮らしていたコロニー「765」の現状は一体………?
キャリー・ベースに初期配属されている面々の、自己紹介回です。
色んな世界からメンバーが集まっており、当時の動画内のコメントでは、色々と憶測が飛び交った部分もありました。
彼女達が何を経験してこの場に居るのかは、これから順に語られる事になります。
初めて読まれる方がもしも居たら、どんな過去があったのか予想してみて下さい。
ちなみに初めて名前が出る漢字の人物には、登場時になるべくルビを振るようにしています。
今まで見落しが無いようにしていますが………何かあったら、教えて下さい。
宜しくお願いします。