アメリアス勢力の母艦では、何とか落ち着きを取り戻した道明寺歌鈴が、日課としている瞑想を行い始める。
「滅んだ世界全員の魂」を救済しようとする歌鈴の行為を、持田亜里沙が不安視する中、桐野アヤが血相を変えてやってくる。
そこで、柳瀬美由紀の単独出撃をアメリアス達に指示されたと言われ、戦慄するのだった。
一方でトロイホース以外にも、「ネオ・ジャパン」の「新宿シティ」へと向かうモビルスーツの群れが。
その中には、五十嵐響子と名乗る少女が、謎の大柄の男と共に活動をしていた。
トルネードガンダムと呼ばれる機体を駆る少女もまた、滅んだ世界の出身者だったのだ。
そしてシンデレラガールズは、「イングレッサ領ノックス」で、母艦キャリー・ベースの修理とつかの間の休息を行っていた。
しかし、765プロの面々が気になる高槻やよいは、悪夢を見続けている影響も有り本調子でない。
緒方智絵里に休むのも仕事だと諭されるが、あまり割り切れている様子では無かった。
この土地で再び始まる、シンデレラガールズの物語。
何が起こり、どんな影響を与えるのか………。
キャリー・ベースの格納庫では、成宮由愛と古賀小春が、プチモビを使って破損したエンジン回路を本格的に修繕していた。
吉岡沙紀はというと、渋谷凛や島村卯月、本田未央などの手を借りながら、モビルスーツの整備を行っている感じだ。
食事担当の栗原ネネは、作った晩御飯を皆に順番に配っている。
その中で、AEUイナクトの前では4人の人物が会話をしていた。
艦長の高垣楓とパイロットの高森藍子、神谷奈緒、輿水幸子だ。
「どうですか、藍子。イナクトの操縦系統は?」
「はい、いい感じです。これなら次の戦闘からは、使いこなせそうです。」
「そうですか、それは良かったですね。」
どうやら前回の軍事基地での戦闘で、幸子が強奪したイナクトの整備を藍子が行っているらしい。
当然ながら、彼女の力量に合わせて操作系統も調整し直しており、エースクラスが扱える機体へとチューンナップを行っている。
「良かったですね………じゃないですよ。折角人が苦労して手に入れたイナクトを、いきなり、ぶんどるなんて………。」
「貴女には合わないモビルスーツなんでしょう?だったら、こちらで勝手に使っても問題ないはずです。それに、ゲルググキャノンを与えたじゃないですか。」
「orz………。」
当然ながら、シンデレラガールズに所属するなり、乗機変更になった幸子はゲンナリと落ち込んでおり、ブツブツと愚痴を言っている。
奈緒が苦笑しながら頭を撫でているが、それすらも払いのける気力が無くなってしまったようだ。
しかし、にこやかに笑みを浮かべていた楓も、少し溜息を付くと、藍子を見ながら少々悩ましい顔をして言う。
「まあ、正直な所………ハイザックが壊れた時点で、藍子には飛行可能なモビルスーツに乗ってもらいたかったのです。これからは大気圏内での戦闘がメインになる以上、空戦部隊を率いる事が出来るリーダー役は、何人いても困らないですからね。」
彼女の愛機であったハイザック・カスタムは、前の戦闘でシークレット・ユニットとして出現したガンダムシュピーゲルに、細切れに破壊されてしまった。
空戦部隊は、シグーアサルトを扱う黒川千秋がリーダーシップを発揮できるが、不測の事態が起こるかもしれない。
そういう意味では、藍子にも飛行可能なモビルスーツに乗ってくれた方が、いざという時の安心感が違った。
「前回の戦闘を経験した貴女なら分かると思いますが、判断能力が落ちた時に、頼れるリーダー役がいないと困るでしょう?」
「確かに………お世辞にも奈緒さんはリーダー向けでは無さそうですからね。そこら辺の人材が必要なのはよく分かり………痛ッ!?」
「余計なお世話だ。というか、お前に言われたくない。」
撫でられていた頭にチョップを連打される羽目になった幸子は、頭を押さえる。
とはいえ、奈緒も自覚はしているのか、しかめ面ではあったものの、そこまで強気には出なかった。
「ですから、空を飛べるイナクトが手に入ったのは、渡りに船だったのですよ。丁度藍子のパーソナルカラーの、緑系でもありますからね。」
「成程………信頼されていますね。困ったときは、藍子さんの指示を聞けば、生き残れる確率は上がるという事ですか。」
「そ、そこまで過大評価されると照れるんだけれど………。」
幸子の何気ない言葉に、赤面する藍子。
奈緒は、意外としっかりしている幸子の判断能力を受け、やはり只の素人ではないと感じた。
そして、その時………。
「出来たーーーーーッ!!」
格納庫の別の場所で上がる大声。
声に反応して4人が見ると、沙紀がある機体の前で万歳をしていた。
「沙紀、完成したのですね。」
「艦長!バッチリっす!!美由紀ちゃんの置いて行った破損したレオパルドのパーツを使って、上手く組み立てられたっすよ!」
興奮を隠せない様子で、沙紀が喜びをアピールする。
未央がパイロットを担当して起き上がった機体は、修繕したパワード・ジム。
しかし、その黄色の機体は、原型から大幅に改造されていた。
「これが、「パワードジムカーディガン」………!私の新しい機体!」
コックピットから聞こえる未央の声も、興奮気味である。
特徴的なのは、背中に取り付けられた4本のサブアーム。
肩口から横に覗く2本には、ジムⅢから拝借したシールドがそれぞれ付けられており、武器を持ちながら防御をする事が可能となっている。
肩越しから上に覗く2本には、Gディフェンサーからロング・ライフルを応用した「大型ライフル」がそれぞれ取り付けられており、火力面も強化していた。
更に、ガンダムレオパルドから移植した腕部には、戦闘の際に壊れてしまったが、インナーアームガトリングの発想を活かした、実弾の「ガトリングガン」が付けられている。
脚部にはレオパルド特有の足の裏に付けられるローラーをヒントに更に発展させ、スラスターを増設する事で、重量による機動力低下を抑えていた。
この他、頭部の「バルカン砲」、携行式の「ビームマシンガン」、両肩に扱いやすく供えられた「ビームサーベル」の他、マニュピレーターからはダミーバルーンも移出可能である。
「今回は我ながら自信作っす!ジムだけれど、ジムを超えた戦闘力を披露出来るっすよ!!」
「うん!本当にありがとう、よっしー!これで、私もまた戦えるよ!」
「私や卯月に加えて未央も強化されたから、連携も練習しないとね!」
「はい!早速シミュレーターで練習してみましょう!」
コックピットから降りて来た未央に、沙紀は照れながらもパワードジムカーディガンのデータが入ったメモリーカードを渡す。
これをシミュレーターにインストールする事で、3人は訓練をする事が可能になるだろう。
嬉々として格納庫を後にする未央達を見送りながら、沙紀はネネからドリンクを受け取り飲み干す。
「上手くいってよかったですね。」
「本当っす。いやー、喜んでもらえて良かった。これで、未央ちゃんの問題も解決っすね。後は………。」
幸子、藍子、未央と搭乗機の問題を解決した中で、残り悩んでいる人物と言えば………。
「ヅダを壊された………肇ちゃんっすよね………。」
「まだ、愛称のいいモビルスーツは見つかっていないのですか?」
楓の問いに、沙紀は首を横に振る。
何でも、あれから藤原肇はシミュレーターで色々な機体を試してみたものの、どれもこれも相性が良く無かったらしい。
試しにネネが搭乗しているジーライン スタンダードアーマーを、高機動型に換装した「ジーライン ライトアーマー」と呼ばれるエース級の機体のデータも試してみたが、それでもダメだったというのだ。
「やっぱり、ヅダとの適性が異常に髙かった為か、他を受け付けないんすよ。」
「………ちょっとよく分からないんですけれど、そんなに肇さんはヅダに乗っていた時に輝いていたんですか?」
「そうだな………。ここにいるモビルスーツの内、肇が鹵獲したのが、ティエレン宇宙型とガルバルディβとジム・クゥエルとガザDとシグーアサルトと、壊れたけれどガンダムレオパルドと………。」
「多すぎでしょう!?何ですか、その鹵獲魔は!?」
新参者の幸子に、奈緒が指を折りながら数えていく。
実際、肇がいなければ、黒川千秋や柳瀬美由紀も無事では無かったのだから、色々な意味で救世主だ。
それだけ、肇とヅダのコンビは、このシンデレラガールズを結成するに当たり、多大な功績を収めてくれたと言える。
だからこそ、ヅダの損失と肇に合う機体が見つからないのは、痛すぎる損害なのだ。
「………まあ、壊れてしまった物にいつまでも執着していても、どうしようもならないっす。彼女には何か適当なモビルスーツで、しばらくは我慢してもらうっすよ。」
「その肇は今、何処に?」
「外の空気を吸って来るって言って、パイロットスーツを着たまま出て行ったっす。目立つから着替えた方がいいと言ったんだけれどね………。」
相当精神的に重症である肇の様子に、楓もなんとも言えない顔。
しかし、沙紀の言った「パイロットスーツ」という言葉をしばらく反芻すると、ふと何かを思い出したように幸子を見た。
「そうそう、幸子。貴女に渡したい物があります。」
「はい?」
幸子が首を傾げる中、楓は格納庫入口のケースの中から何かを取り出し、彼女に「着替える」ようにお願いした。
――――――――――――――――――――
その後、奈緒の助けを受けながら幸子が着替えて来たのは、そのパイロットスーツであった。
しかも、デザインはというと………。
「これは………!」
「ふふふ、どうですか?貴女の話を参考に、ソレスタルビーイング風のパイロットスーツを作ってみました。」
幸子の住んでいた世界線では、何処で撮られたのかは分からないが、ソレスタルビーイングのパイロットがコックピットから出て、対峙する機体に銃を突きつけるような映像媒体があった。
実は、それは前の戦闘で共闘する形になった、刹那・F・セイエイであるのだが………。
「これは凄いですよ!よくこんなものを作れましたね!」
「副長………ちひろさんは、こういう「レプリカ」を作るのが大得意なんだよ。一種の特技だな。」
奈緒が言うには、幸子の話を参考に千川ちひろがカラーだけ青から紫色にして、チョチョイのチョイと作り上げてしまったらしい。
どういうわけか、ちひろはこうした衣服の作成が異様に上手く、彼女の部屋に入った者曰く、何の目的に使うのかニッチな「コスプレ衣装」があったとか。
「そうなんですか………とにかく、これは感謝ですね!」
「色々な世界の人が集っていますからね。こういうパイロットスーツにはこだわりませんと。」
幸子の笑顔に、満足して良かったと楓も笑みを見せる。
しかし、そんな中で藍子だけが、目のハイライトを無くしていた。
「ど、どうしたんだ………藍子!?」
「いいな~、おっきいな~。」
その光を失った目は、幸子の胸部に注視している。
視線を感じ取った彼女は、思わず引いてしまう。
「ちょ!?何処見て言っているんですか!?身体検査ではボク、貴女と変わらないはずですよ!?」
「でも、まだ14歳だしな~。身長も小柄だしな~。成長の余地あるしな~。何より胴が細いし、いいな~いいな~。」
「もう………何を馬鹿言っているんですか!貴女だって、まだまだ育ちざかりでしょう!」
「………どうせ、私はドラム缶だもん。」
最終的にプイッと、拗ねた表情を魅せる藍子。
どうやら、過去にジェリド・メサに言われていた妬みの言葉を、相当根に持っているようであった。
「全く子供じゃあるまいし………ん、何ですかね、この音は………?」
溜息を付きそうになった幸子であったが、何やら回転する音が近づいてくるのを察知する。
奈緒も藍子も楓も、音に耳を澄ませる。
その「プロペラ」の音は、開かれたカタパルトデッキの方から、どんどん大きくなってくる。
「そ、外見て!?何かプロペラ機が、格納庫に突っ込んでくる!?」
「何ーーーーーッ!?」
「う、うわわわわわわ!?」
「総員避難をッ!!」
皆が逃げる中、プロペラ機は格納庫に突っ込んで来て、慌てて「ビームローター」を停止。
そのまま胴体着陸をして、点検用に張っていたネットへと突っ込んだ。
「………な、何とか最悪の事態だけは免れたみたいですね。」
「ネットを張っていなかったら壁に激突して、また爆発炎上だったっす………。」
そうなったら、ここにいた全員が無事では済まなかっただろう。
着艦して迎撃も出来ない中、本当にお騒がせなパイロットが無許可で突っ込んで来たと楓達は思ったが、そもそもこれだけの事をして無事かどうかも分からない。
急に心配になって、恐る恐る紫色のプロペラ機に接近していくが………。
「う、う~~~~~ん………痛たた………。おかしいな、急に操作がおかしくなっちゃったよ~………。」
『ッ!?』
何処かのんびりとした娘の声が聞こえて来たので、皆で思わず驚き引いてしまう。
ネネだけは何か思う所があるのか、プロペラ機を興味深げに見つめていたが、その理由はまだ分からない。
一方で娘は、マイペースに呟く。
「ハッチは………これで開ければいいのかな?」
「あ、ちょっと待っているっす!今開けるのを、手伝うっすから!」
下手な操作をして、これ以上暴走されると困ると思い、沙紀が慌ててプロペラ機のコックピットと思われる部分へと向かう。
そして、よいしょッ!………という声と共にハッチを開くと………。
「すみません、ありがとうございます。お陰で助かりました。」
飛行機乗りの衣服に身を包んだ茶髪のツインテールの娘が顔を出し、申し訳なさそうに挨拶をしてきた。
本田未央さんの新たなる機体、パワードジムカーディガンが本格登場です!
パワード・ジムを初期機体にした時点で、いつの日かチャンスを見てパワーアップさせたかったんですよね。
ビルドファイターズ系の機体になりますが、こういう機体もどんどん活用させたいです。
しかし、PHASE6の相原雪乃さんのR・ギャギャもそうですが、このビルドファイターズ系は、ギミックが面白い機体が多いですよね。
このようなモビルスーツをどんどん小説の中で活躍させられると、嬉しい気持ちになります。
後、地味に役に立ったのが、千川ちひろさんのコスプレ好き設定。
彼女ならば、実際でもパイロットスーツをチョチョイのチョイでしょうね。
そして、最後に現れた娘の正体………動画版を見た方は、分かると思います。