モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第81話 PHASE7-3『飛行機乗りの娘』

「ノックス」に停泊しているキャリー・ベースの格納庫では、艦のエンジン回路や各モビルスーツの修理が行われていた。

その中で、吉岡沙紀は本田未央の新たなモビルスーツ………パワードジムカーディガンの組み立てに成功する。

艦長の高垣楓は、高森藍子にAEUイナクトの操作が上手くいきそうな事と合わせて喜ぶが、未だに藤原肇の適性に合うモビルスーツが見つからない事に頭を悩ませた。

 

また、千川ちひろの特技によって作成した、レプリカのソレスタルビーイングのパイロットスーツを渡した事で、乗機を取られた輿水幸子の機嫌も良くなることに。

しかし、何やら物音がしたかと思ったら、何とプロペラ機がカタパルトから格納庫のネットに突っ込んで来た。

皆が仰天する中で、お騒がせな茶髪のツインテールの飛行機乗りの娘が申し訳なさそうに挨拶をするのであった。

 

 

 

「すみません、ありがとうございます。お陰で助かりました。」

 

何処かのほほんとした雰囲気を持った娘は、飛行機乗りの衣服に身を包んでいた。

楓達が茫然とする中で、沙紀の手を借りながら格納庫に降り立ち、ゴーグルを取って改めてペコリと頭を下げる。

印象としては、スタイルがかなり良さそうな感じであった為、ティターンズ時代に、ジェリド・メサにドラム缶と罵られていた高森藍子が、密かに気にしてしまっていた。

とりあえず、その視線は気付かないふりをしながら、楓がその娘に問う。

 

「貴女は一体………。」

「私、十時愛梨(とときあいり)って言います。この「ノックス」で、飛行機乗りとして暮らしているんです。」

 

娘………十時愛梨は、にこやかな笑顔を見せる。

只、体質なのか、夜なのに非常に暑そうにしていた。

その扇情的な姿は、異性だと鼻の下を長くするかもしれない。

楓はその様子も敢えて無視しながら、更に聞く。

 

「その飛行機乗りの貴女が、何故プロペラ機に乗って、ここに突っ込んで来たんですか?」

「じ、実は「マウンテンサイクル」で変わった機械人形を見つけて、その試運転をしていたんです。ところが飛行途中でコントロールがおかしくなっちゃって………ここに不時着してしまいました………。」

 

自分のしでかした危険性については十分分かっているのか、更にもう一度深々と頭を下げる愛梨。

幸子は愛梨の言葉を聞きながら、もう一度紫のプロペラ機に着目する。

 

「機械人形………って、モビルスーツの事ですか?その割には、普通の武装ヘリに見えるんですが………。」

「これは、ベスパの可変モビルスーツですよ。確か「トムリアット」だったはずです。」

 

答えたのは、さっきからプロペラ機………トムリアットに着目していた栗原ネネ。

リガ・ミリティアに所属している彼女だから、ベスパの機体に詳しく、注意深く確かめていたのだ。

 

「ネネさん………ベスパって事は、「軌道エレベーター」で戦ったゾロと同じ系列ということですか?」

「その上位機種だと思います。あの時の敵は、可変機構を使っていなかったので、分かりにくいですけれどね。」

 

何でもベスパのモビルスーツは、ビームローターという特殊なプロペラで飛行を行うらしい。

もしも、愛梨が胴体着陸を行う際に、そのスイッチを咄嗟に切っていなければ、ネットが切り裂かれて危うかったともネネは話した。

 

「それ、シャレにならないじゃないですか!?」

「ほ、本当にゴメンなさい………。」

「と、とにかく飛行に支障がきたしているのならば、そのビームローターに異常があるのではないでしょうか?」

 

場をなだめようとしたネネの言葉に、成程………と頷いていた沙紀が、スパナを取り出しながら、トムリアットへと向かう。

整備士見習いの、成宮由愛と古賀小春も一度プチモビから降りて一緒に調べ始めた。

 

「まあ、発掘品というなら有り得そうっすね。ちょっと調整してみるっすよ。」

「大丈夫ですか………?ベスパのモビルスーツは、まだ弄った事は無いですけれど………。」

「こういうチャレンジも、大事っす。由愛ちゃんと小春ちゃんは、エンジン回路をとにかく頼むっすよ。」

「分かりました~。では、小春達も作業に戻りますね~。」

 

そうして整備士3人は、さっさと役目を決めると再び持ち場に戻る。

ネネもドリンク等の差し入れを格納庫の端に置くと、知識が役に立つかもしれないと言って、沙紀の手伝いに入った。

 

「本当にすみません………。急に突っ込んで機材を散らかした挙句、修理までしてもらっちゃって………。」

「気にしないでほしいっす。色んなモビルスーツをチェックしているから、今更1体増えた所で、大したこと無いっすよ。」

 

ネネからビームローターに関する説明を受けながら、沙紀は笑顔で手を上げて応える。

メイン整備士としては、かなりの労力を必要としているだろうが、これだけ気丈に振る舞えるのは、メンタル面でかなり強いと言えた。

 

「何か色々と迷惑を掛けちゃっているなぁ………。」

「愛梨さんでしたっけ?ちょっといいですか?」

「は、はい………何ですか?」

 

格納庫を荒らした事への損害賠償を命じられるのかと思い、思わず身構えてしまう愛梨。

しかし、楓は大丈夫………と言いながら、彼女に質問をする。

 

「先程、「マウンテンサイクル」で発掘したと仰っていましたが、この機械人形の発掘は普段から活発なのですか?」

 

楓が気になったのは、機械人形………戦闘用のモビルスーツの発掘が行われている現状であった。

このような行動が活発であるのならば、何かしらの事情がこの街にはあるのでは無いか?………と彼女は睨んだのだ。

元パイロットとしての楓の直感に思う所があったのか、愛梨は非常に言いづらそうに説明を始める。

 

「えっと………元々、昔の遺産とかは色々と掘る事が多かったのですが………こうした機械人形の発掘作業が活発になったのは、ここ最近なんです。」

「最近………?何か理由が出来たのですか?」

「実は、月の人………「ムーンレィス」が、ここら一帯に入植を求めていまして、その対抗手段として………。」

 

愛梨の話によれば、そのムーンレィスの要求はかなり滅茶苦茶な物で、強引に地球上の広範囲の土地に入植を行おうとしているらしい。

その為「ノックス」では、掘り出した機械人形によって、軍備を整えているというのだ。

 

「つまり、着々と武装化が進んでいるわけですか………。もしかして、いつ戦争になっても、おかしくない状況なのでは?」

「正直に言うと………。「ノックス」の部隊、「ミリシャ」は、凄腕の飛行機乗りを用意しているんですが………。ハッキリ言って………、戦力差は歴然じゃないかなって………個人的には思っているんです。」

 

ここで楓は、愛梨の言い方に違和感を覚える。

今までの話を聞く限り、愛梨は「ミリシャ」の一員であるはずだ。

しかし、最初から自分達に勝ち目は無いと思っている。

それが悲観的であるならばまだしも、彼女の言い方は何処か客観的に物事を見つめているように思えた。

 

「そうですか………。いえ、すみません。だとしたら、私達もいつまでもここにいるわけにはいかないと思いまして………。」

 

とりあえず、愛梨の事情にはあまり踏み込まないようにしながらも、楓はシンデレラガールズの今後の行動指針について考える。

下手に起こりうる戦争に関わってしまえば、今後の戦いに支障が出てしまう。

こうして街の世話になっておきながら、薄情者であると言われれば否定できないだろう。

しかし、自分達の存在がムーンレィスを刺激する可能性もある為、修理が完了次第、さっさと出立した方がいいと思えたのだ。

実際、愛梨もこの考えを押してくれる。

 

「それがいいと思います。本当は私も、こっちでこんな事をしている場合じゃ無いんだけれどな………。」

「え?」

「あ、いえ………何でもありません。………こっちの話です。」

 

誤魔化し笑いを浮かべる愛梨を見て、楓は1つの懸念を抱く。

とはいえ確証が無い事もあり、下手に問いただせなかった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

その頃、藤原肇はパイロットスーツを着たまま、「ボストニア城」から離れたさびれた公演のベンチで座り込んでいた。

目立つ格好ではあったが、幸い夜である今は、街の人々は祭りが活発である城の近くに移動しており、公園には人の気配が無かった。

その夜風に当たりながら、彼女は過去を思い出す。

 

 

 

 

今より少し前、まだシンデレラガールズに入る前。

木星の近くに停泊しているとある母艦の中で、モビルスーツ選別の為のシミュレーターを終えた後であった。

 

「何じゃと!?「ゾンド・ゲー」が体に合わんじゃと!?」

 

そう驚いた声を上げる老人は、ウモン・サモン。

彼こそが、10年前に肇を救ってくれた「おじいちゃん」であり、彼女の師の1人でもあった。

 

「うん。ゾンド・ゲーは扱いやすい機体だと思うんだけれど、何か癖が無さ過ぎて………。」

「ええい!このじゃじゃ馬娘め!何で性格は清楚極まりないのに、モビルスーツは玄人向けしか受け付けないんじゃ!」

「それ、私に言われても困るな………。」

 

肇の率直な物言いに、ウモンは思わず頭を抱える。

どういうわけか、彼女は一癖も二癖も扱いが難しい機体の方が、性に合うのだ。

元々天性のインファイターである為に、射撃武装を全く活かせないのも、玄人向けの適性に追い打ちをかけていた。

しかし、機体が無いのならば仕方がない………と肇は思い、意を決した表情で言う。

 

「こうなったら、多少腕が悪くても、ゾンド・ゲーで………。」

「ダメじゃ、ダメじゃ!100%の力を出せないと分かっていて、モビルスーツに乗せられるかい!」

 

だが、ウモンはそれを認めず、肇に他にシミュレーターで高得点を出せた機体が無かったか聞く。

彼は整備士としての実力もある為、多少の無理なら押し通す事が出来た。

 

「えっと………。」

 

肇はおずおずとシミュレーターでの結果を記したタブレットを取り出すと、ある機体を映し出す。

そこに出てきたのは、ボールであった。

しかし、只のボールでは無い。

顔がガンダムになっている、明らかにバランスの悪そうなボール。

 

「「Bガンダム」………?」

「うん、実はおじいちゃんが魔改造したこのボールが、一番戦績良かったんだよね………。」

「アレか!?自分で言うのもなんじゃが、あんなボールでどうやってスコアを稼いだんじゃ!?」

「え?ほら………バランス悪いから、逆に思い切ってゼロ距離まで突っ込めるでしょ?ゼロ距離なら「180mm低反動キャノン」を思う存分当てられるし、破壊したモビルスーツのパーツや近くの「岩塊」を振り回して………。」

「……………。」

 

あまりの肇の戦い方に、ウモンは絶句。

とはいえ彼女にとって、近づく事が戦う上で必須であるのが嫌という程分かったので、彼は質問を変えてみる。

 

「………なら聞くが、ケンプファーはどうじゃった?アレもシミュレーターには入ってたじゃろ?」

 

根っからのインファイターであるのならば、癖の強い高機動型の機体とはかなり相性がいいのかもしれない。

そう思ったウモンは、ケンプファーの成果を聞いてみる。

肇は、少し笑みを浮かべながら返答した。

 

「あ、ケンプファー。あれも、凄く使いやすかったよ。スコアでは2番目に良かったし。でも、新生「クロスボーン・バンガード」に、そんな古いモビルスーツは置いてないよね。あったとしても保存状態が………。」

「フッフッフッフッフ………!」

「お、おじいちゃん!?」

 

急に不気味な笑い声を発するウモンに、肇は思わず引く。

彼は自信を持って自身のタブレットを弄ると、とある機体を映し出した。

青いモノアイの機体の正体は………。

 

「どうやら儂の秘蔵のコレクションの1つ、ヅダの出番が来たようじゃな!!」

「づ、ヅダ………?」

「一年戦争時代のジオンの名機の1つじゃ。コンセプトはケンプファーとよく似ておる。あの後、ちょっとしたことで1体手に入れてな。ずっとお蔵入りになってたんじゃよ。」

 

自信満々に呟くウモンの姿に、肇は思わず顔をしかめる。

聞く感じだと、ヅダもケンプファーと同じく、古いモビルスーツである感じだが………?

その質問に、ウモンは笑みを崩さず答えた。

 

「勿論、普通なら使えん。元々、自身の加速力で空中分解するような不良品じゃったからな。」

「余計、ダメなんじゃ………。」

「じゃが、この間の戦いで「火星ジオン軍」と戦った際に、RF(リファイン)シリーズのデータを手に入れた。」

 

ウモンは肇に、火星ジオン軍について簡潔に説明を行う。

「オールズモビル」と呼ばれるジオン復興を目論む者達は、「RFザク」等、過去のジオンの機体に似せたモビルスーツを開発している組織だ。

それだけ過去の栄光に縛られていると言われればそれまでだが、今の技術で過去の機体を再現できるノウハウには、着目するべきところがある。

もしも、ヅダにも活かせたら、確実に強化されるだろう。

 

「名付けて「RFヅダ」じゃな!これなら、戦闘で使えるレベルにまでヅダを復元させる事ができるわい!」

「そ、そんなとんでもない機体………私が乗りこなせるのかな?」

 

ウモンの自信満々の言葉に、流石に不安を抱く肇。

聞いた事も無い機体を、いきなり操る事になるのだ。

不安が出ない方がおかしい。

しかし、年を取って「孫娘」より背が低くなってしまったウモンは、背を伸ばし、頭をポンと叩き安心させるように宣言する。

 

「そこは心配いらん。何故なら、儂のニュータイプとしての直感が、ティンと来ているからな!お前さんは100%、強力なヅダ乗りになれるじゃろうて!儂が保障するわい!!」

「お、おじいちゃん………。」

 

頭を撫でられながら赤面する肇。

ウモンは撫でるのを止めると、腕を組んで最終確認をする。

 

「なんじゃい?嫌だっていうなら別のを探すぞ?ヅダが脆いのは、変わらんじゃろうしな。」

「ううん………ありがとう!」

 

「祖父」が背中を押してくれた事で、年相応の満面の笑みを浮かべる肇。

そして、彼女は自信に満ち溢れる顔に変わると、一流のヅダ乗りを目指す事になった。

 

結果的に、彼女と「祖父」直伝のRFヅダの活躍は、シンデレラガールズの戦力になる。

しかし、そのRFヅダはもう………。

 

 

 

 

「結局………私、おじいちゃんから貰った物、「また」壊しちゃった………。」

 

過去を回想していた肇は、公演のベンチの上で、ポケットから小さな包みを取り出す。

慎重に開くと、そこには赤黒い破片が幾つも置いてあった。

 

「「あの時」と同じだ………。私、何にも守れていない………。守りたいと思っても、力が足りない。壊されたく無いのに、壊れてばかり………。」

 

肇は目を伏せると、唇を噛む。

思い出すのは、10年前の忘れられない出来事。

 

「力が欲しいのに………。目の前で起こる惨事を防ぐだけの力が、私にあれば………。」

 

「………シンデレラガールズの、藤原肇だな。」

 

「誰ッ!?」

 

肇は思わず立ち上がって、身構える。

拳銃は一応取り出したが、射撃の腕が壊滅的であるので当たるわけがない。

そもそも、感傷に浸っていたとはいえ、周囲への注意を怠っていたわけでは無かった。

だが、その「男」は、いつの間にか肇の目の前にいたのだ。

 

「俺の名前は、叢雲劾(むらくもがい)………傭兵だ。ロウ・ギュールの依頼で、ここにやって来た。」

 

「ロウさんの………依頼で?」

 

その男………叢雲劾は、サングラスが特徴的であった。

肇が拳銃を向けているのに、全く怯む様子が無い。

まるで、撃っても回避できるという自信があるみたいに。

 

とりあえず、共闘したロウの名前が出て来た事で、肇は銃を下ろす。

劾は彼女の目を見ながら、こう告げた。

 

「目的を簡潔に言おう。お前のガンダムを持って来た。」

「!?」

 

ガンダムという言葉に、肇が驚愕した瞬間であった。

 

 

ドゴォオオオオオオンッ!!

 

 

お祭りムードの街に、突如響き渡る爆音。

歓声が悲鳴へと置き換わる中、藤原肇は迫る戦いの気配を感じた。




ここで、初代様登場(NARUTOの火影風)!

十時愛梨さんは動画版でも活躍していたので、馴染みの深い方も多いはずです。
彼女の飛行機乗りの服装は、どんな姿か少し気になりますよね。
やっぱり暑がりだから、胸元をはだけさせているのでしょうか?

そして、貴重な藤原肇さんの回想シーン。
実はRFヅダであったのですが、動画版では大いに驚かれました。
ジークアクスで出たシャア専用ヅダといい、ヅダは話題に事欠かないですよね。

さて…ここでウモン爺さんに加え、叢雲劾さんも登場しました。
どんどん、ガンダムメンバーとの交流も広まっていきますが…、ここで爆音。
果たして、何が起こったのでしょうか?
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