モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第82話 PHASE7-4『侵攻』

格納庫にプロペラ機で突っ込んで来た飛行機乗りの娘は、「ミリシャ」の十時愛梨であった。

プロペラ機はベスパのトムリアットであり、「マウンテンサイクル」から発掘した機械人形を試運転していたらしい。

話を聞いた吉岡沙紀は、ついでにトムリアットの整備も行ってくれることに。

 

感謝と申し訳なさを抱く愛梨に対し、高垣楓は機械人形………モビルスーツの発掘は普段から活発であるのか質問してみる。

愛梨は言いにくそうにしながらも、月の人であるムーンレィスが入植を無理に求めてきている為、最近になって軍備が進んでいると説明。

双方を刺激しないように、早めに出発を心掛けた方がいいと思う楓であるが、愛梨の振る舞い方に、ある懸念を抱くのだった。

 

一方、藤原肇はキャリー・ベースを停泊させて貰っている「ボストニア城」から離れた公園で、過去を回想していた。

新生クロスボーン・バンガードで、「祖父」と親しんだウモン・サモンから、搭乗機を選んで貰う話。

色々と言葉を交わした結果、火星ジオン軍の技術を盛り込んだ、RFヅダを愛機として提供して貰い、太鼓判を押して貰ったのだ。

しかし、そのヅダを失った今、肇は自分の力の無さに苦悩する。

 

ところが、そんな肇の前に、傭兵である叢雲劾が現れる。

彼は肇の為のガンダムを持って来たと言うが………。

 

その時、街に爆音が響き渡り、住人達の悲鳴がこだました。

 

 

 

時間は少し前にさかのぼる。

「ボストニア城」の上で花火が打ち上げられ、ヒップベビーを先頭に、ブルワンの集団が周辺を旋回していた。

その様子を城の窓から満足げに眺めながら、シンデレラガールズの駐留を認めたグエン・サード・ラインフォードが感嘆の声を漏らす。

 

「実に堂々たるものじゃないか。我らのミリシャ部隊は。」

「戦闘機も必要なんでしょうかね?」

 

ミリシャの司令官であるミハエル・ゲルンが、グエンの方針に疑問を持つ。

グエンは他の地域の領主と違い、月の民………ムーンレィスと交渉を行おうとする穏健派の立場である。

こうして護身のために空軍を組織してはいるものの、基本は牽制目的であり、派手なパレードを開いているのもその為。

しかし、その方針はミハエルを始め、内部の人間からも一部疑問視されている。

只、本人は根っからの政治家である為、そうした声も理解はしている立場だ。

 

「ミスター・クンは、天才的な飛行機家だ。新型の速い機体で部隊の編成をさせている。何があっても問題はないさ。」

「本当に戦争が始まるのですか?」

 

そう聞いてきたのは、キエル・ハイム。

鉱山業を営むハイム家の長女であるのだが、こうして今回、城へと招かれていた。

彼女の問いに、グエンは丁寧に説明し、質問に答えていく。

 

「ムーンレィスが届けてくれた無線機で交渉は続けてはいます。」

「月に住む人………と言う意味の種族がいるんですか?」

「そう騙る連中が入植したいというので、ミリシャを増強したのです。」

「そんなに大勢の人が押し寄せるので?」

 

ここで、グエンが若干困ったような顔をする。

キエルは良くない話になりそうだと思いながら、話を聞く。

 

「「イングレッサ」だけではありません。「北アメリア大陸」の「サンベルト地帯」をよこせと言うのです。この2年間、無線機を通じての交渉で、それを言い続けている。それが、月に住んでいる宇宙人の要求なのです。」

「月に住む宇宙人………。そのようなご苦労をなさっておいでだったのですか………。」

 

ずっと一方的な横暴とも呼べる交渉という名の宣告を受け続け、それでも穏健派としての立場を崩さないでいる。

そんなグエルの心労を理解して、キエルは思わず溜息をつきそうになってしまう。

しかし、その時であった。

 

 

ガーーーーービビビッ!!

 

 

「どうした!?」

「異常な周波数ですッ!!」

「どこだ!ミリシャの報告はッ!?」

「ハッ、各所へ照会中!」

 

グエンとミハエルを始め、皆が慌ただしく動く中、キエルは窓の外を見て驚愕する。

暗闇の中、こちらに向かってくる、「カカシ」のような巨大な機械人形の姿を………。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

巨大な足を持った、モビルスーツにしては大きすぎる外観の機体………「ウォドム」が3機、それぞれ3つの大通りを通りながら、南側から「ボストニア城」に向かって進んでいた。

それぞれの大通りには、「ウァッド」と呼ばれる対人用のモビルスーツも5機ずつ計15機並んでいる。

どう見ても侵攻と言える、その月の民………ムーンレィスの軍勢、「ディアナ・カウンター」を率いるポゥ・エイジは、不機嫌そうに唇を噛む。

 

「地球人は正気なのか!?こんな羽トンボを並べて、何て不愉快な連中だ!」

 

どう見ても、地球人に対する嫌悪感と差別感情に凝り固まっている女性は、自分の立場を分かっていない。

こう言ったら何だが、自分達が正義だと信じて疑っていないのだ。

 

「各機、「ノックス」制圧へ!!自分はこの場の警戒にあたる!」

「しかし!ミリシャがいます!!」

 

左のウォドムに搭乗するディアナ・カウンター兵が、戸惑ったようにポゥに告げる。

実際、危機を察知したのか、パレードを行っていたヒップベビーやブルワンが、迎撃を行おうとこちらに向かってくる。

だが、ポゥは苛立ちを隠そうとせずに、ハッキリと告げる。

 

「ミリシャの戦力など相手にならない!!全く話が違うんだよ!地球人は温和で抵抗なんてしない………玩具みたいな戦闘機で………本気やってんだぞ!!」

 

もはや、無茶苦茶な持論を展開しながら、ポゥはウォドムの頭部カバーを開ける。

そこに現れたのは、巨大な砲門。

彼女は、向かってくる戦闘機相手に、何と「対艦用ビーム砲」をぶっ放したのだ。

夜空に極太のビームの光が開き、あっという間に戦闘機の群れは蒸発してしまう。

更に、彼女は「小型ミサイル発射装置」の発射口も展開し、ボストニア城に向かって発射。

城には届かず、その前を横切る大通りに着弾するが、結果的に道が破壊されていき、パレードを楽しんでいた民衆の悲鳴が聞こえる。

やっている事は明らかに侵略と殺戮であるのだが、差別感情に凝り固まっているポゥは、理解する事が出来ない。

 

その時………人々が逃げ惑う中を、ヒゲが特徴的なモビルスーツが、物騒な鎖に繋がれた棘付き鉄球………「ガンダムハンマー」を手に握りながら駆け抜けてくる。

中央の大通りまで走ってくると、パイロット………ロラン・セアックは、乗機………「∀ガンダム」のマイクでポゥに向かって叫ぶ。

 

「止めて下さい!地球は………地球は戦争する所じゃないでしょう!!」

 

暴虐を止めようとガンダムハンマーを置き、腕を広げて訴えるロラン。

しかし、疑心暗鬼に固まっているポゥにとっては、逆効果でしかない。

 

「いた!?本物のモビルスーツがいた!?前もってレーダーでチェックしただろう!?地球にはいないって話だった!!」

 

そのままウォドムの対艦用ビーム砲を、もう一度発射する。

ロランは素早くハンマーを拾い、後方に飛びずさる事でビームを回避するが、地面が抉れて破片が周りに飛び散り、また被害が出てしまう。

相当不味い状況だと思いながらも、ロランは敵勢力を理解しようとする。

「アレは長距離用のビームだ。艦隊戦レベルの………!ディアナ・カウンターでの訓練で見た事がある………。空気があるからメガ粒子砲といったって………!」

 

とにかく直撃を貰ったら危ないので、ロランは「ボストニア城」の前まで下がる。

しかし、この行動もポゥの神経を逆なでする事になった。

 

「後退する!?私を誘い出して一気に叩くつもりか!?野蛮な!やはり地球人は野蛮としか言いようがない!!旧式の火器で戦いを挑むのが、地球の文明レベルだ!しかし、アレはどう見てもモビルスーツだ………!しかも、新しい物に見える!」

 

「本当に止めて下さい!僕は戦うつもりはないんです!!」

 

「戦うつもりのないヤツが、モビルスーツを持ち出すわけがないだろう!?そのモビルスーツがミリシャの物なら、鹵獲する!」

 

ロランは何とかポゥの暴走を止めようとするが、それで収まれば苦労はしない。

完全に自軍の戦力に増長してしまっている彼女は、ロランの言葉に全く耳を貸してくれなかった。

流石に、このように滅茶苦茶な持論を押し通そうとしていると、ロラン自身も苛立ちが募ってしまう。

遂には、言葉ではダメだと悟り、ガンダムハンマーを構える。

 

「そんなことを言うのなら、本気で攻撃しますよ!」

 

「野蛮人が!!ふざけるんじゃないッ!!各機、「ノックス」制圧へ!あのヒゲのモビルスーツは鹵獲しろ!!」

 

ポゥの凝り固まった差別感情は、部隊にも浸透しているらしく、部下達がウォドムやウァッドに乗って、ゆっくりと前進し始めた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ロランとポゥが口論になっている頃、「ボストニア城」の西側に停泊しているキャリー・ベースは、大変な状況になっていた。

逃げ惑う民衆が避難先を求め、沢山集って来ていたのだ。

エンジン回路の調子が回復していない為、飛行が出来ないうえに、カタパルトにも人々が集ってきているので、すぐにはモビルスーツの発進が出来ない。

本来の役目を果たせない千川ちひろや姫川友紀、小日向美穂が、必死になって避難誘導を行っていた。

そんな中、1人ブリッジへと来た楓は、格納庫にいる沙紀と通信機で話を行う。

 

「ヤバイっすよ!?避難民が沢山集まっているから、モビルスーツを出すのも一苦労っす!」

 

誤って踏みつぶしたら話にならない為、細心の注意を払って移動しなければならない。

しかし、パニックになった民衆をすぐに落ち着かせるのは難しい為、中々誘導が上手くいかないのが現状だ。

このままでは、出撃前に敵侵攻部隊に制圧されてしまう。

 

「ロラン君!?もしかして、ロラン君なの!?」

 

そんな中、外のマイクの声を聞きつけ、愛梨がトムリアットのコックピットで専用の通信チャンネルを開き、何と∀ガンダムのパイロットと通信を行い始めた。

この行動に楓は驚きながらも、即座に彼女にお願いをして、自身もロランと会話が出来る状態にして貰う。

一方、ロランは愛梨に対し、切羽詰まった表情で状況を説明し始めた。

 

「愛梨、大変な事になりました!「ディアナ・カウンター」が痺れを切らして、砲撃を開始してきています!メガ粒子砲で、戦闘機が蹂躙されている!」

「そんな!?アレはウォドムだよ!対艦攻撃用の巨大モビルスーツで暴れるなんて!このままだと街が滅茶苦茶になっちゃう!」

 

この愛梨の言葉から、楓の抱いていた懸念は確信に変わるが、今重要なのは彼女の正体では無い。

どうやって、敵勢力を追い返すかであった。

尚も、ロランと愛梨の会話は続く。

 

「愛梨、貴女は街の人達を避難させて下さい!僕は、あのモビルスーツを何とか引かせます!」

「そ、そんな!?1人で無茶だよ!私も戦う!ゴメンなさい、沙紀さん!トムリアット出ます!」

「ちょ!?何、バカいってるんすか!?整備は終わったけれど、この状態ですぐに出撃は無理っす!!」

 

沙紀の言う通り、今もキャリー・ベースには様々な方角から民衆が押し寄せてきている。

やはりカタパルトにも人々がいる為、モビルスーツを出撃させるだけでも難しい。

 

「でも、このままじゃ………!」

「少し落ち着きなさい、愛梨!」

「!?」

 

パニックになり掛けている愛梨を呼び捨てにして叱りつける事で、楓は落ち着かせる。

冷静にならなければ、この状況を乗り切る事も出来はしないだろう。

 

「ロランさんと言いましたね。私は、シンデレラガールズの高垣楓です。今、避難民を誘導して、モビルスーツを発艦させますので、それまで耐える事は可能ですか?」

「やってみますが………って、協力してくれるのですか!?」

「私達も囲まれている以上は、運命共同体。今回に限り、貴方達の手助けをします。パイロットは各機避難民に気を付けながら出撃を………!」

「ちょっと待った、艦長!まだ肇チャンが戻って来ていない!」

 

喜多見柚の言葉に、楓は頭を抱える。

余程遠くまで散歩に行ったのだろう。

今頃は避難する民衆の集団に阻まれ、身動きが取れなくなっているのだと思われた。

 

「仕方ありません。今回の作戦は、彼女抜きで………。」

 

「待って下さい、艦長!」

 

その時、シンデレラガールズの無線で割り込む声が聞こえる。

見知った声にまさかと思い、楓が通信画面を開くと、そこには謎のモビルスーツに搭乗した肇の姿が。

何故か、席に後ろには、サングラスの男がサブシートを開いて乗っていた。

 

「すみません、艦長。帰還が間に合わなくて。」

「ちょ、待て………肇!?その機体、何だ!?何に乗っている!?」

 

神谷奈緒が驚いた声を上げたので、肇はコックピットでタブレットを弄り、自機のデータを送る。

そこに映し出された姿は………。

 

「この機体ですか?実は、ロウさんの依頼で、配達員の劾さんが持って来てくれたガンダムなんです。」

 

『が、ガンダムーーーーーーッ!?』

 

肇の衝撃的な言葉に、シンデレラガールズ全員が素っ頓狂な声を上げた。




何ていうか、ここでシロッコがいたら、「落ちろ、カトンボ!」とか言いそうですね。
それだけ、オーバーキルな真似を、ポゥはやらかしています。

混乱が深まる中、少しずつ正体が怪しくなってきた十時愛梨さんですが、果たして?

最後に登場した藤原肇さんの新しい「ガンダム」。
次回、動画版では皆様お楽しみだった「あの話」です!
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