モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第83話 PHASE7-5『刀のガンダム』

「ノックス」に攻撃を行ったのは、ムーンレィスであるポゥ・エイジ率いるディアナ・カウンターの軍勢であった。

戦闘機の群れをウォドムの対艦用ビーム砲で蹴散らす危険行為を行う中、現れたのはロラン・セアックが駆る∀ガンダム。

ロランは侵攻を行うポゥ達に戦いを止めるように訴えるが、疑心暗鬼に陥った彼女には逆効果でしか無く、力で追い返すしか無くなってしまう。

 

一方、「ボストニア城」の西側に停泊していたキャリー・ベースには、パニックになった避難民が集結しており、モビルスーツの発進も一苦労な状態であった。

艦長の高垣楓はどうしようか考えるが、飛行機乗りの十時愛梨がロランと専用のチャンネルで通信を行い始める。

その中で、彼女がウォドムの事を知っていた事から、楓はとある確信を持つ。

只、あまりに焦って状況が見えなくなっている愛梨を見て、楓は彼女を叱って落ち着かせ、ロランに足止めと共闘をお願いする。

 

そんな中、藤原肇だけが帰還出来ていなかったのだが、いきなり通信が開かれたと思ったら、彼女は謎のモビルスーツに男………叢雲劾と共に乗っていた。

神谷奈緒が怪訝な顔をする中、この機体はロウ・ギュールの依頼で劾に届けて貰った「ガンダム」だと彼女は話す。

 

果たしてそのガンダムの正体とは………?

 

 

丁度「ボストニア城」を挟んで東側の大通りに、その機体は立っていた。

白を基調とした二足歩行の機体の顔には、ツインアイにアンテナが備わっており、誰が見てもガンダムと言える姿である。

 

「この機体ですか?実は、ロウさんの依頼で、配達員の劾さんが持って来てくれたガンダムなんです。」

 

『が、ガンダムーーーーーーッ!?』

 

しかし、「ボストニア城」で丁度キャリー・ベースから隠れてしまっている故に、今のシンデレラガールズの面々にはその姿は見えない。

それ故に、肇の言葉に驚く一同であったが、中でも彼と親しい島村卯月、渋谷凛、本田未央は目を見開いていた。

そんな驚愕ぶりを代表して、卯月が思わず叫んでしまう。

 

「ロウさん、本当に作ったの!?」

 

確かに、「ヘリオポリス」で別れた際、ロウは「ガンダム」を用意してやると言っていたが、それが実現するとは誰も思っていなかったのだ。

このいきなりの増援には、楓も流石に目を白黒させてしまう。

しかし、「配達員」と言われた劾は、少し憮然とした顔でサングラスを持ちながら告げる。

 

「俺は配達員ではなくて、傭兵なんだがな。それに、この機体も正確にはガンダムでは無く、ガンダム「もどき」だ。RGM-79FC「ストライカー・カスタム」。ジム・ストライカーという機体を媒体に、ロウの奴が魔改造した物らしいからな。」

「ジム………ストライカーですか!?」

 

ここで疑問の声を上げたのは、高槻やよい。

以前彼女は、シミュレーターの訓練でジム・ストライカーを使った事がある。

あの時は工藤忍の操るズゴックEに完敗を喫したが、その経験が初陣に生きた。

記憶が正しければ、ジム・ストライカーは近接戦闘に特化した機体ではあるが、ここで凛が嫌な予感を覚えて劾に問う。

 

「魔改造!?ちょっと待って!ロウさんの改造品、真面な物が無かった気がするんだけれど!?その機体、ライフルとかの遠距離武装って備えている!?」

「備えていない。コイツが出来るのは、インファイトだけだ。」

「ええ!?」

 

素直に答える劾の言葉を受け、怪訝な顔をした肇は、急いで機体の武装を確認してみる。

 

連結可能なナックル・ガードの付いた「ビーム・サーベル」が2基。

腕部に装着するトンファー状のビーム刃を発する「ナックル・ダガー」が2基。

放電兵器を敵機にぶつける「スパーク・ナックル」。

吸着爆弾を敵機に叩きつける「バースト・ナックル」。

後は、近接時の牽制武装である「60mmバルカン砲」があるだけ。

他に調べたら、何やら「妖刀システム」という、いかにも怪しいシステムが付けられていた。

 

確かにインファイトしか出来ないし、その上、癖の強い兵装が備えられているとも言える。

 

「こ、これは………流石に酷すぎませんか!?」

「只、ロウは言っていた。この機体は「藤原肇」の為に作ったと。お前ならば、この「ガンダム」の力を最大限に引き出す事が出来ると。」

「え?ロウさんが………そんな事を!?」

 

思わず引いてしまった肇であったが、劾の言葉に改めて武装を確認してみる。

冷静に考えれば、肇自身は射撃の腕が壊滅的だ。

だからこそロウは、最初からライフルなどを用意しなかったとも言える。

逆に格闘戦のスキルはシンデレラガールズの中ではぶっちぎりの能力である故に、そこを徹底的に強化したとも考えられるだろう。

 

そうしている内に、東側の大通りを北上してくるウァッド5機が遠目に映った。

 

「どうする?このまま敵に殺されるのは、俺も納得いかない。お前が扱える自信が無いというのならば、俺が操縦を変わるが?」

 

こんな状況でも、劾は只、冷静に最終確認を行った。

それだけ傭兵としては、歴戦の猛者であるのだろう。

最初は配達員と誤認してしまった肇も、その雰囲気を感じ取り彼に聞いた。

 

「………劾さんは、ここまで運んできたんですよね。乗ってみてどうでしたか?このガンダム。」

「相当ピーキーな「じゃじゃ馬」だな。今すぐに操作系統を調整し直したいくらいだ。こんな玄人向けを乗りこなせる馬鹿の顔が見てみたいものだな。」

 

これでも冷静であったが、言葉には煽りがあった。

恐らく、肇の特徴もロウから聞いているのだろう。

焚き付けとも言える言葉を受け………肇は笑みを浮かべた。

 

「ふふふふ………そうですか。では、その馬鹿の姿を、魅せなければなりませんね。」

 

劾が玄人向けと言うのならば、相当な機体なのだろう。

そして、肇にはそういう「じゃじゃ馬」こそが、しっくり来た。

 

目つきが変わり、自信に満ち溢れた不敵な笑みを見せられた劾は、ほう………と目を細める。

 

「肇!?出来るのですか!?」

 

一方で艦長の楓は、新機体でいきなり戦おうとする肇に驚愕する。

何せ、シミュレーションすらやっていない状態での、ぶっつけ本番での戦闘なのだ。

普通に考えたら、無謀に近い。

だが、キャリー・ベースに避難民が集う関係で、モビルスーツ隊の出撃が間に合っていない事を肇も把握していた。

故に、彼女は宣言する。

 

「出来るとか出来ないとかの問題ではありません………。やるんです!!」

 

そして、ペダルを踏みしめ、両手でレバーを握ると叫ぶ。

 

「不肖藤原肇、ストライカー・カスタム………参ります!!」

 

藤原肇はそう叫ぶと、ナックル・ダガーを二刀流で握り、バーニアを全開にしてウァッド達へと突っ込んで行った。

 

 

 

 

「まずは一撃!」

 

肇は地を走りながら、小型のウァッド5機を見据える。

しかし、敵機は当然ながら近づけない為に、携行式の「アサルトライフル」や両腕の装備された「ロケット弾発射砲」を放ってくる。

流石にいきなり直撃を貰いたくは無かったので、肇は跳躍して敵陣に飛び込もうとした。

しかし………。

 

「………ッ!?」

 

軽く片足で跳びあがっただけなのに、その飛距離はこれまでのどのモビルスーツよりも高く、ウァッド達を軽々と飛び越し、縦に1回転してストンと着地してしまう。

 

「が、劾さん………!この機体………!」

「どうした!?」

「か、軽いんです!」

「何!?」

 

劾は怪訝な顔をして肇を覗き込み、僅かに目を見開く。

彼女はこのような状況なのに、笑顔を見せていた。

まるで、今までのモヤモヤが吹き飛んだかのように、スッキリした顔で。

 

「このガンダム………!」

 

次の瞬間、劾は表情には出さなかったが、更に驚愕する事になる。

ウァッド達が慌てて振り向く前に、肇のストライカー・カスタムが動いたのだ。

素早く反転すると地を蹴り、ウァッド達の輪に突撃していく。

 

ある機体は、ナックル・ダガーで素早く左右の腕を斬り落とした。

ある機体は、蹴りを当ててアサルトライフルを破壊して武装を奪った。

ある機体は、足をナックル・ダガーで薙ぎ払われ、転がる事になった。

ある機体は、飛び膝蹴りを顎に当たる部分に当てられ、蹴り飛ばされた。

ある機体は、「ジョイントバスター」と呼ばれる格闘武装を当てようとして来たが、簡単に回避して逆にダルマにした。

 

「手が、腕が、肘が、腿が、拳が、足が………、まるで自分の体の一部のように………、自分の体そのものみたいに動くんです!」

 

対人用モビルスーツとはいえ、5機をあっという間に瞬殺した。

いや、厳密には瞬殺では無い。

パイロットは全員、殺していないからだ。

彼らはその早業に戦意喪失して、我先にと機体を捨てて大通りを南に逃げていく。

 

無論、このストライカー・カスタムの動きを見て、ポゥ率いるディアナ・カウンターの面々が黙っているわけがない。

中央と西の大通りを北上していたウァッド計10機が、キャリー・ベースや∀ガンダムを無視して「ボストニア城」前の大通りを東に走りながらストライカー・カスタムへと向かう。

だが、今の肇にとってみれば、敵の数が倍になった所で関係無かった。

ジグザグに動いて相手の攻撃を躱しながら、次々とウァッドを戦闘不能にしていく肇とストライカー・カスタム。

その活躍を「特等席」で見ながら、劾は補足説明をしていく。

 

「これは、ロウが言っていた事だが………。」

 

元々このストライカー・カスタムには、一年戦争時代の近接戦闘術のノウハウを、とにかく贅沢に盛り込んである。

「チェーン・マイン」や「ヒート・ロッド」などのジオンの技術を流用した各種ナックル系の武具。

更に、素体のジム・ストライカーから流用した物理攻撃を軽減するウェラブル・アーマー。

射撃武装をオミットした分、インファイトとでの攻防は最大限こなせるようにしたらしい。

 

「正直、一部のエース以外には、真面に使いこなせない機体ではあるが………、お前はその一部に該当したとアイツは睨んだのだろうな。」

「成程………いける、いけます!このストライカー・カスタムと一緒なら!!」

 

慢心では無く、実際に使いこなしたうえで、肇は手ごたえを感じた。

気付けば、いつの間にか15機もいたウァッドは、肇の前に全員無力化されており、ディアナ・カウンターのパイロット達は、全員が逃亡。

肇とストライカー・カスタムは、「ボストニア城」の前………ポゥによって破壊された大通りの交差点で佇みながら、南側の大将機を見る。

別に、モビルスーツに備えられた緑のツインアイで睨みつけたわけではない。

しかし、その強者としての眼光は、間違いなくポゥを含めたウォドム3機を怯ませるのには十分であった。

 

「し、集結しろ!!」

 

「………平和を乱す破壊者となったのです。覚悟は出来ていますよね?」

 

「ヒィッ!?」

 

敢えてマイクで告げる事によって、ポゥの恐怖心を煽る肇。

ところが、ここで劾が1つ肇に話を持ちかけて来た。

 

「そういえば、もう1つ伝えなければならない事があった。」

「え?何ですか?」

「コイツの輸送料金は、モビルスーツの「現物支払い」で払って欲しい。」

 

要は帰りの機体を用意してくれって事である。

一応、性能を問わなければ、余っているモビルスーツはキャリー・ベース内にはある。

だが、肇はしばし考えると、ニヤリと不敵な笑みを見せ、敢えてマイクで喋った。

 

「そうですか………丁度目の前に、高くさばけそうなマシンが存在していますね。」

 

『ッ!!!????』

 

「どうせ、今のキャリー・ベースには入らない巨体なんです。劾さんの帰りの便でモビルスーツを渡しますし………対価の確保のために、この街の市場でさばかれてもらいますよ!!」

 

そう言うと、肇は素早く中央の大通りを南に向かって駆け始めた。

慌ててポゥのウォドムが、側頭部の「3連装大型ミサイル」を6基全部撃ってくる。

しかし、バーニアを全開にして一直線に駆け抜けてくるストライカー・カスタムをロックする事が出来ず、ミサイルはその後ろの道に次々と着弾していくだけだ。

 

「穂乃香さん!あの機体のコックピットは!?」

「え………ウォドムの場合は腰部ですが………。」

「では、あの物騒な頭部は無力化して大丈夫ですね!」

 

機体の特徴を、索敵能力を持つ綾瀬穂乃香に素早く聞いた肇は、そのまま飛び上がる。

ポゥは慌てて頭部のカバーを開いて対艦用ビーム砲を放とうとしたが、全てが遅かった。

 

「せいやあああああああああぁっ!!」

 

気合のこもった咆哮と共に、肇がウォドムの発射口にスパーク・ナックルを叩き込む。

敵機の機器をダイレクトで破壊する放電攻撃を頭部に受け、ポゥの機体は武装が封じられる。

 

「う、動け!?ウォドム!?ど、どうした!?」

 

牽制用の「対空用バルカン砲」も撃てなくなった事で、ポゥは顔面が蒼白になった。

しかも、中央の大通りで巨体の動きが一時的に止まった事で、左右から集結したウォドムはポゥ機とぶつかり合って自由に身動きが取れない。

建物が遮蔽物になった事で、ストライカー・カスタムに攻撃も出来なくなった。

完全に周りが見えていないで指示を出した弊害が、ここで出てしまっている。

 

「何をしている!?早く撃ち落とせ!!」

「しかし、建造物が邪魔で………!」

「破壊しろ!それ位………!」

 

「遅い!!」

 

ポゥがヤケクソな指示を出そうとするが、そうしている間に肇はウォドムの足下に着地。

ビーム・サーベルを二振り取り出し、「ツイン・ビーム・サーベル」へと連結させると、再び跳び上がる。

そのまま向かって左側のウォドムの足を根元から薙ぎ払い、大通りに転がしてしまう。

 

「な、何なんだよ!?アンタはぁ!?」

 

最後に残った、向かって右側のウォドムは、恐怖の余り仲間の事すら目に入らなくなり、対艦用ビーム砲をお構いなしに肇機の背後から放とうとする。

 

「我が名は藤原肇!!」

 

だが、再びバク宙をするように高々と跳躍した肇のストライカー・カスタムにはロックが間に合わず、極太のビームは夜空を照らすだけに留まる。

 

「この事件はこの刀の下に!!」

 

そのまま逆さまの体勢でウォドムの武装が盛り込まれた頭の部分だけをツイン・ビーム・サーベルで薙ぎ払い攻撃を封じる。

 

「我らシンデレラガールズが!!」

 

これを見たウォドムは長い腕を振り回そうとするが、今度は丁寧に右、左と綺麗に落としていく。

 

「預かりました!!」

 

最後に足を薙ぎ払った事で、ウォドムはスクラップのダルマに変わってしまった。

 

「……………。」

 

ようやく自機の腕と足が動くようになったポゥは、口をパクパクと動かす事しか出来なかった。

この目の前のモビルスーツは、ミリシャの物かどうか言う前に、完全に敵わないと悟ってしまったからだ。

何せ、ウァッド15機とウォドム3機を全て「無力化」している。

しかも、パイロットを1人も殺さずに。

それだけの余裕が、この目の前の娘にはあった。

 

「あ………ああ……………。」

 

「さて………貴女の機体だけ「解体しなかった」のは、皆を連れて引いて貰う為です。従って………くれますよね?」

 

肇の言葉は穏やかであったが、威圧感が違った。

ポゥは思わず涙を流し、項垂れる。

 

「何て様だ………!何でこんな事くらいできないんだ!私は………!!」

 

完全敗北を突きつけられた事で、ポゥは否が応でも従わざるを得なかった。

とぼとぼとウォドムも項垂れながら、その手に機体を放棄して逃げて来たディアナ・カウンター兵を乗せて退却していく。

 

その後ろ姿を見守りながら、肇は自身の新しい愛機に挨拶をした。

 

「これから宜しくお願いしますね、ストライカー・カスタム。」

 

 

藤原肇の新たな力である刀のガンダム。

シンデレラガールズに、頼もしいモビルスーツが戦力に加わった。




藤原肇さんの代名詞とも言える、ストライカー・カスタムの活躍回!
動画版では、このウォドムを狩っていくシーンは、「ガンダムカタナ」の決め台詞と合わせ、かなり盛り上がっていました。
実は、イフリート・ナハト等も選択肢にあった中で、このガンダム頭のジムを選んだのは、正解だったと感じましたね。

…で、驚きだったのは、そのストライカー・カスタムが、カタナの主人公であるイットウ・ツルギさんと共に、gジェネエターナルに参戦した事です。
しかも、比較的使いやすい初期URの1組として。
移動力と射程は最低値ですが、ボスでも一撃で粉砕するEX技を含めた破壊力は、お手軽な強敵キラーと呼ばれていますね。
手数よりも威力を求める方は、1体くらいはストライカー・カスタムを確保してもいいかも。
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