モバジェネワールド・リメイク   作:擬態人形P

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第84話 PHASE7-6『黒き刺客』

ロウ・ギュールが叢雲劾に頼んで藤原肇に届けたのは、ストライカー・カスタムであった。

ジム・ストライカーを魔改造した機体はインファイトしか出来ないモビルスーツであり、肇は戸惑う事に。

しかし、劾が肇の為の機体だと言った事で、彼女はそのマシンを駆る決意を固める。

 

そして、機体は見事に肇の体の一部として応えてくれて、瞬く間にウァッド15機とウォドム3機を戦闘不能にしてしまう。

パイロットを生かす余裕すらあった肇の技量を見せつけられ、ポゥ・エイジは涙ながらに退却する事しか出来なかった。

 

ストライカー・カスタム………刀のガンダムの力により、藤原肇は己の力を取り戻すどころか、より強力な力を手に入れる。

 

 

 

ポゥを含めたディアナ・カウンターの面々を敗走した頃、避難民が押し寄せたキャリー・ベースから、ようやくシンデレラガールズの面々が出撃していた。

しかし、肇の無双によって戦闘自体が既に終わってしまった為、皆は唖然とする事しか出来ない。

 

「す、すごい………あんな技術を持つ人が存在していたなんて………。」

 

やっと呟く事が出来たのは、修理を終えたトムリアットで出撃を行った「ノックス」の飛行機乗りである十時愛梨。

一時的にシンデレラガールズに身を置いている彼女は、肇の近接戦闘を見るのが初めてであった為、その驚きは余計だ。

 

「肇さん、凄くイキイキとしています………。」

 

M1アストレイ(シュライク装備型)に乗っている高槻やよいも、思わず引いてしまっていた。

高森藍子も、AEUイナクトのコックピットの中で、苦笑いを浮かべながら言葉を発する。

 

「まるで水を得た魚みたいだね。余程体に合っているんだよ、あのガンダム。」

 

色々と皆で心配したが、ロウと劾のお陰で、肇のこれからのモビルスーツの問題も解決しそうであった。

 

とりあえず、敵がいなくなった以上は、避難民の救助を行うべきだと感じた一同。

しかし、そこでガルバルディβに乗った綾瀬穂乃香が警戒の声を発する。

 

「待って下さい!ジェネレーション・ブレイクが起こります!」

 

『ッ!?』

 

穂乃香の言葉と共に夜空にひびが入り、割れていく。

その空から現れたのは………。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「一体どういうことだ!敵部隊は撤退したのでは無いのか!?」

 

「ボストニア城」内では、激しい振動が起こっていた。

グエン・サード・ラインフォードは、何が起こったのか理解できず、思わずミハイル・ゲルンに問う。

 

「御避難を!この城を、空から「クジラ」が潰そうとしいています!!」

「クジラだと!?ムーンレィスは、この城にも攻撃を仕掛けてくるのか!?」

 

城が本格的に崩れ出した事で、グエンを始めとした人物達が、慌てて逃げ出す。

そのまま「ボストニア城」は、崩壊していった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「そんな………「ボストニア城」が!?」

「ひ、酷い!誰が一体、こんな事を!?」

 

ロラン・セアックと愛梨は、「ノックス」のシンボルが、上空から降下してきた緑の「戦艦」に押し潰されて崩された事で、驚愕していた。

その戦艦の中から、モビルスーツと言うには形状が寸胴すぎる灰色の機体が3体、赤い同じ機体によって連れられ城の瓦礫の上に着地してくる。

更に、その横に降りてきたのは………。

 

「ああ!?あの人は!?」

 

「私はマシュマー・セロだ!裏切り者の高槻やよいよ、大人しく出てこい!!」

 

「「シャングリラ」を滅茶苦茶にした人!!」

 

マイクでの声が聞こえて来た為、思わずやよいがコックピット内で叫ぶ中、寸胴系の機体に並んだのは、ガルスJ。

彼女が「シャングリラ」で初陣を飾った際にハイゴッグで対峙したモビルスーツであり、死闘を繰り広げた相手だ。

あの時は、マシュマーが部下の暴走を制御出来なかった事で民間人に多大な犠牲を生みだした為、やよいの逆鱗に触れてしまった。

 

「なるべく卑怯な手段は使いたくない。この街の無事を願うのならば、大人しく投降しろ!………でなければ、街ごと敵と見なし、遠慮なく攻撃を開始する!」

 

「そ、そんな………!?」

「待って………何でこの人、やよいちゃんの名前を知っているの?」

 

マシュマーの無差別攻撃宣言を受け、やよいが戦慄する中、ジンで出撃している桃井あずきが疑問を呈する。

彼女は「シャングリラ」の戦闘では、やよいのハイゴッグに同乗し、戦闘の一部始終を見ていた。

だからこそ、マシュマーが名乗っていないはずのやよいの名前を知っている事に、真っ先に違和感を覚えたのだ。

 

「どうして………。」

 

あずきの言葉に、やよいも疑問を覚えた時であった。

崩壊した「ボストニア城」の前の大通りを、2機の小柄な球体のようなモビルスーツが、長い手をぶらぶらと振りながら、ロランの∀ガンダムの傍まで駆けてくる。

そして、マシュマー達を見据えると、鋭い「アイアンネイル」やその手の甲の部分に備え付けられた「ハンドガン」を向けた。

 

「貴方達は………?」

 

「宇宙人の機械人形なんかッ!!」

「この「カプル」なら、負けるはず無いんだからッ!!」

 

「なッ!?」

「メシェーちゃん!?ソシエちゃん!?」

 

機体からマイクで響いて来たのは、2人の勇ましそうな女の子の声。

ロランと愛梨はその2人と知り合いであるらしく、驚きを隠せないでいる。

 

「ヤッホー、ロラン、愛梨!」

「加勢に来たわよ!!」

 

このカプルに乗って増援で現れたのは、メシェー・クンとソシエ・ハイム。

飛行機乗りの家系の少女と、キエル・ハイムの妹だ。

つまり、本当はモビルスーツに乗るような存在では無いのだが………。

 

「何で2人が………戦場に!?」

「数で当たらなきゃ勝てないんだよ!偉い人の伝記に書いてあったよ、ソシエ!」

「分かってるわよ!カプルにだって、電気の絵を映す機械はあるし!いけるわ!」

「それ、テレビジョンって言うんだってさ!」

 

唖然とするロランに対し、メシェーとソシエはカプルの腕を振り回して体操をする。

その様子に、彼は2人に対し………特に仕える立場のソシエに対して、思わず警告を始めた。

 

「お嬢さん達!無茶しないで下さい!戦争なんか軍人に任せりゃいいんですよ!」

「地球が乗っ取られてもいいの!?」

「ムーンレィスは、そんな事考えて無いよ!自分達の住むところが欲しいだけなんだよ!!」

「どうしてそんな事が分かるの!?機械人形で私達を皆殺しにするつもりよ!」

「勝手に決めつけないで下さい!話し合いの余地が無くなります!!」

 

何とかソシエ達を、戦場から退避させようとするロラン。

愛梨も一緒に説得する事で言い聞かせようとするが、如何せんポゥのやらかしが致命的過ぎるので、ソシエは頑なに了承しようとしない。

更に………。

 

「……………ねえ、ロラン。いきなり城をぶっ壊しといて、その言葉に説得力あると思う?」

「……………いえ、全く。」

 

崩れた城をカプルのマニュピレーターで指差すソシエを見て、ロランは器用に∀の頭に手を当て溜息を付く。

確かにこの場面では、ソシエの言葉の方が説得力はあるだろう。

しかし、このままだと誤解を招きそうだったので、オクト・エイプに乗った喜多見柚が近寄りマイクで補足説明を行う。

 

「あの、もしも~し!論争中悪いんだけれど、多分、こいつ等はそのムーンレィスとは関係ないと思うヨ?」

「どういうこと?」

 

ソシエが聞き返して来た所で、崩れた城の前に合流してきた肇が補足説明を行う。

 

「前に私達、次元の歪みの影響で、別の所であの戦艦と戦った事があるんです。その時、彼らの所属はムーンレィスではなく、ネオ・ジオンでした。」

 

肇の脳裏には、「シャングリラ」で戦った後、色々と説明をしてくれた服部瞳子の何とも言えない姿が浮かんでいた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「エンドラ………ですか?」

「そう………あの砲撃を行ったグリーンの戦艦は、エンドラ級の中でもネームシップであるエンドラっていうのよ。」

 

戦闘における犠牲者達の救助や手当てを行っている最中、肇達はそもそもの原因を作った、メガ粒子砲をジャンク山に撃った戦艦の事に付いて聞く機会があった。

エンドラが蹂躙の限りを尽くした際は、艦長である浅野風香が奇策を考え、ブランリヴァルのミサイルランチャーで砲塔部分だけを破壊し、撤退させる事で被害を最小限に抑えられたが………。

 

「エンドラは、総帥であるハマーン・カーン率いるネオ・ジオンの艦の中の1つ。今回は、満身創痍のアーガマを狙って来たのでしょうね。」

「失礼ながら、聞かせて下さい。何故、貴女がそれを知っているのですか………?」

「………元々は、私はネオ・ジオンでジオン再興を目指していた兵士だったのよ。」

 

肇の疑問は予想できたのだろう。

瞳子は静かに答え、自身の過去を語ってくれた。

それがどのような経緯でジムⅢを駆り、地球連邦軍のユウ・カジマと共に戦う道を選んだのかまでは、聞けなかったが………。

 

「ゴメンなさいね。本当は全てをさらけ出せれば、みんな納得できると思うのだけれど………。」

「い、いえ………。誰だって、話せない過去の1つや2つはあるはずですし。」

 

実際肇にも、初めて出会った相手には、伝えられないような過去を持っている。

だからこそ、辛そうに目を伏せる瞳子の過去を、詮索する事は出来なかった。

 

「1つ言えるのは、これからもネオ・ジオンは厄介な存在になるって事。油断だけは………絶対にしないで。」

「はい………ありがとうございます、教えて下さって。」

 

頭を下げる肇に対し、瞳子は、ほんの少しだけ笑みを見せた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ネオ・ジオン………?」

「この人達………次元の歪みに詳しい?」

 

ロランや愛梨が様々な感想をもたらす中、ソシエがコクピットの中で怪訝な顔をする。

 

「待って、貴女達も宇宙人なの?」

「街を守ろうと戦う宇宙人もいる………と思って貰えると嬉しいです。信じてくれないのならば、悲しいですが………。」

「……………。」

 

肇の寂しそうな言葉に、ソシエは無言になってしまう。

実際、ストライカー・カスタムのお陰で、暴虐を働くポゥ達を退ける事が出来たのだ。

事実がそれを物語っている以上、否定する要素は全く無い。

 

「とりあえず………あのクジラは敵なのよね?」

「「ボストニア城」を潰したうえで、この「ノックス」を破壊するとは言っていますが………少しおかしい所がありますね。」

「おかしい所って………もしかして「裏切り者の高槻やよい」って発言?」

 

メシェーの言葉に、肇はストライカー・カスタムの首を縦に振り、同意してロランと愛梨も含めた4人に説明する。

ソシエ達の乱入で少し話は逸れていたが、やよいの名前は、敵の指揮官………マシュマーは本来、知らないはずなのだ。

それを知っているという事は………?

 

「そこの変なモビルスーツ………えっと………穂乃香、アレ何ていうの?」

「「ゲゼ」です。作業用モビルスーツ………というか、モビルワーカーのはずですが………。」

「………そこのゲゼのパイロット………貴方が何かを知っているの?」

 

それまでずっと無言を貫いていたゲゼのパイロットに対し、シグーアサルトで出撃している黒川千秋が厳しい言葉で問う。

オート操作なのか、灰色のゲゼを3体守るように並べた赤色のゲゼが、手にした「スタン・スティック」をシグーアサルトに向けて構える。

マイクのスイッチが入ったのか、赤いゲゼが喋り出した。

 

「流石は、やよい君が身を寄せる組織という事か。やはり、私自らが出向いて来たのは、正解であったみたいだな。」

 

「ッ!?」

 

その言葉………いや、声音を聞いた瞬間、やよいは戦慄した。

あまりの事態に、彼女はM1アストレイのマイクを入れて、思わず叫んだ。

 

「そ、その声はまさか………!?」

「やよいちゃん!?」

「どうしたの!?」

 

ジーライン スタンダードアーマーに乗る栗原ネネや、白いトーラスを駆る緒方智絵里が、その狼狽ぶりに驚愕するが、やよいは周りが見えていなかった。

 

予測をしていなかったわけでは無い。

夢の中では、何度も自分の「大切な存在」がハルファスガンダムで敵対してきた。

心の何処かでは、もしかしたら………という予感も抱いていたのだ。

しかし、だからといって、覚悟が出来ているわけがない。

 

「久しぶりだな、やよい君。………正直、このような形で出会う事になって残念だ。」

 

「やっぱり………社長ッ!!!」

 

『社長ッ!!?』

 

シンデレラガールズのメンバー全員が、その正体に驚愕をする。

その反応を見て、ゲゼのパイロット………765プロの社長はスタン・スティックを指し示す相手を、やよいのM1アストレイに切り替えた。

 

「そうとも………私がやよい君を含めた765プロの社長、高木順二郎(たかぎじゅんじろう)だ!!」

 

 

765プロからの黒い刺客………。

高槻やよいが、最も実現してほしく無かった「現実」がそこに居た。




望ましい出会いがあれば、望ましくない出会いもある。
765プロからの刺客として、高木順二郎社長が登場してしまいました。
高槻やよいさんにしてみれば、1つの試練になるかもしれませんね。

そんな中、ソシエとメシェーのカプルも登場。
確かに街を滅茶苦茶にして城をぶっ壊したら、宇宙人が皆殺しに来たと思っても、仕方ないですね。

さて…そんな中で、次回は果たしてどうなるのか?
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