「ノックス」の街を襲ったディアナ・カウンターを不殺で迎撃してみせた藤原肇に、遅れて出撃したシンデレラガールズの面々は、苦笑するしか無かった。
しかし、ここに来てジェネレーション・ブレイクが発生し、空から巨大なクジラが襲来し、「ボストニア城」を押し潰してしまう。
以前「シャングリラ」で共闘した服部瞳子から、それがネオ・ジオンのエンドラである事を事前に聞いていたシンデレラガールズ達。
ロラン・セアックや十時愛梨、そして加勢に現れたメシェー・クンやソシエ・ハイムに説明を行うが、指揮官のマシュマー・セロは不可解な事をマイクで叫ぶ。
裏切り者の高槻やよいが降伏をしないと、街を破壊する。
訳の分からないやよいであったが、赤いゲゼに搭乗している者の声が聞こえた瞬間、激しく狼狽する。
それは、765プロの社長である高木順二郎であったのだ。
「そうとも………私がやよい君を含めた765プロの社長、高木順二郎だ!!」
「どうして!?どうして、社長がこんな所にいるんですか!?」
事態を呑み込めないやよいは、思わず高木社長に問う。
彼は、油断なく構えながらも、親切に説明を始める。
「実は、律子君提唱のプロジェクトの一環でね。我が765プロのメンバーは、各勢力の作戦に協力をする事で、ハルシュタイン軍としての信頼を得ているのだよ。」
秋月律子の名前が出て来た事で、やよいは正気を失いそうになる。
それでも何とか自身を保ち、1人のシンデレラガールズの戦士として叫ぶ。
「社長!今のバルバトスが何を考えているのか、分かっているんですか!?」
「分かっているとも、世界の平和の為だろう!だからこそ私も含め、765プロ総出で、このプロジェクトに取り組んでいるのだよ!」
今度こそ、やよいは愕然としてしまった。
心の何処かでは分かっていた事なのに、いざ実際に親しい高木社長から言われると心へのダメージが大きすぎる。
765プロ全員がバルバトスに協力しているという事実に、打ちのめされてしまう。
そして、同時に悟ってしまう。
目の前の高木社長を含め、皆がバルバトスに洗脳されているという事実に。
更に追い打ちを掛けるように、彼はやよいに話しかける。
「しかし、そんな中で私が君に出会えて、本当に良かった。これで、他のアイドル達の手を汚す事無く、「けじめ」をつけられるのだからな!!」
「ッ!!?」
反射的にやよいは、M1アストレイ(シュライク装備型)を動かしていた。
別方向から砲撃が複数飛んできたのだ。
見れば、エンドラからはいつの間にか「シャングリラ」で見かけたガザDに加え、その発展元の「ガザC」もモビルアーマー形態で出撃していた。
やよいを狙ったのは、ガザCの「ビーム・ガン」であり、他のシンデレラガールズのモビルスーツ達も、砲撃の雨に右往左往している状態だ。
「や、止めて下さい、社長ッ!!あ………!?」
ここでやよいは気付く。
エンドラの艦艇部の2門の砲塔が「ノックス」の街に向いていた事を。
だから、仲間達は反撃が出来ない。
「降伏したまえ、やよい君!私だって、本当はこんな事はしたくない!君は事務所の仲間だ!私だけでなく、765プロの皆が、こんな事を望んではいない!だが、君達が歯向かうから、力を振るわざるを得ないのだ!」
「ふざけないで下さい!バルバトスは、世界を滅ぼして………!」
何とか反論をしようと言葉を絞り出した瞬間だった。
ドゴォオオオオオオン!!
「え……………!?」
彼女の背後で爆発が起こる。
エンドラが「ノックス」の街に向けて、単装メガ粒子砲を放ったのだ。
振り向いたやよいの耳に、機体が集音した人々の悲鳴と絶叫が響き渡る。
「言っただろう?君が歯向かうから、こうなると。」
冷徹な高木社長の言葉が………操られている故に、本来の優しさから遠のいた765の社長の言葉が、やよいに突き刺さる。
明確に自分が歯向かったから、人々に犠牲が出た。
その紛れもない事実が、やよいの心を黒く塗りつぶしていく。
「街が………燃えている。」
「酷い!こんなの説得じゃ無くて、脅迫じゃないの!!」
嘗て燃える街で絶望を味わった桃井あずきが茫然とし、汚いやり方に我慢できないソシエが憤慨する。
しかし、2人にもガザCやガザDの攻撃が襲い掛かり、どうする事も出来ない。
「あ………あぁ………!?」
「………戻ってきたまえ、やよい君。君は私達の仲間だ。皆が、君の帰りを待っている。君の境遇を心配している。765プロには、まだ君の居場所がある。だから、やよい君………。」
一転して温かみのある声で囁く高木社長に対し、やよいは冷静な判断能力を失ってしまう。
当然ながら、自分が彼に付いて行けば、間違いなく洗脳されてしまい、今度はシンデレラガールズに牙を剥くことになる。
だが………そうしなければ、街の罪なき人々が次々と殺されていく。
自分のせいで………自分が「裏切った」から………。
「わ、たし………は………。」
「待って!アレ、何!?」
「邪魔をするな!!」
「いや、そうじゃなくて………アンタ達の後ろから飛んで来るのは、何なの!?」
突如割って入ったメシェーの言葉に、マシュマーがエネルギー・ガンを向けるが、彼女は夜空を見上げて、慌てて指差す。
飛行機乗りのメシェーは目もいいらしく、遠くから接近する飛行機に似た機体………モビルアーマーの存在が分かったらしい。
言葉を受けてシンデレラガールズの面々がカメラをズームさせると、確かに黒を基調とした機体が飛んできていた。
「また、新手!?やよいを更に脅すつもりなの!?」
「穂乃香ちゃん、アレは何ですか!?」
街に被害を与えないようにする為、ガンダム7号機で出撃している渋谷凛とジムⅢで出ている島村卯月が、ガザ部隊の攻撃を躱しながらも警戒をする。
穂乃香はガルバルディβのモノアイを凝らし、その大きくなって来た暗い機体を分析した。
「アレは、ガザDの発展型であるガ・ゾウム………いえ、「ガ・ゾウム(ガンナータイプ)」です!」
ガンナータイプと言われた事で、皆はモビルアーマー形態の右肩に担がれている「ビーム・ランチャー」と、左肩のレドームの上にマウントされている「狙撃型ナックル・バスター」に着目する。
ネオ・ジオンのモビルスーツの系譜から、更にマシュマー達が戦力の増強を図ったのかと危惧したが………。
「もぅ………悪い子達ですね~。これは、「お仕置き」しませんと!」
次の瞬間、信じられない事態が起こった。
ビーム・ランチャーと狙撃型ナックル・バスターが火を噴いた瞬間、とんでもない場所に命中したのだ。
エンドラの後部にある2基の連装メガ粒子砲の砲門に。
「ななな!?何だとぉ!?」
「どういう事だね、マシュマー君!?」
これには、マシュマーや高木社長も驚愕。
この指揮官達の素っ頓狂な叫びも合わせ、ネオ・ジオン軍全体に動揺が走ってしまう。
特に艦を率いている副長のゴットン・ゴーは、思わずマイクで叫ぶ。
「おい!?日下部若葉(くさかべわかば)!?いきなり何をする!?何でマシュマー様を裏切るんだ!?」
「街に被害を出したら、ネオ・ジオンの品位が損なわれるじゃ無いですか。そんな危ない砲塔は、処分です!」
明らかに焦っているゴットンの声に対し、ガ・ゾウムから聞こえて来たのは、何処か幼そうな声であった。
日下部若葉と名乗った娘に対し、今度はマシュマーが叫ぶ。
「本当にどういう事だ、若葉!?作戦の失敗は、許されないのだぞ!?小娘!!」
「むむ!?私、これでも貴方よりも2歳お姉さんなんですよ!20歳で成人しているから、「小娘」じゃありません!それに、私は貴方のお目付け役です!」
「お目付け役なら猶更分かっているはずだろう!?これは、ハマーン様の指示だと!私だって………卑劣な事はしたくない!だが、ハマーン様の命令である以上………!」
「ネオ・ジオンの頭はハマーン様じゃなくて、ミネバ様です!幼いミネバ様に、大虐殺の汚名を着せるつもりなのですか?」
あくまでお目付け役という女性は、自身の姿勢を崩さない。
そのままモビルアーマー形態で、エンドラの艦艇部に2門ある単装メガ粒子砲の砲塔を「ビーム・ガン」で破壊する。
更に、エンドラの前に飛び出すと、そのまま宙返りをしてモビルアーマー形態に変形し、ブリッジ前に後ろ向きで着地を行い、振り向きながら狙撃型ナックル・バスターをゴットン達に向けた。
「ミネバ様に、ゴメンなさいを出来ない人達は………どうなるか分かっていますね?」
「ひいいいい!?ま、マシュマー様!お助け!!」
「何を言っている、ゴットン!?情けないぞ!?」
「君達は意思統一も出来ていないのかね!?………って、何!?」
立場に違いから慌ただしくなるネオ・ジオン軍であったが、突如灰色のゲゼの内の1体が爆発を起こした。
混乱の隙を見計らい、シンデレラガールズが攻撃し始めたのだ。
しかし、その先陣を刻んだのは………。
「うあああああああ!!」
「やよい君!?」
他でもない、感情がグチャグチャになっていたやよい。
彼女は絶叫しながらビームライフルでゲゼを1体貫いた後、ビームサーベルを取りだして突撃する。
「くっ………止むを得ん!」
高木社長は2機のゲゼを盾にしようとするが、そのゲゼ2体も爆発を起こしてしまう。
「隙は見逃さないよ!」
「よくも街を滅茶苦茶にしてくれたわね!」
メシェーとソシエが、カプルのハンドガンを乱射したのだ。
オート操作とはいえ、あっという間に僚機を失った高木社長は、赤いゲゼのスタン・スティックを振り回す。
「アレ!当たると痺れるよ!!」
「~~~ッ!」
歯を食いしばるようにしたやよいは、あずきの忠告に本能で反応して、ゲゼの前で急ブレーキをかけてサーベルを横に振るい、空振りに終わったスタン・スティックを破壊する。
尚も、パンチを繰り出そうとするゲゼの腕を次々と奪っていく。
「社長!私は………私はぁ………ッ!!」
知らぬうちにやよいは、大粒の涙を流しながら、自分の感情を吐露していた。
頭がおかしくなりながらも、伝えなければならなかった。
絶対に曲げられない事。
ここまで脅迫めいた説得をされても………自分の中で曲げられなかった事実を。
「今の765プロには………戻れません!今のハルシュタイン閣下には、従えませんッ!!」
攻撃手段を封じられた高木社長に、ビームサーベルを振り下ろすやよい。
まともに入れば。確実にトドメの一撃になった。
「こんな社長に………!従えるわけがないッ!!」
しかし、心の奥底では、同時に優しい765プロの人々の姿も思い浮かんでいた。
その中には、間違いなく高木社長の姿も入っている。
だから………踏み込みが甘かった。
トドメになるはずのサーベルの軌跡は僅かに届かず、回避されてしまう。
「………本当は、力づくでも連れて帰りたかったんだがね。」
「ゴメンなさい、社長………。でも、私は………本当は………。」
「次からは765プロのアイドル達が、立ち塞がるだろう。君がシンデレラガールズに所属している限り………な。」
何処か寂しげな高木社長は、踵を返して撤退していく。
やよいは追いかける気力を、もう持っていなかった。
いつの間にか戦場では、シンデレラガールズとネオ・ジオン軍が、崩れた「ボストニア城」の前で交戦し始めていた。
しかし、後者は混乱の影響で士気が上がっていないのも有り、シンデレラガールズの砲撃で次々と撃ち落とされていく。
敵が空を飛んでいる為、街の被害を考えずに割と自由に砲撃が出来たのも幸いした。
「確かに慣れって怖いですねぇ………。こんな形で人殺しに慣れたく無かったですよ!」
「仕方ないだろ!撃っていいのは、覚悟のあるやつだけだ!」
ゲルググキャノンに乗る輿水幸子がぼやきながら、背部のビーム・キャノンでガザDを破壊していく。
一応、グフ・フライトタイプでカバーに入っている神谷奈緒がツッコミながらも、ガトリング・シールドでガザCをハチの巣にしていった。
「そっちはどうだ、忍!?」
「穂乃香ちゃんとあずきちゃんも慣れたってさ。………不本意だけれど。」
ジム・スナイパーⅡ(ホワイト・ディンゴ仕様)を操る工藤忍が、何とも言えないニュアンスで言葉を発する。
幸子も穂乃香もあずきも、初めての撃墜をした際は、人を殺した罪悪感などで錯乱してしまった。
しかし、2機目からは慣れる事が出来ているらしい。
この覚悟と慣れは、あまり経験したい物では無かった。
「こちら、藍子です!柚ちゃん、他のみんなは!?」
「ソシエチャンとメシェーチャンは、ロランサンと愛梨サンが付いているよ。肇チャンは何か空中の相手を素手で爆撃している………。」
「ええ………!?」
オクト・エイプを駆る喜多見柚の言葉に、AEUイナクト指揮官型を乗りこなす高森藍子が思わずストライカー・カスタムに注目をする。
確かに肇は、ジャンプをしてガザDに何かを押し当て爆発を起こして木っ端微塵にしていた。
これが吸着爆弾をぶつける、バースト・ナックルという武装であるらしい。
何でも、大きな破片が飛び散らないから、被害を鑑みれば、一番良いらしいのだ。
「智絵里です………!やよいちゃんは………!?」
「こちら未央!私がカバーに入っているけれど………。」
トーラスを変形させて空中戦を繰り広げる緒方智絵里が、やよいの心配をした。
彼女は精神を摩耗させてしまっていた故に、カバーが必要である。
パワードジムカーディガンの初陣をしている本田未央が、何とも言えない顔をしていた。
通信を送る本田未央の目線の先にいたのは、ジーライン スタンダードアーマーを駆る栗原ネネ。
彼女は、マシュマーの操るガルスJと対峙していた。
一応、ギャグもあるシリーズですが、今回はかなりのシリアス。
高槻やよいさんの心を壊しに掛かる、極悪非道の戦いが行われました。
しかし、そんな中で新たに登場した日下部若葉さんとマシュマー達が対立する羽目に。
実はここら辺は、オリジナルの展開なんですよね。
本来はこのステージに、マシュマーは登場しません(ゲモンとヤザンのゲゼが連携してきます)。
また、日下部若葉さんも小説版からの登場アイドルです。
どんな活躍をするのかは、これからをお楽しみくださいね。